柚希「どうも、遠野柚希です。和猫っていっても何種類かいるけど、その中でもどれが一番好きなんだ?」
政実「そうだね……強いて言うなら三毛猫かな。もちろん、他の猫も好きだけどね」
柚希「そっか。さてと……それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・柚希「それでは、第24話をどうぞ」
ある秋の日の朝の事、俺は朝の会が始まるのを待ちながら教室の自分の席に座ってボーッと外を眺めていた。
小学校卒業まであと半年、そうしたら中学生になるわけだけど、中学生になったら
「さて……本当にどうしたら良いものかな……」
窓の向こうで色とりどりの落ち葉がはらはらと落ちていく中、中学一年生の春に起きるであろう出来事について考えていたその時、肩をポンポンと叩かれ、俺がそちらに視線を向けると、夕士達が少し心配そうな顔をしていた。
「皆……どうかしたか?」
「あ、いや……柚希がどこか哀しそうな顔をしていたから、心配になってさ。な、長谷」
「ああ。遠野、何を考えてたんだ?」
「……あと半年で小学校も卒業するんだなぁって考えてたんだよ」
「……ああ、なるほどな」
「たしかにあと半年で卒業だな。まあ、俺達やお前達、それに金ヶ崎達や山野達は同じ地区だから中学も同じになるけどな」
「そうだな……となると、少なくとももう三年は賑やかな毎日になるわけだ」
「ふふ、そうですね」
「本当なら高校生になってもそうしたいところだが、高校からはそれぞれの進路によって変わってくるからな。必ずしもそうなるわけじゃないな」
「だな。でも、出来るなら楽しい毎日にはしたいよな。どうせなら楽しい方が良いし」
「ははっ、違ぇねぇ!」
俺の言葉に夕士が笑いながら答えていた時、教室のドアが開く音が聞こえ、俺達は揃ってそちらに視線を向けた。すると、そこには楽しそうに話しながら歩いてくる山野と天馬の姿があった。
「よっ、お前達。おはよう」
「あ、おはよう」
「おはよう、皆」
「おはよう、山野、天馬」
「なんだか楽しそうに話をしていたが、何かあったのか?」
「あ、うん。実は学校に来る途中で珍しい物を見たんだ」
「珍しい物……ですか?」
夜野が首を傾げながら訊くと、天馬は頷きながら答えた。
「うん。まあ、
「少し大きめの白鼠とそれを抱きかかえた女の子、か……」
「そう。それでね、僕も最初はただの白鼠だと思ったんだけど、その女の子がすれ違った時、鼠からこんな声が聞こえてきたんだ。『寒い……寒いよぉ……』ってね」
「寒いって……本当にそう言ったのか?」
「僕にはそう聞こえたよ。まあ、鼠の鳴き声がそう聞こえただけだと思うんだけど……」
「はは、そうだろうな。だって、人の言葉を喋る鼠なんて──いや、いなくもない、のか……?」
「雪村君……?」
「あ……いや、なんでもない。でも、本当に人の言葉を喋る鼠だったとしたらスゴい発見だよな」
「たしかにそうですね。ですが……その『寒い』という言葉は不思議ですね……」
「たしかにな……」
「最近、涼しくはなってきたけど、寒いって程ではないからな……」
皆が謎の鼠の言葉の真意について考える中、俺はその鼠の正体について
たぶん、山野達が出会ったという鼠の正体はあれだと思う。けど、その女の子はソイツとどこで出会ったんだろう……? ソイツは本来ならこの国にはいない奴のはずだし……。
そんな事を考えている内にスピーカーからチャイムの音が鳴り響き始めた。
「おっと、もうそんな時間か」
「この話の続きは昼休みや帰りにするか」
「そうだな。よし……皆、今日も一日頑張っていくぞ」
