転生者の幽雅な日常   作:九戸政景

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政実「どうも、四霊の中では一番麒麟が好きな片倉政実です」
柚希「どうも、遠野柚希です。四神の時の青龍もそうだけど、今回の麒麟もイメージ通りの選択だったな。そういえば、今回はいつもとは少し違う事をしてみたんだっけ?」
政実「うん。読者の方から感想を書いて頂いた時にちょっとしたリクエストも頂いていたから、それにチャレンジしてみた感じかな」
柚希「なるほどな。まあ、それに関してはここで書くよりも実際に読んでもらった方が良いだろうし、早速始めていくか」
政実「うん」
政実・柚希「それでは、第21話を始めていきます」


第21話 幸福を呼び込む三つの光

 雪も降り積もり寒さで体も震える師走のある朝の事、いつものように天斗伯父さんや『絆の書』の皆と一緒に朝食を食べていた時、「……そうだ」と天斗伯父さんは何かを思い出したように声を上げた。そして俺の方へ視線を向けると、ニコリと笑いながら声を掛けてきた。

 

「柚希君、今日はたしか終業式でしたよね?」

「あ、はい。なので、昼頃には帰ってくる予定ですし、合気道の練習も無いので、今日は夕士達と一緒にウチで冬休みの宿題を片付けちゃおうと思ってます」

「なるほど……」

「でも……どうしてそんな事を?」

「実は、今日のお昼頃にあるお客様がいらっしゃる予定になっているので、予めその事を伝えておこうと思いましてね」

「お客さん……ですか」

「はい。ですが、その方は柚希君も知っている方ですし、私も今日は仕事がお昼までなので、そういう予定がある事だけ覚えておいてもらえれば大丈夫ですよ」

「は、はい」

 

 お客さん……か。天斗伯父さんの『人間側』の知り合いで俺が知ってる人は殆どいないから、たぶん『神様側』の方だと思うけど、この時期に来る人となると、結構限られるような……?

 

 朝食を食べながらあり得そうな人を考えていた時、ふと何組かあり得そうな人を思いつき、俺はその人達の関係がある『絆の書』の住人達をチラリと見た。しかし、その誰もが俺の視線に対して静かに首を振ったため、俺は「ふむ……」と唸りながら顎に手を当てた。

俺が想像していたのは、兎和(とわ)の曾祖母である白兎神様や黒烏(くろう)の父親である黒羽さん、そして智虎(ヂィーフー)達四神′sや輝麒(フゥイチー)の親御さん達だったのだが、兎和達の反応から察するにお客さんは恐らくその人達では無いのだろう。

 

 ……まあ、ただ報されていないだけの可能性もあるし、断言するのはまだ早いんだけどな。でも、もし本当に俺が考えている人達じゃないとしたら、一体誰が来るんだろう……?

 

 そして、朝食そっちのけでこれまでに会った事がある人間以外の知り合いを次々と思い浮かべていたその時、義智が呆れ声で話し掛けてきた。

 

「……柚希、考え事をする前に食べ終えてしまったらどうなのだ? それに、客人の正体は後で分かるのだから、その時の楽しみとしていた方が良いだろう?」

「……あ、それもそうだな」

 

 義智の言葉に納得顔で頷いていると、義智は大きな溜息をつき、それを見ていた『絆の書』の住人達からクスクス笑う声が聞こえてきた。

 

「まったく……柚希の旦那と義智の旦那の掛け合いは、いつ見ても面白ぇもんだなぁ」

「ふふっ、本当にね」

「何というか……二人のこういう所を見てると、スゴく安心するよね」

「あー……今日も平和だなぁ、みたいなね」

「そうそう、そんな感じそんな感じ」

 

 風之真達を始めとした年下組の住人達が楽しそうに話し、その様子を天斗伯父さんを含めた大人組が微笑ましそうに見ている中、義智は更に深く溜息をつき、俺はそんな皆の様子を見ながら苦笑いを浮かべた。

 

 俺自身もこのやりとりや義智の存在に安心感を覚えているから、時には今のように肩の力を抜いた状態でいられるけど、いつまでもこのままではいられないという事は分かってる。

一応、俺も『絆の書』の魔書使い(ブックマスター)であり、『絆の書』の住人達の主でもあるわけだから、自分の根っこの部分は変えずに少しずつでも良いから人間としても魔導師の一人としても成長していかないといけないよな。

 

 そんな決意にも似た思いを抱いた後、俺は楽しそうにしている皆の様子を眺めながら再び朝食を食べ始めた。

 

 

 

 

「それじゃあ行ってきます」

 

 朝食後、俺はいつも通りの準備を済ませ、会社へ行く準備をしている天斗伯父さんに声を掛けてから、玄関のドアをゆっくりと開けた。すると、そこには冬の寒さにも負けず元気な様子の夕士と長谷の姿があった。

 

「おはよう、二人とも」

「ん、おはよう」

「おはよう、柚希。どうやら今日は、俺の方が早かったみたいだな」

「だな。でも、一番は相変わらず長谷みたいだけどな」

「当然だ。たとえ勉強や運動以外でも俺は簡単に一番を譲る気は無いぞ? それくらいの気持ちでいないと、あの親父達は絶対に越えられないからな」

「ははっ、違ぇねぇや」

「だな。あの人は長谷をイラつかせるためなら、たとえ仕事の日でも俺達よりも先に待ってそうだからな」

「よう、お前達。今日はどうやら俺が一番早かったみたいだな、って感じでな」

「……否定できないし、満面の笑みでそんな事を言っているのが容易に想像できる……」

 

 長谷が額に手を当てながら深く溜息をつく中、俺と夕士は顔を見合わせながら一緒に苦笑いを浮かべた。いつも落ち着いていて頭のキレる長谷だが、お父さんである長谷慶二さんはその遙か上を行き、男女両方から慕われるとてもカッコいい人だ。

しかし、息子の長谷泉貴(はせみずき)をからかう事が趣味という一面を持っているという中々変わった人で、慶二さんが家にいる時に遊びに行くと、学校なんかでは見られない長谷の姿が見られるので、俺と夕士はそれをこっそりと楽しみにしていたりする。

 

 まあ、長谷親子の仲は悪いわけではないし、二人ともお互いの事を認めあっているからこそ、あんな風にやれてるわけだし、アレも理想の親子像の一つだと言っても良いかもしれないよな。

 

 長谷親子のいつものやり取りを思い出しながらクスリと笑った後、「……それじゃあそろそろ行くか」と夕士達に声を掛け、夕士達がそれに頷くと同時に俺達は学校に向かって歩き始めた。そして、雪をサクサクと踏みしめながら夕士達と歩いていた時、「あ、そうだ……」と夕士が何かを思い出した様子で声を上げた。

 

「確か今日の午後は、皆で冬休みの宿題を片付けるんだったよな?」

「ああ、宿題を早めに終わらせておけば後々ゆっくり出来るからな。冬休みは年末年始で色々と忙しくなるだろうし、今日中に半分までは終わらせたいところだな」

「だな。それくらいやっておけば、ゆっくりやっても大晦日までには確実に終わるはずだし、その分大掃除とかの新年を迎える準備に時間を割けるからな」

「大掃除かぁ……家の中を念入りにやらないといけないから、ちょっと面倒臭いけど、やっぱり新年を迎えるためには必要な事なんだよな……」

「そうだな。まあ、ウチは毎年何日間か掛けてやってるから、面倒には感じないけどな」

 

 夕士達と会話を交わしながら俺は毎年の大掃除の際の様子を思い出した。ウチの大掃除では、『絆の書』の皆も交えた全員でしっかりと役割分担をしてから大掃除を行っており、それぞれがそれぞれの得意分野を担当してもらっている。

そのため、毎年大晦日の前には大掃除が終わっており、住人の数も毎年増えている事もあり、大掃除に掛かる日数も年々減っていたりする。

 

 ……そういえば、黒烏と出会ったのも大掃除の日だったっけな。あの時は黒羽さんと一緒に高皇霊産尊(たかみむすびのみこと)様からの新年会についての連絡を伝えに来てくれたわけだけど、もしかして今日来るお客さんっていうのもそういうタイプの来客なのかな……?

 

 今朝聞いた来客の話を思い出し、その正体について再び考え始めたその時、突然肩をポンポンと叩かれ、「え……?」と言いながら俺はそちらへ視線を向けた。すると、俺の肩に手を置いたまま不思議そうな表情を浮かべる夕士の姿が目に入ってきた。

 

「夕士……どうかしたか?」

「いや、どちらかと言えばそれはこっちの台詞だぜ? なんか突然難しい顔をしながら考え事をし始めたみたいだけど、何かあったのか?」

「んー……まあな。実は今朝、天斗伯父さんから昼頃に来客があるって話をされたんだけど、その来客は俺の知っている人だっていう情報しか知らされてないから、どんな人なのかつい気になっちゃってな」

「へえ……そうだったのか」

「……つまりその来客は、遠野も会った事がある天斗さんの知り合いって事になるのか?」

「そうだと思う。まあ、昼頃に来るのは確実だろうし、その時までのお楽しみにしていれば良いんだろうけど、どうにも気になるんだよな……」

「ははっ、なるほどな。でも、確かにそういうのって気になっちゃうよな」

「そうだな。秘密って言われると、どんな事でも気になってしまうのは仕方ないけど、中には触れられたくない物だってあるんだろうし、その辺はしっかりと判断しないといけないよな」

「……まあな」

 

 長谷の言葉に返事をしながら俺はランドセルの中に入れている『絆の書』の事などを頭の中に思い浮かべた。確かに俺も夕士達や雪村達に転生者の事や『絆の書』の事などは秘密にしている。けれど、それは秘密にしなければならない理由があるからであり、俺が考えているタイミングがベストだと思っているからだ。

だから、俺はその時まで何があっても話さない事に決めており、何か勘付かれそうになったら、その事から意識を逸らすために不自然にならない程度に話題を変えるなどの努力をしていた。

 

 ……親友達に隠し事をしているのはとても申し訳ないと思ってる。けれど、夕士が()()()()()を果たすまでは、俺の事や『絆の書』の事は話さない方が良いんだ。話した事で本来起こりえない出来事が起きてしまう恐れもあるし、もしそれが本当に起きてしまった時に必ず対処できるとも限らないからな。

 

「……だから、この先どうなっても良いようにこれからも修行はしっかりとしないとだな」

 

 体の奥で静かに巡る『力』を感じながらポツリと独り言ちた後、俺は隣を歩きながら楽しそうに話をしている夕士達へ視線を向け、その平和な様子にクスリと笑ってからその話へと混ざっていった。

 

 

 

 

 放課後、一度昼食を食べてから俺の家に集まる約束をし、俺達はいつも通りの場所で別れた。そして『伝映綱(でんえいこう)』を『絆の書』に繋げ、居住空間にいる皆と午後の事などについて話をしながら家に向かって歩いていたその時、突如複数の強い神力と霊力の気配を感じ、俺はその気配に緊張をしながら立ち止まった。

 

「……輝麒、この気配はもしかして……」

『はい、間違いなく父さんと煌龍(ファンロン)様の気配です。それと後は──』

『……ん? 輝麒、後はってぇ事は他の気配にも覚えがあんのかぃ?』

『あ、はい。ただ……最後に会ったのが本当に前だったので、恐らくですが……』

『なるほどな……』

 

 居住空間にいる皆が会話を続ける中、俺は輝麒の父親である聖麒(シァンチー)さんと黄龍の煌龍様の事について想起した。聖麒さんと煌龍様は、共に瑞獣と呼ばれる吉兆の前触れに現れるとされる動物の一種であり、鳳凰(ほうおう)霊亀(れいき)という二種類の瑞獣と合わせて四大瑞獣──四霊(しれい)と呼ばれている。

そんな聖麒さん達と出会ったのは、四神の子である智虎達四神′sの試練並びに輝麒の『土』の試練の時で、その際に俺は四神′sのトレーナーとして共に試練に臨み、見事試練を突破した。そして、その後は輝麒が『絆の書』の住人の仲間入りを果たしたり、四神′sと輝麒の試練突破を祝う食事会も催されたり、とその日は俺にとってもとても特別な日となった。

その後、聖麒さんは四神′sの親御さん達のように度々輝麒の様子を見に来るようになったのだが、煌龍様とはその日以来一度も会う機会は無く、聖麒さんや天斗伯父さんから近況を聞くくらいだった。

 

 ……この感じだと天斗伯父さんが言っていた『お客さん』というのは、恐らく煌龍様達の事なんだろうけど、一体何の御用なんだろう……?

 

 煌龍様達がここにいる理由について小首を傾げながら考え始めたその時、突然煌龍様達の神力がゆっくりとこちらに向かってくるのを感じ、俺はハッとしながら考え事をすぐに止め、煌龍様達が近づいてくるのを待った。

そしてそれから数分後、前方から強い神力を発しながら雪を踏みしめつつ歩いてくる中国服姿の数人の男性と男性達に抱き抱えられたり周囲をふよふよと飛んだりしていたモノの姿に、俺は思わず「マジか……」と驚きの声を上げてしまった。

何故なら、そこにいたのは小型ではあったが紛れもなく『黄龍』や『鳳凰』、そして『霊亀』といった四霊達だったからだ。

 

 ……つまり、『絆の書』の中も含めれば、この場には四神と四霊が揃ってるって事になるけど、この調子だといずれは四凶(しきょう)とも出会う事になるのかな……?

