転生者の幽雅な日常   作:九戸政景

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政実「どうも、落ち葉の上を歩く音が好きな片倉政実です」
智虎「どうも、白虎の智虎です」
政実「という事で、今回は智虎のAFTER STORYです」
智虎「今回は僕なんですね。それにしても、どんな話になるのかなぁ……」
政実「それは読んでからのお楽しみという事で」
智虎「わかりました。さて……それじゃあ早速始めていきましょうか」
政実「うん」
政実・智虎「それでは、TWELVETH AFTER STORYをどうぞ」


TWELVETH AFTER STORY 迷える白虎と導きの風

 涼しげだった風が徐々にその冷たさを増し始めた秋のある日、お世話になっている遠野家のリビングで僕はソファーの足元で丸くなりながらのんびりとしていた。

リビングには僕の他にも転生者であり神様の甥でもある柚希さんと神様である天斗さんがソファーに座りながら楽しそうに話をしていたが、柚希さんの肩には鎌鼬の風之真さんと夜雀の鈴音さんが、柚希さんの膝の上にはオルトロスのオルト君と因幡の白兎の兎和ちゃんと八咫烏の黒烏君が乗っており、とても落ち着いた様子で柚希さん達の話を聞いていた。

 

 ……さっきから思ってたけど、柚希さんは重くないのかな? 天斗さんと楽しそうに話してるから、風之真さん達が乗ってる事自体はあまり気になってないようだけど……。

 

 端から見たらだいぶ重そうに見える柚希さんの姿に少し心配になりながら顔を上げて見ていると、僕の視線に気づいた柚希さんが微笑みながら話しかけてきた。

 

「智虎、どうかしたか?」

「あ……いえ、風之真さん達が乗っていて重くないのかなと思って……」

「うーん……まあ、重くないわけじゃないけど、いつもの事だし、こうやって一緒にいる事で皆の成長も感じられるから、俺はこうしてるのは好きだな」

「そうなんですね……」

「智虎もこっちに来るか? まだ膝にはスペースがあるから、乗せる事は出来るぞ?」

「あ、えっと……僕は大丈夫です。お誘いは嬉しいですけど、これ以上は流石に柚希さんの負担になってしまいますから」

「そっか。まあ、そうしたくなったらいつでも言えよ?」

「はい」

 

 微笑みながら言う柚希さんの言葉に頷きながら答えた後、柚希さんは風之真さん達とも話し始め、僕は再び丸くなりながらそんな皆さんの様子を眺めた。

本当の事を言えば、僕も柚希さんの膝の上には少し乗ってみたかったし、話にも混ざってみたいと思っていた。

けど、僕まで乗ってしまったら、本当に柚希さんの負担になってしまうし、まだ柚希さんやオルト君以外の人とは馴染めていないと思っている分、近づきづらさを感じているのも断った理由だった。

 

 はあ……やっぱり馴染もうとするのは難しいし、まだあまり知らない相手と話すのはなんだか怖いなぁ。でも、この性格をどうにかしたいと思って、ここでお世話になる事にしたんだから、何とかしないと……。

 

 まだ少し怖さを感じながらも僕は決意を固めつつここにお世話になる事にした経緯を想起した。

四神の内の一体である白虎の父さんの末っ子として生まれた僕は父さん達を統べる存在である黄龍(こうりゅう)煌龍(ファンロン)様から同じ四神の子供であり仲の良い友達でもあるみんなと一緒に四神としての修行に出るように指示を受けた。

その後、他のみんながそれぞれのお父さんから指示を受ける中、僕も父さんから指示を受けるのかと思っていた。けど、父さんが選んだのは僕に修行をつけてくれる術者を探す道であり、術者を紹介してもらうために訪れたのがこの遠野家だった。

父さんが遠野家を訪れる事にしたのは、父さんや煌龍様と親交のある神様の天斗さんなら臆病な僕に寄り添いながら修行をつけてくれる術者を知っていると考えたためだったけど、父さんから話を聞いた天斗さんが選んだのは転生者であり甥っ子である柚希さんだった。

その理由を尋ねる父さんにたいして天斗さんは柚希さんのこれまでの人ならざるモノ達との交流などに触れると同時に知識の深さや人ならざるモノへの理解もあると言い、柚希さんと僕の思いによってここで修行を積んでいく事を決めたのだった。

だけど、お世話になり始めてから二週間程が経った今でも見知らぬ物に中々近付けない臆病さは直らず、僕のトレーナー役を務めている柚希さんや白澤(はくたく)の義智さん、朝の散歩仲間でもあるオルト君や度々修行の調子などを気にかけて下さる天斗さん以外の人とはあまり交流を出来ずにいた。

