柚希「どうも、遠野柚希です。ペットか……お世話は大変だけど、アニマルセラピーっていう言葉もあるくらい動物がいる状態っていうのは癒されるし、それも良いかもな」
政実「うん。どんなペットにするかはまだ未定だけど、少しずつ決めていきたいかな」
柚希「そうだな。さて、それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・柚希「それでは、第25話をどうぞ」
年の暮れも迫ったある冬の朝、俺は『絆の書』の皆と一緒に毎年恒例の大掃除に取りかかろうとしていた。
「よし……それじゃあ早速始めていこうか。皆、今日中に終わるように頑張るぞ!」
『おー!』
『うむ』
『ああ』
皆の返事を聞いた後、俺は仕事を割り振った。そして、皆がそれぞれの仕事を果たすために歩いていったのを見送った後、俺も自分がやるべき事をやるために歩き始めようとしたその時、「柚希君」と天斗伯父さんから声を掛けられた。
「はい、何ですか?」
「今日、乙野さん達のところにご挨拶に行こうと思っているのですが、柚希君はどうしますか?」
「乙野さんのところへ……」
天斗伯父さんの言葉を聞き、俺は乙野さん一家の事を頭の中に思い浮かべた。
乙野さんは天斗伯父さんの知り合いで、仕事の都合で一家揃ってこっちの方へ引っ越してくる予定だった人達だ。
しかし、引っ越し先だった貸家がダブルブッキングが原因で直前で駄目になり、乙野さん一家が酷く困っていた時、天斗伯父さんが提案したのが、俺が父さん達と住んでいた家を乙野さん一家に貸し出す事で、俺もそれを承諾したため、乙野さん一家はその家に今も住んでいる。
もちろん、そういう理由で困っていたからといって、まったく知らない人達をあの家に住まわせるのは抵抗はあったし、乙野さん達がどんな人達なのか興味もあった。
なので、俺はそれを決める前に乙野さん一家に会わせてもらう事にし、天斗伯父さんと一緒にあの家で顔合わせをしたのだが、実際に会った乙野さん達はとても好感の持てる人達だった。
大黒柱の
そして、その二人の息子で、学区こそ違ったが同い年の
そんな非の打ち所のない乙野一家と話し、この人達なら家を悪いようには使わないと判断して、乙野一家に家を貸す事を本格的に決めたのだが、俺はその日から一回も乙野さん達には会っていなかった。
別に乙野さん達は悪い人達ではないし、俺もまた会いたいとは思っている。けれど、俺達が住んでいた家で他の人達がもう俺には出来ない事をしている姿を見るのが俺にはどうにも辛かったのだ。
……でも、今は違う。琥珀と出会ったあの夢の中で父さん達とさよならをした時に俺は泣いたり羨んだりするだけの自分とも別れを告げたんだ。だから……!
「……俺も行きます」
「……わかりました。それでは、早速行きましょうか」
「はい!」
微笑みを浮かべる天斗伯父さんの言葉に返事をした後、出掛ける準備をするために自室へ行った。そして、厚着をして玄関へ戻ってみると、そこには同じように厚着をした天斗伯父さんと話をする義智の姿があった。
「義智……」
「……柚希か。シフルから今から乙野家に行くと聞いたが、お前は大丈夫なのか?」
「……大丈夫だよ。もうあの頃とは違うし、そろそろ俺も前に進む時だと思うからさ」
「……わかった。だが、無理だけはするな。何かあった時は、遠慮無くシフルに頼るのだぞ」
「わかってるよ。それじゃあ、皆の事は頼んだぞ」
「ああ」
義智が頷きながら答えた後、俺は天斗伯父さんと一緒に外に出た。道は昨夜から降っていた雪ですっかり覆われ、気温も思っていたよりも低かったが、厚着や滑り止めが底に付いた靴のお陰で歩きづらいという事は無かった。
「ふう……外もだいぶ冬らしくなってきましたね」
「そうですね。そして、あと三ヶ月で中学生になるわけですが、柚希君は中学生になったらやってみたい事はありますか?」
「やってみたい事……」
「なんでも良いですよ。どこかに行ってみたいでも良いですし誰かと会ってみたいでも良いです。柚希君がやりたいと思った事を自由に言ってみてください」
「えっと……」
突然そんな事を言われてもな……行ってみたいところは結構多いし、会ってみたい人ならざるモノも多いから、挙げていったらキリが無いよな……。
そんな事を考えながら歩いていた時、ふとある事を思いつき、立ち止まりながらそれを口にした。