その長谷の言葉に全員が頷いた後、夕士達はそれぞれの席へ向かって歩き始めた。
まあ、特に危険なモノでは無いし、もし会えた時には理由を訊けば良いか。
山野達が見たモノについてそう結論づけた後、俺は教室の前の方のドアから担任が入ってくるのを見ながらそちらに意識を向けた。
「それじゃあまた明日な、柚希」
「またな、遠野」
「ああ、またな」
放課後、いつものところで夕士達と別れた後、俺は『
『柚希の旦那、山野達が見たっていう謎のネズ公の正体は見当がついてるのかぃ?』
『ああ。大凡の見当はついてるよ。まあ、本当にただの大きめの鼠だという可能性も捨てきれないけど、もし本当に喋ったとしたら正体はたぶんアイツなんじゃないかな……』
『そうか……だが、謎はまだ他にもあるぞ。その人ならざるモノを抱きかかえていた少女が何者かという謎がな』
『そうなんだよな……』
たしかにその通りだ。俺達の例もあるから、人間が人ならざるモノと出会い、仲良くなるというのは不思議じゃない。けれど、山野達が出会ったという鼠の正体が、俺が思っているモノだとすれば、普通の女の子じゃ抱きかかえる事すら出来ない程、重いモノのはず。つまり、その子もただの人間ではないか人ならざるモノという可能性が出てきたのだ。
もう少し正体を探るためのヒントがあれば良かったけど、山野達からはあれ以上の話は聞けなかったからなぁ……。
『まあでも、ウチには天下の座敷わらし様がいるし、クロルの時みたいに『運良く』出会えそうな気がするな』
『ふっふっふ、任せてよ、柚希。ボクの力でその謎のコンビと出会わせてあげるからさ』
『ああ、任せた』
そんな会話を交わしながら歩く事数分、家の近くまで来たその時、前方から手に大きな袋を持った天斗伯父さんが歩いてくるのが見えた。そして、天斗伯父さんに近付いていくと、天斗伯父さんはニコリと笑いながら俺に話し掛けてきた。
「おかえりなさい、柚希君」
「ただいま戻りました、天斗伯父さん。そして、おかえりなさい」
「ただいま、柚希君」
「ところで……天斗伯父さん、その袋は?」
「これは仕事帰りに天上に寄った際、偶然訪ねていらっしゃった豊穣を司る神様から頂いたサツマイモです。なんでも大量にお供え物として頂いたらしくそのお裾分けだそうです」
「なるほど……それじゃあ、今日は今から焼き芋ですね」
「ふふ、そうですね。柚希君、手伝ってもらえますか?」
「はい、もちろんです」
天斗伯父さんの言葉に頷きながら答えていたその時、後ろの方から二つの妖力がゆっくりと近付いてくるのを感じた。
この妖力……もしかして、山野達が出会ったっていうモノ達か……?
そんな事を思いながら背後を振り返ると、大きめの白鼠を抱きかかえながらこっちへ向かって走ってくる長い黒髪の山吹色の着物姿の女の子の姿が見えた。そして、女の子は俺達の目の前で足を止めると、息を切らしながら俺に話し掛けてきた。
「あ、あの……! この近くに火はありますか?」
「火……ああ、それなら今から焚き火をするところだったんだ」
「ほ、ほんとですか……!? よ、良かったぁ……」
「でも、火は何に使うのかな?」
「え、えっと……この子、とても寒いみたいなので暖めてあげたいんです」
「なるほど……わかりました。それでは、急ぐとしましょうか、柚希君」
「はい」
そして俺は、天斗伯父さんと一緒に女の子と白鼠を連れて家に帰った後、天斗伯父さんがサツマイモの準備をしにキッチンへ向かうのを見送ってから、庭に向かって焚き火の準備を始めた。
さて……まずは、焚き火をするための落ち葉集めをしないとだから、今回も
『護龍、麗雀、出てきてくれるか?』
『はい、わかりました』
『もちろんよ、柚希』