 

 ……このままここで修行をしていく以上、他の人達との交流は避けては通れないけれど、いざ話そうとしたり一緒に何かをしようと思ったりしても中々一歩を踏み出せない。

それは良くないってわかってるけど、良い方法も思いつかないし、踏み出す勇気も中々出ない。はあ、本当にどうしたら良いかな……。

 

 良いアイデアも思いつかず、暗くなりながらため息をついていたその時、突然僕の頭の上に何かが乗っかったような重みと衝撃があり、驚きながら頭の上に視線を向けると、そこには僕の頭に掴まりながら見下ろしてくる風之真さんがいた。

 

「か、風之真さん……?」

「なあ、智虎。奥底に閉じ込めてるだけじゃ何も始まらねぇし伝わらねぇぜ?」

「え……?」

「おめぇ、柚希の旦那の負担になっちまうからって言ってたが、誘いを断った理由は他にもあんだろ?」

「そ、それは……でも、どうしてそれがわかったんですか?」

「雰囲気でなんとなくな。おおよそ柚希の旦那やオルト以外にはまだあまり馴染めてねぇから、近づきづらさを感じてるんだろ? だから、ソファーの足元にはいても、柚希の旦那の足元までは近づかなかった。そうじゃねぇのかぃ?」

「……はい。ここでお世話になる以上は、他の皆さんとも話したり一緒にご飯を食べたりしますから、早く馴染まないとって思っているんですけど、どうにも上手くいかなくて……」

「早く馴染まないと、ねぇ……」

 

 僕の言葉を聞いた風之真さんは何故か少し納得いっていないような様子だった。僕は自分の発言を思い返したけれど、特に変な事を言った覚えは無かったから、風之真さんの様子に首を傾げるしかなかった。

すると、風之真さんは小さくため息をついてからゆっくりと口を開いた。

 

「智虎、おめぇはさっき早めに馴染むって言ったが、早めに馴染むなんてのはおそらく無理だと思うぜ?」

「えっ……? それって、どういう……」

「兎和、おめぇも最初は中々柚希の旦那や天斗の旦那以外には近づいたり話しかけたり出来てなかったが、出来るようになったのは結構後だったよな?」

「あ、はい。人見知りな自分を変えたいと思って何度も挑戦しようとしたんですけど、やっぱり中々出来なくて、結局出来るようになるまで時間はかかりましたね」

「そうなんだ……でも、その事で焦りはしなかったの? 人見知りなままじゃ良くないとか早く他の人とも話せるようにならないととか」

「最初はどうにかしないとって思ったけど、段々そう思わなくなったかな。だって、自分のペースでも大丈夫だって事に気づけたからね」

「自分のペース……」

「兎和の言う通りだな。そもそも『馴染む』っていうのは、ゆっくり時間をかけて馴れていく事で早めにどうこうする事じゃねぇ。中には他の奴にさっさと話しかけに行ったり距離をすぐに詰めたり出来る奴もいるだろうが、全員が全員そういうわけじゃねぇからな」

「風之真やオルトはまさにそっちタイプだよな。積極的に話しかけに行くし無理なく相手との距離も詰められるからな」

「へへっ、まあな。だが、兎和や智虎はそういうタイプじゃねぇ。だったら、変に焦らずにゆっくりやっていく方がぜってぇ良いさ。

早く仲良くならねぇとなんて考えてたら、元々の目的である修行も疎かになっちまうし、焦りが逆に距離を離す原因にもなるだろうしな」

「け、けど……この臆病な性格をどうにかしたいというのも目標の一つですし、早めに成果を出せるなら出した方が良いんじゃ……」

 

 僕が恐る恐る言った言葉に風之真さんは腕を組みながら頷く。

 

「まあ、そう考える気持ちはわからなくねぇ。だが、そんなに急いでやったところでその焦り方じゃ思ってるような成果も得られねぇし、むしろ悪い方へ行く可能性もある。

天斗の旦那達がいつもやってるような仕事なら、その日の内みてぇに時間の制限なんかもあってそれ相応の出来も求められるが、お前の場合はまだまだ時間はあるんだろ?」

「あ……はい、今のところいつまでというのは無いです」

「だったら、変に焦らずに自分のペースでやってみてもいいんじゃねぇのかぃ? 命にも限りはあるかもしれねぇが、のんびりやるよりも焦りで妙な方法を試しちまう方がぜってぇ良くねぇ。

それで智虎が怪我や病気で苦しむ事になったら、お前だって後悔するかもしれねぇが、実父の剛虎の旦那やこうして一緒にいる俺達だって心配になるんだ。付き合いの長さや関係の深さなんて関係ねぇ。おめぇだからこそ心配になんだよ」

