転生者の幽雅な日常   作:九戸政景

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政実「どうも、きりんと聞いて初めに浮かぶのは四霊の麒麟。片倉政実です」
輝麒「どうも、麒麟の輝麒です」
政実「という事で、今回は輝麒のAFTER STORYです」
輝麒「そういえば、僕が出て来たお話は前後編でしたけど、AFTER STORYは1話だけなんですね」
政実「うん。AFTER STORYは仲間になった後の話だから、これからも同じパターンがあってもAFTER STORYは1話だけかな」
輝麒「わかりました。さてと、それじゃあそろそろ始めていきましょうか」
政実「うん」
政実・輝麒「それでは、SIXTEENTH AFTER STORYをどうぞ」


SIXTEENTH AFTER STORY 深き絆の麒麟

 涼しかった気候から少しずつ肌寒い風が吹き始め、地面を埋め尽くすように落ちていた枯れ葉が消え始めたある秋の日、和室の炬燵に入ってのんびりしていると、同じく炬燵に入っていた柚希さんがふぅと息をついた。

 

「……この時期になると、やっぱり炬燵みたいな暖房が欲しくなるな」

「そうですね……気持ちを引き締めるために寒さも必要ですが、今みたいにのんびりしたい時には暖かい方が良いです」

「ふふ、それに暖かくしていれば体調を崩す事も少なくなりますからね。ですが、暖かいからといってうたた寝をしてしまうと、風邪をひいてしまう事もありますし、それも気をつけないといけませんよ?」

「はい」

「わかりました」

 

 同じく炬燵に入っていた天斗さんの言葉に柚希さんと一緒に答えていると、和室の襖がゆっくりと開き、白澤の義智さんが姿を見せると、炬燵に入ってのんびりとしている柚希さんの姿を見て小さくため息をついた。

 

「……ここにいたか、柚希。徐々に寒さが厳しくなっているのはわかるが、妖や神獣達の主としてその姿はどうなのだ?」

「そうは言っても寒いからなぁ……そうだ、せっかくだから義智も炬燵で暖まろうぜ? そこにいても寒いだけだしさ」

「柚希君の言う通りですよ、義智さん。義智さんが寒さに強いのは知っていますが、体調を崩さないわけでは無いですし、義智さんが体調を崩したら私達も心配になりますから」

「……わかった」

 

 義智さんがため息交じりに答え、天斗さんの向かい側にまわってから炬燵に入ると、柚希さんは僕の方を見ながら優しい笑みを浮かべた。

 

「そういえば、輝麒が来てから二週間くらいになるけど、ここでの生活にはそろそろ慣れてきたか?」

「はい。色々な方がいるので初めは戸惑う事も多かったですが、少しずつそれも楽しめるようになってきました。それに、毎日勉強になる事ばかりなので、智虎君達があそこまで成長出来たのも納得出来ました」

「そっか、それならよかったよ。何か生活面で不満とか悩みがあったらどうしようかと思ってたから、それを聞けたのは嬉しいな」

「色々気を遣って頂いてますから、感謝こそすれど不満を抱く事は無いですよ。ただ……智虎君達との事でちょっと悩んでいる事があるんです」

「智虎達の事……もしかして試練の件か?」

「……はい」

 

 柚希さんからの問い掛けに答えた後、僕は先日までの智虎君達四神と僕に課せられた試練の事を想起した。

一年程前、父さんと同じ四霊である黄龍の煌龍様から智虎君達は四神として成長するための修行を指示され、つい先日その成果を見るためにトレーナー役である柚希さんと協力して試練を受け、全員が無事にそれを乗り越えたけれど、僕もその時に智虎君達には隠して試練を受けていた。

僕に課せられた試練、それは『土』の力を高めるという修行をしながらも智虎君達の試練の時にはその監督役として試練に立ち会い、全員の試練が終わるまで試練を受けている事をバレないようにするという物だった。

僕にも父さんのように立派な麒麟になりたいという目標があったため、智虎君達には悪いとは思いながらも『土』の力を高めながらその時を待っていたところ、驚いた事に智虎君達は時期こそ違えど揃ってこの遠野家のお世話になっていた上にトレーナー役である柚希さんとしっかりとした絆を結べていた。

その姿を見て僕は安心感を覚えていたけれど、それと同時に僕はそんな四人に羨ましさを感じていた。再会した四人の力が確実に高まっていた事や四人の絆が深くなっていたのもそうだけど、種族が違う人間である柚希さんとの間には信頼感があり、試練を一緒に突破出来るだけのコンビネーションを築けていたのが心から羨ましかったのだ。