護龍達が返事をした後、俺がランドセルから『絆の書』を取り出すと、女の子は不思議そうに首を傾げ、紫色の瞳で俺を見つめながら話し掛けてきた。
「えっと、その本は一体……?」
「まあ、見ててくれ。よし……来てくれ、護龍、麗雀」
そう言いながら『絆の書』の表紙に手を置きながら魔力を注ぎ込んだ。そして、『絆の書』から護龍達が姿を現すと、女の子は頭から
「にゃっ!? 本の中から龍と鳥が出てきた!? 君、もしかして
「ふふ、これは手品なんかじゃないよ。さてと、それじゃあまずは燃やすための葉っぱを集めないとな。護龍、頼んだ」
「はい」
護龍は静かに答えると、『木』の力を使って周囲に散らばる落ち葉を目の前に集め始めた。そして、落ち葉が適度に集まったのを確認した後、俺は次に麗雀に声を掛けた。
「よし、それじゃあ麗雀、お願いな」
「ええ、任せて」
麗雀が頷きながら答え、『火』の力を使って落ち葉に火を付けると、落ち葉はぱちぱちと音を立てながら燃え始めた。すると、その音を聞いた白鼠は「うぅ……?」と言いながら焚き火に視線を向け、焚き火をジッと見つめ始めた。
「火……火だぁ……!」
そう言いながら女の子の腕の中から飛び出すと、白鼠はそのまま焚き火の中に
「なるほど、この鼠の正体は……」
「ええ、間違いないわね。柚希、貴方もこの子の正体はわかっているんでしょう?」
「ああ、まあな。それと……その子の正体もな」
その言葉に女の子は更に驚いた様子を見せた。
「にゃっ!? ど、どうして……!?」
「その、『にゃっ』っていう言葉と耳と尻尾、そこから
「……う、うん。君の言う通り、私は猫又だよ」
女の子──『猫又』が頷きながら答えた後、俺は焚き火の中に声を掛けた。
「後は……おーい、聞こえるかー?」
「……あ、はい……」
「君は……『
「は、はい。私は火鼠で、名前は
すっかり体が赤くなり、落ち着いた様子で『火鼠』の朱夏が答えた後、俺は「やっぱりな」と独り言ちた。
『猫又』
年月を重ねた猫が成る妖。外見は普通の猫と変わりないが、尻尾が二叉になっているという違いがあり、中には体が大きいモノや人間に化ける事が出来るモノもいる。また物語にも猫又をモチーフとしたキャラクターが良く登場する事から、一般的にも有名な妖の一体と言える。
『火鼠』
中国の伝承に登場する生物で、
さて……猫又はさておき、まずは朱夏がここにいる理由をまずは訊かないとだな。
焚き火の中から朱夏が俺をジッと見つめる中、俺は少しだけ焚き火に顔を近付けながら話し掛けた。
「それで、朱夏。お前はどうしてここにいるんだ? お前達火鼠は、中国に伝わるモノだから、本来は中国にいるはずなんだけど……」
「あ、えっと……」
「うん」
「うぅ……えっとぉ……」
朱夏がもじもじとしながら答えづらそうにしていると、猫又は拳を軽く握りながら朱夏に声を掛けた。
「大丈夫だよ、朱夏。この人なら信用出来そうだから、正直に話してしまおう」
「
「ああ」
「はい……私の住んでいる場所は、私と同じ火鼠がたくさん住んでいる里で、私はお姉ちゃんや一族のみんな、そして友達と一緒に仲良く暮らしていました。でも……今朝、私が日課の散歩をしていた時、急に目の前が真っ暗になって、私はその怖さからギュッと目を瞑りました。
そして、ゆっくりと目を開けると、私はこの近くに一人でいて、すぐにお姉ちゃんや一族のみんなの事を呼んでみたけど、誰からも返事が来なくて、私は恐怖と悲しさからその場でしくしくと泣いてました。すると、そこに通り掛かったのが……」
