転生者の幽雅な日常   作:九戸政景

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政実「どうも、好きな犬の種類は柴犬、片倉政実です」
柚希「どうも、遠野柚希です。確かに柴犬は良いよな、俺も飼ってたのは黒柴だし。まあ、犬はどれも好きではあるけどさ」
政実「同感だね。さてと、それじゃあそろそろ始めていこうか」
柚希「そうだな」
政実・柚希「それでは、第11話をどうぞ」


第11話 夏の夜に響くは暗き狗の声

 大音量で辺りに響き渡る蝉の声や静かで涼しげな風鈴の音が聞こえる季節、夏。そんな夏にあるイベントの一つ、夏休みのある日の午前中、俺達は長谷の家にある長谷の部屋で夏休みの宿題を片付けていた。

もちろん、宿題自体はそんなに難しくはないから、それぞれで片付ける事は出来るんだが、やっぱり皆で集まってやった方が色々と訊き合えるし、何よりも夕士達と一緒にいられるのが楽しいから、こうして皆で集まって宿題を片付けている。

 

 ……まあ、その間『絆の書』の皆には居住空間にいてもらう事にはなっちゃってるから、ちょっと申し訳ないとは思ってるんだけどな。

 

そして持ってきていた分の宿題が大体終わったその時、部屋のドアが軽くノックされた。そのノックの音に長谷は少し迷惑そうな表情を浮かべつつも、静かに部屋のドアを開けた。するとそこにいたのは、長谷のお父さんである長谷慶二さんだった。

慶二さんは自身の父親である長谷恭造さんのやり方を嫌い、身一つで家を飛び出した後、一流のビジネスマンへとのし上がった程の実力を備えた人物で、どう考えても社長などといったトップに君臨する方が似合っている人なのだが、本人としては表だってやるよりも裏から『暗躍』する方が性に合うらしく、現在は会社のナンバー2として、日夜辣腕を振るって仕事に励んでいるようだ。

 

 まあ……こういう人だからこそ、社長の事を呼び捨てとかで呼べるんだろうけどな。

 

 慶二さんの姿を見ながら、そんな事をぼんやりと考えていると、慶二さんは右手を挙げながらニッと笑いつつ、とても明るい調子で話し掛けてきた。

 

「よっ、少年達。今日も元気に勉強中か?」

「……見れば分かるだろ、親父。……ったく、一体何の用なんだ……?」

 

 長谷がムスッとした表情を浮かべながら訊くと、慶二さんはうーんと声を上げながら少し考えたフリをし始めた。そしてそれを見た事で、長谷の波動に怒りによる波が立ち始めた時、慶二さんはニッと笑いながら答えた。

 

「暇、だったからだな♪」

「……そうか、なら帰れ」

 

 長谷がとても冷たい声で言いながらドアを閉めようとすると、慶二さんはスッと足を入れることでそれを阻止しつつ、少しからかうような調子で話し掛けた。

 

「おいおい、泉貴く~ん? こんな色男相手にそれはちょっと冷たいんじゃないかなぁ~?」

「当然の対応だ……! というか、自分で色男とか言ってんなよな……!」

「いやいや、それは本当の事なんだから仕方ないだろ~? それに、そう言うお前だって、学校じゃあモテモテなんだろ?」

「……それはそうだが、それを言ったら稲葉と遠野も似たようなものだろうが……!」

「くくくっ……確かにそうらしいな。けど、そんな情報で俺の注意を逸らせるって考えるのは大間違いだぞ? なぁ、み~ず~き~く~ん~?」

「だから……! そういう風に呼ぶのは止めろと、いつもいつも……!」

 

 長谷が静かに怒りながら言う中、慶二さんはそれをものともせず、むしろそれを楽しむように次々と言葉を投げかけていく。そしてその様子を見て、俺と夕士はまた始まったという風に苦笑いを浮かべた。

慶二さんは黒いオールバックが似合うとても端整な顔立ちをした一流のビジネスマンであり、その仕事ぶりもとても凄いのだが、こういったちょっとお茶目とも言える一面を持っており、息子である長谷をからかってみるのが大好きな人なのだ。

そしてそれは、今みたいに俺達がいる時でも変わらないようで、今日のようにぶらりと長谷の部屋に立ち寄っては長谷の事をからかい、満足したら戻っていくというのが一連の流れである。

俺は前世知識として知っていたとはいえ、最初こそは少し驚いた。

しかし慣れてしまった今となっては、珍しい長谷の姿を見る事が出来るので、長谷の家に来た時のちょっとした楽しみとなっている。

そんな事を考えている内に、長谷の顔に徐々に諦めの色が浮かび始めると、程なくして長谷はドアノブから手を離した。

そしてそれを見た慶二さんは楽しそうな様子で笑うと、ドアをゆっくりと開き、そのまま部屋の中へと入ってきた。

 

「くくく……泉貴、今日も俺の勝ちみたいだな」

「はぁっ、はぁっ……! ……ああ、『今回』はそうだな。だが……『次』こそはアンタに絶対に負けたりしない……それだけは覚えておけよ……!」

「……ああ、楽しみにしてるぞ、泉貴」

 

慶二さんはニカッと笑いながら長谷の言葉に答えた。この様子からも分かるように、長谷と慶二さんの中は決して悪いわけでは無い。

そして長谷自身はこう見えて慶二さんのやり方や実力なんかをしっかりと認めており、慶二さんの事を学ぶべき対象であり、いつか絶対に越えるべき相手として考えており、慶二さんも長谷の今の力をしっかりと認め、こういったふれあいのようなものを通じて、長谷の成長を促しているようにも見えた。

 

 この長谷と慶二さんの関係って、正しい親子の関係性なんだよな。子供は親の良い所と悪い所を見て、それを取捨選択してから自分の血肉として、親は子供に様々な成長を促しつつ、それをしっかりと見守っている……。

 

 そこまで考えた時、俺は亡くなった父さん達の事を思い出していた。あの時、俺も天斗伯父さんも傍にいない時に父さん達は事故で亡くなった。そしてそれにより、俺は天斗伯父さんに引き取ってもらい、共に暮らすことになった。

今の生活に当然文句なんかは無い。天斗伯父さん達との生活は充実してはいるし、それにとても楽しいから。けど、この長谷親子のふれあいのような物などを見る度、俺は本当の意味でもうこういう事すら出来ないんだと思い、少しだけ寂しくもなっていたのだった。

 

 ……でも、そうやって(うらや)んでみたり寂しがってみたりばかりしていても、父さんも母さんも浮かばれない。だから、俺は俺なりに頑張って生きていこう。父さん達に向かって頑張ってると胸を張って言えるように。

 

 俺が改めて決心していると、慶二さんが静かに微笑みながら俺に声を掛けてきた。

 

「……良い顔してるじゃないか、柚希」

「え……そう、ですか?」

「ああ。また一つ男を上げたって感じの面だ。なあ、泉貴? 夕士?」

「……そうだな」

「はい!」

「長谷……夕士……」

 

 とてもカッコイイ笑顔で言う慶二さんの言葉、そしてフッと笑いながら答える長谷の言葉ととても良い笑顔で答える夕士の言葉を聞き、俺は心の底から嬉しくなった。

 

「皆……ありが……」

 

