大帝国 南遣艦隊記   作:ShinGen

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Turn 4

統一宇宙歴939年、初夏

 

惑星満州外縁小惑星、ノムン=ハーンⅣ付近

第六艦隊旗艦「伊勢」艦橋

 

「増援の山本艦隊到着を確認!」

「前方のソビエト艦隊に未だ動きは見られません」

 

レーダー員の報告を私は長官席で受ける。

 

「油断はしないように、多分これは政治的な見せ駒だろうけど油断したら一気に雪崩込んでくるよ」

 

私たち第六艦隊に祀梨ちゃんの第五艦隊、山本さんの第二艦隊の三個艦隊はこのノムン=ハーン小惑星帯を挟む形でソビエト極東艦隊と睨み合っていた。

 

なぜこんな事になっているのか、それを語るには私たち日本海軍が満州を攻略した直後まで遡らなきゃいけない。

 

 

―――――――――

 

 

第二次満州会戦終結の直後、日本陸軍が即座に惑星満州を占領。

 

本土から撃沈された戦艦群の予備主砲を含む多数の要塞砲を運び込み中帝国軍の逆撃に備えた。

 

だがここで予想外の事態が起こる、中帝国政府(我が儘皇帝)は満州陥落の報を受けると首都北京星を放棄し南京モン宙域まで逃げてしまったのだ。

 

日本軍は予期せぬ幸運でもって北京星域の完全占領を成し遂げたのだが、幸運はそう長くは続かなかった――――

 

『ソビエト政府は中帝国から譲り受けた正統なる権利として惑星満州を含む北京星域北部一帯の速やかなる返還を日本帝国政府に求めるものである』

 

北の超大国、人類統合組織ソビエトの介入だ。

 

彼らは外交ルートを通じて、北京星域北部の「返還(屁理屈)」を「強く要請(脅迫)」してきた。

 

無論日本(私たち)は易々と受け入れるわけにもいかず、軍事力を持っての対峙となった。

 

 

―――――――――

 

 

「と言っても、このまま睨み合ってるだけじゃ埒があかないよー」

「うーん、でも物量はソビエトが圧倒的に有利だからね」

 

新造艦や改修の終わった艦を戦列に加えたとはいえ、先の敗北がまだ尾を引いている日本軍とソビエト軍ではその戦力差は判然としていて、少しバランスが崩れれば戦線が崩壊するのは目に見えていた――――

 

「長官、山本中将から通信です」

「何だろう?繋いで」

 

この方面で司令をしている山本さんからの通信が入ったのは、この睨み合いがもう三日にも達しようという時だった。

 

『多萌の嬢ちゃん、ちょっと頼みがあるんじゃが』

「何でしょう?」

『お前さんの第六艦隊をハルハ帯の方へ移動させてくれんか?』

 

ハルハ帯、ノムン=ハーン小惑星帯から少し後方へ下がった位置にある比較的密度の高い帯のことだ。

 

「あそこからだと前線に何かあった時に即応できませんけど……?」

『まあそうなんじゃが……』

 

山本さんによると、祀梨ちゃんの索敵艦がソビエト艦隊の妙な動きを捉えたそうだ。

 

後方に浸透されてしまえば敗北は必至なので、側面防御の意味も兼ねて私たちを移動させる事に決定したのだとか。

 

更に、山本さんはこう付け加える。

 

『どうにも嫌な予感がするんじゃ、どうにも出目が良くない気がするわい』

「ふふ、長年の博徒の勘ですか?」

『まぁ、そんなところじゃな。よろしく頼むぞ』

「分かりました」

 

こうして私たちは主力艦隊から数隻ごとに後退させ、ハルハ帯の警戒に就くことになった。

 

そして、祀梨ちゃんの補足した情報と山本さんの勘は当たっていた事が証明される。

 

 

―――――――――

 

 

前線から後退し、「伊勢」がハルハ帯付近の小惑星にその身を隠した僅か後にレーダー員が声を張り上げた。

 

「ッ!?ソビエト軍艦隊を探知!一個艦隊規模!」

「総員戦闘配備!……山本さんの勘、当たっちゃったかぁ」

 

ソビエト軍は後方迂回からの半包囲を目論んでいたようだ。

 

唯一の救いは迂回してきた艦隊の規模が、私たち(第六艦隊)でも対処できる程度のものだったことだろうか。

 

「敵艦隊の編成確認!ミサイル巡4、雷撃駆12、ミサイル艇及び魚雷艇18!」

「千春!主目標ミサイル巡洋艦!主砲発射用意!」

「分かった!主砲咄嗟砲戦!初撃で当てるよ、撃てーっ!!」

 

あちらも気付いたのだろう、盛んにミサイルを放ってくる。

 

「近接対空防御!通したら終わりだよ!」

 

伊勢の25mmレーザー機関砲が弾幕を展開する。

 

だが、余りの物量を前に一部のミサイルは着弾し「伊勢」の艦体を揺さぶる。

 

「左舷BG1-6ブロック、LM4から5ブロック付近に被弾!」

「隔壁下ろして!ミサイル巡はまだ黙らない!?」

「もうすぐ弾着・・・・今!」

 

無論「伊勢」も負けちゃいない、レーザー主砲が煌き敵ミサイル巡洋艦1隻に駆逐艦3隻を叩き切る。

 

「距離を取りながら砲撃続行!鉄鋼魚雷の射程まで肉薄されたら防げないよ!」

「了解!機関後進!スラスター全開!」

 

発見距離が近かったため敵ミサイルの射程から出るのは難しくても、魚雷の有効射程まで近づかれれば防ぎきるのは至難の業だ。

 

第六艦隊各艦はゆっくりと後退しながら、ソビエト艦隊を磨り潰していった。

 

そして敵艦隊の三分の一程が宙の藻屑となった頃……。

 

「敵艦隊、後退を始めました!」

「……追撃するよ!ただし!突出はしないように!ハルハ帯から出ない程度でソビエト艦隊を追い散らそう!」

 

私は追撃を決意する、ここで押し込んでおくことで日本海軍侮り難しと思ってもらえれば万々歳だ。

 

結局、ソビエト艦隊は散々に打ち据えられ残存艦は這う這うの体で離脱していった。

 

これを受けてかノムン=ハーン前面に布陣していたソビエト極東艦隊も後退。

 

北京星域に、漸く平穏が戻ったのだ。

 

 

 




このあたりから原作とは変わってきてます、はい。


第六(山口)艦隊編成(ハルハ帯戦時)

旗艦「伊勢」

第六戦隊「利根」「筑摩」
第四水雷戦隊「五十鈴」以下駆逐艦12隻

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