転生者の幽雅な日常   作:九戸政景

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政実「どうも、片倉政実です」
小紅「どうも、座敷わらしの小紅だよ」
青吉「河童の青吉だ」
翡翠「大天狗の翡翠だ」
政実「という事で、今回は遠野組のAFTER STORYです」
小紅「三人でのパターンはこれが初めてだよね?」
政実「そうだね。まあ今後も三人まとめて仲間になる時はあるとは思うけどね」
青吉「そうか。では、そろそろ始めていくぞ」
政実「うん」
小紅「はーい」
翡翠「わかった」
政実・小紅・青吉・翡翠「それでは、どうぞ」


TWENTIETH AFTER STORY 伝承の者達の一日

「うーん……」

 

 

 ある日の事、ボクはリビングで唸っていた。すると、それを聞いていた青吉と翡翠が僕に視線を向けた。

 

 

「どうした、小紅」

「何か拾い食いでもしたか」

「お腹が痛いわけじゃないよ。ここで作ってもらえるご飯は本当に美味しいし、拾い食いなんてするわけないじゃない」

「それはそうだな」

「この遠野家に世話になるようになってからというもの、本当にここまでしてもらって良いのかという待遇ばかり受けている。それならたしかに拾い食いなどする気も起きんな」

「でしょ?」

 

 

 ボクはクスリと笑ってからこのお家にお世話になる事になった経緯を想起した。秋の大型連休とかで人間達がウキウキしていたある日、神社で毬をついて遊んでいた時、翡翠が突然出てきて強い力の気配を感じるから見てきて欲しいと言ってきた。

 

 それを聞いてボクが最初に思ったのは珍しいだった。ボクは座敷わらしだから姿を見せずに様子を見に行くのは容易だけど、幸運を引き寄せる力を持っているからもし悪意を持った人間に捕まったらその力を悪用される可能性がある。

 

 大天狗の翡翠はそれを当然知っているからこそ珍しいと思ったけれど、悪意や邪念を感じなかったからこそボクを向かわせたのを後で知ってボクは納得した。そして駅で出会ったのが家族旅行に来ていた柚希達だったのだ。

 

 どうやら柚希は前々から遠野市に来たかったらしく、そのわくわくで力の気配が漏れだしてしまったのを翡翠が感じ取り、それをボクに教えてきたみたいだった。

 

 そんな柚希に興味を持ったボクはガイドを買って出た。そして柚希やその叔父さんで神様の天斗さん、そして『絆の書』の愉快なみんなとの絆を深めたり翡翠が柚希に挑戦したり、と色々な事があった後に僕達はそれぞれの過去を話し、柚希の仲間となってこの遠野家にお世話になる事になったのだった。

 

 

「まあそんなわけでボクが唸ってたのは拾い食いでお腹を痛くしてたからわけじゃないよ」

「では、何故唸っていたのだ?」

「うん、まだその時じゃないのはわかってるんだけど、ボクがお世話になっていたあの子の血を引く雫ちゃんに会ってみたくなっちゃってね」

「なるほどな……俺も久しぶりにシュウに会いたいと思っていたが、たしかに再び会うとすればもう少しアイツが成長し、柚希がアイツらに自分の事を話せるタイミングになってからだと思っていたからな」

「そう。でも、やっぱり会いたくなっちゃって。だから、どうしようかなと思ってたんだ」

 

 

 柚希が雫ちゃん達に自分の事を隠してるのは仕方ないし、話すのを躊躇うのはわかる。だけど、何か方法がないかと考えてしまうんだ。

 

 小さくため息をつきながらひとまず諦めようとしていたその時だった。

 

 

「……仕方ない。小紅、青吉、我に一つだけ手がある」

「え?」

「本当か?」

「会えるかはわからんがな。とりあえず柚希に外出してくる旨を伝えるぞ。何も言わずに出かけるわけにはいかんからな」

「うん、わかった! それじゃあボクが言ってくるよ!」

 

 

 翡翠の考えというのがわからなかったけれど、もしかしたら雫ちゃんに会えるかもしれないという嬉しさを感じながらボクは自分の部屋にいる柚希のところへと向かった。

 

 

 

 

「よし、それでは行くぞ。お前達」

「うん!」

「ああ」

 

 