 俺がお礼を言い掛けた時、慶二さんは突然ニッと笑いながら俺の言葉に被せるように言った。

 

「まっ、まだまだ俺には敵わないけどな♪」

「け、慶二さん……」

「あはは……」

 

 慶二さんの言葉に俺と夕士が苦笑いを浮かべていると、長谷がとても呆れた様子で慶二さんに話し掛けた。

 

「……それで、そんな戯れ言を言うためだけに俺の部屋まで来たのか?」

「ははっ、戯れ言とは酷いなぁ~。まっ、それだけじゃなく、勉強の休憩として、お前達にちょっとした怪談でも話してやろうと思ってな」

「怪談って……まだ夜じゃないだろ……」

「くくく……甘いぞ、泉貴。話し方次第では、夜じゃなくとも人を怖がらせるのは簡単なんだぞ?」

「……それで? その怪談ってのは一体どんなのなんだ?」

 

長谷が少々怒りながら訊くと、慶二さんは怪談らしく少々声を低くしながらその怪談を話してくれた。

 

「……実は、この近くにある神社についての話なんだが……3日ほど前の深夜、神社の近くを歩いていた人が境内の方から犬の鳴き声を聴いたそうだ」

「3日前っていうと……そこそこ大きな地震があった頃か」

「そうだ。それでその人は神社の方から犬の鳴き声がしたのを不思議に思い、こっそりと近付いてみたそうだ。その人は恐怖で心臓を高鳴らせながら、音を立てないようにしながら石段を静かに上っていった。

そして石段を上りきった時、その人が見たのは、もぞもぞと動いている毛の生えたサッカーボールのような物だったそうだ」

「もぞもぞと動いているサッカーボールのような物……」

「その人はその奇妙な雰囲気に更に恐怖を覚え、急いで逃げるために静かに後退った。ところが……その時に近くに落ちていた枝を踏んでしまい、枝が折れるパキンッという音が境内に響いてしまった。

その瞬間、その何かがその人の方を向き、ゆらゆらと揺れながら浮き上がったかと思うと、その人の方へとゆっくり近付いていったそうだ。

そしてその人は遂に恐怖に耐えきれなくなり、悲鳴を上げながらその場を急いで立ち去ったという……」

 

 慶二さんがそう話を締めくくると、夕士はゴクリと喉を鳴らした後、緊張した面持ちで慶二さんに話し掛けた。

 

「それで……その人は無事だったんですか……?」

「まあ、一応な。ただ……だいぶその時の事が怖かったらしく、今はあまり神社の傍を通りたくないそうだ」

「そうなんですね……」

 

 慶二さんの話を聞き、夕士の顔が強張っていく中、長谷は少し胡散臭(うさんくさ)そうな表情を浮かべながら慶二さんに話し掛けた。

 

「……何でそんな話を親父が知ってるんだよ?」

「今朝、その人に偶然会ってな。最近、神社の境内で鳥の死骸とかが見つかるようになった話をしていたら、突然ブルブルと震えだしたから、その理由を訊き出してみたらこの話をしてもらえたってわけだ」

「鳥の死骸……っていうと、一昨日くらいから見つかるようになった奴か」

「その通りだ。まあ、最初は野良犬の仕業なんじゃないかって言われてたが、その人の話が本当であれば、その犬の鳴き声を出す毛玉みたいな奴の仕業って事になるだろうな」

「ふーん……」

 

 長谷は少しだけ興味を惹かれた様子を見せていたが、すぐいつものように落ち着いた様子に戻ると、静かに言葉を続けた。

 

「……まあ、夜に神社の傍を通る用事なんて殆ど無いし、不用意に出歩かなきゃ大丈夫そうだな。そうだろ、親父?」

「まあ、そうだが……去年のように肝試しをやる時は、念のため神社の傍を通らないコースを選べよ?」

「ああ、分かってるさ」

 

 長谷が頷きながら答えると、慶二さんは満足そうな様子でニッと笑った。そして部屋の外の方へ体を向けた後、顔だけ俺達の方へ向けて声を掛けてきた。

 

「それじゃあな、少年達。頑張って勉強をするんだぞ?」

 

 俺達が揃って頷くと、慶二さんは部屋から静かに出ると、ゆっくりとドアを閉めた。

 

「さて……それじゃあ早速、宿題の続きをするか」

「だな!」

「ああ」

 

 長谷の言葉に頷きながら答えた後、俺達は再び宿題を片付け始めた。しかし、夕士達と話をしながら宿題を片付けつつも、俺はさっきの慶二さんの話に出て来た『何か』の事がとても気になっていた。

 

犬の鳴き声……サッカーボールくらいの大きさの毛玉……か。まさか、な……)

 

 その『何か』の情報から、俺は微かな嫌な予感を感じていたが、それは今すぐにはどうにも出来ない物なため、とりあえず宿題を片付ける事に集中することにした。

 

 

 

 

「ほう……犬の鳴き声を上げる妙な毛玉、ですか……」

「はい……」

 

 天斗伯父さんの少し緊張した声に俺も少し緊張をしながら答えた。宿題を片付けた後、俺と夕士は長谷と午後から遊ぶ約束をしてから、宿題を持って帰ったりするために一度それぞれの家へと帰った。そして昼食を食べながら、俺は天斗伯父さんや『絆の書』の皆にさっき聴いた話について相談をしてみることにした。

 

 その『何か』が俺の考えてるモノだとしたら、正直俺の力じゃあどうにもならないかもしれないしな。

 

 俺が昼食の冷やし中華を静かに味わいながら考えていた時、義智が静かに口を開いた。

 

「……柚希。お前はその『何か』について、大体の予想はついているか?」

「……一応は。けど、実際に見たわけじゃないから、本当に予想でしか過ぎないけどな。それに……義智だってその『何か』の正体について何となく予想はついてるんだろ?」

「……うむ」

 

 義智がいつになく真剣な声で答えると、風之真がとても不思議そうな声で話し掛けてきた。

 

「柚希の旦那……その毛玉みてぇな奴ぁ、そんなに危険な奴なのかぃ?」

「……もし、その正体が俺達の考えてるような奴だったらな」

「へぇ……話を聞いてるだけなら、そんな大したこと無さそうに聞こえっけどなぁ……」

「まあ、『話を聞いてるだけ』ならな」

 

 風之真に言葉を返しながら、俺はその『何か』について思考を巡らせた。

 

 今のところ、『何か』は人に危害を加えたりはしていないみたいだ。でも……いつかは誰かに危害を加えるかもしれないし、早めに手を打てるなら手を打っておきたいな……。

 

 その何かをどうにかしたいという気持ちと対峙する事への緊張の二つが俺の中で渦巻いていたその時、天斗伯父さんが真剣な表情を浮かべながら俺に話し掛けてきた。

 

「……柚希君、もし、その『何か』が私達の思っている物だとしたら、貴方は『何か』をどうしたいですか?」

「『何か』をどうするか……」

 

 その『何か』が俺達の思っている物だとしたら、それはとても哀しいモノであることなのは間違い無い。なぜならばそれは一つの犠牲と一つの暗いモノによって産まれる物なのだから。

 

 だったら俺がやるべき事は一つだな。

 