 

 そんな事を考えながら苦笑いを浮かべていたその時、前方から歩いてきていた煌龍様が「……おおっ!?」と俺の存在に気付いた様子で大声を上げたかと思うと、その声に驚いた様子で足を止めた聖麒さん達を置き去りにし、とても嬉しそうな笑顔を浮かべながら駆け足でこっちへ近づいてきた。そして、俺の目の前でピタリと足を止めると、その大きな手で俺の頭をガシガシと撫でながら大きな声で笑い出した。

 

「はっはっは! やはりお前だったか、柚希! 久しぶりだな!」

「お、お久しぶりです、煌龍様……えっと、今日は人間の姿なんですね……?」

「うむ、我はいつもの龍の姿でも良いと思ったのだが……聖麒達が今日は人間達が住む街を歩くのだから、人間の姿で歩いた方が良いと言うので、こうして人間の姿をしているのだ。まあ、この姿もだいぶ気に入っているので、我としても問題は無いのだがな! はっはっは!」

「あはは……そうなんですね。ところで、今日はどうしてこちらに?」

「ん? ああ、それはだな……」

 

 煌龍様が説明を始めようとしたその時、「煌龍様……」と話をしている内に他の人達と一緒に追いついていた人間の姿の聖麒さんが背後から呆れ声で話し掛けると、煌龍様はクルッと振り返ってから不思議そうに聖麒さんに話し掛けた。

 

「む……聖麒よ、どうした?」

「どうした、では無いですよ……柚希さんにあえて嬉しいのは分かりますが、本日は他の皆もいるのですから、いきなり走り出すのは止めて下さい」

「ははっ、すまんすまん。久しぶりに柚希に会えた事もそうだが、どうやらあの日からまた一段と力を増したようだったのでな。そうなれば、思わずこちらまで嬉しくなってしまうのも仕方なかろう?」

「それは……まあ、そうですけどね。実際に試練を課したのは四神の皆さんですが、柚希さんにも試練に参加するように言った事で、煌龍様は間接的に試練を課したような物ですから、それを乗り越えた者が更に力をつけたとなれば、賞賛をしたくなるのは当然かもしれませんね」

「そういう事だ」

 

 優しい笑みを浮かべながら言う聖麒さんの言葉に煌龍様がニッと笑いながら答えていたその時、煌龍様と聖麒さんを除いた全員の視線が俺に集中し、俺はその光景に思わず気圧されてしまった。そして、視線を向けられている緊張でどうしたら良いか分からなくなっていると、そんな俺の様子に緋色の中国服姿の若い男性が小さくフッと笑った。

 

「……人ならざるモノ達と共に生きている神の甥といえども、流石に四霊達から一度に視線を向けられれば緊張くらいはするようだな」

「ふふ、そのようですね。まあ、私達とは初対面なわけですから、これも仕方ないと思いますよ」

「そうだな」

 

 緑色の中国服姿の男性の言葉に緋色の衣服の男性は頷きながら答えた後、未だ緊張をしている俺に顔を近付け、俺の目を真っ直ぐに見つめながら優しい笑みを浮かべた。

 

「では、緊張を解すためにここらで自己紹介といこうか。恐らく既に気付いているかもしれないが、私は聖麒や煌龍と同じ四霊の鳳凰で、名は幸凰(シィンフアン)という。これからよろしく頼むぞ」

「そして、私は霊亀の恵亀(フゥイグィ)といいます。幸凰さん共々これからよろしくお願いしますね、柚希さん」

「あ……はい。こちらこそよろしくお願いします、幸凰さん、恵亀さん」

 

『鳳凰』の幸凰さんと『霊亀』の恵亀さんの穏やかな笑みでようやく緊張が解けた後、俺はしっかりとした調子で返事をしてから幸凰さん達へ向かって感謝の気持ちを込めながら深々とお辞儀をした。

 

 

『鳳凰』

 

 中国神話における伝説上の鳥で、麒麟や黄龍などと合わせて四霊または四大瑞獣と呼ばれている瑞獣の一体。一般的には孔雀などに似た中国哲学の基礎とされる五色の鳥として知られているが、その詳しい姿形については諸説ある。そして、鳳凰をモチーフとしたキャラクターが登場する物語やゲームがあるなど四瑞の中では麒麟と同様に世間的に広く名を知られている存在である。

 

 

『霊亀』

 

 中国神話における伝説上の亀で、麒麟や黄龍などと合わせて四霊または四大瑞獣と呼ばれている瑞獣の一体。中国神話では、背中に仙人達の桃源郷とされる蓬莱山(ほうらいさん)を背負っているとされており、四霊の中では唯一日本の奈良時代の元号にその名前が使われている。

 

 

 さて……幸凰さんや恵亀さんの事も気になるけど、そろそろさっきの質問に戻るとするか。

 

 そして、幸凰さん達から煌龍様へ視線を戻した後、俺は先程聞きそびれていた事についてもう一度煌龍様に問い掛けた。

 

「それで、先程も訊いたのですが煌龍様達はどうしてこちらに? 今朝、天斗伯父さんがお昼頃に来客があると言っていたのですが、もしかして……」

「ああ、我らの事だ。まあ、実際に用事があるのは我らだけで、ここにいる息子達はお前に紹介をしようと思って連れてきただけだがな」

「あ、やっぱりお子さん達だったんですね」

「そうだ。お前の『絆の書』の住人でもある智虎や輝麒のように末子ではあるが、その実力は上の兄姉達にも劣らん。なにせ、我らが課した試練をしっかりと乗り越えているのだからな」

 

 そう誇らしげに語る煌龍様の姿に俺は思わずクスリと笑っていた。俺が今まで煌龍様に抱いていたイメージは、時には軽い冗談を交えながらも四神′sの親御さん達をまとめる四神達の長としての姿だったが、今の煌龍様の姿は息子の事を自慢げに語る父親の姿であり、その姿に俺は四神′sの試練を行った後の天斗伯父さんの姿が重なって見えたような気がした。

 

 ……あの時、天斗伯父さんも同じような気持ちだったのかもしれないな。

 

 煌龍様達と違って俺と天斗伯父さんは実の親子というわけでは無いけど、俺は天斗伯父さんから家族としての愛情をしっかりと注がれているし、様々な期待を掛けられている。

そして、俺はその事を忘れる事無く、一人の人間や一人の『魔本の主(ブックマスター)』として無理の無い努力を日々重ねている。神様と人間という異なる存在同士の関係ではあるけど、そこにはわざわざ口に出さなくても分かる程の目には見えない確かな絆が存在しているのだ。

 

 ……これからも今の自分に満足せずに『絆の書』の皆と一緒に精一杯努力を続けていこう。この努力は絶対にこれからの自分の糧になるし、いつか天斗伯父さんが困った時の助けになるだろうから。

 

 拳を軽く握りながら心の中でそう誓っていた時、『絆の書』の中から『柚希さん』と輝麒が話し掛けてくる声が聞こえ、俺はハッとしながらその声に答えた。

 

『……輝麒、どうした?』

『あ、いえ……煌龍様がいらっしゃるなら僕達もご挨拶をした方が良いと思って……』

『ん……それもそうだな。それじゃあちょっと待っててくれるか?』

『はい』

 

 輝麒の返事を聞いた後、俺がランドセルの中から『絆の書』を取り出すと、幸凰さん達は興味深そうな様子で『絆の書』に視線を向けた。そして俺が『絆の書』の表紙に手を置きながら魔力を静かに注ぎ込み、『絆の書』から智虎達四神′sと輝麒が姿を現した瞬間、幼い四霊達はその姿にとても嬉しそうな様子を見せながら智虎達へと近付いた。

 

「お前達、久しぶりだな! 元気にしてたか?」

「うん、もちろんだよ!」

光龍(グアンロン)君達も元気そうみたいだね」

「ふふっ、私達だって立派な四霊になるために頑張ってるんだもの。そのためにはやっぱり元気でいなくちゃ! そうよね、希亀(シィーグィ)

「ふふ、そうですね」

「……美鳳(メイファン)の場合は、少し元気すぎる気がしなくも無いがな」

「あら……でも、元気なのに越した事は無いでしょ? 元気じゃなかったら頑張りたい時に頑張れないもの」

「ふふ……確かにそうかもね」

 

 輝麒達は煌龍様の息子さん──光龍君達ととても楽しそうに話していたが、その様子をどこか微笑ましそうに見つめる煌龍様の視線に気付くと、ハッとしながら慌てたように煌龍様の方へ顔を向けた。

 

「も、申し訳ありません……! 煌龍様がいらっしゃるのにご挨拶も無しに……!」

「くく……よいよい。お前達も試練を乗り越えたとは言えまだまだ幼子なのだ、今は久方ぶりに会った喜びを分かち合っておけ。それに、こうしたふれあいもお前達の力を更に高める事にも繋がるのだからな」

「煌龍様……はい、ありがとうございます!」

『ありがとうございます!』

 

 智虎に続いて賢亀達もお礼を述べると、煌龍様はそれに対して静かに微笑みながら頷いた。そしてそのまま俺の方へ向き直ると、楽しそうにニカッと笑った。

 

「では、そろそろ行くとしよう。人間としての仕事があるとシフルは言っていたが、もしかすると既に帰っているかもしれぬからな」

「そうですね。今日の仕事はお昼までだと朝食の時に言っていたので、もう帰ってきている可能性は高いと思いますが、もしかしたら俺や煌龍様の『力』の気配を感じてここまで──」

 

 来ているかもしれない、そう言葉を続けようとしたその時、俺の後ろに視線を向けていた煌龍様が急に何か面白そうな物を見つけたような笑みを浮かべたため、俺は「え……?」と言いながら背後を振り返った。すると、そこにいたのはにこにこと笑う天斗伯父さんだった。

 

「……え? あ、天斗伯父さん……?」

「ふふ……お疲れ様です、柚希君。その様子だと……私の気配は完全に消せていたようですね」

 

 そして、天斗伯父さんは悪戯っ子のような笑みを浮かべながらクスクスと笑った後、俺の背後にいる煌龍様達に話し掛けた。

 

「お疲れ様です、皆さん。今回はわざわざ来て頂き本当にありがとうございます」

「はっはっは! 礼には及ばんぞ、シフル。なあ、お前達」

「ええ、そうですね。シフルさんが呼んでくれたおかげでこうして少し早く柚希殿にも会う事が出来たので、私達としてはちょっと得したような物です」

「ふふ、それならよかったです」

「しかし……何故、わざわざ気配を消して柚希殿へ近付いたのだ? 私にはそういった事をする必要が無いように思えたが……?」

 

 幸凰さんが不思議そうな表情で問い掛けると、天斗伯父さんはクスリと笑いながらそれに答えた。

 

「……ああ、その事ですか。なに、これはちょっとした遊び心のような物ですよ。いつもならば、こういった事は煌龍さんがやるイメージがありますが、私もたまにはこうした事を柚希君にやってみたいと以前から思っていましたし、仕事もお昼までという事で帰り時間も柚希君と同じくらいになるので、柚希君には申し訳ないことをしたと思っていますが、今回このように気配を完全に消した上で後ろからこっそりと近付かせてもらったんです。まあ、柚希君の『力』の気配を探った時に同時に煌龍さん達の『力』の気配を感じた時は流石に驚きましたけどね」

「あはは……まあ、そうですよね。俺も煌龍様達に偶然会った時は、本当に驚きましたし……。ただ、どちらかと言えばさっきの方が驚いたかもしれませんね。天斗伯父さんの話をしていたら本当にいきなり後ろにいたこともそうですけど、天斗伯父さんがそういう事をするのもかなり意外だったので……」

「ふふ、そうでしょうね。けれど、先程も言ったように私もたまにはこうした事をやってみたいと思っていたので、これも良い経験になりましたよ」

「経験って……」

 

 苦笑いを浮かべながら天斗伯父さんの言葉を繰り返していたその時、俺は天斗伯父さんの言う『経験』の意味がふと分かったような気がした。

 

 ……なるほど、たしかにそう考えればこれは俺にとっても『良い経験』になったかもしれないな。だからこそ、この事だけは伝えないといけないよな。

 

「天斗伯父さん」

「はい、なんですか?」

「俺はこういった経験をこれっきりにせず、これからもしていくつもりでいますからね?」

 

 その言葉に天斗伯父さんは一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに俺の言葉の意味が分かった様子でニコリと笑った。

 

「……ええ、もちろん私もですよ」

「ふふ……なら、良かったです」

 

 天斗伯父さんの答えを聞いて俺も同じようにニコリと笑っていると、それを見ていた煌龍様がとても楽しそうな笑みを浮かべながら天斗伯父さんに話し掛けた。

 

「シフル、お前も良き家族を持ったものだな」

「はい、私も常日頃からそう思っていますよ。もっとも、私は柚希君だけではなく、『絆の書』の居住空間に住む方々も大切な家族だと思っていますけどね」

「くくっ、違いない。さて……もう少し話をしたいところだが、この続きはお前達の家に着いてからにするか。恐らく、そろそろ昼餉の時間だろうし、光龍達を『絆の書』の住人達にも引き合わせたいからな」

「ふふ、そうですね。では、そろそろ行きましょうか」

 

 俺のその言葉にその場にいる全員が頷いた後、俺達は他愛の無い話をしながら家に向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 それから約数分後、家に帰った俺は四神′sと輝麒以外の『絆の書』の住人達を外に出し、軽く自己紹介をし合った後、天斗伯父さんに煌龍様や幸凰さん達の、そして四神′sと輝麒に光龍君達の話し相手を頼み、残ったメンバーで手分けをして昼食の準備を始めた。

 

 ……帰ってきて早々大変だけど、天斗伯父さん達の用事や俺自身の用事のためにもここは頑張らないとだよな。

 

「よし……もう一踏ん張りだ」

 

 小さな声で独り言ちて自分を奮起させた後、俺は手伝ってくれている皆に次々と指示を出した。それから数分後、料理を全て完成させた後、皆でそれらを居間に持っていき、手分けをしてテーブルに並べた。そして、俺達も席に着いた後、『いただきます』と俺達は声を揃えて言い、いつもよりも大人数での昼食会が始まった。

 

「……ほう、これ程の味の物を作れるとは……これは将来有望だな」

「ふふ……柚希君は『絆の書』の皆さんと一緒にいつも私のお手伝いをしてくれていますし、少し時間がある時には自分なりに料理の研究をしていますからね。この調子でいけば、私なんてすぐに追い越されてしまいますよ」

 

 俺を見ながらクスリと笑う天斗伯父さんに対して俺は苦笑いを浮かべながら首を横に振った。

 

「いやいや、俺なんてまだまだですよ。味も盛り付け方もまだ天斗伯父さんには及ばないですし」

「くく……そう謙遜(けんそん)するな。その(よわい)でここまで作れるのならば充分大した物だ。まあ、これならいつお前が同じ人間の女子(おなご)懸想(けそう)する日が来たとしても問題は無いだろうな」

「俺が女子に懸想を……」

 

 その時、ふと頭に浮かんだのは夜雀(よすずめ)鈴音(すずね)が仲間になったあの日に出会い、それから臨海学校や遠野旅行の時など何かと縁があった同級生の女子、金ヶ崎雫(かねがさきしずく)の顔だった。

 

 え……な、なんで金ヶ崎の顔が思い浮かぶんだ……!?