「……義智の事をどうにかしてやりたいかもしれません」
「義智さん……ですか?」
「はい。四神の試練の時と父さん達が亡くなった日の夢を見た時、アイツの雰囲気がいつもと違った気がするんです。あの時は特に気がつかなかったんですけど、今思えば俺と誰かを重ねて見ていたような気がするんです」
「…………」
「天斗伯父さんは義智の過去を知っているんですよね? もしかして、義智が俺と誰を重ねて見ているか知っているんじゃないですか?」
別に俺と重ねている人が誰なのかを知りたいわけじゃない。俺は少しでも義智の過去を知り、義智にもっと深く寄り添いたいだけだ。
今まで傍で支えてもらい、力になってもらってきた分、今度は俺が力になりたい。それが今の俺が出来る最大限の恩返しだから。
「……教えて下さい。アイツの過去にいったい何が──」
「落ち着いてください、柚希君」
「天斗伯父さん……」
「……たしかに私は義智さんの過去について知っています。ですが、義智さんの過去について私から聞くのは、果たして本当に良い事でしょうか」
天斗伯父さんの言葉を聞いてハッとする。
「あ……」
「まだ話すべきタイミングではないと判断して、柚希君が夕士君や長谷君に転生者の事や『絆の書』の力について内緒にしているように義智さんもご自身の過去についてまだ話すべきではないとお考えになっているからお話にならないのだと私は思います」
「…………」
「もちろん、それは義智さんが柚希君の事を信頼していないからではありません。義智さんの柚希君への信頼は私から見ても強いですから。
恐らくですが、義智さんにとって、今はその事よりも柚希君の『力』の強化や『絆の書』の皆さんとの生活のサポートを優先するべきだと判断しているから、そして過去について話すタイミングをご自身で決めているからだと思います」
「それって……」
その俺の呟くような声に天斗伯父さんは静かに頷いた後、にこりと笑いながら言葉を続けた。
「柚希君と同じです。ですから、今は義智さんの事を待っていてあげて下さい。義智さん自身も苦悩はされているはずですから」
「……わかりました」
「さて、それでは乙野さん達のところへ行きましょうか。このまま立っていても体が冷えるだけですからね」
「はい」
返事をした後、俺は天斗伯父さんと一緒に再び歩き始めた。そして十数分後、俺達は乙野さんの家の前に立っていた。
遂に来たな……正直な事を言えば、今だって足は重いし、この先で見る物がもう俺には手に入らない物だっていうのはわかってる。でも、ここまで来た以上、もう俺は逃げない。いや、逃げたくない。
「……行きましょう、天斗伯父さん」
「はい」
天斗伯父さんが返事をした後、俺は小さく息を吸ってからインターフォンのチャイムを鳴らした。
「はーい」
扉の向こうから綺麗な声が聞こえてきた後、ドアがゆっくりと開く。すると、そこには南海さんの姿があり、天斗伯父さんの姿を見て微笑んだ後、俺を見てとても驚いたような顔をした。
「柚希……君」
「ご無沙汰してます、南海さん。今日まで顔すら見せず本当にすみませんでした」
「……ううん、良いの。柚希君の気持ちを考えたら仕方ない事だってみんなで話をしてたから。それよりも来てくれて、こうして顔をまた見られて本当に嬉しい」
そう言う南海さんの目にはうっすら涙が浮かんでおり、波動からも嬉しさの感情が強く伝わってきた。
「そう言って頂けて嬉しいです。陸久さんと柚瑠もいますか?」
「うん。陸久君はリビングにいるし、柚瑠なら部屋にいるよ」
「そうですか……」
「さあ、上がって。二人も柚希君と会えたら本当に喜ぶと思うよ」
「わかりました」
南海さんの言葉に返事をした後、俺は天斗伯父さんと一緒に家の中へ入った。そしておじゃましますと口にしてから靴を脱いでリビングまで行ってみると、南海さんの言う通り、そこには陸久さんの姿があった。
「陸久君、柚希君が来てくれたよ」
「……みたいだな。久しぶりだな、柚希君。元気そうで何よりだよ」
「陸久さんもお元気そうでよかったです。陸久さん、先程南海さんにも言ったんですが、今日まで顔すら見せず本当にすみませんでした」
「いや、仕方ないさ。この家は柚希君が亡くなったご両親と一緒に住んでいたところで、ここに来るにはとても覚悟がいるわけだからね。こうして来てくれただけでも本当に嬉しいよ」
「……ありがとうございます」