 俺はそう決心をした後、天斗伯父さんに返事をした。

 

「俺は……その『何か』を『救いたい』と思います」

「救いたい……ですか」

「はい」

 

 俺が静かに返事をすると、義智が真剣な様子で声を掛けてきた。

 

「柚希……分かっていると思うが、その『何か』が奴であるならば、お前や我々の手に負える相手では無いかもしれぬ。加えて話し合いで解決できる可能性は殆ど無く、最悪奴とやり合わねばならぬ。それでもお前はその『何か』に会い、そしてその上救いたいと言うのか?」

「ああ。俺達が思っているモノだったとしたら、確かに俺達の手に負えない奴じゃないかもしれない。もちろん、それを救おうなんて考えるのは馬鹿な事だっていうのは分かってる。本来、アレは救えるようなモノじゃないはずだからな。

でも……もしその『何か』がソイツだとしたら、ソイツはとても哀しい生まれ方をしてるだろうし、恐らく人間の事を恨んでるはずだ。

だからこそ、俺はもし救えるならばソイツの事を救いたい。誰かを憎み恨むっていうのは、やっぱり哀しいことだからさ」

「……そうか」

 

 義智は静かに返事をした後、呆れ果てた様子で息をついた。

 

「……そこまで分かっていてその道を選ぼうとするとは……柚希、お前は本当に救いようのないお人好しなのだな」

「あはは……確かにな」

「……して、柚希よ。策はあるのか? 『何か』がそれであった場合の対策や救うための策は、既に浮かんでいるのか?」

「それが……まだなんだよな……。とりあえず気持ちだけを伝えておこうと思って言い出しただけだし……」

「ふん……そうだろうな。お前という奴はそういう奴なのだからな」

「うん……本当にゴメン」

 

 俺が申し訳なさそうに謝ると、義智は目を閉じながら静かな声で答えた。

 

「だが……お前は様々なモノ達と分かり合い、こうして共に生活をしているのも事実だ。ならば、我のこの身と知識を……お前の願いのために用いるのも悪くは無いかもしれぬな」

「義智……でも、本当に良いのか?」

「ああ。あの時、お前を選び、共に生活を送ろうと考えた時点で、お前は我の友であり主人だ。それに……万物を知る妖として、『救えぬやもしれぬ』モノを『救う』、その時を見てみたいと思ったからな」

「義智……うん、ありがとうな」

 

 俺が静かに微笑みながら義智にお礼を言っていると、風之真達が次々と俺達に声を掛けてきた。

 

「おっとぉ……俺らを忘れてもらっちゃあ困るぜ? 旦那方」

「ふふっ♪ そうですね♪」

「儂らも柚希を信じた上で、ここにおる身じゃからな」

「微力ながら精一杯お手伝いします!」

「ワンッ!」

「ま、柚希達が私達を置いて行こうとしても、無理矢理着いてくけどね♪」

「何が相手であろうとも、私達であれば何とでもなるだろうからな」

「うんうん、ボク達なら絶対に大丈夫だよ!」

「本当はちょっと怖いですけど……柚希お兄ちゃん達がいるから大丈夫です!」

「それに……たとえ怖くても、それが誰かに危害を及ぼすなら、放ってはおけませんからね」

「柚希さん、及ばすながら私達も助力致しますよ」

「皆……!」

「……やれやれ、どうやら『絆の書』の住人は、いつの間にかお人好しな連中に姿を変えていたようだな」

 

 義智が小さく首を横に振りながら言うと、それを見た風之真が楽しげに笑いながら義智に話し掛けた。

 

「おやおや~? 柚希の旦那の次にお人好しな義智の旦那が言えた事じゃあねぇんじゃないかぃ?」

「……まあ、そうかもしれぬな」

 

 義智はポツリと呟くように答えた後、俺の方へと視線を戻した。

 

「さて、柚希よ。こうなればもはや後戻りは出来んぞ?」

「ああ、少ない時間にはなるかもしれないけど、夕士達との約束の後に、『何か』と対峙した時の対策とかを皆で考えないといけないな」

「うむ」

 

 俺の言葉を聞き、義智がコクンと頷いていると、天斗伯父さんから呟くような声が聞こえてきた。

 

「……なるほど、それが皆さんの気持ち、というわけですね」

「はい。もちろん、俺達がやろうとしている事が危険な事なのは承知しています。でも……このまま放置しておいて、他に危害を被る人が出てしまうのはやっぱり間違ってると思うので」

「そう、ですか……」

 

 天斗伯父さんは俺の答えをとても真剣な表情で聞いた後、何かを考えるように俯いた。しかし、程なくゆっくりと顔を上げると、いつものように穏やかな笑みを浮かべながら俺達に話し掛けてきた。

 

「分かりました。皆さんが目的を果たせるよう、私も精一杯協力させて頂きますね」

「天斗伯父さん……! 本当にありがとうございます……!」

「ふふ、どういたしまして」

 

 俺のお礼の言葉に天斗伯父さんが小さく笑いながら答えると、義智は静かな声で天斗伯父さんに話し掛けた。

 

「……シフルよ。お前が手伝おうと思った理由、それは柚希自身がお前にしっかりとした意志を伝えてきたから、だな?」

「はい。今回の件は今の柚希君には確かに荷が重い物ですから、本当ならこちらから人員を派遣してどうにかしたいと考えていました。

しかし、先程の柚希君や義智さんを始めとした『絆の書』の皆さんの意志を聞いて、私はこの件を柚希君達にお任せしようと思ったのです。柚希君達ならば、きっと私達とは別の解決をしてくれるはずですから」

「俺達のしっかりとした意志……」

「ええ。何かを成し遂げるためには、必ずと言って良い程、『意志の力』が必要になってきます。確固たる意志はその人の力となり願いを叶えるための原動力となります。

それは今回の件においても同じで、『何か』を助けたいという柚希君の意志、そしてその柚希君を助けたいという『絆の書』の皆さんの意志、それら二つがあって初めて皆さんの力となりますからね」

「……確かにそうかもしれませんね」

「はい。それと……やはり、家族として柚希君達の事が心配でしたから」

「天斗伯父さん……」

 

 俺が呟くようにして言うと、天斗伯父さんはニコッと笑いながら言葉を続けた。

 

「私は柚希君を転生させた神であるのに加えて、柚希君の伯父でもありますし、『絆の書』の皆さんの事も大切な家族だと思っています。ですので、皆さんには危険な目に遭って欲しくないというのが本音です。

……ですが、先程の皆さんの意志を聞いた以上、私がやるべき事は皆さんを止めることではなく、皆さんをサポートする事だと思っています。皆さんの家族として、そして皆さんの友人として、出来る限りのサポートを……」

 

 そう言うと、天斗伯父さんは両手の掌を上に向けて開いた。すると、手の中に一つずつ小さな光の珠が現れ、それは徐々に小さな長方形のような形へと変化していった。

 

 これは……お札、か……?