 

 金ヶ崎の顔が思い浮かんだ事に驚くと同時に、頬がうっすらと熱が帯びるのを感じていると、その様子を見ていた煌龍様がどこか楽しそうな笑みを浮かべた。

 

「ほう……柚希、誰かそれらしい者でもおるのか?」

「……え、いや……そういうわけじゃ……」

「くくっ……そうか。だが、もしもお前に本当に好いた女子が出来た時には、その者を大事にしてやれ。血の繋がりのある家族も学び舎などで得た友人も大切だが、恋い慕う相手というのはまた違った価値を持っているのだからな」

「……はい、分かりました」

 

 俺の答えに煌龍様が満足げに頷く中、俺は煌龍様の言葉を頭の中で思い返した。

 

 俺が恋い慕う相手、か……今はそういった事に興味は無いし、そんな事にかまけている暇も無いと思っている。だけど、さっき金ヶ崎の顔が浮かんだ事や頬が少し熱かったのは、俺が金ヶ崎の事を少なからず意識しているからなのかもしれないな……。

 

 自分の中に生まれた新たな感情に少し戸惑いながらもそれをどこか嬉しく思っていたその時、「……ん、そういや……」と風之真が何かを思い出したように声を上げるのが聞こえ、俺は小首を傾げながら風之真の方へ顔を向けた。

 

「どうかしたか、風之真?」

「あ、いや……さっきの会話を聞いてちょいと思い出した疑問ってぇのがあってな……」

「疑問……?」

「おう。んで、その前に一つ訊いときてぇんだが……天斗の旦那達みてぇな神様や煌龍の旦那達みてぇな四霊ってぇのは、普通は一人しかいねぇんだよな?」

「……まあ、そうだな。国や神話によって伝えられている神様や聖獣達はそれぞれ違うから、数だけを見れば本当に大勢いらっしゃるけど、本当に同じ存在っていうのは神話や逸話を読む限りだといないかな」

「……だが、そう考えると因幡の白兎である兎和や智虎達の存在ってどうなるんでぃ? こう言っちまうのもあれだが、同じ神様が世界にいねぇってんなら、子供の因幡の白兎──白兎神や白虎達がここにいる事がおかしいって事になるんじゃねぇのかぃ?」

「……なるほど、そういう事か……」

 

 言われてみれば確かにそうだ。今まで疑問に思っていなかったけれど、さっきの俺の言葉を考えれば、因幡の白兎はまだ良いとしても同じ四神や四霊が複数存在するのはおかしい事になる。

 

 ……けど、四神′sや輝麒達は実際にここにいる。という事は、やはり何か理由がある事になるんだけど……。

 

 風之真の疑問についてあれこれと考え始めたその時、それを聞いていた煌龍様が俺と風之真を見ながらニヤリと笑った。

 

「柚希、風之真、そんなにその事が気になるか?」

「あ……はい」

「柚希の旦那が別の世界にいた転生者だとは言え、俺達は今までその知識に助けられてきたわけだから、そこに違いがあるとなれば気になるのは当然だと思わねぇかぃ?」

「くくっ……違いない。では、早速それについて話してやろう」

「はい、お願いします」

 

 そして、その会話を聞いていた『絆の書』の皆や天斗伯父さん達の視線が煌龍様に集まると、煌龍様は静かに話を始めた。

 

「まず、先程柚希が言った事についてだが、これは半分正解だ」

「半分正解……ですか?」

「うむ、そうだ。そして半分正解と言ったのは、あくまでも『人間側』の知識としては正解だからだ」

「『人間側』……つまり、風之真の疑問を解決するには、柚希達人間では知り得ない情報が必要というわけか……」

「その通りだ。そして、人間から見れば一体しか存在しないはずの白兎神や四神や四霊の子が存在する理由だが、これは至って簡単だ。我らにも人間達と同じように連れ合いが存在するからだ。もっとも、連れ合いは元から我らと同じ存在だったわけでは無いがな」

「元から同じ存在じゃなかった……?」

「そうだ。我らは時が来ると、己の連れ合いになってくれる者を求めて世界中を旅する。そして無事に見つけ終え、夫婦(めおと)になってくれる事が決まった後、己の神力をその者に注ぎ込のだ」

「神力を注ぎ込むと……どうなるのですか?」

「……注ぎ込んだ神力によってその身体(からだ)が徐々に変化を始め、変化を終えるまでの間、その者は強い痛みや体調不良などに苦しめられる事になる。

というのも生まれながらに神力を有する者というのは、本来ならば天斗のような神々や柚希のような特異な者のみで、それ以外の者が外部から取り入れようとすれば、それを己に馴染ませるために身体がそれ用に変化をしなければならないからだ。そして、注ぎ込んだ神力が馴染む頃には、完全に同じ存在とまではいかないが、同じような姿へと変化し、正式に夫婦となるのだ」

「……つまり、僕達も将来誰かと夫婦になるためには、その相手にそういった苦しみを与えないといけないのか……」

 

 煌龍様の話を聞いた智虎が哀しそうに俯きながらポツリと呟くと、煌龍様は優しい笑みを浮かべながら静かに首を横に振った。

 

「いや……これはあくまでも自分の血を後世に残すならそうしなければならないという手段の説明に過ぎん。中にはそうしなければ己の力の影響で共にいるだけで連れ合いを苦しめてしまう事になる者もおるからな。だから、好いた相手と共にただ生きていきたいというのならば、そのような手段を執る必要はない。安心するが良い」

「は、はい……!」

「……しかし、そのような話をし始めたという事は……智虎、もしやお前にも柚希のように恋い慕う相手でもおるのか?」

「……え!? いやいや、そんな相手なんて──」

「なに!? そうなのか、智虎!?」

「智虎……まさか私達が知らないところでそんな相手を見つけていたなんて……」

「……まさか四神′sの中で智虎が一番先に恋って奴に目覚めるとはなぁ……こりゃあ剛虎(ガァンフー)の旦那の耳にもちょいと入れておかねぇと──」

「いや、いないですって! と言うか、麗雀ちゃんと風之真さんはいないって分かってるんだから、悪ノリしないで下さい!」

 

 珍しく大声でツッコミを入れ、息を切らしながら肩を上下させる智虎のその様子に光龍君達はポカーンと口を開けて驚いていたが、麗雀と風之真は一度顔を見合わせてから楽しそうにクスクスと笑った。

 

「ふふっ、ごめんごめん。珍しく智虎がからかわれてるところを見たものだから、ちょっと悪戯心が騒いじゃってね」

「ははっ、だな!」

「まったくもう……」

 

 麗雀と風之真の事を智虎はジトッとした目で見つめた後、未だに驚いた様子で智虎の事を見つめている光龍君達にニコリと笑いかけた。

 

「なんかゴメンね? いきなり大声を出しちゃって」

「あ、ああ……それは別に良いけどさ」

「……智虎君があんな風に大声でツッコミを入れるところを初めて見たので、少し……いや、かなり驚いたというか……」

「ええ、本当にビックリしたわ……」

「あははっ、まあそうだろうね」

「たしかに修行の旅に出る前の智虎君しか知らなかったら、驚くのも無理はないよね」

「ああ。以前の智虎であれば、まずツッコミを入れようとすら思わなかっただろうからな」

「ふふ、そうね。でも、こうやってツッコミを入れてくれるようになったり、『金』の力を上手く操れるようになったりしたように智虎も以前よりは遥かに成長したけれど、誰かが困っていたら何か自分に出来る事は無いか訊いたり、誰かが落ち込んでいたら風之真やオルト達と一緒にすぐに励ましに行ったりするような優しい部分なんかは今でも変わらないわ」

「うん、そうだね。まあでも……それは賢亀君や護龍君、そして麗雀ちゃんにも同じ事が言えるんだけどね。成長したり変わったりしたところはあるけれど、本質自体は変わらない……みたいな」

「ふふ、そうだね。だから、これからもそれは忘れないようにしていかないといけないよね」

 

 智虎の言葉に賢亀達が笑みを浮かべながらコクリと頷いていると、それを見ていた煌龍達は満足顔でうんうんと頷いた。

 

「うむ、その通りだ。幼き四神達と幼き麒麟よ、先程の言葉はけして忘れぬようにな」

『はい!』

 

 煌龍様の言葉に智虎達がやる気に満ちた表情を浮かべながら揃って返事をする中、それを見ていた光龍君達はお互いの顔を一瞥した後、同じような表情を浮かべながらコクリと頷き合った。

 

 ふふ……これは同じ修行を重ねる身として、俺も負けてられないかもしれないな。

 

 智虎達や光龍君達の姿に触発されて内側から沸き立ってくるやる気を感じ、俺はそう思いながら拳を軽く握った。

 

 

 

 

『ごちそうさまでした』

 

 十数分後、全員で声を揃えてその言葉を口にした後、俺は後片付けをするために立ち上がりながら天斗伯父さんに声を掛けた。

 

「天斗伯父さん、後片付けは俺と『絆の書』の皆でやるので、天斗伯父さんは煌龍様達との用事の方を優先して下さい」

「ふふ、分かりました。それでは、お言葉に甘えさせてもらいますね」

「はい!」

 

 そして、『絆の書』の皆に指示を出そうとしたその時、「柚希」と煌龍様から突然声を掛けられた。

 

「はい、何か御用でしたか?」

「……うむ、お前に少し頼みたい事があるのだが……良いか?」

「あ、はい……俺に出来る事であればもちろんお引き受け出来ますけど、その用事というのは……?」

「……実は我らの用事が済むまでの間、光龍達を預かってもらいたいのだ」

「光龍君達を、ですか……?」

「そうだ。まあ、我らも和室で話をしたり少し旧友の元を訪れたりするだけではあるのだが、光龍達にとっては我らの用事に付き合うよりも智虎達と共にいた方が楽しいと思ってな。もちろん、お前達さえ良ければなのだが……どうだ?」

「え、えっと……」

 

 さて、どうしたもんかな……せっかくの煌龍様からの頼み事だから、応えたいのはやまやまだけど、居住空間に戻る事が出来る『絆の書』の皆と違って光龍君達はそういう事が出来ないから、夕士達が家にいる間はずっと姿を消していてもらう事になってしまうんだよな……。でも、だからと言って夕士達にいきなり場所の変更を申し出るというわけにも……。

 

 夕士達の事も加味しながら煌龍様の頼み事について考えていたその時、ふと()()()()()が突然想起された。

 

 ……そういえば()()()ってそういう事が出来たんだっけ。という事は、これを上手く利用できれば、光龍君達だけじゃなく、もしかしたら『絆の書』の皆にも居住空間に戻っていてもらわなくても良い事になるかもしれないな。

 

「ただ……アイツらを騙す事になるのは、ちょっと気が引けるけどな」

 

 そんな罪悪感を感じはしたが、今回の一件をどうにかするにはこの手段しか無かったため、俺は覚悟を決めてからニッと笑いながら煌龍様からの問い掛けに答えた。

 

「はい、俺に──いや、()()に任せて下さい!」

「……分かった。では、光龍達には我らから話をしておこう」

「柚希殿、よろしくお願い致します」

「よろしくお願いします、柚希さん」

「はい」

 

 煌龍様達の言葉に答えた後、俺は『絆の書』の皆に後片付けの手伝いをしてくれるように頼み、皆と一緒に昼食の後片付けを始めた。

 

 さて……俺のこの考えは、果たして上手く行ってくれるかな……?

 

 考えついた案について少しだけ不安はあったものの、それで行く事はしっかりと決めていたため、頭の中にあった不安を遠くへと追いやり、考えの成功と食器の後片付けの方へ意識を向けていった。

 

 

 

 

「それじゃあ、行ってきまーす!」

 

 午後1時頃、家の中にいた母さんにそう声を掛けた後、俺は勉強用具などを入れたリュックを背負いながら玄関のドアを開けた。すると、そこには既に同じようにリュックを背負った長谷の姿があり、「やっぱ、長谷は早いな……」と俺は苦笑交じりに独り言ちながら長谷へと近付いた。

 

「長谷、お待たせ」

「ああ、待ってたぜ、稲葉。さて、それじゃあそろそろ遠野の家に行くか」

「おう!」

 

 ニッと笑いながら答えた後、長谷と一緒に柚希の家に向けて歩き始めた。そして、歩きながら色々な話をしていたその時、俺はふと登校中にした話を思い出した。

 

 ……そういえば、柚希の家には今お客さんが来てるんだっけ……。どんな人なのかは柚希の家に着けば分かる事だけど、知る前に予想をしてみるのも楽しそうだし、ちょっと長谷と話してみるか。

 

「なあ、長谷」

「ん、何だ?」

「今朝、昼頃に家にお客さんが来るって話を柚希がしてただろ?」

「ああ、たしか……遠野も会った事がある天斗さんの知り合いが訪ねてくるとしか遠野も報されてないんだったよな」

「そうそう。んで、今朝はあまりその事については話さなかったけど、そのお客さんって結局どんな人なのかなぁと思ってさ」

「……さあな。ただ、遠野も会った事があるという点から考えるなら、例の『友達』とやらが関係してるかもしれないな」

「友達って……ああ、柚希がたまに俺達に相談をしてくる時に話の中に出てくるあの友達か」

「そうだ。まあ、今までの相談内容に出てきたその友達が全員同一人物とは限らないが、その友達の親類縁者が天斗さんの知り合いだったとしたら、その知り合いの付き添いで来ているという可能性もあると思うぜ?」

「なるほどな……」

 

 友達、か……これまでも柚希にその友達がどんな奴なのかそれとなく訊いてみた事はあったけど、いつもはぐらかされたりあまり自分の事を話さないでほしいと言われてるからって言われたりしてまったくどんな奴なのか知らないままだったんだよな……。

