転生者の幽雅な日常   作:九戸政景

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政実「どうも、夏は冷たい飲み物と扇風機が必須の片倉政実です」
麗雀「どうも、朱雀の麗雀よ」
政実「という事で、今回は麗雀のAFTER STORYです」
麗雀「四神のラストは私ね。そして、タイトルから察するに雪花が関係してくる話のようね」
政実「うん、そんな感じ。それで、どんな話になってるのかは読んでからのお楽しみという事で」
麗雀「了解よ。さて……それじゃあそろそろ始めていきましょうか」
政実「うん」
政実・麗雀「それでは、FIFTEENTH AFTER STORYをどうぞ」


FIFTEENTH AFTER STORY 盛夏の朱雀と雪女の助言

 強い日差しが照りつけ、近所から蝉の鳴く声が聞こえてくるある夏の日、お世話になっている遠野家のリビングで私がソファーの背もたれに留まっていると、ソファーでは雪女の雪花が冷茶の入ったコップを片手に持ちながら座り、膝の上には因幡の白兎の兎和と八咫烏の黒烏が気持ち良さそうにしながらのんびりとしていた。

 

「はあー……今日も暑いねぇ」

「ええ、そうね。というか、雪女って寒いところにいる妖なのよね? そのわりには、思ったよりもバテては無さそうだけど……」

「んー……まあ、私は自分の力で冷気のカーテンみたいなのを作れるからまだ平気だよ。ここに来たばかりの頃は力の制御がまったく出来てなかったから、夏はまったく出てこれなかったけどさ」

「なるほどね。それで、今は他の子達の冷房係みたいになってると」

「そんなとこ。兎和、黒烏、涼しさは程良いかね?」

 

 膝の上にいる兎和と黒烏を見ながら雪花が聞くと、二人は気持ち良さそうな様子のままで揃って頷く。

 

「はい……雪花さんのヒンヤリとした冷気とお膝の柔らかさがとても心地良いです……」

「夏の間はこうしていたくなるけど、流石にずっとこのままだと雪花さんにも悪いし、風邪を引いちゃいそうだね……」

「あはは、私はこのままでも平気だけど、風邪についてはその通りだし、寝ちゃわないようにだけは気をつけないとね」

「はい……」

「わかりました……」

 

 兎和と黒烏が完全にリラックスした様子で答え、そんな二人の事を雪花が微笑ましそうに見ながら時折空いてる手で撫でている姿を見て、私は少し不思議な気持ちになっていた。

 

「……それにしても、やっぱりここって不思議よね。神様と転生者、瑞獣が一緒にいるだけでも不思議なのに、妖怪や異国の怪物、ドラゴンまでもが同じ所にいて、その上、そんな風に仲良くしてるなんて中々見られない光景よ?」

「まあ、そうだろうね。でも、それは私達のボスである柚希がしっかりとまとめてくれてるからだよ。この家のボスっていうなら天斗さんだろうけど、私達は柚希が持ってる『絆の書』に登録されてるメンバーだからね」

「たしかにそうですよね。私達もお互いに協力し合うようにはしていて、種族の壁なんて考えずに接してますけど……」

「衝突や意見の違いも無いわけではないし、その度に柚希さんがお互いの言い分を聞いた上でお互いに納得出来る落としどころが見つかるまで一緒になって考えてくれるから、僕達も安心していられるよね。

それに、そもそも僕達って義智さんの判断がきっかけになったこころさんや天斗さんから紹介されたオルト君とヴァイスさんを除けば全員柚希さんの優しさに救われて仲間になったところがあるし、こころさんやオルト君達も柚希さんの事は信頼してるから、柚希さんに頼りきりにならないように僕達だけでも問題を解決出来るように心掛けてるしね」

「そうそう。本当にどうにもならない時は柚希や天斗さんにも意見を聞いてるけど、基本的にはお互いに話し合って解決出来るようにはしてる。柚希にだって柚希の生活があって天斗さんのお手伝いもしてるから、頼りきりにしちゃったら、柚希のやりたい事も出来なくなる上にいつかは倒れちゃうからね」