「私だったんだ。私はこの辺に住んでる野良猫で、ちょうどこの前猫又になったばかりなんだけど、猫又になれた事が嬉しくて人間の女の子に化けて近くを散歩していたの。そしたら、哀しそうに泣くこの子を見つけて、恐がらせても悪いかなと思って猫の姿に戻ってから話し掛けたんだ。
それで、話を聞いてみると、私がまったく知らない場所から来たみたいだったから、もしかしたら朱夏はなにか超常的な出来事に巻き込まれたんだと思って、とりあえず人間の女の子にまた化けてから、この子を連れて何か手掛かりが無いかこの近辺を朝から歩いてたの」
「なるほど……ところで、朱夏。何か自分の住んでる場所についての手掛かりって無いか? もし、その場所がわかれば、俺達が連れて行ってあげられるけど……」
「えっと、それは嬉しいんですけど……たぶんそれは無理だと思います」
「え、何でだ?」
朱夏の言葉を不思議に思いながら訊くと、朱夏は恐る恐るといった様子で問いかけてきた。
「えっと……貴方は人間ですよね?」
「あ、ああ……たしかにそうだけど……」
「前にお祖父ちゃんから聞いた事があるんですが、私の住んでいる世界には人間が
俯きながら言うその朱夏の言葉を聞き、俺達は顔を見合わせた。
「人間が一人もいない世界……それって、まさか……」
「はい……恐らくですが、風之真殿や雪花殿と同じ世界から迷い込んだ可能性がありますね」
「そうね……それに、この世界に来た時の状況も似ているし、ほぼ間違いは無いと思うわ」
「そうだな……」
つまり、また風之真達が住んでいた世界からの迷子が来てしまったわけか……。これまでその世界以外からは誰も迷い込んだ事は無いけど、本当に一体どんな世界なんだ……?
風之真達が住んでいたという世界について考えを巡らせていた時、猫又の紫は不思議そうに首を傾げた。
「ねえ、その風之真と雪花っていうのは誰?」
「風之真と雪花は俺達の仲間で、二人とも朱夏と同じように人間が一人もいない世界から迷い込んできたんだ」
「そうなんだ……」
「……せっかくだ。二人と義智もここに呼ぶか」
そう言いながら俺は再び『絆の書』の表紙に手を置いた後、居住空間にいる風之真達に声を掛けた。
『三人とも話は聞こえてたか?』
『ああ』
『出る準備ならいつでも出来てるぜ、柚希の旦那!』
『だから、いつ呼んでも良いよ』
『わかった』
義智に返事をした後、俺はそのまま『絆の書』の表紙に触れながら魔力を注ぎ込んだ。そして、義智達が出てきたと同時に義智にアイコンタクトを送り、それに義智が答えた後、俺は『絆の書』の義智のページを開いて義智と同調し、朱夏に関しての情報が視られるかを確認した。
……ダメだ、火鼠自体についての情報は視られるけど、朱夏や朱夏の世界についてのあらゆる情報は靄が掛かってる感じになって視られない……。となると、朱夏がここじゃない世界から来たのは間違いないみたいだし、その事がしっかりと確認出来ただけでも成果かもしれないな。
そう思いながら義智との同調を解いた後、風之真と雪花に向かって首を横に振ると、風之真と雪花は小さく溜息をついてから頷いた。すると、それを見ていた朱夏は不思議そうに首を傾げてから俺に話し掛けてきた。
「あの、何かありましたか?」
「あ、いや……さっき、朱夏についての情報が視られないか確認してみたんだけど、風之真達の時と同じように視られなかったってだけだよ」
「私の情報……?」
「そう。俺はこの本、『絆の書』を使う事でここにいる仲間達と同調する事が出来、その仲間に応じた能力を使えるんだ。それで、無断にはなったんだけど、ここにいる白澤の義智と同調して、朱夏の色々な情報を視てみようとしたんだけど……」
「視られなかったんですね……」
「ああ。火鼠自体についての情報は視られたけど、朱夏の個人的な情報や朱夏の世界についての情報はまったく視られなかったよ」