温かかった。その言葉もその気持ちもその全てが俺にとっては温かかったのだ。本来、俺と乙野さん達は無関係であり、こういう事情でもなければ関わる事すら無かっただろう。
だけど、二人は俺が来てくれて嬉しいと言ってくれたし、柚瑠にも向けているであろう“家族”への暖かい視線を向けてくれている。その事が本当に嬉しかった。
……俺と乙野さん達は家族というわけじゃないし、こんな事を感じるのはやっぱりおかしいのかもしれない。でも、この視線はまだ両親が生きていた頃に俺に向けてくれていた物、そして天斗伯父さんがいつも向けてくれている物に似てる気がする。
それだけ乙野さん達は俺の事も大切に考えてくれていて、数年振りの再会を喜んでくれているんだ。だから、これからは定期的に来られるようにしよう。俺だって乙野さん達と話すのは好きだし、また会いたいと思ってきたのだから。
そう思った後、俺はかつて俺の部屋だった場所がある方へ視線を向けた。
「ちょっと柚瑠にも挨拶をして来ます」
「うん。柚瑠、すごく柚希君の事を気にかけてたから、とっても喜ぶと思うよ」
「度々私に柚希君の様子を聞いてくれていましたからね」
「そうでしたね。よし……それじゃあ行ってきます」
その言葉に三人が頷いた後、俺はリビングを出て二回へ続く階段へと向かった。階段を一歩ずつ踏みしめ、一番上まで着いた後、俺はすぐ近くにある部屋のドアをノックした。
「はい、どうぞ」
その言葉を聞いた後、俺は部屋のドアを開けてそのまま中へ入った。そして机に向かっていた柚瑠がこっちを向いた瞬間、柚瑠はさっきの南海さんのように本当に驚いたような顔をした。
「ゆ、ずきくん……」
「久しぶりだな、柚瑠。元気にしてたか?」
「……うん、元気だよ! 柚希君こそ元気そうでよかったよ!」
柚瑠は本当に嬉しそうな顔で言い、波動からも嬉しさが伝わってきた。
「ごめんな、また会おうって話してたのに何年も会いに来なくて」
「そんな事……こうして来てくれただけでも本当に嬉しいよ。来るにはとても覚悟がいるはずなのに……」
「それ、陸久さんにも言われたよ。やっぱり親子だけあって考える事も同じになるんだな」
「父さんにも……ふふ、なんだか嬉しいな。父さん、何かと悪戯を仕掛けてきたりちょっと僕よりも詳しい事があると自慢げにしてくるけど、似てるって言われるのは悪い気はしないし、少しだけ父さんみたいになりたいと思うところもあるから嬉しいかな」
「……そっか」
少し照れ臭そうにしながらも微笑む柚瑠は嬉しそうに見え、柚瑠にとって陸久さんがどれだけ大きい存在になっているかというのがハッキリとわかり、その姿にかつての俺の姿が重なって見えた気がした。
そう、俺も父さんが生きていた頃に父さんみたいになりたいと思っていたのだ。父さんも仕事があったからあまりふれ合う時間はなかったし、まだ俺も小さかったから親子としての絆を育むだけの機会もそう多くはなかった。
だけど、俺から見えた父さんはどんな時でもしっかりとした判断を下す上に母さんをいつも大切にしていて、理想の父親像として考えるには相応しい人だと感じていたし、身近にいて参考に出来る大人の男性と言えば父さんだったのだ。
「柚瑠ならきっとなれるよ。今だって勉強の傍ら空手を頑張ってるんだろ?」
「うん。友達が元々やってたんだけど、柚希君や学校や他のところで出来た友達、両親を守るために何かを始めたいと思って始めた物なんだ」
「うん、良い考えだと思う。けど、俺だって守られてばかりじゃないからな?」
「そういえば、柚希君も友達の影響で合気道をやってるんだよね? 合気道は楽しい?」
「ああ。新しい事を知れるのは楽しいし、段々自分が強くなっていくのがわかる感じがして、やりがいはとても感じてるよ」
「うんうん」
そうして俺は柚瑠と一緒に色々な事を話した。学校の事や日常生活の事、お互いの習い事など数年も溜まっていたから話題はまったく尽きず、楽しく話をしている内に俺達の話題は柚瑠のある言葉で一気に毛色が変わった。
「あ、あのさ柚希君……」
「ん、どうした?」
「柚希君は……その、好きな子とかって出来た?」
「好きな子……」
それを聞いて俺の頭には金ヶ崎雫の顔が浮かんだ。二年生の夏の肝試しがきっかけで出会い、それからも何かと関わる機会があった事で意識をし始め、気になる女の子というカテゴリーに入ったとても可愛らしい女の子、それが金ヶ崎雫だ。