 

 そして天斗伯父さんがそれを掴むと、それが放っていた光は徐々に消えていき、光が完全に消えた時、天斗伯父さんの手には薄い青色のお札と薄い赤色のお札が一枚ずつ握られていた。

 

「コレは……お札、ですよね?」

「はい。薄い青色のお札の方は『浄解(じょうかい)の札』、そして薄い赤色のお札の方は『封壊(ふうかい)の札』と言いまして、どちらも相手をお札の中へ取り込むことで効力を発揮する物です」

「『浄解の札』と『封壊の札』……」

「はい。柚希君の目的を達成するだけならば『浄解の札』だけでも良いのですが、万が一という事もありますので、こちらの『封壊の札』もお預けしますね」

「あ、はい……」

 

 そして俺は天斗伯父さんから『浄解の札』と『封壊の札』の二枚を受け取った。

 

『浄解の札』と『封壊の札』……片方からは浄化の力を感じるし、もう片方からは破壊の力を感じる。つまり、万が一っていうのはやっぱりそういう事だよな……。

 

 俺は天斗伯父さんの言う万が一の事を想像し、その事から二枚のお札を軽く握った。

 

 考えたくはないけど、確かにその可能性だって無くはない。だからこそ、その覚悟もしておかないとな……。

 

 心の中でその覚悟を固めていると、義智が俺達の事を見回しながら声を掛けてきた。

 

「よし……それでは、決行は本日の午後9時頃とする。柚希よ、この事はくれぐれも夕士達には気取られるなよ?」

「ああ、もちろん分かってるさ」

 

 義智に返事をした後、俺は手の中にあるお札をジッと見つめた。

 

『何か』の詳細はまだ分からない。でも……救える奴であるなら、出来る限り救ってやりたい。だから、しっかりとソイツと向き合ってみないといけないな……。

 

 俺はまだ見ぬ『何か』の事を思い、そう強く決心した。

 

 

 

 

 そしてその日の午後9時頃、俺は義智と一緒に件の神社へ向けて気配を殺しつつ、出来る限り誰もいない道を選んで歩いていた。ここまで徹底する必要は無いように思えるかもしれないが、途中で誰かに見つかってしまった場合、誤魔化したりする手間も生まれ、最悪家に連絡されてしまう可能性もあるため、俺達は極力人がいなそうな道を選んで進んでいた。

そして出発してから十数分後、俺達は件の神社へと辿り着いた。

明るい時とは違って、神社全体から不気味な雰囲気が漂っているのに加え、境内の方からは妖気ともう一つ別の力の気配を感じた。

 

 この暗い波動の感じ……どうやら間違いないみたいだな。

 

 俺は義智と頷き合った後、静かに石段を登り始めた。そして石段を上り終え、境内に足を踏み入れた瞬間、風が吹いていないにも関わらず、周囲に植えられている木々がサワサワという音を立て始め、それと同時に空気がピーンと張り詰めた様な気がした。まるで、神社が俺達の事を的と認識し、警戒をし始めたかのように。

 

 ……とりあえず声を掛けてみるか。

 

 俺は周囲に注意を払いながら、境内全体に聞こえるような声で呼び掛けた。

 

「……俺達はお前と戦いに来たんじゃない。とりあえず俺達と話をしてくれないか?」

 

 すると、境内に入る前から感じていた妖気などが突如強くなり、神社の社の陰からフラフラと大きな犬の頭が姿を現した。

 

 ……とりあえず出て来てくれたな。

 

 その事に少しだけ口元を綻ばせた後、俺はフラフラと寄ってきたモノに声を掛けた。

 

「出て来てくれてありがとうな、『犬神』」

「……」

 

 しかし、『犬神』はそれには答えず、俺と義智の事をジッと見つめ始めた。

 

 

『犬神』

 

狐憑きや狐持ちと並ぶ憑き物の一種で、西日本に多く分布している犬霊の憑き物。そして蠱術(こじゅつ)という特定の動物の霊を使役する呪詛(じゅそ)の一種でもあり、その生み出し方はとても凄惨なものである。

犬神に憑かれたものは、胸の痛みなどを訴えるようになる上、嫉妬深い性格になるなど様々な変調を及ぼしてしまう。

 

 

 ……俺の声に答えないのは、恐らく俺達の事を警戒してるからだろう。とりあえず、もう少し話し掛けてみるか。

 

 俺は再び犬神に声を掛けた。

 

「……犬神、俺達と少し話をしないか?」

「……お前達と話を、か。だが……お前達と何を話すというのだ?」

「そうだな……まずは、お前が何故ここにいるのかだ」

「……ほう?」

「お前の本来いるはずの場所は、ここよりもずっと遠い地方のはずだ。なのにお前はここにいる。だからその理由を知りたいんだ」

「……なるほど」

 

 犬神は地の底から響くような低い声で言うと、口で三日月を描くかのようにニイッと笑いながら言葉を続けた。

 

「……お前の言う通り、我は本来この地とは別の地にて、ただの仔犬として生まれた存在だ。しかし……その一匹の犬としての存在はある者によって、脆くも崩れ去ることとなった」

「ある者……」

「ああ。元々、我はとある家の飼い犬として生涯を過ごしていたそして家の者達が我を可愛がる度に我もそれに感謝の意思を示しながら暮らしていた。その頃の我にとって、この暮らしはとても満ち足りたものであり、これ以上の幸福は無いのではないかと考えるほどだった。

……そう、あの時までは」

 

 犬神はそこで一度言葉を切ると、憎しみに満ちた表情を浮かべながら夜空を見上げた。しかし、その犬神の表情にはどこか哀しみの色も混じっているような気がした。

 

 この哀しみは……たぶん……。

 

 俺がその哀しみの意味に気付いた時、犬神は再び自分の過去について話し始めていた。

 

「……我が成犬となり、幾年が過ぎた頃、我が暮らしていた家の周辺に見知らぬ男の姿を見るようになった。他人に自身の姿が見つかっては都合が悪いのか、家の周辺に来る度に男はしきりに周囲を見回していた。

そして周囲に人の姿が無い事を確認すると、我の姿を見てニヤリと笑ってその場を去って行くという事を日々繰り返していた。我はその様子を少々不審には感じていたものの、所詮は取るに足らん事だと考え、あまり深くは考えないようにしていた。

しかし……ある日の夜、その時は我に訪れた」

「……」

「その日、我が静かに寝息を立てていると、何やら周囲から何かを探しているかのような音が聞こえ、我はゆっくりと目を開いた。

そして何事かと思いながら周囲の気配を探っていると、我の目の前に件の男が突如現れ、我の口元に何やら布のようなものを宛がった。

我はこの事をすぐに家の者達に報せるべく、大声で鳴こうとしたのだが、何故か徐々に意識が遠退いていったため、我は力無くその場に倒れ込んだ後、静かに目を閉じた」

「……」

「そして再び目を開けた時、我は何やら小屋のような場所へと閉じ込められていた。小屋の中には一切の灯りも無く、我以外の何者かがいる気配すら無かったため、完全に我一匹のみがここに閉じ込められている事が見て取れた。

そして暗闇に目が慣れてきた頃、我は小屋の中を調べるべく、小屋内の探索を開始した。ところが、小屋の中には食物はおろか、物と呼べるものは一切無く、扉も外側から棒を支えて閉めているらしく、扉が開く様子は一切無かった。