「そうですか……」
俺の言葉を聞いて朱夏がシュンとしながら俯き、それを見た紫が「朱夏……」と心配そうな声を上げる中、風之真は俺の肩に乗りながら軽く腕を組んだ。
「……なあ、柚希の旦那」
「ああ、わかってるよ。朱夏の事を放っておけないんだろ?」
「へへ、流石は柚希の旦那だ。俺の考えはお見通しってかぃ?」
「ふふ、まあな。それに、俺も同じ考えだったからな。護龍、麗雀、雪花、義智、お前達はどうだ?」
「私も柚希殿達と同意見です」
「このまま放っておくなんて出来っこないからね」
「もちろん、私だって放っておくつもりはないよ」
「我も異論は無い」
「わかった。それじゃあ……」
皆の返事を聞いた後、俺は未だにシュンとしている朱夏に声を掛けた。
「朱夏」
「……はい、何でしょうか……?」
「よければ、お前の故郷探しを俺達にも手伝わせてくれないか?」
「え……?」
「お前の元いた世界を探すのは、スゴく困難なのはわかってる。でも、哀しむお前を俺達はこのまま放っておくなんて出来っこないからな」
「柚希の旦那の言う通りだぜ、朱夏。まあ、俺達の元いた世界もまだ見つかっちゃいねぇが、俺達は柚希の旦那達と一緒にいりゃあいつかは見つかるって信じているし、柚希の旦那達の優しさに触れたから、俺達は一緒にいるんだ」
「ふふっ、そうだね。だから、朱夏もよければ私達を信じてみてくれないかな? 絶対に朱夏がいた世界を見つけて、お家まで帰してあげるからさ」
「皆さん……」
俺達の言葉に朱夏が目を潤ませる中、俺は少し不安げに状況を見つめる紫に声をかけた。
「そして……紫、よければお前も俺達と一緒に来ないか?」
「えっ、私も……?」
「ああ。この中で一番朱夏が信頼を置いてるのは紫だし、紫だって朱夏が本当に元の世界に帰れるか心配だろ?」
「それはそうだけど……でも、本当に良いの?」
「ああ。それに、こうやって関わった以上、お前達はもう俺達の仲間だと思ってるからな」
「私達が……」
「みんなの仲間……」
そう言いながら紫と朱夏は顔を見合わせると、真剣な表情を浮かべながらコクンと頷き合った。そして、俺達に視線を戻すと、その表情のままで朱夏は静かに口を開いた。
「皆さん……皆さんの力をお借りしても良いですか?」
「ああ、もちろんだ。これからよろしくな、朱夏」
「……はい。こちらこそこれからよろしくお願いします!」
「うん、よろしく。それで、紫はどうする?」
「……ふふ、それなら私もお世話になっちゃおうかな。柚希君の言う通り、朱夏の事が心配だし、なんだか柚希君達と一緒の方が毎日が楽しそうだからね」
「わかった。それじゃあ改めてよろしくな、紫」
「うん、こちらこそよろしくね、柚希君」
俺の言葉に紫がニコリと笑いながら答えていると、風之真は満足げにうんうんと頷いた。
「いやぁ、やっぱり良いなぁ。この仲間が増えた時の昂揚感って奴は」
「あははっ、たしかにそうだね。新しい仲間との毎日を考えたら、スゴく楽しくなっちゃうよね」
「そうですね」
「このまま『絆の書』のページも無くなっちゃうくらいの数になっちゃったりしてね♪」
「……無いとは言い切れないな。さて、柚希。そろそろお前の事や『絆の書』についての説明をしてやったらどうだ?」
「……っと、そうだな」
義智の言葉に頷いた後、俺は紫達に俺が転生者である事や『絆の書』の事などについて話した。そして話を終えると、紫達はとても驚いた様子を見せた。
「柚希君が転生者で神様である天斗さんの甥っ子……あはは、なんだか私達ってスゴい人達の仲間になったみたいだね」