けど、長谷の予想がもしも当たっていたら、その友達がどんな奴なのか今度こそ分かるわけだし、長谷の予想が当たっていたら良いなぁ……。

 

 そんな期待を抱きながら俺は柚希の友達がどんな奴なのかを考えてみたり、長谷と色々な話をしたりしながら柚希の家に向けて歩き続け、それから数分が経つ頃には柚希の家に到着していた。

柚希の家は少し広い庭付きの二階建ての一軒家で、柚希の伯父さんである天斗さんが大学の卒業と同時に子供の頃からずっと貯め続けていた貯金を使って建てた物らしいんだが、家の中自体もかなり広い上にリビングやキッチンの他にも縁側付きの和室や世界中の本が収められているという書斎、少し広めの客間まであり、初めて柚希の家に遊びに来た時には、その広さに驚くと同時にどんな物があるのだろうと思ってとてもワクワクしたのを今でも覚えている。

 

 ……今もそうだけど、やっぱり自分の家よりも大きかったり、あまり見た事が無い物があったりすればワクワクはするよな。

 

 そんな事を考えながら家のドアへと近付き、静かにチャイムを鳴らそうとしたその時、ガチャリという音を立ててドアが独りでに開き、それに対して俺が驚く中、柚希が内側のドアノブに手を掛けながら俺達の事を見てニッと笑った。

 

「さっきぶり、二人とも」

「あ、ああ……さっきぶり。というか、もしかして俺達が来てるのを知ってたのか?」

「んー……知ってたというか、あ……来たな、って何となく分かった感じかな? それで、夕士がチャイムを鳴らす前にドアを開けられたってわけだ」

「何となく分かったって……」

 

 柚希はなんて事無いように言うけど、それって普通にスゴくないか……? ドアを開けるタイミングだって本当に俺がチャイムを鳴らす直前だったわけだし、まるで──。

 

()()()()()()()()()()()()()だろ? 夕士」

「……え? ああ……確かにそう思ったけど、本当に何で分かったんだ?」

 

 思っていた事を当てられて驚く俺に対して、柚希は悪戯っ子のような笑みを浮かべながらそれに答えた。

 

「ふふっ、いわゆる幼なじみの勘みたいな奴だよ。さて……このまま話してても寒いだけだし、そろそろ中に入って暖まるとしようか」

「あ、うん……そうだな」

「だな」

 

 柚希の勘の良さに少しだけ疑問を抱きながらも長谷と一緒に「おじゃまします」と言いながら家の中に入ったその時、リビングの方から何やら何人もの子供が楽しそうに話す声が聞こえ、それに対して長谷が首を傾げた。

 

「遠野、リビングに誰かいるみたいだが……もしかして今朝言ってた天斗さんの知り合いの子供とかか?」

「ああ、半分はそうだけど、もう半分は少し前からウチに泊まってる別の知り合いの子供だよ。皆、俺達よりは年下だけど、とてもしっかりとしてるんだぜ?」

「へー……あ、ところでその子達って、柚希が前々から俺達に相談をしてくる時に話に出てくる『友達』だったりするのか?」

「んー……一部はそうだな。まあ、正確に言うなら、去年の春や秋頃に相談をした時の『友達』はそうで、他の時のはまた別の『友達』だよ」

「あ、そうなのか」

 

 つまり、来る時にした長谷の予想は当たってたってわけだな。それにしても……結構楽しそうに話をしてるみたいだけど、一体何を話してるのかな?

 

 リビングから聞こえてくる話し声に興味をそそられていると、柚希はそんな俺の様子にクスリと笑った。

 

「そんなに話の内容が気になるなら勉強会の前にちょっと話に混ざりに行くか? あの子達も夕士達には前々から興味を持ってたから、お互いのことを紹介するのには良い機会だと思うし」

「……ああ、せっかくだからそうさせてもらおうかな。長谷も良いよな?」

「ああ、俺も遠野の話に出て来た『友達』っていうのがどんな奴なのか前々から気になっていたし、遠野の言うようにこれもいい機会だからな。是非紹介してくれ」

「分かった」

 

 俺達の返答に柚希がどこか嬉しそうに頷いた後、俺達はそのままリビングへと向かった。すると、目に入ってきたのはソファーや椅子に座りながら仲良さそうに話す中国服姿の子供達の姿とそれをニコニコとしながら同じように椅子に座って見守る白いシャツに淡い水色のジーンズ姿のブロンドの髪の男性だった。

そして、俺達が近付いていくと、ブロンドの髪の男性と白の中国服姿の短い銀髪の男の子が俺達の姿に気づいた様子でこちらに顔を向けると、とても嬉しそうな笑顔を浮かべながら柚希に話し掛けた。

 

「ふふっ、柚希さん、お疲れ様です」

「これから勉強会ですか?」

「ああ。でも、その前にこれもいい機会だからお互いの事を紹介し合おうと思ってな」

「あ……なるほど」

「確かに、以前から簡単にでも良いので話をしてみたいと思っていましたから、柚希殿が言うようにこれも良い機会かもしれませんね」

「ふふっ、そうね。偶然とは言え、こうして面と向かって会う機会が出来たんだもの。こういう機会は大事にしないといけないわよね」

「うん、そうだね」

 

 柚希の言葉を聞き、黒の中国服姿の短い黒髪の男の子と青の中国服姿の少し長めの青みがかった黒髪を麻紐で一本にまとめている男の子、そして朱色の漢服姿の赤毛のポニーテールの女の子と黄色の中国服姿の短い明るい茶髪の男の子の四人が顔を見合わせて笑いながら話す中、残った金の中国服姿の短い茶髪の男の子と緋色の漢服姿の赤いロングヘアーの女の子、そして緑の中国服姿の短い黒髪の男の子の三人が、少し緊張したような顔で柚希の方を見ると、柚希は大丈夫と言うかのようにふわっとした柔らかな笑みを浮かべながらコクンと頷き、俺と長谷を手で指し示しながら紹介を始めた。

 

「皆、ここにいる二人は俺の幼なじみで、こっちが稲葉夕士(いなばゆうし)でこっちが長谷泉貴(はせみずき)だ。智虎達はもう知ってるけど、夕士達とは小学一年生からの付き合いで、俺にとってとても大切な親友だ。まあ……皆は夕士達に会う機会は少ないかもしれないけど、夕士も長谷も頼りになるとても良い奴だから、仲良くしてやってくれ」

『はい!』

「承知しました」

『ええ』

「ああ!」

「分かりました」

 

 智虎君達がそれぞれ別の言葉で返事をすると、柚希は今度はブロンドの髪の男性と智虎君達を指し示しながら俺達に紹介を始めた。

 

「夕士、長谷、こっちのブロンドヘアの人は、天斗伯父さんの知り合いで『白羽竜(しらはりゅう)』さんだ。そして、ここにいる八人はさっきも言ったように天斗伯父さんの知り合いの子供で、白い中国服の男の子が『白智虎(パイ・ヂィーフー)』で、黒い中国服の男の子が『黒賢亀(ヘイ・イェングィ)』、青い中国服の男の子が『青護龍(チィン・フゥーロン)』で、朱色の漢服の女の子が『朱麗雀(チュー・リーツェ)』。そして、金色の中国服の男の子が『金輝麒(ヂィン・フゥイチー)』で、黄色の中国服の男の子が『黄光龍(フアン・グアンロン)』、緋色の漢服の女の子が『紅美鳳(ホン・メイファン)』で、緑色の中国服の男の子が『碧希亀(ピィー・シィーグィ)』だ。九人とも外国人なんだが、さっき話してたみたいに日本語はペラペラだから、安心して話し掛けてくれ」

「……ああ、分かったぜ」

「了解した」

 

 長谷と一緒に頷きながら答えた後、俺は智虎君達へと近付き、握手をするためにニッと笑いながら右手を差しだした。

 

「今、柚希が紹介してくれたけど、自分でも自己紹介をするよ。俺は稲葉夕士、柚希の幼なじみで親友だ。よろしくな、皆」

「同じく、遠野の幼なじみで親友の長谷泉貴だ。稲葉共々これからよろしくな」

「はい、こちらこそよろしくお願いします!」

「よろしくね、二人とも」

「夕士殿、長谷殿、よろしくお願い致します」

「二人とも、これからよろしくね」

「よろしくお願いします!」

「よろしくな、兄ちゃん達!」

「ふふっ、よろしくね」

「よろしくお願いします」

「ふふっ……よろしくお願いしますね」

 

 そして、俺達の自己紹介が終わると、柚希は軽く時計を確認した後、ニコリと笑いながら智虎君達に話し掛けた。

 

「それじゃあ俺達はそろそろ勉強会をしに行くけど、何か用があったら遠慮せずに来て良いからな」

「はい、分かりました。皆さん、勉強頑張って下さいね」

『ああ』

 

 俺達は揃って返事をした後、智虎君達がいるリビングを出て柚希の部屋がある二階へ向けて歩き始めたが、ふとある事を思い出し、俺は柚希に声を掛けた。

 

「柚希、そういえば天斗さん達はどこにいるんだ?」

「天斗伯父さん達は和室で話をしてるよ。まあ、少ししたら別の知り合いのところへ揃って出掛けるみたいだけどさ」

「そっか……それじゃあ今の内に挨拶をしてきた方が良いよな」

「そうだな。話し中とは言え、挨拶も無しというのは流石に良くないからな。という事で、勉強会の前に和室まで行くとするか」

「おう!」

「ああ」

 

 長谷の言葉に返事をした後、俺達は天斗さん達に挨拶をするため、一時進路を変えて和室へと向かった。そして和室に着いた後、柚希が襖越しに「天斗伯父さん、ちょっと良いですか?」と声を掛けると、すぐに「はい、どうぞ」という天斗さんからの返事があり、柚希は「それでは、失礼します」と言いながら襖を静かに引き開けた。

すると、和室には天斗さんの他に中国服姿の大人の男性達が座布団の上に座っており、俺はその知らない人達の姿と雰囲気に少し緊張をしてしまっていた。

 

 中国服……って事は、この人達がさっきリビングにいた内の誰かのお父さんって事か。

 

 緊張をしながらそんな事を考えつつ柚希の後に続いて「失礼します」と言って和室に入った後、俺達を見ながらニコニコと笑う天斗さんに対してペコリと頭を下げた。

 

「おじゃましてます、天斗さん」

「天斗さん、おじゃましてます」

「はい、いらっしゃい、夕士君、長谷君。勉強会の件は柚希君から聞いてますよ。確か、今日の内に宿題の半分を終わらせるつもりなんですよね?」

「あ、はい。その方が後々楽かなと思って、三人でそう決めたんです」

「ふふ、そうでしたか。皆さん、無理はしない程度に頑張って下さいね」

『はい』

 

 俺達が声を揃えて返事をし、天斗さんがニコニコと笑いながらどこか満足げにコクンと頷いていると、光龍君と同じ金色の中国服を着た体格の良い男性が柚希を見ながらニッと笑った。

 

「柚希、その二人がお前の幼なじみであり親友だという者達か」

「はい、小学一年生の春からの付き合いで、これまでも様々な相談に乗ってもらったり、支えてもらったりしている俺にとって自慢の親友達です」

「くくっ……なるほどな。それならばシフ──天斗の友人であり、柚希の友人として我らもここらで自己紹介をしておくとしようか」

 

 そう言うと、中国服姿の男性達は静かに立ち上がり、ゆっくりと俺達に近付いた後、金色の中国服姿の男性が落ち着いた調子で自己紹介を始めた。

 

「我は黄煌龍(フアン・ファンロン)、先程も言ったように天斗と柚希の友人だ。そして、今はリビングにいる光龍の父親なのだが……もうわが息子達には会ったか?」

「あ、はい……ちょうどさっき会ってきたところです」

「はっはっは、そうかそうか! まあ、我らはそう何度もこの家を訪れるわけでは無いため、会う機会もあまり無いとは思うが、今日(こんにち)のように会う機会があったならば、是非とも遊びに誘ってやってくれ」

「は、はい……!」

「分かりました」

 

 俺達の返答に煌龍さんが満足げにうんうんと頷くと、それを見ていた他の男性達が優しい笑みを浮かべながら俺達に話し掛けてきた。

 

「初めまして、私の名前は金聖麒(ヂィン・シァンチー)と言います。煌龍さんと同じく天斗さん達の友人で、輝麒の父親です。どうぞよろしくお願いします」

「私は美鳳の父親の紅幸凰(ホン・シィンフアン)だ。娘共々これからよろしく頼む」

「そして、私は希亀の父親の碧恵亀(ピィー・フゥイグイ)です。これからよろしくお願いします」

「あ……稲葉夕士、です。よろしくお願いします」

「長谷泉貴です。皆さん、どうぞよろしくお願いします」

 

 そして、俺と長谷の自己紹介が終わると、柚希は天斗さん達を軽く見回してからペコリと頭を下げた。

 

「それじゃあ、俺達はそろそろ行きますね。お話中、すみませんでした」

「ふふ、謝る必要はありませんよ。私達の話自体はもう終わったので、そろそろ別の友人のところに行くところでしたから」

「あ、そうだったんですね。ところで、その友人っていうのは誰なんですか?」

「くく……それは秘密だ。……だが、ヒントを出すとすれば、我らのような『四人一組』の奴ら、とでも言ったところか」

「四人一組……」

 

 そう呟いた後、柚希が何かに気付いたようにハッとした表情を浮かべながら煌龍さんに視線を向けると、煌龍さんは悪戯っ子のような笑みを浮かべながらコクンと頷き、柚希はそれを見ると納得顔で「なるほど……」と呟いた。そして、その柚希の様子に天斗さんはクスリと笑った後、煌龍さん達へと視線を向けた。

 

「さて……それでは、そろそろ行くとしましょうか。先程連絡をしたところ、彼らも私達の来訪を待ち望んでいるようでしたから」

「そうかそうか……それならば、旧友達の元へさっさと行ってやるとするか」

「そうですね。それでは柚希君、行ってきますね」

「はい、いってらっしゃいです、天斗伯父さん」

「そして、夕士君、長谷君。どうぞゆっくりしていって下さいね」

「あ、はい」

「分かりました」

 

