転生者の幽雅な日常   作:九戸政景

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政実「どうも、呪術にも興味がある片倉政実です」
蒼牙「犬神の蒼牙だ」
政実「という事で、今回は蒼牙のAFTER STORYです」
蒼牙「サブタイトルを見るに今回も風之真やこころ達のような話になるようだな」
政実「さて、それについては呼んでもらってからのお楽しみという事で」
蒼牙「わかった。では、早速始めていくとしよう」
政実「うん」
政実・蒼牙「それでは、ELEVENTH AFTER STORYをどうぞ」


ELEVENTH AFTER STORY 迷える犬神と一つの光

「……平和、だな」

 

 静かな夏の夜、我は世話になっている遠野家の和室の縁側に座りながらそう独り言ちた。その言葉通り、近隣からは虫の鳴き声以外の音は何も聞こえず、その静けさは我の心に安らぎをもたらしていた。

 

「……うむ、実に心地良いな。先週までの我であれば考えられない程に心が安らいでいる。これも全て柚希達に出会い、我の中にあった憎しみや恨みを無くしてもらったおかげだ」

 

 そう独り言ちながら、我は柚希達との出会いなどについて想起した。

 遥か昔、ただの犬であった我は一人の男の暗い企みによって憑き物の一種である犬神へと変わった。

 そして、それによって我の中には呪力や妖力の他に人間に対しての恨みや憎しみが芽生え、それに突き動かされる形で人間達の命を奪い続けていたところ、とある術者によって我は封印され、長い間眠り続けていた。

 しかし、地震によって我が封印されていた水瓶が割れ、眠りから目覚めた我の話を聞いた柚希は仲間達と共に我の元を訪れ、あろうことか我を救いたいと言い始めたのだった。

 そして、当時の人間達とは違う考えを持つ柚希に我は興味を抱き、我は柚希に敗者は勝者の好きなようになるという取り決めをした上で勝負を挑んだ。

 その結果、柚希と仲間達との強い絆と我々のような人ならざるモノを愛する柚希の想いの前に我は敗北を悟り、自ら負けを認めた。

 その後、柚希が天斗から預かっていた『浄解(じょうかい)の札』の力によって、我の中にあった憎しみや恨みは浄化され、それと同時に身体が再構築された事でただの憑き物から一体の妖として我は生まれ変わる事が出来た。

 そして、現代(いま)の人間達の姿を柚希達と見たいと思い、柚希に仲間入りを志願し、それを受け入れてもらえた事で我は『絆の書』の仲間入りを果たしたのだった。

 

「……敵であった我を快く受け入れ、こうして仲間として接してくれる皆には感謝をしてもしきれないな。だからこそ、皆に何か報いたいところだが……さて、どうしたら良いものか……」

 

 飼い犬だった頃、我の主人だった人間が短歌を(たしな)んでいた事から、我も短歌を読む事は出来るが、それを用いての感謝というのは何か違う気がする。

 となれば、他の手段という事になるが、いくら考えてもそれらしい手段というのが我にはまったく思いつかなかった。

 

 ……柚希達はそんな事をしなくても良いと言うだろうが、やはりそれでは我の気が済まない。だが、思いつかないとなると……。

 

「……少しその辺を歩いてみるか」

 

 散歩をする事で何かを思いつくというわけでは無いが、このままただ考えるよりは気分転換をしながらの方が名案が思いつくと考え、我はゆっくりとその場に立ち上がった。

 そして、和室を出てから玄関に向かって廊下を歩いていると、その途中で風之真を頭に乗せながら楽しそうに話をする柚希と出会った。

 

「……お前達か」

「お、蒼牙」

「何やら楽しそうに話していたが、何を話していたのだ?」

「へへ、この先どんな奴が仲間になっていくんだろうなって話してたんだ。ほら、ここには俺やこころみてぇな妖から義智の旦那みてぇな瑞獣まで色んな奴がいるだろ?」

「そうだな」

「となると、この先も俺達が予想をしていねぇような奴が仲間になるかもしれねぇ。そう考えたらなんだかワクワクしてこねぇかぃ?」

「……たしかにな」

 