そして、智虎君達の試練も僕の試練も無事に終わった事で僕は安心感を覚えると同時に今度からは僕も柚希さんの元で智虎君達と一緒に成長していきたいと思い、父さんや柚希さんの了承を得た上で僕はこの遠野家のお世話になる事になったのだった。

柚希さんにも言ったようにここでの生活には不満は無いし、これまで会う機会が少なかった智虎君達と一緒に話したり修行に励んだり出来るのは本当に嬉しい。けれど、これまで会う機会が少なかった事で、智虎君達四神の輪の中に僕が中々入っていけないのがどうにも辛かった。

智虎君達は僕にも声を掛けてくれるし、久しぶりに会えたあの日にも嬉しそうにしてくれていたのはとても嬉しいし、これからもみんなとは良い友達であり高め合う仲間でいたい。

けど、あの四人の絆の深さを目の当たりにすると、僕が入っていってしまったら、その和を乱してしまうように感じてしまっているし、先日の試練の際に仕方なかったとはいえ、少し冷たい態度を取ってしまった分、もっと智虎君達との接し方に悩んでしまって智虎君達が話しているところに近づいていけなくなってしまっていた。

 

 ……このままじゃいけないのはわかってるし、話しかけに行けば智虎君達も話に混ぜてはくれると思う。でも、やっぱりどうにもうまくいかない。はあ……本当にどうしたら良いんだろう。

 

 智虎君達が楽しそうに話している様子を想起しながらため息をついていると、柚希さんは腕を組みながら難しい顔をし始めた。

 

「……仕方なかったとはいえ、試練が終わるまで少し冷たい態度を取っていた分、たしかにそれまでと同じような接し方はし辛いか。その上、智虎達は一緒に入ることが多いほど元から仲が良いし、試練のために協力して修行に励んでいたから、もっと絆は深くなっているだろうしな」

「……そうだと思います。智虎君達の仲は前から良かったですが、試練の時、智虎君達はそれぞれの試練を見守っている姿は心配しながらも確信した様子で、試練を乗り越えられないなんてまったく考えていない感じだったのが印象に残っています。

僕も試練の様子は見守っていましたが、どの試練もとても大変な物で、監視役として振る舞いながらも四人が無事に試練を乗り越えられるか不安で仕方ありませんでした。

でも、智虎君達は違った。心配はしながらもそれぞれの事を信頼していて、その絆の強さに僕は嬉しさと羨ましさを感じました。もちろん、試練中の柚希さんとの絆の深さも羨ましかったですし、僕達のような神獣と人間があそこまでお互いを思い合ったり力を合わせる姿には本当に驚きました。

だけど、智虎君達の姿にはそれ以上の衝撃を受け、僕はあの輪の中には入っていけないと思えました。それくらい智虎君達の関係は僕には綺麗に輝いて見えましたから」

「輝麒……」

 

 僕の言葉を聞いた柚希さんが心配そうな表情を浮かべていると、話を聞いていた義智さんはふぅと息をつく。

 

「……輝麒、今のお前も智虎達と同じなのではないか?」

「え……?」

「試練を終え、『絆の書』の一員となったお前は智虎達と同じ存在だ。そんなお前が智虎達の輪の中に入れないという理由は無い。それどころか今のお前のような悩みを抱えている方が智虎達を心配させると我は思うが?」

「それは……」

「たしかに智虎達は共にいる時間が多く、絆の深さは我から見ても大した物だと思う。だが、そこにお前が加わってはいけない理由も無く、加わる事でお前達は更に成長出来ると確信している。

試練の前日、お前が試練の監督役だと聞いて奴らは落ち込み、自分がこれまで修行に励んできた理由や意味を見失っていた。柚希の助言によってどうにか持ち直したが、この事実はそれだけお前が奴らにとって大切な存在だという証拠になるだろう」

「智虎君達が……」

 

 あの日、僕が帰る前の四人はたしかにいつもとは違って静かではあったけど、試練の時が迫ってるから気持ちが張り詰めてるんだと思ってた。でもあれは落ち込んでくれてたんだ。

 

「まあ、たしかにそうだったな。いつもなら一緒にいたり食事の時も楽しそうに話したりしてるのに、その時だけはすごく辛そうな感じだったし、それだけ輝麒との再会があの形だったのが智虎達にとって辛かったんだと思う。