 外に出た後、現代風の服装に着替えた小紅と共に返事をする。そして歩き始めようとした時、小紅は物珍しそうに俺を見始めた。

 

 

「変化の術のおかげとはいえ、青吉が河童の姿をしてないのは中々不思議な感じ。人間の子供の姿をするのってどんな気分?」

「そうだな。水掻きや甲羅、そして頭の皿が無いというのは中々不思議な感覚だが、水が近くになくともこうして快適に動けるというのは中々嬉しいものだな。柚希達も普段はこの快適さを味わいながら生活をしてるんだろう」

「そうだろうな。では、ゆくぞ」

 

 

 俺と小紅は頷き、翡翠と共に歩き始めた。翡翠の考え、それは小紅を現代風の服装に変え、俺を人間の子供の姿に術で変えて外出をする事だった。翡翠自身もその大きさや姿から目を引くが、俺達も同じように人間達からすれば珍しい姿をしている。そのため、変化の術を用いて他の人間と遜色無い姿になれば、珍しがられたり怪しまれたりせずに会いたい相手に会えるかもしれないというのが翡翠の考えだったのだ。

 

 その考えは正解だったのかすれ違いざまに俺達を見る人間は少なく、その様子を小紅は面白そうに見ていた。

 

 

「ふふ、なんだか不思議な感じ。普通の人間に混じってこうして歩けてるなんて」

「我らは普段から人間の前には姿を現していないからな」

「そうだな。さて、柚希から聞いた馴染みの公園とやらはそろそろだと思うが……」

 

 

 そう言っていた時、柚希から聞いた名前が目に入り、俺達は公園内に入った。休日だからか公園内は家族連れや子供の姿が目立っており、小紅はワクワクした様子でそれを見ていた。

 

 

「わあ……なんだかスゴく楽しそう。ボクも混ざってきたいなぁ」

「それも別に良いが、まずは公園内を見てまわるぞ」

「はーい。それにしても、こんなに楽しそうにしるのを見るのはやっぱりいいね」

「そうだな。さて、今日は公園まで遊びに来ていると良いんだが……」

 

 

 小紅と俺が目当ての相手を探していたその時だった。

 

 

「なあ、お前達」

 

 

 近くから声をかけられ、俺達はそちらに視線を向けた。そこにいたのは雫やシュウではなかったが、その友人である海野深也と由利蒼太だった。

 

 

「君達、ボク達に何か用?」

「用というか……初めましてのはずなのに俺達のダチと同じような雰囲気を出してたからちょっと気になって声をかけたんだ」

「ダチ……あ、もしかして柚希の事かな? もしかしてというかはそうだったらいいなって感じだけど」

「そうだけど……お前達も柚希のダチなのか?」

「というかよくわかったな?」

「君達の事は柚希から聞いてるよ。海野深也君に由利蒼太君」

 

 

 小紅がクスクス笑いながら言うと、二人は軽く頬を赤らめた。

 

 

「き、聞いてるって……」

「ど、どんな感じにだ?」

「もちろん良い友達って聞いてる。それでなんだけど、君達にちょっと聞きたい事があるんだ」

「聞きたい事?」

「ああ。お前達の知り合いに金ヶ崎雫と雪村柊士の二人がいると思う。お前達から見た二人の印象を聞かせてほしい」

「金ヶ崎と雪村の印象……別に良いけど、二人とも知り合いなのか?」

 

 

 その質問に小紅は困ったような顔をする。それはそうだろう。遠野の出立の日に見ただけで、実際には話した事がないのだから。

 

 そうして小紅がどうしようと言うかのように俺達に視線を向けてきたその時、翡翠はやれやれとため息をついた。

 

 

「海野に由利、といったか。お前達にとって今から信じられないような事を話すが、この件は口外しないでもらいたい」

「え、翡翠?」

「変に嘘をつくよりは良いだろう。さて、その信じられないような事だが、我らはお前達のような人間ではない」

「人間じゃ……ない? あ、もしかしてお前達も精霊みたいな存在なのか?」

「正確には妖だが、よく驚かんな」

 

 

 翡翠が驚いていると、海野君は笑みを浮かべた。

 

 

