転生者の幽雅な日常   作:九戸政景

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政実「どうも、春は桜、夏は向日葵な片倉政実です」
護龍「どうも、青龍の護龍です」
政実「という事で、今回は護龍のAFTER STORYです」
護龍「ふむ、今回は私ですか。そしてタイトルを見る限り、私の悩みに関する話のようですね」
政実「うん、そんな感じだね」
護龍「畏まりました。さて……それでは始めていきましょうか」
政実「うん」
政実・護龍「それでは、FOURTEENTH AFTER STORYをどうぞ」


FOURTEENTH AFTER STORY 苦悩する青龍と花々の導き

「……ふぅ、やはり植物は良い物だな」

 

 穏やかな陽気が眠気を誘い、あらゆる花々が各地で開花する春。私はお世話になっている遠野家の庭にて咲き乱れる色とりどりの花に心を癒されていた。

この庭に咲く花は世界各地にある物だけではなく、神の一柱である天斗殿が花や植物を司る神々から頂いた花の種や苗を植えているからか他所では見られないような花もあり、見ている者の目を楽しませる花々の綺麗さや漂う良い香りは私の心に癒やしを与えてくれていた。

 

 やはり植物は良いな。見ている者の気持ちに安らぎを与えるだけでなく、時には腹を満たす手助けをして虫達の生活にも欠かせないというのは本当に素晴らしい。

世の中には花を簡単に踏みにじる事が出来る人間もいるというが、その考えは本当に理解出来ないな。

花を愛でる事も出来ない人間と分かり合えないのは仕方ないが、罪も無い花々や必死に生きている植物達を面白半分で傷つけたりその命を奪おうとするなら決して容赦はしない……。

 

 可憐に咲き誇る花々の素晴らしさに心を奪われながらもそれらを踏みにじろうとする人間の姿を想像して徐々に怒りを燃やしていたその時だった。

 

「……ふふ、心配はいりませんよ、護龍さん。少なくともここにはそのような事をする方はおりませんし、むしろお花や植物に興味関心を持っている方ばかりですから」

「え……」

 

 声がした方へ顔を向けると、そこには因幡の白兎である兎和殿を抱き抱えた(さとり)のこころ殿が立っており、こころ殿の発言から察するに先程の私の心の声はこころ殿に聞かれていたようだった。

 

「……聞かれていましたか」

「はい♪ ただ、声を聞かなくとも護龍さんから力の気配が漏れ出ていたので、波導を感じ取れる柚希さんはもちろん、智虎さんや賢亀さんでもわかったと思いますよ。ですよね、兎和さん?」

「あ、はい。私でもなんだか強い神力の気配を感じるなと思えたくらいなのでそれは間違いないかなと」

「そうですか……私もまだまだ修行が足りませんね。花や植物を想うあまり心をかき乱した挙げ句、それを容易に感じ取られてしまったのですから……」

「たしかにそうですが、あまり落ち込まなくても良いと思いますよ。他所でならばまだしも、ここには力の強い方も多い上に柚希さんや私のようにまた別の方法で誰かの事を感じ取れる方もおりますし、好きな物を傷つけられる様を想像して怒りを感じるのは誰でもある事ですから」

「そうですよ、護龍君。だから、この件についてはあまり気にしなくても……」

「そう言って頂けるのは嬉しいです。ですが……私は修行中の身です。それなのに、心を簡単に乱してしまったり力の気配を出してしまったりするのは本当によくありません。

 それに、智虎と賢亀も以前よりも力をつけていますし、二人とも精神的にも成長をしています。その中で私だけが以前と同じなのはやはりよくありませんから」

 

 そうだ。智虎は以前までの臆病さは鳴りを潜めて様々な知識を熱心に取り入れており、賢亀も以前からののんきな性格を活かして司っている水の力を更に高めている。

その中で私だけが何も成長をしていないというのはやはりよくない。このままでは修行に出た意味もなく、煌龍様や父上の想いを無駄にしてしまうからな。

 

 自分の力や精神面の未熟さを痛感しながら私はここにお世話になるまでの出来事を想起した。

私達四神の末子達は煌龍様より四神として成長をするために修行に出るように指示を受け、智虎や賢亀がそれぞれの父から修行の内容について指示を受ける中、私に課せられたのは司る『木』の力を高めるための旅だった。