正直な事を言えば、俺は金ヶ崎の事が好きなんだと思う。まだちゃんとした告白もしてないし、夕士と狐崎のようにちゃんとした進展をしたわけでもないけれど、恋人にしたいと思えるのは間違いなく金ヶ崎だし、前に金ヶ崎が他の男子と交際を始めたらという想像をして心がモヤモヤした事からそれは間違いないのだろう。
「……いる。まだちゃんと好きだって伝えてはないけど、好きだと言える女の子ならいるよ」
「……そっか」
「柚瑠は?」
「僕もいるよ。入学式の時に出会って、それからずっと好きな子が一人」
「そっか……因みに、その子がさっき話してた幼馴染みの女の子の一人か?」
「うん。“金ヶ崎泉”ちゃんっていうんだけど、いつも落ち着いていて勉強も得意で……」
「……ん、金ヶ崎?」
その聞き覚えのある名字に引っ掛かりを覚えていると、柚瑠は不思議そうな顔をしながら頷いた。
「うん、そうだけど……どうかした?」
「いや、俺が好きな子の名前が金ヶ崎雫っていうんだけど……」
「……え? あ、そういえば前に泉ちゃんが従姉妹が柚希君の学区に住んでるって言ってた気がする……」
「それじゃあ俺達って……」
「二人揃って金ヶ崎っていう子に恋をして……」
俺達は顔を見合わせ、どちらともなく笑い始めた。
「あははっ! こんな事ってあるんだな!」
「ふふっ、ほんとだね」
「向こうもそれを知ったら本当に驚くだろうな」
「そうだろうね」
柚瑠がクスクス笑いながら言う様子を見ながら俺は小さく息をついた。
「……なんかこうやって笑いながら色々な話が出来るならもっと早く来るべきだったな」
「柚希君……」
「たしかにきっかけはちょっとした偶然だったけど、こうやって笑いながら話せるのは本当に嬉しいし楽しい。親友たちや他の友達と話す時も楽しいけど、柚瑠と一緒の時はまたどこか違う楽しさがある気がするよ」
「……うん、同感。不思議だけど、他の子とだと味わえないようなワクワクとかドキドキがある感じだよね」
「ああ。そんな楽しみがあるのにまた来なくなるのはやっぱり損だよな」
その言葉に柚瑠が少し驚いたような顔をする中、俺は微笑みながら口を開いた。
「だから、またここに来るよ。次だっていつになるかはわからないけど、もう数年かけてなんて気の長い話はしない。今度は友達の家に遊びに来たような気軽さで来る事にするよ」
「柚希君……うん、待ってるよ。ここは本来なら柚希君のお家なんだし、来てくれたら家だって喜ぶと思うよ」
「家が付喪神だったら大はしゃぎかもな」
「だね。そしていつかはここに泊まっていくとか……」
「それはまだハードルが高いな。でも……いつかは本当にやりたいな。夜更かししながら柚瑠と学校の事や友達の事、お互いの習い事の事や人ならざるモノ達の事、そして恋愛の話……したい話は幾らでもあるからな」
そう、今日だって色々話した気がするけど、まだ話し足りない気はしていた。だから、いつかはそうやって夜通し話がしたい。前に夕士や長谷とはやってみたけど、その時も結局揃って寝てしまったのだから。
「柚瑠、お互いにもっと強くなろうな。自分や超えたい奴を超えるため、そして大切なものを守るためにも」
「うん、もちろん。あ、そうだ……いつか合気道と空手で手合わせがしたいな。空手同士でなら道場でもやってるけど、他の武道とはやった事がないから」
「中々機会もないしな。けど、その異種格闘技戦みたいなのは俺も乗った。空手の型っていうのも興味はあるし、どこまで俺の合気道が通じるかも見てみたいしな」
「僕もどこまで自分が通用するか試してみたい。だから、約束だよ」
「ああ、約束だ」
俺達は固く握手を交わした。今回、乙野さん達に会いに来て本当に正解だったと思う。自分の中で気持ちの整理は出来ていたとは言っても、やっぱりこうして会わなければまだ燻らせたままだったかもしれないからだ。
でも、もう違う。ここには俺がもう手に入れる物が出来ない物があるかもしれないけれど、ここにある物は俺にとって重荷になる物じゃなく、気持ちを安らげ落ち着かせてくれる物だとしっかりわかったから。
そうして握手を交わしていた時、廊下の方から足音が聞こえ、ドアがゆっくり開くと、そこには天斗伯父さんの姿があった。
「天斗伯父さん」
「ふふ、どうやら柚希君の中でまた一つ決着がついた物があったようですね」