「なるほど、そういう関係ってなんだか良いわね。まあ、そういうあなた達だったから、先にお世話になってた智虎達も前より確実に力も心も成長してるのかもしれない。正直、それを知った時には心から羨ましくて、もっと早い内からここで修行をしたかったと思えたくらいだったしね」

 

 心からの感想を口にした後、私はここにお世話になる事になった経緯を想起した。

一年程前、私達四神の末子達は黄龍の煌龍様の指示で四神として成長するための修行に出る事になり、智虎達が自分達の親からそれぞれ別の修行を指示される中、私は父さんから指示されたのは旅をしながら師範になってくれる人を見つけ、その人の元で『火』の力を高める事だった。

その指示を受けてから私は旅に出て様々な場所を訪れたけれど、中々師範になってくれるような人には出会えず、自分が指示された修行の内容の難しさに諦めそうになっていた時に偶然この街を訪れた。

すると、そこにいたのが転生者であり神様の甥でもある柚希と智虎達だった。智虎達はそれぞれ別のタイミングでここに来ていて、揃って柚希にトレーナー役を務めてもらっていたらしく、旅に出る前よりも確実に成長をしていた。

そんな三人と柚希の絆に私は羨ましさを感じていたけれど、三人のように柚希にトレーナー役を務めてもらおうとは中々思えず、父さん達の知り合いであり神様でもある天斗さんの提案で私はお試し期間を設けて遠野家での修行体験をする事になった。

その修行体験の期間中、私は『絆の書』のメンバー達に手伝ってもらいながら修行に励む以外にも雑談を楽しんだり色々な事を手伝ったりし、私にとって至れり尽くせりな状況にありがたさを感じていて、このまま柚希達のところで修行を続けたいと思った。

けれど、そうしてしまったら私はみんなに甘えてしまう上に父さんや煌龍様からの期待を裏切る事になると思って、自分の思いを口には出せなかった。

そんな時に私を救ったのが修行体験の最終日に行った花火大会での護龍達の言葉だった。三人の言葉は頑なだった私の心を解きほぐすと同時に父さんの指示の真意を私に伝え、いつか来る別れへの寂しさや四神としての責任感や使命感を自分だけで抱える必要は無い事を思い知らせ、それで吹っ切れた私は素直に甘える事にして引き続き柚希達の世話になる事を決めた。

 

 ……それにしても、バラバラに修行に出たはずの私達四人が待ち合わせもしてないのに一カ所に揃って、その上、同じ師範を持つなんて不思議なものね。

天斗さんが父さん達の知り合いだったからというのもあるけど、こうやって集まれたのも何か意味があるのかもしれないわね。

 

 そんな事を考えていた時、雪花は私の方を向くと、兎和と黒烏を交互に撫でながら微笑んだ。

 

「そういえば、修行の調子はどう?」

「おかげさまで順調よ。もちろん、炎を司る神とか炎の魔術に精通する術者の方が『火』の力自体は強くなるかもしれない。でも、ここに智虎達と一緒にいる事でお互いに励まし合ったりお互いの頑張りが刺激になったりするからただ『火』の力を高めるよりはずっと良い時間を過ごせてるわ」

「そっかそっか」

「それに、ここには柚希や雪花達のように色々な人達がいるから、まったく退屈しないし、為になる話も聞けて色々な事を学べるから前よりも成長出来た気がする。先にいた智虎達があそこまで成長してるのも納得だわ」

「ここにいるみんなは私も含めて色々な事情を抱えていたり達成したい目標を定めたりしながら生活してるしね。そのためにお互いに支えられるところは支えて、指摘出来るところは指摘し合う。そんな風に私達はやってきてるから」

「そうですね。和気藹々(わきあいあい)としながらも切磋琢磨(せっさたくま)し合って、無理なく絆を深めながら協力し合う」

「たしかにそれが僕達、ですもんね」

「なるほどね……」

 

 雪花達の話を聞いて私は納得しながら頷く。雪花達の言う通り、ここにいるみんなはお互いの様子を結構見ていて、困っていたり悩んでいたりしたら声をかけに行き、誰かの行動を見て何か違うと思ったりそれが悪いと思ったりしたらちゃんと言いに行く。