その上、見識を深める旅を行いながらこの方ならばという相手を見つけ、そこで『木』の力を高めるように私に指示を出したため、その困難さを噛みしめながら私は旅を始め、旅の中で様々な場所を訪れた。

だが、私の『木』の力が高まる中、師範となって頂ける相手も見つかる様子が無かった事から、私は少々焦りを感じていた。

そして、父上から以前聞いた話から父上達の古くからのお知り合いである天斗殿ならば『木』の力に精通する方をご存じだと思い、記憶を手繰り寄せてこの街に辿り着いた事で私は天斗殿とその甥御である転生者の柚希殿、柚希殿が管理をしている魔導書の『絆の書』の居住空間に住まう様々な方と出会い、遠野家にお世話になっていた智虎と賢亀とも再会した。

だが、その再会は私の焦りを増長させた。修行以前は初めて見るものには中々近づいていけない程に臆病だった智虎は様々な物に対して自ら興味関心を示すようになり、顔つきや雰囲気もどこか智虎の父上に似た物になっていて、賢亀も周囲への気配りの上手さや状況を読み取る判断力は高くなっていた上に智虎と同じく賢亀の父上に似た雰囲気を醸し出していたのだ。

その事自体は別に疎む事ではなく、それどころか共に四神として成長する仲間の成長は喜ばしかった。

だが、同時期に煌龍様より指示を受けた智虎と賢亀が見違える程に成長していた事を知り、私の中に芽生えていた智虎達へのライバル心は警鐘を鳴らすと同時に闘志を燃やし始めた。

その後、風之真殿や智虎と共に幼馴染み達と遊びに行くという柚希殿に同行し、柚希殿が幼馴染み達と遊ぶ中、私がこの感情について考えていたが、智虎達とのこれまでの関係を否定するかのようなこの感情についての答えはまったくわからず、私は辛さと悔しさを感じていた。

だが、その帰り道で柚希殿から私が智虎達に対してライバル心を持っていた事を気付かされ、これからはただの幼い頃からの友人ではなく、共に成長しながらも競い合う相手として見る事を決め、智虎と賢亀と同じように柚希殿にトレーナー役を務めて頂き、遠野家にお世話になる事に決めたのだった。

 

 ……こうして智虎達と共に修行に励む事にした以上、智虎達の成長度合いを間近に見る事が出来るが、それは智虎達も同じだ。

修行に出ると決めたからには手を抜くつもりは無いが、私が不調であればそれは智虎達に筒抜けとなり、智虎達は私の心配をしてくれるだろう。

だが、智虎達に負けたくないという思いがある以上、智虎達に心配をかけたくはなく、少しでも智虎達のように成長した私を見せたいのだ。

 

「子供っぽいとは思いますが、私は智虎達に負けたくないという気持ちを強く持っていて、少しでも智虎達に追いつきたいと考えています。

それなのに、簡単に心を乱してしまってはそれも叶いませんし、私も自分の事を許せません。智虎達は幼い頃からの大切な友人ではありますが、それと同時に負けたくない存在でもありますから」

「護龍君……」

 

 私の言葉を聞いて兎和殿が心配そうな表情を浮かべる中、こころ殿は朗らかな笑みを浮かべており、兎和殿を優しく撫でながら静かに口を開いた。

 

「ふふ、なんだか護龍君が羨ましいですね」

「羨ましい……ですか?」

「はい。私にも目標はありますが、その目標には競い合う相手はいませんし、柚希さんや護龍君のように負けたくないという気持ちを持つ機会もありませんから羨ましいんです。

護龍君はそう思っていないようですが、競い合う相手がいるという事は自分の目標を更に高い物にしていける、また一歩先の自分に進むための道を歩めるというのは素晴らしい事だと思いますよ?」

「また一歩先の自分……」

「その通りです♪ 智虎君達に追いついてそのまま追い抜いたとしても智虎君達もまた追い抜いてくるはずですし、その途中でまた別の自分を見つけてそこで別の競争相手を見つける。

それはキリが無い話ですし、もしかしたら途中で立ち止まってしまう程の出来事もあるかもしれません。ですが、競い合う相手がいれば、同じ目標に向かって進む中で同じ目線で先を見ながら助けあう事も出来ます。これは私や柚希さんでも出来ない事で、同じように修行に励んでいる護龍君達だからこそ出来る事です」