 天斗さんの言葉に返事をした後、天斗さん達はそれぞれの言葉で俺達に『行ってきます』を言いながら和室を出ていった。そして、それに続いて俺達も和室を出た後、そのまま二階に続く階段を上がり、上がりきってすぐの所にある柚希の部屋のドアをゆっくりと押し開け、俺達は部屋の中へと入った。

その後、中央にある小さな折りたたみ式のテーブルの近くに俺と長谷が背負っているリュックサックを置いていると、柚希は窓際にある勉強机をチラリと見た後、ドアノブに手を掛けながら俺達に声を掛けてきた。

 

「さて……それじゃあ今から適当に何かつまめる物を用意してくるけど、飲み物について何か希望はあるか?」

「んー……特には無いかな」

「俺もだ」

「分かった。それじゃあお前達は先に勉強会の準備したり好きなように寛いだりしていてくれ」

「おう!」

「了解だ」

 

 俺達の返答に柚希がコクンと頷き、部屋を出ていった後、俺が床に座ってふぅと息をついていると、それを見た長谷がクスリと笑った。

 

「和室の時に何となく気づいてたけど、やっぱり緊張してたんだな」

「……まあな。長谷、お前は緊張しなかったのか?」

「うーん……俺はあまり緊張しなかったかな。親父達の付き合いで、色々なところに行く事もあるから、たぶん知らない人に初めて会うっていう事に慣れちゃってるんだろうな」

「ははっ、なるほどな。それにしても……さっきだけでもかなりの出会いがあったよな」

「ああ。智虎君達にしても煌龍さん達にしても良い人達ばかりみたいだし、これから末永く付き合っていきたいよな」

「だな」

 

 そんな事を話しながら長谷と笑い合った後、俺は部屋の中を何となく見回した。柚希の部屋は入ってすぐ横に小説や妖怪などについての伝承なんかが収まっている本棚があり、その向かいには柚希が普段使っている勉強机と窓、そして部屋の右端にはもう一つの窓と本棚から少し離されたところにベッドが置かれ、その向かいには壁掛け時計やクローゼットや箪笥、布団などが入った押し入れがある。

因みに、今は部屋の中央にテーブルが置かれているが、俺達が柚希の家に泊まる時にはそのテーブルは畳んで片付け、押し入れから出した布団を三つ敷いて並んで寝ていたりする。

 

 ……来年も──いや、これからもずっと柚希と長谷と一緒に仲良く遊んだり泊まったり、色々な事をしていけたら良いなぁ……。

 

 そんな事を考えながら思わずクスリと笑っていた時、それを聞いた長谷が不思議そうに話し掛けてきた。

 

「どうかしたのか、稲葉?」

「……いや、柚希と長谷ともこれからもずっと仲良くしていきたいなって思っただけだよ。さっき、柚希は俺達の事を頼りになるとても良い奴とか大切な親友達だとか言ってくれてたけど、俺も柚希と長谷に対してそう思ってるからさ」

「稲葉……ああ、俺もだ。あの入学式の日に出会い、今日まで色々な事を一緒にやって来たが、そのどれもが俺にとって大切な宝物だ。だから、お前達とはこれからも仲良くしていきたいと思ってるよ」

「長谷……へへっ、これからもよろしくな」

「……ああ、こちらこそ」

 

 そう言いながら拳をコツンとぶつけ合った後、何となく柚希の勉強机に視線を向けたその時、机の上に『ある物』が載っている事に気づき、俺は勉強机に近付いた。すると、それはいつも柚希の傍にあり、俺が柚希と出会うきっかけにもなった妖怪や西洋の怪物などが描かれた画集だった。

 

「……そういえば、柚希がこれを持ってるのを見掛けて話し掛けたのが、柚希との最初の出会いだったんだよな」

「それで、お前達が自己紹介をしてるところに俺が混ざりに行ったわけだが、考え方次第では俺達はこの本に導かれたのかもしれないな」

「そうかもな。それにしても……この本の文字って本当にどこの国の文字なんだろうな?」

「さあな……ただ、それよりも一つ気になる事があるんだ」

「気になる事って……?」

「この本の事を遠野は『絆の書』って呼んでいるだろ? 何回か見せてもらっている内にこれにちょっと興味が湧いて、どこの国の本なのか調べてみた事があるんだが、いくら調べてみてもネットの検索に引っ掛からないんだよ」

「検索に引っ掛からないって……そんな事があるのか?」

「無いわけでは無いさ。だが、検索に引っ掛からない以上、この『絆の書』はただの画集ではない可能性が高いと思う」

「ただの画集とは違う、か……」

 

 ただの画集じゃないとすると、この『絆の書』は一体どういう物なんだ……?

 

 そんな疑問を抱きながら何となく『絆の書』を開き、そのままページをパラパラッと捲っていたその時、『犬神』が描かれたページがあるのに気付き、俺は夜の神社で出会ったアイツの事を思い出した。

 

「犬神……か」

「ん……稲葉、犬神がどうかしたのか?」

「あ……いや、こういう画集に犬神が描かれてるのは珍しいなと思ってさ」

「まあ、そうだな。けど、『絆の書』は古今東西の妖や怪物達が描かれているらしいし、そういうあまり見ないモノが描かれていても不思議ではないかもな」

「……そうだな」

 

 ……蒼牙、今頃元気かな。アイツは柚希の友達らしいし、柚希なら蒼牙の事を知ってそうだけど、アイツとの約束を破るわけにはいかないし、どっかでまた会えるのを楽しみにしてた方が良いよな。

 

 蒼牙の顔を思い出し、クスリと笑いながらまたページ捲っていたその時、とあるページに描かれているモノの姿を見て、俺は『ある事』に気が付いた。

 

「……ん、そういえば……」

「どうした、稲葉?」

「長谷、このページに描かれてるのって……たぶん『白虎』だよな?」

「どれどれ……ん、そうだな。それで、その次が『玄武』でその次が『青龍』、そして更にその次が『朱雀』でその次が『麒麟』か。麒麟以外はいわゆる『四神(しじん)』と呼ばれる奴らだが、それがどうかしたのか?」

「いや、偶然だとは思うんだけど……さっき会った智虎君達の内、輝麒君以外の苗字と名前の『動物』のところを組み合わせたら、全員この『絆の書』に載ってる奴と同じ名前になるなと思ってさ」

「……言われてみれば、確かにそうだな。玄武の『玄』には黒っていう意味があるから、稲葉の言っている事は間違ってない。まあ、稲葉の言う通り、偶然なのかもしれないが、それにしては揃いすぎだよな……」

「ああ……」

 

 もしかしたら、智虎君達の家は四神を祀っていて、その力に肖るために代々そういう名前を付けてきたという可能性も無くは無いが、そんな家の人達が一堂に会してる上、それが描かれた『絆の書』を持つ柚希と交友関係があるというのは、何というかあまりにも出来過ぎている気がする。それに──。

 

「……よく見たら、この『絆の書』には『(さとり)』や『雪女』、『獏』に『人魚』まで載ってるけど、これらって全員今まで何らかの形で俺達が名前を知ったり近くにいるかもしれないってなったりした奴らだよな……」

「……そうだな。四神にしろこの妖怪達にしろ何か俺達の目には見えない力が働いてるような感じがするな」

「目には見えない力……」

 

 長谷の言葉を聞きながら俺は『絆の書』に視線を向けた。どこの国の物か分からない文字が書かれているこの『絆の書』だが、もし長谷の言うような目には見えない力がこれにあり、柚希や俺達はそれに導かれる形でこの『絆の書』に描かれたモノ達との出会いを果たしているとしたら、この『絆の書』は長谷の言うようにただの画集なんかでは無く、何かの力を持った魔法の本という事になるのかもしれない。

 

「でも、本当にそうだとしたら天斗さんはどうやってこれを手に入れたというんだ……?」

 

『絆の書』を見ながらそんな疑問を口にしていたその時、外の方から階段を上がってくる音が聞こえ、俺達は同時にそちらへ視線を向けた。

すると、目に入ってきたのはホカホカと湯気を上げる三つのティーカップとクッキーを載せたお盆を両手で持っている柚希の姿であり、柚希はお盆に注意を払いながら俺達の方に視線を向けると、部屋の中に入りながらニコリと笑った。

 

「二人ともお待たせ。和室の片付けもしてたら、ちょっと遅くな──ん、どうした? 『絆の書』なんて持って……」

「……柚希、一つ訊いても良いか?」

「良いけど……何だ?」

「スゴく子供っぽい事を訊くようだけど、この『絆の書』って……魔法の本とかでは無いよな?」

 

 その瞬間、お盆を机の上に置いていた柚希は表情を硬くしながら体をビクリと震わせたが、すぐに微笑みを浮かべながらクスリと笑った。

 

「魔法の本って……あははっ、そんなわけ無いだろ? 『絆の書』はあくまでもただの画集だよ。まあ、表紙やページも古ぼけた感じだし、書かれている文字もあまり見ない物だから、そう思うのも仕方ないけどさ」

「……けど、長谷が前にパソコンで調べてみたけど、検索に引っ掛からなかったって言ってたぜ? そんな事ってあり得るのか?」

「無いわけでは無いと思うぜ? なにせ、この『絆の書』はこの世に一冊しか無い『自費出版本』らしいからな」

「自費出版……確か、著者が自分で費用を出して本を出す事だったな」

「そう。何でもこの本は、著者が今までに出会った妖怪や西洋の怪物などの超常的なモノ達との出会いを記録するために書いた本で、自分で読み返すためだけに書いたから、これの存在を知っていたのは著者自身と著者にとって一番親しかった友人、後は出版に携わった業者くらいで、『絆の書』自体もこの一冊しか無いんだってさ」

「な、なるほど……」

 

 そういう事なら、確かにネットの検索に引っ掛からなくてもおかしくないかもしれない。でも……。

 

「だとしたら、天斗さんはどうやってこれを手に入れたんだ?」

「ああ、それなんだけどな。なんでもその著者にとって一番親しかった友人っていうのが、天斗伯父さんみたいなんだ」

「え、そうなのか!?」

「ああ、どうやらそうらしい。まあ、天斗伯父さんは昔から旅行好きだったらしいから、交友関係が広くてもおかしくは無いけどな。それで、著者はもう亡くなってるらしいんだけど、作者の遺言で天斗伯父さんがこの『絆の書』を受け取る事になり、『絆の書』は今も変わらず世界中の誰もが知らない本としてここにあるわけだ。

因みに、俺が貰った理由は、天斗伯父さん曰く俺からその友人と同じ雰囲気を感じ取った事で、俺が持っていた方が良いと思ったからだってさ」

「そんな事が……」

「まあ、『絆の書』に関してはそんなところだな。因みに、他に何か質問はあるか?」

「あ、えっと……この『絆の書』に今まで俺達が名前を知ったり近くにいるかもしれないってなったりした妖怪達が載ってるんだけど、これも偶然なのか?」

「……ああ、覚とか人魚とかだな。まあ、偶然だとは思うけど、俺的には本に宿った著者の思いが俺達とそういったモノ達を引き寄せたって考える方が好きかな」

「そうか……ところで、さっきこの『絆の書』は著者が実際に出会ったモノ達との出会いを記録するために書いた本だと言っていたが、妖怪達はまだ良いとしても、遠野は著者が『オルトロス』や『白竜』とも本当に出会ったと思っているのか?」

 

 長谷のその問い掛けに、柚希はニッと笑いながら頷いた。

 

「ああ、思ってるさ。確かに、実際に会えたのかは本人にしか分からないけど、俺はそういうモノ達がいて欲しいし、いると信じてる。だから、『絆の書』の著者だって本当にそういうモノ達と出会ってきたんだって思ってるよ。

それに、そうじゃなきゃここまで活き活きとした絵も描けないし、そもそも『絆の書』自体作ろうなんて思わないだろ?」

「柚希……」

「だから、俺もいつかはそういうモノ達と出会いたいし、今の夕士や長谷のようにとても親しい友人になりたい。まあ、必ずしもそうはいかないだろうけど、その方が楽しいはずだからさ」

 

 そう笑いながら言う柚希の顔はとても楽しそうな物であり、心からそう思っているのがハッキリと感じられた。

 

 ……ここまで話を聞いた感じだと、柚希が嘘をついてるとはまったく思えない。つまり、『絆の書』は本当に魔法の本なんかじゃなく、天斗さんが亡くなった友人から受け継いだ物だったって事か。

 

 柚希の話からそんな事を思いながらふと長谷に視線を向けると、長谷も俺に視線を向けており、俺の視線に気づくと確信に満ちた目をしながらコクンと頷いた。そしてそれに対して頷き返した後、俺は『絆の書』に対して疑いを全て彼方へと追いやりながら柚希に対してニッと笑った。

 

「そっか。なんかゴメンな、突然変な事言いだして」

「いや、別に良いよ。さっきも言ったように『絆の書』の見た目もなんかそれっぽいし、そう思うのも仕方ないからさ。

それに、御利益がありそうとか魔法の道具とかって言うなら、この前の旅行で雪村と金ヶ崎とお揃いで買った天然石のチャームとかいつも付けている水晶の首飾り──『ヒーリング・クリスタル』とかの方がそれらしいかな。もっとも、『ヒーリング・クリスタル』は諸事情で今は天斗伯父さんに預けてるけどさ」

「へえ……あの首飾りって『ヒーリング・クリスタル』っていう名前だったのか」

「まあな。前に夕士も体験した通り、この『ヒーリング・クリスタル』にはちょっとしたお呪いが掛けられていて、疲れてる時とかどこか怪我をしてる時とかにこれを握ると、それらを癒してくれる力があるんだ。だから、どちらかと言えばこっちの方が魔法の道具らしいかな」

「ははっ、確かにそうかもな」

 

 クスリと笑いながら言う柚希の言葉に俺が笑いながら頷いていると、柚希は俺を見つめながらどこか安心したような笑みを浮かべていた。そして、そのまま壁掛け時計に視線を向けた後、「……そろそろ始めた方が良いな」と呟くと、俺達の方へ視線を戻してからニッと笑った。

 