 ……風之真の言う通り、この先どのようなモノが仲間になっていくかはわからん。柚希自身が持つ『(えにし)』が特殊なのもそうだが、我のようなモノを救おうとする柚希の性格上、我と同じように何か理由があって自身と敵対していたモノや過去に哀しい出来事があったモノをも救おうとするのは想像に(かた)くないからな。

 

 風之真の言葉からそんな事を考えていると、柚希は少し不思議そうな顔をしながら首を傾げた。

 

「ところで……蒼牙、何か悩んでないか?」

「……何故だ?」

「お前の波動が少し乱れてるし、そんな感じの色をしてるからな」

「そうか……まあ、たしかに思案している事はあるが、大した事ではない。よって、お前達は気にしなくても良いぞ」

「そっか。でも、何かあったらいつでも俺達を頼ってくれて良いからな」

「そうだぜ、蒼牙の旦那。困ってたら助け合うのが仲間って奴だからな」

「……ああ、その時はそうさせてもらう。さて、我は少し外を歩いてくる。遅くならぬ内に戻ってくる故、心配はいらんぞ」

「わかった。車とかには気をつけて行ってこいよ」

「ああ、ではな」

 

 そう言って柚希達と別れた後、我はそのまま玄関へと向かい、玄関先に置かれた草履を履いてから外へと出た。そして、念のために妖力を身に纏って姿を消した後、特に目的地を定めずに我は夜の街を歩き始めた。

 

「…………」

 

 街中を歩く事数分、和室で考え事をしていた時と同様に辺りからは虫の鳴き声以外の音は聞こえず、人間や野良犬などともすれ違う事は無かった。

 

 ……この静けさ、考え事をするにはピッタリだが、遠野家の賑やかさに慣れてくると、少し物足りなさを感じるな。それだけ、我があの環境に馴染んできているという事なのだろうが、特に苦労せずに馴染めているのは、やはり柚希達の存在があるからだ。

 柚希達は相手の気持ちによく気がつく上、相手が悩みを抱えていても先程のように無理に関わってくる事はない。しかし、相談をされればしっかりとその悩みに関わり、自分なりの考えは話すが、明確な答えになるような事は言わない。それは自分自身で答えを出すという事の大切さを知っているからだ。

 答えを知っている他人からそれを聞くのは簡単だが、それでは自分自身が成長をする機会を失う事にも繋がる。だから、柚希達はその状況に応じた形で相手を支え、相手が自分自身で答えを出せるようにする。そして、悩みが解決出来たら、まるで自分の事のように共に喜ぶ。それが柚希達のやり方なのだ。

 

「……ふ、だからこそ我は奴らと歩みたいと思えたのだろうな。一体の妖としてただ生きていくのではなく、異なる種族同士でありながら手を取り合う奴らと共に歩む事がこれからの我にとって大切な事だからな」

 

 柚希達が笑みを浮かべながら共に協力をする姿を思い浮かべ、心の奥がぽかぽかとしていくのを感じながら歩き続けていたその時、ふとある場所まで来ていた事に気づいた。

 

「ここは……あの神社か」

 

 そこは我が封印されていた水瓶が置かれ、柚希達と戦いを行った神社だった。

 

「……特に目的地を定めずに歩いていたつもりだったが……まさかここに辿り着くとはな。せっかくだ。少しだけ境内を歩いていくか」

 

 そう独り言ちた後、我はゆっくりと石段を上っていった。そして境内に着いた後、吹いてくる風を感じながら静かに目を閉じた。

 

「……静かだな。まあ、場所や刻限を考えれば当然ではあるが、この神社も時には賑わいを見せるのかもしれんな」

 

 そしてその時には、皆と共に心地の良い一時を過ごしたいものだな。

 

 境内を見回しながらそんな事を考えていたその時、突然コツコツと誰かが石段を上がってくる音が聞こえてきた。

 

「……我が言うのもあれだが、こんな刻限に一体誰が……まあ、とりあえず姿を隠したままで良いか」

 

 何者かが近付いてくるのを姿を隠したままで待っていると、我の視界にふと一人の少年の姿が入ってきた。

 