「競い合うと同時に助け合う……」

 

 不思議な言葉のように聞こえたが、こころ殿の言う通りだと素直に思えた。たしかに私にとって智虎達は負けたくない競争相手ではあるが、智虎達が何かで困っていたり悲しんでいたりしたならば私は手を差し伸べるだろうし、智虎達もきっと同じだろう。

それは同じように四神として成長する事を目標にした私達だからこそ相手の辛さや苦しみを一番理解出来るからだ。もちろん、柚希殿やこころ殿に手伝って頂く事も出来るが、それでも最後には私達自身がお互いを支え合う事になる。それが同じ目線で目標へ向かって歩いている私達の為すべき事だからだ。

 

 ……ここにお世話になる事を決めたのは本当に正解だったな。様々な種族が同じ場所に住みながら共に協力し合い、それぞれが抱える問題にも真剣に向き合って解決へと向けて考える。

旅を続けていてもこのような場所は中々無いと断言出来、ここへ来られた私は非常に幸運だったと言えるだろうな。そういった方々と共にいるだけでなく、智虎達と共に切磋琢磨(せっさたくま)しながら成長していけるのは私にとってこれ以上ない程の好環境なのだから。

 

「こころ殿、助言をありがとうございます。おかげで少しは肩の荷も下りたような気がします」

「ふふ、それはよかったです。護龍君の嬉しそうな顔を見られて私も嬉しいです」

「私もホッとしました。ただ、私はあまりお力になれなかったので少し申し訳ないです……」

「そんな事はありません。兎和殿からも言葉はかけて頂きましたし、それはとても嬉しかったです。本当にありがとうございました」

「護龍君……いえ、喜んでもらえたなら私も嬉しいです」

 

 兎和殿は本当に嬉しそうな笑みを浮かべており、こころ殿も兎和殿を見ながら嬉しそうに頭を撫でていた事から、兎和殿が心からそう思っているのがハッキリとわかった。

そして、これからの修行へ向けてやる気を高めていたその時、こころ殿は花壇や鉢に植えられた花に視線を向けると、優しい笑みを浮かべた。

 

「さて、こうして出て来た事ですし、お花のお世話をしましょうか。兎和さん、お手伝いをお願いします」

「はい、任せて下さい、こころさん」

 

 こころ殿と兎和殿が頷き合う中、私はある事を思いついた後、二人に話しかけた。

 

「こころ殿、兎和殿、私にも手伝わせてもらえませんか?」

「それはもちろん良いですけど……護龍君、修行は良いんですか?」

「……はい。修行も大事ですが、根を詰めても仕方ない事はわかりましたから。それに……私もただ愛でるだけではなく、自分の手でこの花々を更に美しい物にしたいと思いましたから」

「ふふっ、素晴らしい考えだと思いますよ。では、せっかくなので私は天斗さんとヴァイスさんを呼んできますので、お二人は如雨露などの準備をお願いしますね」

「はい!」

「畏まりました」

 

 私と兎和殿で返事をし、こころ殿が兎和殿を静かに下ろしてから家の中に入っていった後、私と兎和殿は如雨露を持って外の水道へと向かった。

 

 ……思えば、柚希殿が私を誘き寄せるために花を傷つけるフリをしたのがきっかけで私は柚希殿や皆さんと出会ったのだったな。あの時は本当に花を傷つけられると感じて出て来てしまったが、修行を通じて相手の真意などを感じ取れるようになろう。そうすれば、相手の策にも簡単には乗らず、困っている相手の力にもなれるだろうからな。

 

 そう思いながら柚希殿や智虎達、遠野家の皆様の顔を思い浮かべた後、私は決意を固めながら静かに頷いた。




政実「FOURTEENTH AFTER STORY、いかがでしたでしょうか」
護龍「今回はこころ殿と兎和殿に助けられましたが、今度は私が皆様を助けられるようになりたいですね」
政実「いずれはそういう話も作る予定だよ」
護龍「わかりました。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願い致します」
政実「さてと、それじゃあそろそろ締めていこうか」
護龍「はい」
政実・護龍「それでは、また次回」
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