「それじゃ、話はここまでにしてそろそろ勉強会を始めようぜ。話は休憩中でも出来るしな」

「だな!」

「ああ」

 

 そして、柚希も交えて勉強道具の準備をした後、俺達は当初の予定だった冬休みの宿題を終わらせるための勉強会を始めた。

 

 

 

 

「……よっし、これで終わりだ!」

 

 勉強会開始から約3時間後、取り掛かっていた問題集の最後の問題を解き終え、俺が嬉しさから大きな声を上げていると、その様子を見た柚希と長谷が同時にクスリと笑った。

 

「お疲れ様、夕士」

「あんなに頑張ってたんだし、流石に目とかも疲れたんじゃないか?」

「んー……まあな。けど、これで元々の目標よりも多く終わらせる事が出来たんだし、後はスゴく楽になるよな」

「そうだな。これで問題集系は大体終わったし、これで冬休みは気楽に過ごせるだろうな」

「だな。けど、だからと言って油断はするなよ、夕士」

「おう! ……って、何で俺だけに言うんだよ!」

 

 柚希の言葉に俺がツッコミを入れていたその時、部屋のドアがトントンとノックされる音が聞こえ、柚希はドアの方を向きながら「はい、どうぞ」と声を掛けた。

すると、ドアがゆっくりと開くと同時に、智虎君達と見慣れぬ和服姿の少年達、そして黒いシャツに赤いズボン姿の少年が揃って部屋の中へと入ってきた。

 

「智虎達……それと、『真』に『九朗』に『和』、後は『雀』に『双志(そうし)』か。何か俺達に用事だったか?」

「えっと……用事という程でも無いんですけど……ちょっと夕士さん達とお話がしたいなと思って……」

「俺達と?」

「宿題も一段落したし、それは構わないけど……えっと、そっちの五人は?」

 

 首を傾げながら智虎君達と一緒に現れた少年達に視線を向けると、その中の同い年くらいの藍色の和服姿の明るそうな少年が楽しそうにニッと笑った。

 

「おっと、確かに自己紹介がまだだったな。俺は『風祭真(かざまつりまこと)』、歳は一個だけ違ぇが、歴とした柚希の兄ちゃんのダチだ! よろしくな!」

「僕は『矢多九朗(やたくろう)』といいます。真お兄さんと同じで柚希お兄さんの友達です。よろしくお願いします」

「えっと……私は『因幡和(いなばのどか)』です。真お兄さんと九朗君と同じで、柚希お兄ちゃんの友達です。よろしくお願いします」

「やっほー、僕は『小夜雀(さよすずめ)』。同じく柚希の友達だよ、よろしくね!」

「そして、僕は『犬走双志(いぬばしりそうし)』、真兄ちゃん達と一緒で、柚希兄ちゃんの友達だよ。よろしくね」

 

 真君達の自己紹介が終わると、柚希はニコリと笑いながら真君達を手で指し示した。

 

「真達も天斗伯父さんの知り合いの子供達で、智虎達とは違って住んでる所も近いから、暇があればこうして自分達から遊びに来るんだよ。因みに、和が俺を柚希お兄ちゃんって呼んでるのは、初めて会った時にそう呼んで良いかと訊かれて良いって答えたからだ」

「なるほどな……お兄ちゃんなんて言うから、てっきり柚希の親戚の子達かと思ったぜ」

「はは、そうだな。ところで、真君達も智虎君達と一緒で、俺達と話をしに来たのか?」

「へへっ、まあな。突然、柚希の兄ちゃんに会いてぇなと思って、九朗達を連れてちょいと立ち寄ってみたら、冬休みの宿題を終わらせるための勉強会ってぇのを少し前からやってるって智虎達から聞いたもんでな。

あんまり根を詰めてもいけねぇと思って、話をしたがってる智虎達も交えてこうして馳せ参じたってぇわけだ」

「因みに、竜さんも誘ってみたんですが、『誘って頂いてありがたいのですが、少し掃除をしたいところがあったので、今回は遠慮させてもらいます』と言われてしまったので、僕達だけで来たんです」

「まあ、そういう事なら仕方ないさ。さて……それじゃあ今度は皆分の飲み物やつまめる物の準備をしてくるよ。真、九朗、和、雀、双志、手伝ってもらっても良いか?」

「おうよ!」

「はい」

「もちろんです!」

「オッケー!」

「うん!」

 

 そして、柚希達が仲良く部屋から出ていった後、長谷はふぅと一度息をついてから智虎君達を見ながら静かに口を開いた。

 

「……さて、俺達と話したいという事だったけど、俺達と何を話したいんだ?」

「えっと……実は、特に何かについて話したいというのは無いんです」

「うんうん、ただ夕士さん達と話をしてみたいというだけだったからね」

「そうなのか……でも、何でだ?」

「そうですね……強いて言えば、夕士さん達がどういう方達なのかを知りたいからでしょうか」

「大体の人となりなんかは柚希から聞いていたけど、やっぱりちゃんとどういう人なのかを知るなら面と向かって話をするのが一番でしょう?」

「まあ、確かにそうだな。それにしても、俺達の人となりについて柚希が話してたって……具体的にはどんな風に言ってたんだ?」

「そうですね……夕士さんはいつも明るく活発で見ているこっちまで元気をもらえ、何かボケを振ってみてもちゃんと返してくれるとても優しくて律儀な性格だと言っていました。

それで、長谷さんは冷静な判断力や豊富な知識を持っている上、頭も良いし運動神経も抜群だけど、その裏では自分を高めるための努力を絶えず続けている努力家だと言っていました」

「そして、お二人とも自分にとっては掛け替えのないとても頼り甲斐のある親友で、お二人との関係は生涯大事にしていきたいと言っていましたよ」

「柚希が……」

「そんな事を……」

 

 智虎君達や煌龍さん達に紹介をしてくれた時も色々と言ってくれてたけど、まさかそんな風に思ってくれてたなんてな……。

 

 智虎君達の口から語られた柚希の思いに俺達が少し驚く中、智虎君は俺達を見ながらクスリと笑った。

 

「柚希さん、夕士さん達の話をする時はいつも楽しそうなんです。もちろん、妖怪や聖獣のような人ならざるモノ達の話をする時もとても楽しそうですけど、夕士さん達の話をする時もそれに負けないくらい──いや、それよりも楽しそうに話をしてくれるんです」

「だから、こうして面と向かって一度話をしてみたかったんです」

「柚希殿があそこまで楽しそうに話をする方々が果たしてどんな方なのかを知るため」

「そして、柚希経由とは言え、私達の悩みを解決してくれたお礼を言うためにね」

「なので、そのお礼を今言わせてもらいますね。夕士さん、長谷さん、本当にありがとうございます」

『ありがとうございます』

 

 そう言いながら智虎君達が揃って頭を下げる姿に、俺と長谷はどこか気恥ずかしさを感じながら顔を見合わせたが、同時にコクンと頷きながらニッと笑った後、俺は智虎君達に声を掛けた。

 

「皆、お礼なんて別に良いよ。俺達は柚希から話を聞いて俺達が思った事を話しただけだからさ。な、長谷」

「ああ。それに、『友達』が困っていたら助けたり話を聞いたりするのは当然の事だからな」

「友達……」

「そう。まあ、その頃はまだ出会ってなかったけど、今の俺達はもう立派な友達だ」

「たとえ、遠野経由で知り合い、まだそんなに話していないとしてもな」

「だから、これからも何か困ったり相談したい事があったりしたら、遠慮なく柚希経由で話してくれ」

「……まあ、大した事は出来ないかもしれないけど、俺達でよければ出来る限り力になるからさ」

 

 そう言いながら智虎君達に微笑みかけると、智虎君達はそれに対して嬉しそうな笑みを浮かべた。

 

「……分かりました。夕士さん、長谷さん、本当にありがとうございます」

「それと……お二人も何か悩みがあったら、柚希さん経由で僕達に相談して下さいね」

「まだ私達は幼いですが、それでも何か出来る事はあると思いますから」

「そうね。友達が困っていたら、話を聞いたり助けたりするのは当然の事だもの」

「ふふっ、そうだね。なので、その時は遠慮なんてせずに何でも話して下さい」

「難しい話はちょっと苦手だが、それでも兄ちゃん達のために全力で頑張るからさ!」

「こうして会えたのも何かの縁だし、二人とはこれからも末永く付き合っていきたいものね」

「ええ、そうですね」

 

 そして仲良く笑い合うと、智虎君達は揃って俺達の目を真っ直ぐに見てから、ニコリと笑った。

 

「夕士さん、長谷さん、改めてこれからよろしくお願いします」

『よろしくお願いします』

「……ああ、こちらこそ改めてこれからよろしくな!」

「これからよろしくな、皆」

 

 智虎君達の言葉に答えながら俺達もニコリと笑っていた時、再び階段の方から柚希達がゆっくりと上がってくるのが聞こえ、チラリとそちらに視線を向けると、ドアが静かに開くと同時に真君達を連れながらどこか嬉しそうな表情を浮かべる柚希の姿が目に入ってきた。

 

「柚希、何だか嬉しそうだけど、何かあったのか?」

「……ん? ああ、夕士達と智虎達が随分仲良くなったみたいだから、どっちもの友達としてそれが嬉しくてな」

「まあ、確かに仲良くはなったけど、よくそれが分かったな?」

「……ふふ、俺は雰囲気からでも俺達が席を外していた時にどんな事があった何となく分かるからな」

「……なるほどな」

 

 言われてみれば、柚希は一年生の頃から人の気持ちなんかには鋭かった覚えがあるな。だからこそ、柚希のおかげで助かったって言ってる奴も多いし、今でも頼られる事は多いわけだけど、それでも柚希は嫌な顔一つせずにソイツの話を聞いたり手助けをしたりする。

もっとも、自分の手に余ると感じた時は、俺や長谷にも手助けを頼んでくるわけだが、そういう状況になっても基本的には柚希が問題解決の話し合いの進行役を買って出、最終的にどんな事でも解決をしてきた。

でも、それは柚希がいつだって相手の事を考えながら行動しているからで、そういう点については俺も長谷も多分勝てないだろう。けど、それはそれで良いのかもしれない。

俺達は今までお互いの弱いところを補いながら過ごしてきたし、これからもそういった関係性である事が望ましいと思っているから。

 

 そんな事を考えた後、俺は長谷と一緒に柚希達が持ってきてくれた物達を机の上に並べ、大切な友達たちとの話に花を咲かせ始めた。

 

 

 

 

「……それじゃ、また明日な、柚希」

「また明日な、遠野」

「ああ、また明日な」

 

 午後5時頃、夕焼け空の下を帰っていく夕士達を見送った後、俺は緊張が解れていくのを感じながらふぅと息をついた。そして家の中に入って、玄関を静かに閉めた後、『絆の書』を片手に持ちながら『伝映綱』を通じて『協力者』に声を掛けた。

 

『……お疲れ様、()()()。ずっと同調をしていたから、流石に疲れただろ?』

『ふふ、ありがとうございます。確かに今までに無い事だったので、いつもより疲れてはいますが、少し休めば回復する程度なので、ご心配には及びませんよ』

『……そうか』

 

 こころの返答にクスリと笑いながら答えた後、俺はこころとの同調を解きながら居間へと移動し、既に元の姿に戻ってソファーに座っている智虎達に声を掛けた。

 

「皆もお疲れ様。慣れない人間の姿だったから、いつもよりも疲れたんじゃないか?」

「あはは……まあ、そうですね」

「でも、ようやく夕士さん達にお礼を言う事が出来たので、僕達的には大満足です」

「……違いないな。それに、いつかは私達も自分の力で人間の姿に変化する事が出来るようにならないといけないと思っていたので、今回の件はとても良い経験になりました」

「そうね。まあ、それはまだまだ先の話だろうけど、いつかは達成してみせるわ!」

「うん、そうだね。ここまで色々頑張ってきたからには、それも絶対に達成しないといけないからね」

「……まあ、そうだな。立派な黄龍になるって父さんとも約束したし、それくらいは楽勝だって言えるようにはならないとだよな」

「ふふっ、そうね。そうじゃないと、父さん達に笑われちゃうもの」

「ふふ……ええ、そうですね」

 

 智虎達がやる気に満ちた目をしながら話す様子を同じく元の姿に戻った風之真達が微笑みながら見つめる中、白竜の姿に戻っているヴァイスがニコリと笑いながら話し掛けてきた。

 

「柚希さん、お疲れ様でした」

「……ああ、ありがとう。ヴァイスもお疲れ様。あんなに大人数を人間に変化させるのは、流石に疲れたんじゃないか?」

「いえ、このくらい大丈夫ですよ。それにしても……今回の作戦が成功して本当に良かったですね」

「……そうだな」

 

 微笑みを浮かべながら言うヴァイスの言葉に答えた後、俺は煌龍様から頼み事をされた時から今までの数時間の出来事を想起した。煌龍様から用事が済むまでの間という事で光龍君達の事を頼まれた時、俺はヴァイスが使える対象を人間の姿に変える魔術の事を思い出し、それを光龍君達と智虎達、そして風之真達にかけてくれるように洗い物を終えた後にヴァイスに頼んだ。

というのも、四霊の姿では夕士達を驚かせてしまう事になる上、どうして四霊が居るのかなどについて話さないといけなくなるが、人間の姿であれば今回のように『天斗伯父さんの知り合いの子』という説明だけで済むからだ。

因みに、智虎達も人間の姿に変えてもらう事にしたのは、光龍君達と一緒にいてもらった方が、智虎達も光龍君達も楽しいだろうと思ったからと前々から夕士達に悩みを解決してもらったお礼を言いたいと言っていたのを覚えていたからで、風之真達を人間の姿に変えてもらったのは、風之真達も以前から夕士達と話をしてみたいと言っていたのを覚えていたからだ。

そして、ヴァイスにこの事を頼むと、ヴァイスはスゴく驚いた様子を見せたが、すぐに楽しそうな笑みを浮かべながらこれを了承してくれた。その後、俺はもう一人の協力者である覚のこころに声を掛け、夕士達が家にいる間、俺と同調をし続けて欲しいと頼んだ。