普段から種族の壁を軽々と乗り越えて毎日楽しそうに過ごしているのは、そうやって自分達の生活を良くするために各々がしっかりとしていこうとしているからなのだ。

 

 転生者の柚希や神様の天斗さん、瑞獣の白澤の義智さんのように誰かをまとめられる力を持つ人にばかり任せずに自分達でも出来る事は出来る限り自分達で頑張ろうとするのはやっぱりすごいわよね。

その上、自分達の目標へ向かって全力で進んで行ってる。年齢が私達と同じや下のメンバーもいるのにそれが出来ているわけだし、私も頑張っていかないといけないわね。

 

 雪花達の話からそう決意を固めていると、雪花は私を見ながらニコリと笑う。

 

「まあ、私達だって最初は中々出来なかったし、あまり焦る必要はないからね」

「……もしかして私が考えてる事、バレバレだった?」

「こころみたいな能力は無いから、すべてはわからないよ。でも、麗雀の性格を考えたら、そんな事を考えてるかなと思ったんだ。まだ付き合いは浅いけど、麗雀について智虎達からも話は聞いたし、麗雀とは仲良くなりたいと思ってるからね」

「私と仲良く……ね、意地悪な事を言うようだけど、『火』の力を持つ私と熱さに弱い貴女でうまくいくのかしらね?」

「り、麗雀ちゃん……」

「うーん……まあ、たしかにお互いの特徴を考えたら正反対だし、性格もだいぶ違うよね」

「雪花さんも……」

 

 私達の会話を聞いて兎和達が少し不安げな表情を浮かべていたけれど、雪花は笑みをうかべたままで口を開いた。

 

「でも、私は麗雀と仲良くしたいかな」

「へえ、理由を聞いても良い?」

「簡単だよ。仲良くしたいと思ったから、それだけ」

「たとえ、何かの拍子で私の力が貴女を傷つけるかもしれなくても?」

「うん、もちろん。だって、麗雀自身はわざとそうするような子じゃないって思ってるし、その時は麗雀が何かを抱えてたり力自体がうまく操れてない時だと思う。

 だから、本当にそうなった時、私は麗雀の事を助けるよ。そして、また同じような事が起きないように色々対策を練る。麗雀とは一緒に楽しい毎日を過ごしたいからね」

「……なるほどね」

 

 ……正直、雪花はだいぶお人好しよね。自分が傷つけられても相手のために頑張ろうとするんだもの。でも、そこまで言われてそれを無碍にする気も無いわね。

 

「意地悪言って悪かったわ、雪花。こんな私でも仲良くしてくれるかしら?」

「うん、もちろんだよ。それに、麗雀は悪気があって言ったわけじゃないってわかってるしね」

「貴女……本当にこっちが心配になるくらいお人好しよね」

「ふふっ、私達のボスの影響かな。その内、麗雀もそうなるかもよ?」

「……そうかもしれないわね」

 

 雪花の言葉に私はクスリと笑う。雪花の言う通り、柚希は雪花達以上にお人好しな気がするし、ここにいる事で私も同じになる気はする。

でも、不思議とそれは嫌じゃない。それは私がもう既にここにいる事を幸せに感じていて、柚希達の考えを肯定しているからなんだろう。

 

 ……さて、私はいつそうなるのかしらね。その時を楽しみにさせてもらいましょうか。

 

 その時の事を考えて楽しさを感じながらクスリと笑った後、私は雪花達との会話を始め、その楽しさを噛みしめながら幸せな気分に浸った。




政実「FIFTEENTH AFTER STORY、いかがでしたでしょうか」
麗雀「今回のは賢亀の時と同じで日常回と悩み解決回が合わさったような感じだったわね」
政実「そうだね。その時にも書いたけど、そういった回はこれからも少しずつ増やしてくつもりだよ」
麗雀「わかったわ。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと、それじゃあそろそろ締めていこうか」
麗雀「ええ」
政実・麗雀「それでは、また次回」
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