だから、智虎達が輝麒の事を本当に大切な友達として見てるのは間違いないよ。輝麒の気配が近づいてきたのを感じた時、護龍ですら本当に嬉しそうな感じだったしな」

「ふふ、そうでしたね。私達から見ても智虎君達四神の絆はたしかな物ですし、その中へ入って行きづらい気持ちもわかりますが、輝麒君も加わった五人の絆はもっと強固な物になると思いますよ」

「僕も加わった絆……」

「お前達が司る五行思想は力を高めたり抑えたりする関係性だしな。輝麒が司る『土』があるからこそその関係性がしっかりと成り立つわけだし、智虎達にとっては欠けちゃいけない大切な物なんだよ」

「我もそれには異論はない。だが、それに甘えて修練を怠っては意味が無い。お前達五人の力は誰か一人だけが高まっても意味はなく、逆に弱まっても成立しないのだからな。それは忘れるなよ?」

「……はい」

 

 義智さん達の言う通りだ。僕達の力はそれぞれでも問題なく使えるけれど、相手こそ決まっていても時には高めて時には抑えるといったように均衡を保てるようになっているし、誰か一人だけが強くなっても今度はその一人を止められなくなってしまう恐れもある。

もしそうなったら試練を突破したと認めてくれた父さんや煌龍様の期待と想いを裏切る事になるし、柚希さん達や智虎君達を傷つけてしまう事にもなり得る。そんなのは絶対にダメなんだ。

だからこそ智虎君達の輪の中に入りづらいなんて考えずにみんなとの絆を深めて連携を強める必要がある。これは僕が果たすべき使命でもあるし、僕自身の想いでもあるんだから。

決意を固めながらやる気を高めていた時、和室の襖がトントンとノックされ、炬燵から出た柚希さんが襖をゆっくり開けると、そこには智虎君とその頭の上に乗った賢亀君、そしてその隣に浮く護龍君と麗雀ちゃんの姿があった。

 

「みんな……」

「四人揃ってどうしたんだ? もしかして輝麒に用事か?」

「はい!」

「それぞれ別の事をしてたんですけど、輝麒君と話したいなって思ったらここでみんなと合流したんです」

「どうやら皆同じ気持ちだったようです」

「これまでは中々会う機会は無かったけど、これからはただの友達同士じゃなく一緒に修行をしていく仲間でもあるものね」

 

 智虎君達の話を聞き、僕が嬉しさでいっぱいになっていると、天斗さんはクスクスと笑いながら智虎君達に話し掛けた。

 

「それなら智虎君達も炬燵に入っていきませんか? 私達も先程から炬燵に入りながらお話をしていましたし、廊下にいたままでは体が冷えてしまいますから」

「……そうだな。まだ秋とはいえ、気温も低くなってきている。すぐに風邪をひく事はないと思うが、体調を崩しては苦しむだけであり、風之真達やお前の家族も心配させてしまうからな」

「義智の言う通りだな。という事で、みんなで色々な話をしようぜ。智虎達それぞれの話は聞いた事があるけど、輝麒と一緒だった時の話ってまだ聞いた事がなかったしな」

「はい、わかりました!」

「ふふ、輝麒君との想い出を話すのは楽しみだなぁ」

「会えた機会こそ少ないが、輝麒との想い出はどれも良い物だからな」

「ええ、思う存分語ってあげましょうか」

 

 智虎君達が和室に入って来た後、みんなは思い思いの場所に入り、全員が炬燵に入った後に智虎君達は楽しそうに僕との想い出を話し始めた。その表情から想い出自体や話す事がとても楽しいと感じているのがハッキリと見て取れた。

智虎君達の輪の中に入りづらいなんて考えていた僕だったけど、僕が気付いてなかっただけで智虎君達は僕を自分達の仲間だとしっかり思ってくれていて、智虎君達の輪は僕がいつだって入れるようにしてくれていたんだ。

 

 ……ふふ、僕って本当にバカだなぁ。変に考え過ぎずに素直に智虎君達のところへ行って話したり一緒に遊んだりすればよかったんだ。でも、それならこれからはそうしよう。智虎君達と話したり一緒に食事をしたりする事でもっと色々な想い出も出来るし、麒麟の子供として四神の子供である智虎君達の支援もずっとし易いはずだから。

 

 みんなが楽しそうに話す様子を眺めたりそれに混ざったりしながら僕は決意した後、久しぶりに会えた友達を交えた話の楽しさと嬉しさに浸っていった。




政実「SIXTEENTH AFTER STORY、いかがでしたでしょうか」
輝麒「今回のお話で智虎君から始まった四神の試練の流れも終わりですね」
政実「そうだね。まあ、煌龍とか智虎達のお父さんもまた出てくる予定だよ」
輝麒「わかりました。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
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