何故かと言えば、理由はまったく分からないが、夕士達の勘が年々鋭くなっており、それによって今回のように『絆の書』や俺の『力』の事について何かしらの疑問を抱く可能性があると日頃から感じていたからだ。

だが、もしそういう事態になったとしても、事前にこころと同調をしておけば、『波動や気を感じ取る能力』とこころとの同調時能力を使いながら、夕士達の様子を観察しつつ真実の一部を織り交ぜたそれ用の作り話をする事で夕士達からの疑いを一時的にでも晴らす事が出来ると思ったのだった。

もちろん、夕士達を騙す事に変わりは無いが、今朝も考えていたように(てんせいしゃ)の事や『絆の書』の事について話すべきタイミングは俺が考えているタイミングがベストだと思っており、その時までは絶対に夕士達には話さず、隠し続ける必要があるのだ。

話した事で生じてしまう本来とは違う流れが想像できないというのもあるが、何よりもこの事を夕士達が受け入れられずに俺から離れていってしまう可能性がある事が辛いからだ。もちろん、そうならずに夕士達がこれまで通りに接してくれる可能性もあるが、自分達が今まで普通の人間として接してきた相手が、転生者というイレギュラーだと知った時のショックは計り知れない。

その上、夕士が『魔本の主(ブックマスター)』となった後や世の中には人間とヒトならざるモノが普通に共存している場所があるという事実を知った長谷ならまだ何とかなるだろうが、この事実を知った事で本来関わる事が無かったはずのヒトならざるモノ達との出会いが発生し、それによって二人が命の危機に瀕するなんていう最悪の可能性もある。そのため、俺はヴァイスだけじゃなくこころにも協力を頼んだのだった。

そして、こころにその事を頼んだ時、こころは快く引き受けてくれたのだが、ここである一つの問題が生じた。それは長時間に渡る同調をどうやって実現させるかだ。俺の『力』の量は問題無かったのだが、こころの方がそれを維持し続けるだけの量の『力』をまだ持っていないため、途中で同調が強制で切れてしまう上にそのペナルティでこころを最低でも今日一日はこっち側に出してやれなくなる事になるからだ。

そして、その事についてこころと一緒に考えた結果、俺達が行き着いたのが『ヒーリング・クリスタル』の強化と制約の緩和だった。『ヒーリング・クリスタル』は『浄化』や『治癒』、『力の貯蔵と分配』の力を内包しているが、今までだとこれらの力を使うためには俺が魔力を注ぎ込まないといけなかった。

だが、俺以外にも天斗伯父さんや『絆の書』の仲間達でも使えるようにその制約を緩和してしまえば、事前に俺が『力』を『ヒーリング・クリスタル』の中に貯めておき、それをこころに使わせる事で同調を維持できると考えたのだ。

そして、俺達はそれを実行に移すために天斗伯父さんの元へ向かい、今回の作戦やもしもの時用として以前から考えていた『絆の書』についての作り話の設定を話した後、『ヒーリング・クリスタル』の件を話した。

すると、天斗伯父さんはそれを快く引き受けてくれ、一瞬の内に『ヒーリング・クリスタル』の強化と制約の緩和をしてくれた。そして、天斗伯父さんにお礼を言った後、夕士達が来るまでの間にこころとヴァイスとの軽い打ち合わせをし、居住空間に引っ込んでいると言っていた住人達と共にこころに『絆の書』の中へと戻ってもらい、ヴァイスが智虎達に変化の魔術を掛けている様子を見ながらこころとの同調を済ませた後、玄関付近で夕士達が来るのをジッと待っていたのだった。

 

 それにしても……夕士がチャイムを鳴らそうとしたタイミングでドアを開けた時や心の声を当てて見せた時の夕士の驚きようは中々スゴかったな。まあ、事情を知らない側からしたら、どうしてそんな事が出来たのか分からないわけだし、それも仕方ないのかもな。

 

 そんな事を考えながら椅子の内の一つに腰掛け、傍らに『絆の書』を置いたその時、俺はふとある事を思い出した。

 

「そういえば……『絆の書』の作り話を天斗伯父さんにした時、何故かスゴく驚いてたっけな……」

 

 天斗伯父さんの心の中はこころでも探れないらしいので正確な事は言えないが、その驚き方が話の内容があまりにも突拍子も無い物だったからみたいな物では無く、まるで何か隠していた事がバレたからみたいな感じだった。

 

「……たぶん、気のせいなんだろうけど、もしも俺が話した作り話の中に俺が知らない真実が混じっていたとしたら、天斗伯父さんはどうしてそれを隠しているんだろう……」

 

 それだけ『絆の書』にはまだまだ隠された秘密があり、それは俺が知るにはまだ早いということなのだろうか……。

 

 そんな事を思いながら『絆の書』をジッと見つめていたが、いくら『絆の書』を見てもそれらしい答えは出ず、その内に俺は考える事を止めた。

 

「……まあ、俺が転生者の事や『絆の書』の事を夕士達に黙っているように、天斗伯父さんも今は話すべきじゃないって考えてるのかもしれないし、今は考えなくても良いかもしれないな」

 

 そう結論づけながらポツリと独り言ちていた時、さっきまで楽しそうに話をしていた智虎か突然寂しそうな顔をしながら俯くと、その様子を見た光龍君が不思議そうに声を掛けた。

 

「智虎、どうかしたのか?」

「……うん、せっかく光龍君達にも会えたけど、煌龍様達がお帰りになったら、サヨナラしないといけないと思ったら、ちょっと寂しくなっちゃって……」

「……そういえば、そうだったね……」

「ああ……仕方ない事とはいえ、やはり寂しい事に変わりは無いな」

「そうね……」

「うん……」

 

 四神′sと輝麒が揃って寂しそうな表情を浮かべる中、それを見た光龍君は残りの二人と顔を見合わせながらニッと笑った後、笑みを浮かべたまま智虎の肩をポンポンと叩いた。

 

「心配ねぇよ、智虎。もしかしたら、そうならねぇかもしれねぇからさ」

「……え?」

 

 光龍君の言葉に智虎が顔を上げながらキョトンとした表情を浮かべていると、光龍君達は俺へと視線を移し、真剣な表情を浮かべながら静かに口を開いた。

 

「柚希兄ちゃん、俺達も智虎達みたいに『絆の書』の仲間に加えてくれねぇか?」

「……それは別に構わないけど、理由を聞いても良いか?」

「……今日一日、智虎達と一緒にいて思ったんだよ。智虎達は確実に俺達よりも成長をしているって」

「私達としては、四神や四霊としてだけじゃなく、肉体面や精神面も明らかに前の皆とは違うって見せつけられちゃった感じだったのよ……。お昼の智虎の件しかり夕士さん達との会話の時しかり、ね。そして、それがどうにも羨ましかったし、悔しかったのよ……」

「そして私達が行き着いた結論が、私達も智虎君達のように柚希さんや『絆の書』の皆さんといった様々な方達と話をしたり共に修行をしたりする事だったのです。

今までのように父さん達の元で修行をするだけでも確かに成長は出来ますが、こちらで積む事が出来る経験や得る事が出来る知識は他の場所では決して手に入れられない物だと私達は思っています」

「皆……」

「柚希兄ちゃん──いや、柚希さん。俺達も仲間に加えて下さい。よろしくお願いします……!」

『よろしくお願いします……!』

 

 光龍君達が揃って頭を下げ、それを智虎達が真剣な表情で見つめる中、俺はふぅと息をついてから、光龍君達にニコリと笑った。

 

「……ああ、もちろん良いぜ。そこまでの思いがあるなら、断る理由なんて無いからな」

「柚希さん……ありがとうございます!」

「どういたしまして。それと、さん付けとか敬語で話したりとかは別に無理にしなくても良いぜ? 一応、俺は『絆の書』の主という事にはなってるし、ヴァイスとかこころみたいに普段から敬語で話す仲間はいるけど、『絆の書』の皆の事は友達であり家族のような物だと思ってるからな」

「友達であり家族か……へへっ、そういう事なら遠慮無くそうさせてもらうぜ! あ、それと……俺達の事も君付けとさん付けはしなくても良いからな!」

「うん、分かった。それじゃあ、これから改めてよろしくな」

「おう! こちらこそよろしくな、柚希兄ちゃん!」

「これからよろしくね、柚希!」

「柚希さん、どうぞこれからよろしくお願いします」

 

 光龍達が嬉しそうに俺の言葉に答える中、その様子を見ていた風之真が腕を組みながら少し不安げな表情を浮かべた。

 

「柚希の旦那、新しい仲間が増えるってのは嬉しい話だが……まずは親である煌龍の旦那達にもこの事を話す必要があるんじゃねぇのかぃ?」

「ん……それなら大丈夫だぜ?」

「大丈夫って……」

「柚希さん、それってどういう……?」

 

 兎和と黒烏が揃って首を傾げる中、俺は頬をポリポリと掻きながらそれに答えた。

 

「実はさ……夕士と長谷を部屋に通して、紅茶とクッキーの用意をしに一階に降りてきた時に、ちょうど天斗伯父さんや煌龍様達が出掛けようとしてるところだったから、もう一度行ってらっしゃいって言おうと思って、話し掛けに行ったんだよ。

それで、その時に煌龍様達から『もし、光龍達がお前達の仲間に加わりたいと言ってきたら、光龍達の思いなどを聞いた上でお前が仲間に加えるべきか判断をしてくれ。お前の判断ならば、我らも信用がおけるからな』っていうお言葉を頂いてたんだよ」

「なるほど……だから、先程光龍さん達が『絆の書』の仲間に加えてほしいと言っていた時に、落ち着いた様子でその理由を訊いていたんですね?」

「そういう事だな。それに……光龍達もどうやら煌龍様達から事前に何かを言われてたみたいだしな」

 

 その言葉で智虎達の視線が光龍達に集中すると、光龍はニッと笑いながら静かに頷いた。

 

「その通りだ。ここへ来る前、父さんから『絆の書』の事や智虎達を始めとした『絆の書』の仲間達の話を聞いたんだが、その時に『もしも今回の来訪でお前達が『絆の書』の仲間に加わりたいと思った際は、その思いを『絆の書』の主である柚希に伝えろ。そしてその結果、柚希がそれを認めたならば、我らも文句は言わん』って言われてたんだよ」

「そっか……だから、僕達が寂しくなるねって話をしてた時に、そうならないかもしれないって言ってたんだね」

「まあ、そういう事だけど……やっぱり、内心はかなり不安だったわ」

「そうですね……この数時間で柚希さんとも仲良くはなれましたし、『絆の書』の仲間になりたいだけの理由は見つけたつもりでしたが、もしも断られたらと考えると……」

「……ああ、かなり怖かった。だが、そんな恐怖くらい乗り越えないと、この先へは進めないって思ってたからな。だから、それはどうにか表には出さずに精いっぱい頑張る事にしたんだよ。兄貴達や父さんとはまた違った立派な黄龍になるためにな!」

 

 そう胸を張りながら語る光龍の表情は希望で満ち溢れており、目に迷いの色などは微塵も浮かんでいなかった。そして、それに対して美鳳と希亀が同じような表情で頷いた後、光龍は美鳳達と一緒に俺の方へ顔を向けながらニッと笑った。

 

「さて、それじゃあそろそろ登録ってのを始めようぜ、柚希兄ちゃん!」

「ああ、そうだな。ところで、登録のやり方とか居住空間の事とかも煌龍様達から教わってるのか?」

「ええ、もちろんよ」

「なので、そのまま登録の作業に移って頂いても問題はありませんよ、柚希さん」

「分かった」

 

 そして、傍らに置いていた『絆の書』を手に取り、空白のページを開いた後、俺は光龍の方を向いた。

 

「それじゃあまずは……光龍、お前から行こうか」

「ああ、分かったぜ!」

 

 光龍が元気よく返事をした後、俺達は揃って空白のページに手を置いた。そして、いつものように目を閉じながら体中を巡る魔力が右手を通じて『絆の書』へと流れ込むイメージを頭の中に浮かべ、それに続いて右手にある穴から『絆の書』へと魔力が注ぎ込まれていくイメージが浮かぶのを感じながらそのまま魔力を流し込んでいった。

 

 ……うん、こんな感じかな。

 

 そして、右手を離しながらゆっくりと目を開けると、そこには奥深い山の中で周囲の木々を優しい眼差しで見つめる光龍の姿と黄龍についての詳細な情報が浮かび上がっていた。

 

「うん……これでよし。それじゃあ次は……美鳳だな」

「ええ、了解したわ」

 

 美鳳がコクンと頷いた後、俺は別の空白のページを開き、美鳳と一緒に再び空白のページに手を置いた。そして、さっきと同じように魔力を流し込み、そろそろ大丈夫だという感覚を覚えた後、右手を離しながら『絆の書』を見ると、そこには空を気持ち良さそうに飛び回る美鳳の姿と鳳凰についての詳細な情報が浮かび上がっていた。

 

「……よし、それじゃあ最後は希亀だな」

「はい、分かりました」

 

 希亀が頷きながら答えた後、俺はまた別の空白のページを開き、希亀と一緒に空白のページに手を置いた。そして、再び『絆の書』に魔力を流し込み、もう大丈夫そうだと思った後、右手を離しながら『絆の書』を見ると、そこには小高い丘の上でのんびりとした表情を浮かべる希亀の姿と霊亀についての詳細な情報が浮かび上がっていた。

 

「……よし、これで全員終わったな」

「へへっ、だな。それにしても……初めの頃に比べると『絆の書』の仲間も結構増えたもんだよな」

「ふふ、確かにそうですね」

「けど、仲間が増えれば増える程、もっともっと賑やかになりますし、これからどんな仲間が増えるのか今から楽しみですね」

「……そうだな」

 

 風之真達の楽しそうな様子に俺も口元を綻ばせながら答えた後、俺は『絆の書』を一度閉じ、表紙に手を載せながら魔力を注ぎ込んで光龍達を外へと出した。

 