それを知った時、我はここを出ることを一度諦め、何故ここに閉じ込められているのかを考えながら、我をここに閉じ込めたであろうあの男の事を待つことにした。

しかし……待てども待てども男は現れず、我は次第に飢餓や喉の渇きに悩まされる事となった」

「……それで、その男は?」

「……男は来た。しかし、来た時には我は飢餓や喉の渇きによって今にも命が尽きようとしていた。

すると、それを見た男は大層喜び、我が抵抗出来ないことを良い事に、乱暴に我の体躯を持ち上げると、小屋の外へと持ち出した。

そして我の体を小屋の近くへと放ると、用意をしていた道具を用いて穴を掘り始めた。

それから幾分か過ぎた頃、男は穴を掘り終えると、我の体を再び掴み、頭が上に来るようにしながら、我を穴の中へと置いた。

そして再び道具を用いて穴を埋め始めると、我は頭だけを残して地面に埋められる形になった。

我は微かに残った意識の中で、男の考えを読み取ろうと男の顔を窺おうとした。しかし……その瞬間、男は足下に置いていた斧へ手を伸ばすと、斧を静かに振り上げ、そのまま勢い良く我の首を目掛けて振り下ろした」

「……っ!」

 

 生前の犬神の最期を知った瞬間、俺は何とも言えない気持ちになっていたが、犬神はその俺の様子を静かに眺めた後、再び口を開いた。

 

「……地中の体躯から首を切り離された時、我は徐々に意識が途絶えていくのを感じ、そのまま静かに目を閉じた。しかし、いつになっても我に死が訪れる様子は無く、それどころか意識がハッキリし始めたため、我は静かに目を開けた。

すると、男は先程よりも大きく喜びの声を上げ、我の頭をむんずと掴み、頭を風呂敷で包むと、そのままどこかへ向けて歩き始めた。

我は何故己が死していないのかを疑問に思っていたが、それよりも男に対して憎悪の方が明らかに強く、男が歩いている間、我はその男がいるであろう場所を静かに睨みつけていた。そしてそれから数日が過ぎた頃、男はゆっくりと足を止め、風呂敷を静かに解いた。

すると、どうやら着いた時には夜更け頃であったらしく、辺りは暗闇に包まれていたが、周囲に灯りの付いた民家があった事から、ここがどこかの街である事が見て取れた。

男は周囲の様子を窺い、人の姿が無い事を確認すると、我の頭を持ったまま辻道へ向けて歩いた。

そして三度道具を用いて少々浅めの穴を掘ると、我を穴の中へと放り込み、上から土を被せ、完全に我を穴の中へと埋めた。

我は暗闇の中で微かに聞こえる男の足音を聞きつつ、男への憎悪の炎を燃やしていた。

しかし……本当の苦しみはここからだった」

 

 犬神がそこで一度言葉を切った時、俺はポツリと呟くような声で話し掛けた。

 

「……次の日からお前は、自分が埋まっている上を人が踏んでいく音を聴き続けなくてはならなくなった。……そうだよな?」

「……その通りだ。我が地中にいる中、人間達は様々な足音を立てながら歩いているため、我はその雑音にも似た足音を聴き続ける事となった。

そしていつしか、我の憎悪の対象はあの男から全ての人間へと移り、我は静かに人間達の事を恨み続ける事となった。たとえそれが間違ったことだとしても、それだけが我の心や理性を繋ぎ止めていた物だったからだ。

そしてそれから幾日が過ぎ、我の中で何かの力が産声を上げ始めた頃、頭上から穴を掘るような音が聞こえてきた。その力のせいか、我はすぐにあの男が来たのだと気付き、静かに男が我を穴の外へと出す時を待っていた。

そして程なく我の頭が持ち上げられ、穴の外へと出された後、男は我の様子を確認し、ニヤリと笑ってからまたどこかへと持ち去ろうとした。しかし、我はその瞬間、男の手からするりと抜け出し、男の首元にこの牙を突き立てた。

男は咄嗟の事に慌てふためき、近隣の住民を呼ぼうとしたが、我は牙を更に奥まで押し込んだ後、勢い良く口を閉じた。その瞬間、男の顔が痛みと驚愕に歪み、体がグラリと揺れた。そして地面に倒れ伏した後、男の首がゴロリとその場に転がった」

「……」

「我はそれを確認した後、近隣にある空き家に身を潜めた。我が憎む人間達への復讐のため、そしてこの身に宿る妖気と呪力が訴えてくる飢えと渇きを満たすために。その後、我はひたすらに近隣の住民達の命を奪い続けていたが、遂にあの日が訪れる事となった。

ある日、我の前に一人の人間が姿を現した。その人間はどうやら術士であったらしく、我の噂を聞きつけ、封印をせねばなるまいと決意し、我の元を訪れたとの事だった。

話を聞き終えた後、我は恐れを成すことなく、その術士へと襲い掛かった。我の中に沸き立つ憎しみや恨みの感情を以て、彼の者を喰らい尽くすために。しかし……結果として、我はその者に敗北を喫した。

そしてその者は何やら文言を唱えると、我を水瓶の中へと封印した。我は再び訪れた静寂と意識の喪失に身をゆだね、幾年もの間水瓶の中で眠りについていた」

「……ところが、最近あった地震の影響でここにあったその水瓶が割れ、お前がまた目を覚ました、って所か」

「……そうなのだろう。目が覚めた時、周囲には割れた水瓶の破片が転がっていたからな」

 

 そして犬神は俺達の事を再びジッと見つめながら言葉を続けた。

 

「さて、これで我の話は終いだが……おおよそ、お前達の目的は話を聞くだけでは無いのだろう?」

「ああ。犬神、お前の事を救いたいんだ」

「我を……救う、だと……?」

「これは俺の勝手な考えに過ぎないけど、人間への恨みや憎しみに溢れたお前の事を放ってはおけないからな。もちろん、犬神という存在がどういうモノかは理解してるよ。でも……やっぱり恨みや憎しみに満ちているのなんて、哀しいだけだと思うんだ。

だから俺はお前の事を救いたい、お前の中にあるそんな暗いもの達を少しでも減らしてやりたいんだ」

「……ふん、なるほどな。どうやらお前はあの時の人間達とは少々違うようだな」

 

 そこで一度言葉を切った時、犬神は何かを思い付いた様子で再び口を開いた。

 

「ならば、小僧。我と勝負をせんか?」

「勝負……?」

「そうだ。我とお前、先に力が尽きた者が負けとし、敗者の身は勝者の自由となる、といった形でな。どうだ? やる気はあるか? 小僧」

「……当然やってやるさ。そして俺が負けたら、この体を好きに使えば良い。もっとも、俺は負ける気なんて一切無いけどな」

「ふん……ならば、その威勢がいつまで続くか、見せてもらうとしよう……!」

 

 そう言うと、犬神は俺に向かって勢い良く飛んできた。

 

 やっぱりそう来るよな……だったら!