「……あれは柚希の友垣の……稲葉夕士、といったか。どうやら一人のようだが……ここに一体何の用だ?」

 

 夕士がここにいる理由について疑問を抱きながらその様子を見守っていると、夕士は境内を注意深く見回しながらポツリと独り言ちた。

 

「……例の犬のようなモノが出たっていうのはここだよな……。そういうのに詳しそうな柚希に聞いてもそれが何かはわからなかったから、気になって来てはみたけど、やっぱり夜の神社って雰囲気あるな……」

 

 その夕士の言葉を聞き、我は納得をしながら頷いた。

 

 なるほど……我の噂を聞いてその真偽を確かめに来たのか。力を持たぬ人間の小童(こわっぱ)にしては中々勇敢だが、このままでは他の妖や浮遊霊が近付き、ちょっかいを掛け始める恐れがあるな。

 仕方ない。ここはとりあえず声をかけ、早々に帰るように促すとするか。

 

 そう考えた後、我は夕士の後ろに移動し、姿を表しながら声をかけた。

 

「……そこの(わらべ)

「え──って、服を着た犬が立ってる!?」

「……その言い方では普通の犬が立っているだけにも聞こえるが……まあ良い。悪い事は言わん。早々にこの場を立ち去った方が良い。今は特に気配を感じないが、お前のような力を持たぬ人間が不用心に出歩いていると、興味を持った妖や霊などに近寄られるぞ」

「……お前みたいな奴に……か?」

「……まあ、似たような物か。だが、我は少し気分を変えようと思い、この辺まで歩いてきたところ、お前を見かけて声をかけただけだ。よって、お前に危害を加えるつもりなどはない」

「……つまり、俺を心配して声をかけてくれたのか?」

「そんなところだ」

「そっか……わざわざありがとうな」

「礼など必要ない。しかし……我の姿を見てもお前は怖がらぬのだな……?」

 

 夕士があまりに平然とした様子で話すのに対して少し驚いていると、夕士はにっと笑いながらそれに答えた。

 

「怖がる理由が無いからな。たしかに見た目は中々インパクトがあるけど、こうしてわざわざ声をかけてくれた奴を怖がるわけが無いさ。それに、妖怪にはもっと見た目がスゴい奴だっているしな」

「……違いないな。それに比べれば、たしかに我はまだマシな方か」

「へへ、だろ? それで、お前は何の妖怪なんだ? 見た目的には、犬の妖怪みたいだけど……」

「我は犬神。名は蒼牙という」

 

 我が自己紹介をすると、夕士は少し不思議そうな顔をした。

 

「犬神……それってたしか、妖怪というかは憑き物の一種だったような……」

「……流石は柚希の友垣だな。たしかに以前の我はそういったモノであったが、ある事情があって今は妖の一体として生きているのだ」

「なるほど……って、柚希を知ってるのか?」

「ああ、柚希は我の恩人であり友人だからな。だが、この事を柚希は周囲に知られたいとは思っていない。よって、我がこの事を話した事などは柚希にも他の者にも内密にしてくれると助かる」

「ああ、もちろん良いぜ。それにしても……柚希が犬神と友達だったなんてな。まあ、柚希は妖怪や神獣みたいな人間じゃないモノ達が好きだから、知り合えば友達にはなりたがるだろうし、納得ではあるかな」

「……我は柚希と知り合ってからまだ日は浅いが、柚希の人ならざるモノ達への想いや知識の深さについては素直に感心している。我がまだ憑き物であった時も柚希は犬神がどのようなモノであるかを知った上で己の命を賭してでも我を救おうとしてくれた。

 柚希がいなければ、今でも我はこの神社をさ迷い、人間達に対して憎しみと恨みを募らせていただろうな」

「って事は……長谷の親父さんが聞いた話に出てきたのは憑き物の頃の蒼牙だったんだな」

「そういう事だ。さて、お前が知りたがっていたモノの正体は判明した。これ以上遅くならぬ内に家に帰っておけ」

 

 そう言いながら夕士から視線を外したその時、「……なあ」と夕士が声をかけてきた。

 