「そうですね。でも、それなら私達も負けないくらいスゴくならないと……!」
「ふふっ、そうだね。さてと……それじゃあそろそろその登録っていうのを始めていこうか」
「ああ、それじゃあまずは……紫、頼んで良いか?」
「うん、良いよ」
紫がニコリと笑いながら答えた後、『絆の書』の白紙のページを開き、左手で『絆の書』を持ちながら白紙のページに俺達は手と前足を置いた。
そして、いつものように目を閉じた状態で体内を巡る魔力が右手を通じて『絆の書』に流れ込んでいくイメージを頭に浮かべると、それに続いて右手にある穴から『絆の書』へと魔力が流れていくイメージが浮かぶのを感じながらそのまま『絆の書』へと魔力を流し込んでいった。
……よし、そろそろ良いかな。
そう感じた後、右手を離しながら目を開けると、そこには猫の姿で縁側で丸まりながら和んだ表情を浮かべる紫の姿と猫又についての詳細に書かれた文章が浮かび上がっていた。
「紫は完了……っと、それじゃあ次は朱夏だな」
「あ、はい」
返事をしながら朱夏が焚き火の中から出てきた後、俺はしゃがみ込みながら朱夏の前に『絆の書』の白紙のページを広げた。そして、朱夏が白紙のページに前足を置いたのを確認してから俺は再び右手を置き、同じようにしながら『絆の書』に魔力を注ぎ込んだ。
……うん、そろそろ良いな。
右手を離しながら目を開けると、そこには安らいだ表情を浮かべながら炎の中で眠っている朱夏の姿と火鼠について詳細に書かれた文章が浮かび上がっていた。
「よし、これで完了だな」
「これでまた仲間が増えたわけだが……この調子だと本当に『絆の書』が埋まるくれぇの数になりそうだな」
「ははっ、そうなったら楽しいだろうな。さて、そろそろ紫達を出すか」
そう言いながら『絆の書』の表紙に手を置いて魔力を注ぎ込み、紫達が『絆の書』から出てきたのを確認した後、俺は紫達に話し掛けた。
「紫、朱夏、居住空間はどうだった?」
「うん! スッゴく良い所だったよ!」
「とても住みやすそうな場所で、これからの生活がスゴく楽しみになりました」
「そっか、それなら良かったよ」
紫達の感想に対してニコリと笑いながら頷いていたその時、「柚希君」と縁側の方から声を掛けられ、俺達は揃ってそちらに視線を向けた。
すると、そこにはアルミホイルに包まれたサツマイモを載せたザルを持った天斗伯父さんの姿があり、天斗伯父さんは紫と朱夏の姿を見回すと、優しい笑みを浮かべた。
「どうやら、そちらのお二人も仲間に加わったようですね」
「はい」
「天斗さん、よろしくお願いします」
「これからよろしくお願いします、天斗さん」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。さて、それではそろそろ焼き芋を作るとしましょうか。皆さん、手伝って頂けますか?」
その天斗伯父さんの言葉に全員で頷いた後、俺達はザルからサツマイモを取り、次々と焚き火の中に入れていった。そして、落ち葉がハラハラと舞う中、他愛ない話をしながら縁側に座って焼き芋が出来上がるのを待ち始めた。
……うん、こんな風に平和なのはやっぱり良いな。
皆と楽しい毎日を過ごせる事に喜びを感じながら俺は一人で静かに微笑んだ。
政実「第24話、いかがでしたでしょうか」
柚希「今回で別世界から迷い込んだ仲間が増えたわけだけど、この先もこういう仲間は増えていくのか?」
政実「それは今のところ未定かな」
柚希「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さて……それじゃあそろそろ締めていこうか」
柚希「ああ」
政実・柚希「それでは、また次回」