 

 俺は『絆の書』のオルトのページを開き、魔力を通じてオルトに声を掛けた。

 

『オルト! 力を貸してくれ!』

『ワウンッ!』

 

 オルトの返事を聞いた後、俺はオルトのページから漂う魔力と自分の魔力を同調させた。そして、自分の足にオルトの力が宿った事を確認した後、俺はすぐさま横へと避ける事で犬神の突進を躱した。すると、犬神は俺の方を向き、感心した様子で声を掛けてきた。

 

「……どうやら、考えていたよりもやるようだな、小僧」

「……これは俺だけの力じゃないよ」

「……ほう?」

「俺には妖を始めとした様々な種の仲間であり家族である存在がいる。そんな彼らの助力があるからこそ、俺はこうしてお前と対峙できるんだよ」

「……人間と人ならざるモノ達の絆、か……。ならば、その絆とやら……我にしかと見せてみるが良い!」

 

 そして犬神は自分の妖気を使って、周囲の砂利を浮かび上がらせると、勢い良くそれらを俺に向けて撃ち出してきた。

 

 砂利……なら今度は!

 

 俺はオルトとの同調を解いた後、今度はアンのページを開き、魔力を通じてアンに声を掛けた。

 

『アン! 頼んだぞ!』

『はい、任せて下さい!』

 

 返事を聞いた後、俺はアンのページから漂う魔力と自分の魔力を同調させた。そして自分の背中から魔力で作られた大きな翼が生えた事を確認した後、俺は向かってくる砂利へ目掛けて羽根を飛ばした。

羽根は向かってくる砂利を次々と弾いていくと、犬神へ向かって一直線に飛んでいったが、犬神は上へ飛ぶ事でそれを難なく躱すと、ふよふよと浮かびながら俺に声を掛けてきた。

 

「ふん……中々見事な反撃であったぞ? 小僧」

「そりゃどうも。俺だって絶対に負けられないからな」

「そうだろうな。だが……この程度では我の憎しみや恨みが消えることはない!」

「……そうだと思うよ」

「む……?」

 

 犬神の不思議そうな声に俺は静かに答えた。

 

「平和に暮らしていただけなのに、一人の人間の勝手な都合で犬神にされた挙げ句、ここ最近まで封印をされてたんだ。そう簡単にその恨みや憎しみが消えるわけはないさ。だから……全力でぶつけて来いよ、俺達にその恨みや憎しみを! 俺達も全力でそれを受け止めてやるからさ!」

「小僧……」

 

 俺の言葉を聞き、犬神は呟くような声で言った後、フッと笑いながら言葉を続けた。

 

「小僧、お前の名は何だ?」

「俺は遠野柚希、人間でありながら妖や霊獣、そして神様と共に暮らす存在だ」

「……面白い。ならば、我の中に渦巻くこの憎悪、しかと見るが良い!」

 

 そして犬神は自分の中の妖気などを全体に纏うと、さっきとは比べ物にならない速さで俺に向かって飛んできた。

 

 さて……こうなればアイツの出番だな!

 

 俺はアンとの同調を切った後、『絆の書』のヴァイスのページを開き、ヴァイスに声を掛けた。

 

『ヴァイス、行くぞ!』

『ええ、任せて下さい』

 

 そしてヴァイスの魔力と自分の魔力を同調させると、俺の左手に穏やかな光を放つ白い盾が、そして右手には同じように光を放つ白い剣が現れた。

 

 まずはこれで……!

 

 俺は向かってくる犬神に対して盾を構え、そのまま犬神の突進を盾で受け止めた。犬神が纏っていた妖気や呪力、そして積もりに積もった恨みや憎しみのせいか犬神の向かってくる力は想像をしていたよりも強く、少しでも気を抜いてしまったらすぐにでも押し負けてしまいそうな程だった。

 

 ははっ……やっぱり強いな。でも、俺達だってこんなもんじゃない……!

 

 俺は盾を持つ手に力を加え、盾の向きを変える事で犬神の突進を受け流した。そして、すぐさまヴァイスとの同調を切った後、今度は風之真のページを開いた。

 

『風之真、やるぞ!』

『おうよ!』

 

 返事を聞いた後、俺は風之真の妖力と俺の魔力を同調させた。そして、手に風之真の妖力が宿った事を確認し、俺は神社を出来る限り傷付けないようにしながら、風による斬撃を飛ばした。しかし犬神はそれを難なく躱すと、再び俺に向かって一直線に飛んできた。

 

 それじゃあ今度は……!

 

 俺は風之真との同調を切った後、今度は雪花のページを開いた。

 

『雪花、頼むぞ』

『うん、任せてよ!』

 

 雪花の返事を聞いた後、俺は雪花の妖力と俺の魔力を同調させた。そして雪花の妖力を利用して、俺は目の前に俺がすっぽりと隠れる程度の大きさの氷の壁を作り上げた。しかし犬神の波動にはこの氷の壁にぶつかる事への恐怖などは無く、躊躇せずにそのまま氷の壁へと勢い良くぶつかってきた。

そしてその瞬間、壁に大きな亀裂が入り、もう一度ぶつかってきた時には壁はガラガラガラッという音を立てながら無残にも崩れ落ちた。

 

 ふむ……なら今度は……!

 

 俺は雪花との同調を切った後、今度は雷牙のページを開こうとした。しかし、雷牙のページを開いた瞬間、俺は力の使いすぎによるものなのか、微弱な頭痛に襲われた。

 

 くっ……! そろそろマズいか……!?

 

 俺は回復をするために首に掛かっている『ヒーリング・クリスタル』へと手を伸ばそうとした。しかし、手が触れる寸前で俺はその手を止め、『ヒーリング・クリスタル』から静かに手を離した。

 

 ……やっぱり、回復なんてしたら、全力でぶつかってきてくれてる犬神に失礼だよな。

 

 そして俺は再び雷牙のページを開き、魔力を通じて雷牙に声を掛けた。

 

『雷牙、やるぞ』

『……ああ。だが……ムリだけはするなよ、柚希』

『ああ……分かってるよ』

 

 雷牙の言葉に答えた後、俺は雷牙の妖力と俺の魔力を同調させた。そして、雷牙の妖力が体全体に伝わってきた事を確認すると、俺は犬神へ向かって小さな雷を飛ばした。しかし犬神は、それを再びヒラリと躱すと、今度は突進はせずに、俺の事をジッと見ながら話し掛けてきた。

 

「……柚希よ、そろそろ諦めろ」

「……いいや、まだやってやるさ。俺の力はまだ残ってるんだからな」

 

 俺が息を切らしつつニッと笑いながら言うと、犬神は心底理解出来ないといった様子を見せた。

 

「……分からんな。お前が我のようなモノを憐れみ、救おうと考えているのは分かる。しかし、お前がそこまでしようとする必要なぞあるのか? 己の命を削ってまで、我のようなモノを救う必要など本当にあるのか?」

「……あるよ」

「……何だと?」

 

 俺は息を整えた後、犬神の疑問に答えた。

 

「俺は……昔から妖とか幻獣とかみたいな人間とは違うモノ達が大好きでさ、いつも会ってみたいなとか話をしてみたいなとかって考えてたんだ。そしてそれは、転生をした今でも変わらなくて、人間として生活する中で俺は様々なモノ達と出会い、一緒に話をしていった結果、こうして一緒に暮らすようになった」

「……」

「お前はさっき、俺がお前みたいな奴の事を憐れんでるからとか言ってたけど……それは違うよ。俺はお前みたいな奴も含めて人間とは違うモノ達が大好きだから、一緒に何かをやってみたいと思うし、困っている時は力になってやりたいと思うんだ。