「お疲れ様、お前達。居住空間はどうだ?」

「ああ、話に聞いていたよりもスッゴく住みやすそうな場所だったし、色々気になる場所もあったから、これから探検するのが楽しみだぜ!」

「ふふっ、そうね。それに空も海もスゴく綺麗だったし、吹いている風も心地良かったわよね」

「はい。それに加えて、湿度や温度も程良いので、のんびりとするのにもピッタリだと思いました」

「そっか。喜んでもらえたようで良かったよ」

 

 楽しそうに話をする光龍達に微笑みながら返事をしていたその時、廊下の方から電話のベルの音が聞こえ、俺は「誰からだろう……?」と独り言ちながら廊下へと出た後、黒電話の受話器を静かに取った。

 

「もしもし……」

『もしもし、私です』

「あ、天斗伯父さん。用事は済んだんですか?」

『ええ、それはバッチリです。それでそろそろ帰るところなのですが、柚希君達に少し頼みたい事がありまして……』

「はい、何ですか?」

『実は……今年の年越しは剛虎さん達四神の皆さんと煌龍さん達四霊の皆さんと一緒に過ごすという事になり、今日からお泊まり頂く事に決まったので、『絆の書』の皆さんと一緒に客間の簡単な掃除や夕食の買い出しなどをお願いしたいのです』

「あ、はい……それはもちろん構いませんけど、もしかして和室で話をしていたのはその件だったんですか?」

『はい。先日、煌龍さんから柚希君や『絆の書』の皆さんと一緒に年越しをしてみたいという話をされてまして、前もって柚希君達にはお話ししようと思っていたんですが、煌龍さんから柚希君達には黙っていた方が面白いからそうしてほしいと言われていたんです』

「なるほど……分かりました、それじゃあ今から皆に指示を出してきますね」

『ありがとうございます。それでは、そろそろ切りますね』

「はい」

 

 そして通話が終わり、静かに受話器を置くと、風之真が小首を傾げながら話し掛けてきた。

 

「柚希の旦那、今の電話は天斗の旦那からだったのかぃ?」

「ああ。なんでも今年の年越しは煌龍様のご要望で剛虎さん達や煌龍様達と過ごす事になったから、客間の簡単な掃除や夕食の買い出しをお願いしたいんだってさ」

 

 天斗伯父さんからの電話の内容を伝えると、四神′sと四霊′sは驚きのあまり口をポカーンと開けたが、ヴァイス達は一瞬驚いた表情を見せたものの、すぐに楽しそうにクスリと笑った。

 

「まったく……煌龍の旦那は本当に色々な事で俺達を驚かせてくれるな」

「ふふ、そうだね。でも、今年の年越しはいつもよりも賑やかになりそうだし、それはそれで楽しみかも♪」

「ああ、そうだな」

 

 まあ、これから色々と大変になりそうだけど、確かに楽しそうなのには変わりないし、ここは楽しんじゃった方が絶対に良いよな。

 

 剛虎さん達や煌龍様達との年越しの光景を想像し、その楽しさからクスリと笑った後、俺は両手をパンッと打ち鳴らしてから皆に声を掛けた。

 

「よし……それじゃあ早速作業に取り掛かるぞ!」

『おー!』

『はい!』

 

 風之真達の返事に頷いた後、俺は再び『絆の書』の表紙に手を置き、静かに魔力を注ぎ込んだ。

 

 

 

 

 夜、自分の部屋の机に向かい、宿題の残りを片付けていたその時、コンコンと部屋のドアをノックする音が聞こえ、俺はドアの方を向きながら「どうぞ」と声を掛けた。すると、部屋に入ってきたのはどこか楽しげにニヤニヤと笑う親父だった。

 

「……なんだ、親父か。一体何の用だ?」

「何の用だって……つれないなぁ、泉貴君はー……」

「……ふざけるだけなら出てってくれないか? それとも、本当に何か用事でもあるのか?」

「おう。今、夕士から電話が掛かってきたから、それを伝えに来たんだよ」

「稲葉から……?」

 

 稲葉や遠野から電話が掛かってくる事は珍しくないが、こんな時間に掛かってくるのは結構珍しいな。何か宿題で困った事でもあったのか……?

 

「……分かった。ありがとうな、親父」

「どういたしまして。ほら、さっさと行ってやれ」

「ああ」

 

 そして部屋から出た後、俺は電話のところへと向かい、外れたままになっている受話器を取ってから、保留のボタンを押した。

 

「もしもし……?」

『ああ、長谷。こんな時間にゴメンな』

「いや、別に良いさ。それで、何か用だったのか?」

『ああ、実は……柚希の事でちょっとな』

「遠野の……?」

『そう。長谷、お前は昼頃に柚希が話してくれた『絆の書』の説明についてどう感じた?』

「どうって……特におかしなところは無いと思ったぜ? もっとも、少し妙なところやまだ何か隠してるところはあると思ってるけどな」

 

 そう答えると、受話器からどこか安心したような声が聞こえた。

 

『……やっぱりそうだよな。そう思ってるのが俺だけだったらどうしようかと思ってたから、スゴく安心したぜ』

「そうだろうな。俺も同じ立場だったら、多分そう思ったと思うよ」

『へへ、そっか。それで、話の続きなんだけど、柚希は『絆の書』は著者が実際に出会ったモノ達との出会いを記録するために書かれた物だって言ってたけど、そうなると白虎や玄武だけじゃなく、因幡の白兎や八咫烏とも出会ってる事になるよな?』

「そうだな。あの時は言わなかったが、覚や人魚だけならまだ納得は出来るとしても、神話に登場するモノ達まで書かれてるとなると、その話もどこか信憑性が低くなるよな」

『ああ。まあ、世の中には俺達が知らない事がまだまだあるし、もしかしたら本当に出会っていたのかもしれないけど、普通の人間が神様や神獣に会える確率なんて本当にごく僅かのはず……なのに、『絆の書』の著者はそんなモノ達との出会いを何回も果たしているんだよな』

「そうだな。遠野からすれば、あくまでも『偶然』や『運が良かったから』なんだろうが、そんな事なんて普通はあり得ないだろうな」

 

 そう、()()()()そんな事はあり得ない。だが、『絆の書』の著者がいわゆる『普通の人間』では無かったら、話がガラリと変わってくる。それこそ、物語なんかに出てくる魔道士やら神様に愛された某のような特殊な人間だった場合なら、そういう出会いも無いわけではないが、遠野の話にはそんな表現は一切出て来なかった。つまり、『絆の書』の著者は至って普通の人間だった可能性が高い事になるだろう。

 

 けれど……そうだとすれば、著者はどうやってそんなモノ達と出会ったというんだ? まあ、遠野が聞いた話がまず真実なのかが確かでは無いが、話をしていた時の遠野の目から少なくとも遠野が嘘を話しているような様子は無かったし、天斗さんが嘘の話を遠野にするとも思えないしな……。

 

『絆の書』の話の真偽などについて色々と考えていたその時、『……なあ、長谷』という稲葉の声で不意に意識が現実へと引き戻され、俺はそれについては一度保留にする事にし、受話器をしっかりと持ち直しながら稲葉の声に答えた。

 

「稲葉、どうした?」

『……あのさ、実はもう一つ気になる事があるんだけど良いか?』

「ああ、別に良いが……何だ?」

『……智虎君達もそうだったけどさ、今回初めて知り合った人達って、名前に『絆の書』に描かれているモノの名前とか特徴が入ってただろ?』

「……そうだったな。たしか、智虎君達の場合は代々それらに関する漢字を名前に入れるしきたりがあり、真君達はご先祖様がそれらに助けられた事でその恩からそんな名前を付けるようになっただったよな」

『ああ。でも、帰ってから父さん達にこの近くに『風祭』や『因幡』って家があるかって訊いたら、少なくとも自分達は聞いた事が無いって言ってたんだよな……』

「……そういえば、俺の方もそうだったな。だが、これだけならまだ俺達が考える近くと遠野が言う近くが違っただけと言えるよな」

『ああ、まあな。ただ……そんな特殊な家の人間があんなにも揃っている上、それらが描かれている『絆の書』の持ち主である柚希と友達になる可能性なんて本当にあり得るのかなと思ったんだよ』

「なるほどな……」

 

 確かに稲葉の言う通りだ。けど、彼らは実際にいた人物なのは間違いないし、わざわざ嘘の名前を言う必要も遠野に友達だと嘘をつかせる理由も思いつかない事から、彼らと遠野は実際に友達なのだろう。

だが、そうなってくると、彼らと遠野がこうして出会えたのは何故なのかという疑問が出てくる。一応、世の中には共通の趣味などを持った見ず知らずの人間達が集まり、それについて話をするような手段はあるが、遠野がそういう物を使うというのはあまりにも考えにくい。それに、もしも本当に彼らがそういう物で集まった友達ならば、家の中に保護者の姿が無かったのもおかしな話だ。

 

 ……こう考えてみると、『絆の書』と言い彼らの存在と言い、あまりにも謎な事が多すぎるな。……いや、待てよ。そうなると一番の謎は──。

 

()()()()という事になるのか……?」

 

 小学校の入学式の日に出会い、これまでずっと仲良くしてきた親友が、自分の理解を超えた存在である可能性が出てきた事に、俺が動揺をしていると、受話器から『……長谷、一つ良いかな?』と言う少し不安げな稲葉の声が聞こえ、俺はハッとしながらそれに答えた。

 

「……何だ?」

『……自分でもこんな事を考えるのは正直おかしいと思うんだけど、たぶんこれが『絆の書』や真君達の真実に一番近いんじゃないかと思う考えがあるんだ』

「……分かった、言ってみてくれ」

 

 緊張で声を震わせながら稲葉にそれを話すように促すと、稲葉は一度深呼吸をしてから、とても真剣な声で話を始めた。

 

『あの『絆の書』は本当は俺達が予想した通りの魔法の本で、柚希はそれを扱う力を持った魔道士的な存在、そして真君達は人間に姿を変えた妖怪や神獣達だったんじゃないかって思うんだけど……長谷はどう思う?』

「……遠野が魔道士で『絆の書』が魔法の本、真君達が本当は『絆の書』に描かれているようなモノ達だった、か……」

 

 その瞬間、そのあまりにも突拍子も無いが、どこか腑に落ちる考えで遠野に対しての疑念のような物が全て取り払われたような気がした。

 

 ……なるほど、俺とした事が変に難しく考え過ぎていたのかもしれないな。

 

 そんな事を思い、俺が思わずクスリと笑ってしまっていると、受話器から稲葉のどこか恥ずかしそうな声が聞こえてきた。

 

『あはは……流石に小学校高学年にもなって幼稚すぎるよな、こんな考え……』

「……確かにそうだな。だが、そう考えれば納得のいく事が多いのも確かじゃないか?」

『それはそうだけど……長谷、まさかこの話が本当の事だって言うのか?』

「……いや、そういうわけじゃない。だが、さっきまで自分が考えていたように遠野が自分の理解を超えたなんじゃないかと疑うよりはまだ良いと思っただけだ。これからも大切にしていきたい親友の事を変に疑うよりはずっと、な……」

『長谷……』

「ありがとうな、稲葉。お前の言葉で目が覚めたような気がするよ」

『あ、ああ……どういたしまして。けど、柚希が本当に『絆の書』を使う事が出来る魔道士だとしたら、俺達はこれからどうすれば良いんだ?』

「どうもしないさ。まあ、強いて言えば……今まで通り接していくだけだな」

『今まで通り……』

「ああ、そうだ。遠野が何者で『絆の書』が結局何なのかは分からないが、俺達が突然素っ気なくなったりどこか様子がおかしかったりしたら、アイツだって困惑するし不安になる。

だから、今回話していた事が真実ならそれはそれで良いし、本当に何かを隠しているならそれを話してくれるまで待つしか無いさ。恐らく、それなりの理由があるんだろうからな」

『……そうだな。まあ、話してもらえないのはちょっと寂しいけど、柚希がどんな奴だとしても親友なのは変わらないし、これからも仲良くしていきたいから、ここは柚希が話してくれるのを信じて待つしかないよな』

「……ああ、そうだな」

 

 稲葉の言葉にクスリと笑いながら答えていたその時、受話器からとても眠そうな稲葉の欠伸が聞こえてきた。

 

「……お前も眠そうだし、この話はここまでにしておくか」

『ふあ……ああ、そう……だな』

「……稲葉、一応言っておくが……遠野の前ではこの話はもちろんしないようにしろよ?」

『……分かってるよ。それじゃあおやすみ、長谷』

「ああ、おやすみ」

 

 そして稲葉との通話が終わり、受話器を静かに置いた後、俺は壁にもたれながらふぅと息をついた。

 

「……遠野が魔道士かもしれない、か……。稲葉には言わなかったが、実は幾らか思い当たる節があるんだよな……」

 

 そう独り言ちながら俺は額に軽く手を当て、それらしい出来事を頭の中で振り返った。そして振り返り終えた後、俺は壁から体を離しながら一人でクスリと笑った。

 

「……まあ、これについては話そうと思った時に稲葉に話せば良いか。さて……そろそろ俺も寝よう。明日も親友達(アイツら)との約束があるし、眠そうな姿を見せたら笑われてしまうからな」

 

 そして、俺は雲一つ無い青空のような晴れ晴れとした気持ちで明日は二人とどんな事をしようかと考えながら自室へ向けて歩いていった。




政実「第21話、いかがでしたでしょうか」
柚希「前書きで話していたちょっとしたリクエストっていうのが、夕士達視点から見た俺を見てみたいという事だったわけだけど、作者的には今回の出来栄えはどうだったんだ?」
政実「そうだね……本音を言うならかなり難しかったし、リクエストに正確に応えられているかは分からないけど、自分的には精いっぱい書いてみたつもりだよ」
柚希「そっか……因みに、他者視点や三人称視点みたいなのは、これからも機会があれば書くつもりなのか?」
政実「うん、そのつもりだよ。そして……今回、リクエストをして下さった方、本当にありがとうございました。尚、これからも読者の皆さんから何かリクエストがあった際は、出来る限り実現させていくつもりなので、よろしければ感想欄などに書いて頂けると嬉しいです」
柚希「そして、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、こちらも書いて頂けるととてもありがたいです。よろしくお願いします」
政実「さて……それじゃあそろそろ締めていこうか」
柚希「そうだな」
政実・柚希「それでは、また次回」
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