「……はい。これでようやく何も気負わずに乙野さん達にまた会いに来れそうです」
「それは良かったです。今、南海さんがお菓子を作って下さっているので、柚希君達も降りてきてください」
「わかりました。それじゃあ行こうぜ、柚瑠」
「うん!」
柚瑠が返事をした後、俺達は揃って部屋を出て、そのままリビングへと向かった。
「それじゃあお邪魔しました」
昼前、俺と天斗伯父さんは玄関前に立ち、揃って乙野さん達に頭を下げた。
「来てくれて本当に嬉しかったよ、柚希君」
「本当はお昼ご飯も食べていってほしかったけど、お昼から用事があるなら仕方ないからね。柚希君、よかったらまた来てね」
「はい。柚瑠とも約束しましたし、近い内にまた来られるようにします」
南海さんの言葉に答えた後、俺は柚瑠に視線を向けた。
「柚瑠、またな」
「うん、またね。次は僕の友達とも会ってもらえたら嬉しいな。ちょっとからかうのが好きな子もいるけど、みんな良い子達ばかりだから」
「ああ、会ってみたいな。その時は俺の親友たちや他の友達とも会わせてみるか」
「そうだね。その時が本当に楽しみだよ」
「俺もだよ」
そう言って笑いあった後、俺達は乙野さん達に見送られながら歩き始めた。さっきまで暖かいところにいたからか少し寒く感じたけれど、心の中はとてもポカポカしていた。
「天斗伯父さん、乙野さん達のところへ誘ってくれて本当にありがとうございました。今日行かなかったら、またしばらく行く機会が無かったと思いますから」
「どういたしまして。今回の乙野さん達との時間は柚希君にとってより良い時間になったようですね」
「はい。琥珀と出会った日に過去は引きずる物じゃなく、懐かしむ物だって感じましたけど、今回の件で完全に過去を振りきれた気がします。と言っても、また色々な家族を見てその姿を羨ましいと思う時は出てしまうかもしれませんけどね」
「それでも良いんですよ。羨み過ぎては良くないですが、羨む事は悪いわけじゃないです。羨ましいと思うからこそそれ以上の物を自分から求められるわけですしね」
「それ以上の物……」
天斗伯父さんの言葉を繰り返していると、天斗伯父さんはにこりと笑った。
「柚希君にもいますよね、好きな子が」
「それは……まあ……」
「将来、本当にその子と家族になるかはわかりません。それは柚希君次第ですから。ですが、もし本当にそうなった時には、その子と相談しながら柚希君が求める家族としての形を追い求めても良いと私は思います。その羨ましいと思った気持ちを糧にして」
「羨ましさを糧に……」
「もちろん、今でも良いですよ。血の繋がりという形で言えば、家に私しか家族はいませんが、柚希君には義智さんを始めとした『絆の書』の皆さんがいますからね」
「……そうですね」
端から見れば、それはただの家族ごっこだし、そんなに大層な物でも無いのかもしれない。でも、俺は『絆の書』のみんなを家族、いやそれ以上だと思ってる。生まれも出会いの形も違うけど、誰が一番だとかそういうのはない。みんなが大切で、みんなが家族なんだ。
「……それじゃあ早く帰ってやらないといけませんね。義智達が指示出しをしてるかもしれませんけど、早く姿を見せて安心させてやりたいですから」
「そうですね。そして私達も大掃除に参加しましょうか」
「はい!」
返事をした後、俺達は雪をサクサク踏みながら家に向かって歩いていった。そして十数分後、家の前についた俺がドアをゆっくりと開けると、そこには大掃除に励むみんなの姿があった。
「あはは、やっぱりまだ終わってなかったか」
その光景を見ながら軽く笑った後、俺は気持ちが満ち足りていくのを感じながら口を開いた。
「みんな、ただいま」
「皆さん、ただいま戻りました」
その瞬間、玄関にいたみんなやリビングから顔を出したみんなが嬉しそうに笑い、揃って口を開いた。
『おかえりなさい』
政実「第25話、いかがでしたでしょうか」
柚希「今回の話で柚瑠がこっちに初登場したな。そういえば、そろそろ小学生編も終わりだけど、次からは中学生編なのか?」
政実「そろそろではあるけど、ちょっと考えてる事があるから、もしかしたらもう一話挟むかも」
柚希「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さて、それじゃあそろそろ締めていこうか」
柚希「ああ」
政実・柚希「それでは、また次回」