だから、そこに『憐れみ』とかは無い。俺の原動力は『大好き』だという気持ちだからな」

「『大好き』だという気持ち……」

 

 犬神が独り言ちるような声で俺の言葉を繰り返していると、さっきまで沈黙を貫いていた義智が不意に犬神へと話し掛けた。

 

「……犬神よ。実際、柚希は様々なモノ達の心に全力でぶつかっている。時には共に笑い、また時には共に悲しむといった風にな」

「義智……」

「そしてそれは柚希自身が言うように、安っぽい憐れみなどの感情から来る物では無い。この柚希という人間は心の底から我らのようなモノを好いているから、そして他人のために全力になることが出来るからなのだ。……お人好しなまでにな」

「……我らのようなモノの為に全力になれる人間、か……」

 

 犬神は義智の言葉を静かに繰り返すと、フッと笑いながら俺達に話し掛けてきた。

 

「柚希、そして義智……と言ったか。この勝負、どうやら我の負けのようだ」

「え……でも、お前にはまだ妖力とかが残って……」

「確かに我にはまだ余力はある。しかし……我にはどうしてもこれ以上お前達を傷付ける事が出来そうに無いのだ。まるで情に(ほだ)されたかのように、な」

「犬神……」

「傷付ける事が出来ぬという事は、勝負を捨てたのと同義だ。よって、この勝負は我の負けという事になろう。柚希よ、約束通り、我の身をお前の好きにするが良い」

「……分かった。それじゃあ、ちょっとこっちに来てくれるか?」

「……承知した」

 

 犬神は静かに答えると、ふよふよと浮かびながら俺へと近付いてきた。そして犬神が目の前まで近づいた時、俺は『浄解の札』を取りだし、お札に残っている力を注ぎ込んだ。

すると、『浄解の札』は優しい光を犬神へ向けて放ち、その光によって犬神の姿が徐々に見えなくなっていった。そして光が消えた時には、犬神の姿も完全に無く、その場には俺と義智の二人だけが残された形となった。

 

 これで……全部終わったのかな……?

 

 俺がその事について義智と話そうとしたその時、再び『浄解の札』が優しい光を放ち始めた。そして、『浄解の札』から小さな光の珠が浮かび上がったかと思うと、光の珠はふよふよと浮かびながらさっきまで犬神がいた場所へと移動した。

 

 これって……もしかして……!

 

俺が小さな期待を抱いていると、光の珠は徐々に変化し、まるで人型を思わせるような形へと変わっていった。そして光が完全に止んだ時、そこにいたのは烏帽子を被り、深い藍色の狩衣を纏った義智と同じくらいの背丈の犬のようなモノが、笏を手にしながら静かに目を閉じながら二本足で立っていた。

そしてその犬のようなモノはゆっくりと目を開くと、周囲を静かに見回した後、俺達に話し掛けてきた。

 

「お前達、これは一体どういう事なのだ……?」

「えっと、俺も正確にはまだ分かってないんだけど……とりあえず、調子とかはどうだ? 『犬神』」

 

 俺がそう訊くと、『犬神』は自分の様子を眺めたりした後、静かな声で答えた。

 

「そうだな……調子自体は非常に良い。そして我の中に渦巻いていたはずの人間達への恨みや憎しみといったものが消えたせいなのか……心がとても安らいだような気がするな」

「……そっか、それなら良かったよ」

 

 犬神の言葉に俺がニッと笑いながら答えたその時、突然軽い目眩に襲われた事で、俺の体はグラリと揺れた。

 

「……っ!」

 

 そして体が倒れると思った次の瞬間、義智がすぐに俺の右手を掴んでくれたため、俺は何とか倒れずにすんだ。

 

「ふぅ……ありがとうな、義智」

「……礼などいらん。しかし……その様子ではだいぶ無理をしていたのでは無いか?」

「……まあ、な」

「……まったく、お前という奴は……」

 

 俺の答えを聞くと、義智は呆れた様子を見せた。そして犬神の方へ体を向けると、静かな声で話し掛けた。

 

「犬神よ。この柚希の状態に気を病むことは無いぞ。此奴は好き好んでこのような無理をするような奴なのだからな」

「しかし……本当に良いのか?」

 

 犬神がまだ心配そうな様子で訊いてきたため、俺はフッと笑いながら答えた。

 

「義智の言う通りだよ、犬神。俺なら大丈夫だから、気にしないでくれ」

「柚希……」

 

 犬神は呟くような声で言った後、俺達の様子を見てフッと笑ってから言葉を続けた。

 

「……まったく、お前という奴は本当に変わった人間だな。我のような憑き物を救おうとするばかりか、自身の事よりも敵対していた我の事を思い、そして我の中に渦巻いていた暗き感情が消えた事を自分の事のように喜ぶ……我が負けたのも、お前のような相手であれば当然といったところか……」

「え、そうかな……?」

「……ああ」

 

 そう頷きながら言う犬神からは、さっきまであったはずの暗い波動は無く、穏やかに澄んだ青色と喜びの黄色の波動だけがあった。

 

 ……ふふ、どうやら頑張ったかいはあったみたいだな。

 

 その事に、俺が静かに喜んでいると、犬神は真剣な表情を浮かべながら話し掛けてきた。

 

「柚希、一つ頼みを聞いてはくれぬか?」

「ん、別に良いけど……何だ?」

「我を……お前達の仲間に加えてはくれぬか?」

「犬神……それは別に良いし、とても嬉しいけど……本当に良いのか?」

「……うむ、本来であれば、元の主の元へと馳せ参じるべきなのだが、我がいた時間(とき)は既に遙か彼方へと過ぎ去った。それであれば、お前達と共に今の人間達の様子を見てみたいと感じたのだ」

「犬神……」

 

 俺は小さく呟くような声で言った後、ニカッと笑いながら言葉を続けた。

 

「分かった。それじゃあ……これからよろしくな、いぬが──」

 

 その時、俺はある事に気付き、その事について犬神に訊いてみる事にした。

 

「そういえば……飼われてた時の名前とかって覚えてるか?」

「……いや、このようなモノとなった時、我は飼い主より授かった名を捨ててしまった。つまり、現在(いま)は名も無き妖が一体という事になるだろう」

「そっか……」

 

 犬神の答えを聞いて、俺がどうしたものかと思っていると、義智が静かな声で俺に話し掛けてきた。

 

「……ならば、柚希が名を付ければ良いのではないか?」

「俺が、か……?」

「うむ。『絆の書』の仲間の内、何名かは柚希が名を付けており、全員がその名をとても気に入っているからな」

「確かにそうだけど……犬神はそれでも良いのか?」

「……うむ。柚希が付けた名であれば、とても良い名になると思っているからな」

「あはは……期待に答えられるように精一杯頑張ってみるよ」

 

 そして俺は犬神の名前について考え始めた。

 

 さて……今回はどうしようかな。今のコイツはオルトや雷牙と同じ犬系統の妖だし、突進してきた時の牙が印象的だから『牙』の文字は入れておきたい。後はその前か後に入れる文字だけど……。

 

 その時、俺はさっき見た犬神の波動の事を思い出した。

 

 ……なら、入れる文字はこっちの方が良さそうかな。

 

 そして俺は名前を決め終えた後、犬神に声を掛けた。

 