「……なんだ?」

「俺の気のせいなら良いんだけどさ。蒼牙、お前って何か悩みを抱えてないか?」

「何故そう思った?」

「これといった理由は無いんだけど……なんとなくそう感じたんだ。何か俺達に相談をしてくる前の柚希もそうなんだけどさ、今の蒼牙からは悩みを抱えてる奴特有の雰囲気を感じるっていうか……」

「特有の雰囲気、か……」

 

 ……この(よわい)でそんな物を感じ取れるとはな。なるほど、柚希が信頼を置くわけだ。

 

「……たしかに我はある事についての答えを探している。考え始めたのはここ最近の事ではあるが、中々答えを見つけられずにいるな」

「やっぱりか……でも、柚希には相談出来ないのか?」

「……その内容が柚希に関する事だからな。それに柚希の性格上、話したところでそんな事を考えなくても良いと言われるだろう。我が悩んでいるのは、いかに柚希に対して恩を返すかなのだからな」

「恩返しの方法……そういえば、さっき柚希の事を恩人だって言ってたな。蒼牙の事をどう救ったかは聞かないけど、たしかに柚希ならそう言うよな。別に恩なんて返さなくても良いとか自分がやりたいからやった事で恩義を感じる必要なんて無いとかさ」

「ああ。だが、柚希との出会いが無ければ、今の我が無いのはたしかだ。だから、その恩を返す方法を考えているのだが、どうにも思いつかぬのだ」

「そっか……」

 

 夕士は腕を軽く組みながら少し顔を俯かせつつ考え事を始めた。その様子を見て、我はふぅと息をついてから夕士に話しかけた。

 

「夕士、お前は考えなくても良いのだぞ。これはあくまでも我の問題なのだからな」

「……たしかにそうかもしれない。でも、さ。こうして出会って悩みを抱えてるのがわかった以上、俺は蒼牙を放ってはおけないよ」

「……何故だ。何故、柚希にしてもお前にしても自分には関係無いはずの相手のためにそこまで一生懸命になれる? そうする事で得られる物は何も無いかもしれぬのだぞ?」

「……助けたいと思ったからだよ」

「なに?」

 

 夕士の言葉に対して疑問の声を上げると、夕士は顔を上げながらどこか大人びた真剣な表情を浮かべた。

 

「俺には長谷のような明晰な頭脳も要領の良さも無いし、柚希みたいな深い知識も勘の良さも無い。その上、人生経験も少ないちっぽけな存在だよ。でも、困ってる相手を助けたいという気持ちだけは長谷や柚希にも負けないと思ってる」

「夕士……」

「たしかに俺が助けたところで何も得られないかもしれない。それどころか助けた相手から恩を仇で返される事だってあるかもしれないさ。でも、たとえそうだとしても俺は手が届くはずの相手を放ってなんておきたくない。

 俺なんかの助けでも必要としてくれる人は必ずいるはずだからな。そんな人を放っておいて後から後悔したり相手の哀しむ顔を想像するなんてまっぴらごめんだ」

「…………」

「きっと、柚希だって同じ気持ちだったと思う。お前が人間じゃない存在だったから柚希は助けようと思ったわけじゃない。たしかに柚希は妖怪や神獣みたいな人じゃないモノが大好きだから、その想いを抱きながらお前を救いたいとは感じたろうけど、その時の柚希は決してそれだけでお前を救おうとはしてなかったはすだ。柚希の言動の根底には、いつだって誰かを助けたいという純粋な気持ちがあるんだからな。

 たとえ相手が人間であろうと無かろうと柚希は自分の手が届く相手であるなら、全身全霊で手を差しのべる。もちろん、相手の状況なんかを見ながら色々な判断を下したりはするだろうけど、柚希は決して誰かを(ないがし)ろなんてしない。柚希はそういう奴だからな」

「夕士……」

 

 ……たしかにそうだ。この境内で我らが戦った時、柚希は我が内に秘める憎しみや恨みを全力で受け止めようとした。現時点の自分では手に余るであろう我を全力で救おうとしてくれた。だが、そこには我に対しての憐れみは一切無く、ただ我を助けたいという気持ちがあった。