「まあ基本的に俺達だけの秘密にしてるんだけど、俺達にも人間じゃない友達がいたんだ」

「今は会えてないけどな。だから、お前達の事も内緒にしとくよ。金ヶ崎や雪村、当然柚希にもな」

「そうか。ありがとう、二人とも」

「どういたしまして。それで、お前達は何者なんだ?」

 

 

 由利君の問いかけにボクは安心感を覚えながら答える。

 

 

「ボクは座敷わらしの小紅でこっちの青吉は河童、それで翡翠は大天狗だよ。三人とも遠野で柚希と出会って、今は柚希と一緒に暮らしてるんだ」

「柚希が妖怪と……」

「アイツ、妖怪とか神話の怪物大好きだからスゴく嬉しいだろうな」

 

 

 翡翠は静かに頷く。

 

 

「事実、いつも他の仲間達とも楽しそうに暮らしている。そして小紅は金ヶ崎雫の親族と共に暮らしていた過去を持ち、青吉は幼い頃の雪村柊士と夏の日に友垣として楽しく過ごしていた過去を持つ。だが、今は柚希の事情もあって面と向かって話す事はおろか会う事も控えている。そのため、お前達にその二人についての印象を聞きたいのだ」

「そういう事か。まあ金ヶ崎の印象といっても俺達もそんなに話した事はないぜ?」

「違うクラスだしな。けど、柚希の事が好きなのは見ててわかるし、金ヶ崎自身も結構男女関係なく人気は高いな。おとなしいけど、成績は優秀みたいだし、なんだかんだで柚希みたいに誰かを助けようとする事が多いからクラスメート達からは慕われてるし、男子で金ヶ崎が好きな奴は結構いるみたいだ。俺達も金ヶ崎の事は可愛い女子だと思ってるし、そんな金ヶ崎に好かれてる柚希は羨ましいと思ってるぜ」

「後は雪村についてだよな……昔のアイツは知らないけど、今のアイツは結構女好きで底無しに明るい奴だな。俺達以外の友達も多いし、夏休みとか冬休みになると他の奴も巻き込んで企画を立てたりもするんだ。臨海学校の時は俺達と柚希達での水泳競争や怪談大会も企画してたしな」

「昔のアイツは友達を作る事すら中々出来ない奴だったが、今ではそんなに強くなってるんだな。女好きというのも度が過ぎなければ別に良いだろう。様々な女を知り、最終的に自分が一番に大切にしたいと思える女に出会えれば俺は文句は言わん」

「そっか。それ聞いたら雪村も喜びそうだけど、今は会えないなんてちょっと寂しいな」

「だが、再会出来た時の喜びもまたひとしおだと思っている。だから、これで良いんだ。アイツの成長を友の口から聞く事が出来ただけでも十分だ」

 

 

 その言葉に偽りはない。直接会って話したいという気持ちがあったために今回のような提案に乗ったのもまた事実だ。けれど、別に会えなくとも構わないとも思ってはいた。一番の再会のタイミングは柚希が考えてくれているからこそ、その時まで待った上でその喜びを分かち合うのが一番だと思ってはいたからだ。

 

 

「因みにシュウは、雪村は今日はお前達と一緒では無いんだな」

「ほんとは一緒に遊ぶ予定だったんだけど、今朝急に家の用事が入ったって事で無くなったんだよ」

「それがなかったら会えたろうにな。柚希辺りからここが俺達の集まりやすい場所だって聞いてきたんだろ?」

「うん、そんなとこ。でも、今日会えなかったって事は、やっぱり柚希が考えてくれてる一番のタイミングまで待てって神様に言われてるんだと思う。だから、それまで僕達は待つよ」

「そうだな。深也、蒼太、今日はありがとう」

 

 

 二人は顔を見合わせるとどこか照れ臭そうな顔をした。

 

 

「別にお礼なんて良いよな」

「ああ。俺達だって珍しい出会いに恵まれたわけだし、こっちこそお礼が言いたいよな」

「そうか。お前達、我らも家で柚希を支えるが、お前達も学校や他の面で柚希を支えてやってくれ。もちろん、青吉と小紅の大切な存在の事も」

「わかった。俺達に任せとけ!」

「アイツが悪い奴じゃないのはわかってるしな。お互いに柚希とはこれからも仲良くやってこうぜ」

 

 

 その言葉に俺達は頷いた後、二人に別れを告げてそのまま公園を出ていった。

 

 

 

 