「僕だから……」

「風之真の言う通りだな。出会い方はどうであれ、一緒に食事をしたり話をしたりした相手だからこそ何かあったら心配になるし、困ってるなら助けたいと思う。そうじゃない相手だったとしても助けたいと思う時はもちろんあるけどな」

「柚希さん……」

 

 柚希さんの言葉に話を聞いていた鈴音さん達も次々と頷く。

 

「まあ、たしかにまだまだ付き合いは短いけど、智虎が困ってるならどうしたんだろうって思う気がするね」

「そうですね。もし、私でも力になれるならその時はお話も聞いて自分なりの意見も言いたいと思います」

「僕達も柚希さん達に話を聞いてもらって自分の進むべき道を定める事が出来たわけだし、今度は僕達が同じように力になる番だね」

『うんっ! 智虎は朝の散歩仲間でもあるし、僕も全力で手伝うよ!』

「皆さんも……」

「私も同意見ですよ、智虎君。私に出来る事であればお手伝いしますし、焦るよりもゆっくり皆さんと交流をしながら馴れていったり修行に励んだりして良いと思います。

剛虎さんもそうお考えだったからこそ私に良い魔道士のあては無いかと尋ねられたのだと思います。ただ四神として成長させるために修行をつけるだけなら剛虎さんも相応しい方は思い当たるはずですが、そうではなく智虎君に寄り添いながら修行をつけてくれる相手という考えだったのは、やはり智虎君には焦らずにゆっくり頑張ってほしいという思いがあったからだと思いますよ」

「父さんがそんな事を……」

「まあ、それでも智虎が早めに成果を上げたいなら、俺達もそのつもりで手伝うよ。ただ、個人的には無理せずに智虎にはみんなと仲良くなってもらいたいし修行にも励んでもらいたい。こうして一緒にいるわけだし、智虎には楽しい日々を過ごしてもらいたいからな」

 

 柚希さんの優しい表情を見た後、風之真さん達にも視線を向けると、風之真さん達も微笑んだりやる気に満ちた顔をしていたりしていて、さっきの言葉が嘘じゃない事はハッキリと見て取れた。

 

 ……正直、まだ焦りはあるし、早くしないとという思いもある。でも、やっぱり柚希さん達の言う通りかもしれない。たしかに焦り過ぎて変な方法を試そうとするのは良くないし、結果的にいらない心配をかけてしまうのも良くないから。

 

「……わかりました。まだ焦りが無いわけじゃないですけど、少し肩の力を抜いてみようと思います。ご心配をおかけしました」

「へへっ、それくれぇ気にすんなよ。心配ばかりかけるのはよくねぇが、心配をかけないようにし過ぎるのもよくねぇ。だから、これからも困った事や助けが欲しい事があったら遠慮なく声をかけてくれ」

「はい、そうさせてもらいますね」

「よし……そうと決まれば、智虎も柚希の旦那の膝の上でのんびりしとけ。柚希の旦那も構わねぇかぃ?」

「ああ、もちろんだ。ほら、智虎」

「……はい、それじゃあ失礼します」

 

 そう言ってから僕は柚希さんに近付き、優しく抱き上げてもらった後にオルト君の隣で体を伏せた。膝の柔らかさと柚希さんから漂う雰囲気に気持ちが落ち着いていくのを感じ、徐々に眠気が襲ってきた。

 

「ふあ……」

「ふふ、やはり気持ちが張り詰めていたようですね」

「そうみたいですね。智虎、眠たいならそのまま寝てても良いぞ」

「あ……は、はい……そうさせて、もらい……ます、ね……」

 

 徐々に意識が薄れていき、体を優しく撫でられる感触に安心感を覚えながら僕はゆっくり目を閉じた。

修行の結果、どんな自分になれるかはわからない。でも、僕は柚希さん達と一緒に未来に向かって歩いていく。それが僕自身の選んだ道であり、柚希さん達と一緒ならしっかりと一歩ずつ踏みしめながら歩いていけると信じられるから。




政実「TWELVETH AFTER STORY、いかがでしたでしょうか」
智虎「今回の僕もそうですけど、風之真さんは悩みや問題の解決役になる事が多いですよね」
政実「まあね。性格上、他のメンバーとも関わらせやすいからそうなる事が多いけど、話によっては他のメンバーがその役目になる事もあるし、他のメンバーがそうなる回ももう少し増やしていく予定だよ」
智虎「わかりました。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと、それじゃあそろそろ締めていこうか」
智虎「はい!」
政実・智虎「それでは、また次回」
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