 だから、『絆の書』の仲間達もそれに全力で応え、義智も少し呆れながらも戦いの際に柚希を見守ったり柚希について我に説いたりした。それは柚希が相手の気持ちに寄り添い、全力で助けてきたからこそなのだ。

 

「……まあ、柚希なら手が届く相手でも手が届かない相手でも助けたいと思ったら全力で臨みそうだけどな」

「……ふ、そうだな。本来、柚希だけでは我を救うには少々力不足だった。だが、それでも柚希は決して諦めなかった。どんなに疲れ果てようとどんなに我が言葉を掛けようとも柚希はその真っ直ぐな目を向けてきた。

 その時点で我はもう救われていたのかもしれんな。出会って間もないただ話に聞いただけの我を救おうとした柚希の裏表の無い気持ちのお陰でな」

「蒼牙……へへ、俺もそうだよ。入学式の日、柚希が持ってた『絆の書』がきっかけで俺と柚希は出会って、これまで色々な場面で俺は柚希に助けられてきた。そしてその恩は、決して返しきれる量じゃない。だから、俺は決めたんだ」

「ほう、何をだ?」

「柚希が困っていたり、何か迷っていたりした事があったら、今度は俺が柚希を助けるってな。そして、何があっても俺は柚希の事を見放さないし、何か間違った判断をしようとしていたら、それを全力で正す。

 これが俺なりの柚希への恩の返し方であり、友達としてのやり方だよ」

「……なるほどな」

 

 迷いの無い真っ直ぐな目を向けてくる夕士の姿がどこか柚希と重なり、その姿に頼もしさを感じた後、我は頭上に静かに浮かぶ青白い月を見上げた。

 

「お前のような友を持って柚希も幸せだな」

「そ、そうかな……」

「ああ。先程、お前は自分には明晰な頭脳も要領の良さも深い知識も勘の良さも無いと言っていたが、お前にはその思いやりの強さがある。その点は誇っても良いと我は思うぞ、夕士」

「蒼牙……へへ、ありがとうな」

「礼などいらん。むしろ、礼を言うのはこちらの方だからな」

「え……?」

 

 夕士が不思議そうな声を上げる中、我は夕士を真っ直ぐに見ながら口を開いた。

 

「お前のお陰で柚希に対してしてやるべき事が定まったのだ。まあ、お前と同じで柚希の傍にいながら我が持つ知識を用いて奴を支えるというだけなのだがな」

「……たとえそれだけでも柚希にとっては嬉しいと思う。柚希は結構自分よりも他人を優先しちゃうとこがあるから、自分の事を考えてくれる相手が一人増えるだけで助かるはずだぜ。それに、自分の大好きな相手が傍にいてくれるのは、誰だって嬉しいからな」

「……そうだな。夕士、我に道を示してくれた事、心から感謝するぞ」

「どういたしまして。でも、これくらい当然だよ。友達が困ってたら助けたくなるもんだからな」

「……出会ってまだ間もない我を友と呼ぶか。まったく……お前といい柚希といいお前達は本当に変わっているな」

「ふふ、そうかもな」

「だが……そう言われるのも悪くはない。我らが出会う機会は少ないかもしれないが、お前のような友人がいれば、楽しい日々を過ごせるだろうからな」

「そう言ってもらえて嬉しいよ」

 

 夕士はにこりと笑いながら言った後、石段の方へゆっくりと顔を向けた。

 

「さて……それじゃあそろそろ帰ろうかな。このまま蒼牙と話していたいけど、流石にこれ以上は怒られそうだし」

「それが良いだろうが、この夜道をお前一人で歩くのは流石に危険だ。よって、我が送り届けてやろう」

「え、良いのか?」

「ああ、お前には我の悩みを聞いてもらったからな。その礼みたいなものだ」

「そっか……へへ、蒼牙、ありがとうな」

「どういたしまして。では、行くぞ」

「おう!」

 

 夕士が返事をした後、我は夕士と共に歩き始め、そのまま神社を後にした。そして、話をしながら歩き続けること十数分、一軒の家が見えてくると、夕士は嬉しそうな笑みを浮かべた。