「犬神、一応名前は思い付いたから、聞いてもらっても良いか?」

「うむ、もちろんだ。して……その名とは何なのだ?」

「それはな……『蒼牙(そうが)』だよ」

「ふむ……『蒼牙』か。響きなどは良いと思うが、由来などはあるのか?」

「ん……まあ、一応な。まず『牙』からだけど、これはウチの雷獣の雷牙と同じく犬や狼系統の特徴である牙から、そしてさっきの勝負の時のお前の鋭い牙が少し印象に残ってたからだな。

それで『蒼』だけど……これは今のお前の波動に見えた色の内の1つ、静寂とか心の平穏を示す『青色』からだな。因みに『青』の字が『蒼』なのは、こっちの方がお前に合ってそうだと思ったからだよ」

「ふむ……なるほどな。確かに今の我は、今までに無い程に心の平穏を感じている。今までに内包していた呪力や恨みや憎しみなどから解放され、新たな我として生まれ変わることが出来たからな」

「ふふっ……そっか。それで、この名前──『蒼牙』は気に入ってくれたか?」

 

 俺が微笑みながら訊くと、犬神は静かにフッと笑いながら答えた。

 

「……愚問だな。先程聞いたような思いの籠もった名だ、気に入らんわけが無かろう?」

「そっか……さてと、それじゃあ改めて……」

 

 俺はニッと笑いつつ、右手を差し出しながら言葉を続けた。

 

「これからよろしくな、蒼牙」

「うむ、よろしく頼むぞ、柚希、義智」

「うむ」

 

 俺は蒼牙と握手を交わした後、改めて俺達の事や『絆の書』の事について蒼牙に話をした。そして話を終えると、蒼牙はとても興味深そうな様子を見せた。

 

「……なるほど、そのような仕組みとなっていたのか……」

「まあ、そうだな。さてと……それじゃあ早速頼んで良いか?」

「うむ」

 

 蒼牙の返事を聞いた後、俺は『絆の書』を義智に差し出した。義智は静かに頷くと、俺から『絆の書』を受け取り、空白のページをゆっくりと開いた。そしてそこに蒼牙の手が静かに置かれた後、俺は左手で『ヒーリング・クリスタル』を握り、右手を『絆の書』へと置いた後、少しだけ残っている魔力を流し込むイメージを頭の中に浮かべ始めた。

そして、いつものように体の奥にある魔力が腕を伝って、手のひらの中心にある穴から空白のページへ向かって流れ込むイメージが無事に浮かんだものの、やはり今使える魔力量が少ないせいか、始めの頃のように体に少々辛さを感じ始めた。

 

 くっ……でも、ここで倒れるわけにはいかない……!

 

 そして必要な量が流れ込んだ瞬間、俺の体が再びグラリと揺れ、その場に倒れ込みそうになったが、踏ん張ることでそれを耐えたため、どうにか倒れずに済んだ。

 

 ふぅ……どうにかなったな。

 

 額の汗を左手でそっと拭った後、俺は『絆の書』へと視線を向けた。するとそこには、和室の中で真剣な表情を浮かべながら正座をしている蒼牙の姿と犬神についての詳細が書かれた文章が浮かび上がっていた。

 

 うん……無事に成功したみたいだな。

 

 その事に安堵し、俺が蒼牙を呼び出そうと再び『絆の書』に魔力を注ぎ込もうとしたその時、義智が静かな声で制止した。

 

「柚希、止めておけ。今のお前の魔力量で呼び出そうものならば、家に着くまでに力尽きてしまうぞ」

「あ……それもそっか」

 

 その瞬間、俺はいつもよりも疲れを感じている事を思い出した。

 

 ……確かにここで力尽きるのは流石にマズいかもしれないな。仕方ない……蒼牙を呼ぶのはまた後でにしよう。

 

 少しだけ残念に思いながらも、『絆の書』を義智から受け取ってバッグへしまった後、俺は義智に声を掛けた。

 

「よし……それじゃあ行こうぜ、義智」

「……うむ」

 

 そして俺達は再び人のいない道を選びながら家へと戻った。家に着いた後、俺は静かにドアを開けた。すると、そこには天斗伯父さんが少し心配そうな表情を浮かべて立っていた。しかし、俺達が帰ってきた事を確認すると、天斗伯父さんはホッとした様子を見せた後、いつものような穏やかな笑みを浮かべた。

 

「お帰りなさい、柚希君、義智さん」

「……はい! ただ今戻りました、天斗伯父さん!」

「……うむ、戻ったぞ、シフル」

 

 その後、俺達は天斗伯父さんが作ってくれた夜食を食べながらさっきあった出来事について話した。そして魔力が回復した後、俺は蒼牙と風之真達を『絆の書』から呼び出し、しっかりと蒼牙の事を皆に紹介した。

蒼牙は敵意を向けていた事に対して、申し訳なさそうな様子を見せていたものの、風之真達という元気三兄妹や他の皆と触れあっていく中で徐々にその表情は柔らかくなり、最後にはとても穏やかな表情を浮かべていた。

 

 ……蒼牙の事を救う事が出来て、本当に良かった……。

 

 その蒼牙の様子を見て、俺は静かにそう思った。

 

 

 

 

 翌日、外で遊ぶために俺達が公園に向かっていた時、長谷がふと何かを思い出したように声を上げた。

 

「そういえば……昨日、親父が怪談を話していただろ?」

「ん、そうだな」

「けど、それがどうかしたのか?」

 

 俺達が不思議そうに訊くと、長谷は少し興味深そうな様子で話を始めた。

 

「実はな……親父に話をしてくれた人が昨日の夜にまた不思議な物を見たらしいんだ」

「不思議な物、ねぇ……」

「それで、その不思議な物って何なんだ?」

「……何でも、昨日の夜に件の神社の近くを通り掛かったら、神社の上の方に向けて飛んでいく雷とか空をひらりひらりと飛ぶ丸い物を見たらしくてな……」

「へぇ……上の方に向けて飛んでいく雷とか空をひらりひらりと飛ぶ丸い物、か……」

 

 夕士が不思議そうに呟く中、俺はその話の内容に少しだけ冷や汗をかいていた。

 

 ……完全に昨日の俺達の事だよな、これ……。

 

 俺は徐々に強くなっていく心臓の鼓動を感じながら、長谷に話し掛けた。

 

「……それで、その人はどうしたんだ?」

「ん……今回もそれが怖くてすぐに逃げ出したらしいぜ?」

「へ、へぇ……そうなのか」

 

 長谷の言葉を聞き、俺はそっと胸を撫で下ろした。

 

 ……うん、今回みたいな事をする時は、ちゃんと気を付けてやらないとな……。

 

 夕士達と一緒に歩きながら、俺は静かにそう思った。




政実「第11話、いかがでしたでしょうか」
柚希「今回は……『妖怪アパートの幽雅な日常』というよりは、『地獄堂霊界通信』の方に近い話になったな」
政実「うん……書いてる内にちょっとだけバトル描写みたいなのを入れたいなと思ってたら、こんな感じになっちゃって……」
柚希「なるほどな。そして最後に、この作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「よし、それじゃあそろそろ締めていこうか」
柚希「そうだな」
政実・柚希「それでは、また次回」
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