「あーあ、でも会えなかったのはちょっと残念。まあ別のクラスだって言ってたし、雫ちゃんの件はわからないかな」

「いるのがわかっていれば連れてきてくれただろうからな。残念な気持ちは同じだが、やはり一番のタイミングまで待ってこそなんだろうな」

「だね。それまではじっくりと待とうっと」

 

 

 帰り道、小紅と青吉はそんな事を話していた。しかし、その表情は穏やかであり、会えずとも満足していたのがはっきりと見て取れた。

 

 

「だが、もし実際に会えていたらどのような事を話す予定だったのだ?」

「うーん……言われてみれば何話そうか決めてなかったなぁ」

「会えた喜びが強くなっていただろうからな。俺も久しぶりに会えた事で満足してしまい、何かを話すという事までは気が回らなかったと思う」

「そうか」

 

 

 それで良いのかとは思ったが、二人にとってはやはり会えたという事実が何よりも嬉しい事なのだ。小紅にとっては大切にし合っていた相手の親族で、青吉にとっては絆を深め合えた種の違う友垣であり、柚希に対して感じている親愛とはまた違った感情があるのだろうから。

 

 そしてそんな二人が我にとっては羨ましかった。我にとってはそう言えるような相手はもういない。絆を深めてきたあの村人達は家族もろとも命を奪われてしまい、血を分けた相手の行方すらわからないのだから。

 

 だからこそ、我はこの二人や柚希、そして天斗や『絆の書』の奴らと共に歩んでいこう。もうあのような悲しみを感じないためにもそのそばにいて、我が出来る限りの支援をし、後悔のない毎日になるようにするのだ。

 

 

「小紅、青吉」

「ん、なに?」

「どうかしたか?」

「いや、改めてよろしく頼む。そう言いたくなっただけだ」

「……そっか。翡翠、こちらこそよろしくね」

「こちらこそよろしく頼む、翡翠」

 

 

 二人から返ってきた言葉を聞き、我の心が満たされていくのを感じていた時、風之真と鈴音を肩に乗せ、オルトと智虎を連れた柚希から反対側から歩いてきた。

 

 

「あっ、いたいた」

 

 

 嬉しそうに言うと、柚希は我らに近づいてきた。

 

 

「帰ってくる途中で会えてよかったよ。まあ力の気配を探れば会えるけどさ」

「へへっ、だな。んで、どうだった? 小紅は雫の嬢ちゃん、青吉は雪村がいねぇか見に行ったんだろ?」

「残念ながら会えなかったよ。会えたとしても嬉しさが先に立って話すのも難しかっただろうけどね」

「そっかぁ……でも、なんだか満足そうではあるね」

「あ、たしかに」

「何か良い出会いでもあったんですか?」

 

 

 智虎の問いかけに我は頷く。

 

 

「まあそうだな。人間を憎んでいた頃の我では考えられなかった事だが、此度の出会いは本当に良いものだったと言えるだろう」

「そっか、それならよかったよ。よし、それじゃあ帰ろうぜ」

「そろそろおやつの時間だしな。おめぇらもいてこそ楽しいおやつ時間になるんだし、さっさと帰って話でもしながらゆっくり食おうぜ」

「だね。おっやつ、おっやつ♪」

 

 

 小紅が楽しそうに言い、それに対して鈴音とオルトがそれに続いて言い始めると、柚希達はクスクス笑い始めた。このなんという事のない日常ですら以前の我は楽しめていなかったが、柚希達と出会った今は違う。新たな友と出会い、その友との毎日だからこそ楽しいと思えるのだ。

 

 

「……大切にしなければな。この毎日を」

 

 

 柚希達との帰り道、以前は冷えきっていた心が今はあたたかくなっているのを感じながら我は柚希達と共に帰路に着いた。




政実「TWENTIETH AFTER STORY、いかがでしたでしょうか」
青吉「俺達は深也と蒼太と出会ったわけだが、この調子だとシュウもいずれは誰かと出会いそうだな」
政実「そのつもりではあるかな」
翡翠「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価なども待っている故、書いてもらえると助かる。よろしく頼む」
小紅「それじゃあそろそろ締めていこうか」
政実「うん」
青吉「ああ」
翡翠「わかった」
政実・小紅・青吉・翡翠「それでは、また次回」
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