 

「あ、見えたぜ。あそこが俺の家だ」

「そうか。では、早く帰って親を安心させてやれ」

「ああ。蒼牙、送ってくれてありがとうな」

「礼には及ばん。我がやりたいからやった事なのだからな」

「……ふふ、そっか。よし……それじゃあ、またな、蒼牙」

「……ああ、またな」

 

 手を振ってから夕士が家に向かって歩いていき、家の中へ入っていったのを見送った後、我は安心感を覚えながら遠野家へ向かって歩き始めた。そして、歩き始めてから数分が経った頃、我がふと夜空に浮かぶ月に目を向けていると、「……あ、いた」という声が聞こえ、我がそちらに視線を向けると、そこには兎和(とわ)を抱き抱え、両肩に風之真と黒烏を乗せながらにこにこと笑う柚希の姿があった。

 

「お前達……もしや、我を探しに来たのか?」

「ああ。義智は心配しなくても良いって言ってたんだけど、思っていたよりも遅かったからさ」

「それに、出掛ける前に何か悩みを抱えてる様子だったから、ちょいと心配になったんだ。んで、俺と柚希の旦那が一緒に出ようとした時に蒼牙の旦那の事を心配してた兎和と黒烏もついてくるって言うもんで一緒に来たんだ」

「そうだったのか。皆、わざわざ迎えに来てくれて感謝する」

「どういたしまして。さあ、早く帰ろうぜ」

「ああ」

 

 そして、柚希達と一緒に歩き始め、数分が経った頃、兎和が我に声をかけてきた。

 

「あの……蒼牙さん」

「む、なんだ?」

「少し晴れやかなお顔をされているようですが、お悩みは解決できたんですか?」

「……なんとかな。だが、ある奴との出会いがあったからこそ解決出来たのだがな」

「ある奴……ですか?」

「ああ。ただの人間ではあるが、我に対しても怖じ気づかずに接する事が出来、悩みを抱えると知ればまるで自分の事のように共に考えてくれるような奴だ」

「へえ……なんだか柚希の旦那みてぇな奴なんだな」

「そうだな。それで、その礼として家まで送り届けた帰りにお前達と会ったわけだ」

「なるほどな。それじゃあ次にその人に会う機会があったら、俺からもお礼をしないとな」

 

 柚希が楽しそうに言う中、我はそんな柚希を見ながら声をかけた。

 

「柚希」

「ん、何だ?」

「我を救ってくれた件、改めて礼を言う。本当にありがとう」

「……お礼なんて良いよ。俺がやりたくてやった事だからさ。それに、哀しい思いをしている奴がいるってわかったら、放ってはおけないよ」

「……そうか。ならば、我も心からお前達の支援を“やりたいから”やらせてもらうとしよう。もっとも、その状況によっては静観をさせてもらうがな」

「……ああ、それでも別に良いよ。何でもかんでも手伝ってもらう事にしたら、俺自身が成長出来ないからな」

「……そうだな」

 

 我らの主は大切な事をしっかりとわかっている。だが、それでも判断を誤る時はあるだろう。だからこそ、その時には我らが柚希の支えとなり、正しき道を共に見つけ出すべきだ。柚希自身がいつもそうしているようにな。

 

「……皆」

「ん……」

「なんでぃ、蒼牙の旦那?」

「……改めてこれからよろしく頼む」

 

 その言葉に皆が笑みを浮かべながら頷いた後、我らは様々な話をしながら我らの帰るべき家に向かって歩いていった。




政実「ELEVENTH AFTER STORY、いかがでしたでしょうか」
蒼牙「鈴音が金ヶ崎雫と絆を結んだように我は夕士と絆を結んだわけだが、この先のAFTER STORYでも長谷や雪村と絆を結ぶモノが出てくるのか?」
政実「一応、そのつもりだよ。まあ、誰にするかはまだ未定だけどね」
蒼牙「そうか。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価なども待っているため、書いてもらえると助かる。よろしく頼むぞ」
政実「さてと、それじゃあそろそろ締めていこうか」
蒼牙「ああ」
政実・蒼牙「それでは、また次回」
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