大帝国 南遣艦隊記   作:ShinGen

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Turn 5

統一宇宙歴939年、夏

 

ノムン=ハーンの戦いから数ヶ月、この間にも世界情勢や日本を取り巻く環境は急速に変化していった。

 

その中でも最も大きな変化は、遂に欧州星海域でドクツ第三帝国が戦端を開いたことだろう。

 

旧領の奪還、第一次宇宙大戦の報復、祖国の誇りの回復……理由は様々だろうが、二度目の大戦の火蓋が切って落とされた事だけは確かだ。

 

同時に、ドクツ第三帝国・イタリン共和帝国・日本帝国の3ヵ国で日独伊防共協定が締結される。

 

日本はノムン=ハーン以降ソビエトとの日ソ不可侵条約を締結していたが、依然大きな驚異であるソビエトに対抗すべくこの協定を締結した。

 

そして日本での大きな変化、正確には日本海軍の変化は――――

 

「あの、リンファと申します。よろしければ共有主義についてのお話を聞いてもらえませんか……?」

「あー!リンファさんまだ赤本持ってたー!」

「す、すみません……私にとってはもうちょっとしたお守りの様な物で……」

「もう、一回手放してみようよ?」

「ぜ、善処します……」

「絶対だよ!……あ、私はリディア・ロコソフスキーです。よろしくお願いしますね!」

 

日本海軍の提督として、元中帝国北軍司令官リンファさんとノムン=ハーンで私たちと戦い戦闘後救助されたリディアちゃんが加入したことだ。

 

更にもう一つは――――

 

「と、いうわけだ。皆も仲良くしてやって欲しい。それと……秋山」

「はい。技研の平賀(ひらが)津波(つなみ)所長より、「赤城」及び「加賀」の改装と新型の「蒼龍」「飛龍」の建造が完了したとの報告を受けています」

 

遂に日本海軍に本格的な空母が配備されたのだ。

 

既に海軍航空隊という組織はあったが、それは衛星軌道上の基地から発進する要撃機隊というべきもので到底攻勢に使用することが出来なかったが、第一次満州会戦での損傷艦改造の2隻に新造2隻、更に聞くところでは軽空母級2隻の計6隻体制となった今、航空機を攻勢作戦へ起用することができるようになったのだ。

 

「とりあえず「赤城」「加賀」に「鳳翔」の3隻は祀梨ちゃんの部隊に、「飛龍」「蒼龍」「龍驤」は……そうだな、多萌ちゃん」

「はい」

「この3隻は多萌ちゃんの第六艦隊に配備しよう、上手く使ってくれ」

「わ、分かりました……!」

 

以後、祀梨ちゃんの第五艦隊と私の第六艦隊は空母部隊としての色を強めていくこととなる……。

 

 

―――――――――

 

 

「さて、北京星域の支配権を確固とした今、我々が次に目指すべきは南京モン星域だ」

 

北京星域、日本海軍前線司令部――

 

東郷長官はリンファさんとリディアちゃんの紹介、空母群の配属に続きこう切り出した。

 

「日本を取り巻く国際情勢は徐々に悪い方向へ向かいつつある。これを切り抜けるためにも中帝国には少なくとも日本にちょっかいをかける気を失くす程度には弱体化してもらわなきゃならないからな」

「ソビエトとの不可侵により、北部の守りは固まりました。しかし、問題が一つ」

 

秋山参謀の言う「問題」。

 

それは、中帝国がガメリカやソビエトの援助を受けて南京モン前面に構築した要塞群「是苦外(ゼークト)ライン」だ。

 

「そこで、その要塞線を空母6隻フル動員して叩く」

「つまり私たちの出番……!フフ……フフフ!」

「ま、祀梨ちゃん、怖いよ……?」

 

待ってましたとばかりに祀梨ちゃんが燃える。

 

そして私自身、多少戸惑いつつも気合を入れ直した。

 

「作戦発令と同時に航空隊を進出させ要塞を突破、一気に南京モンを攻略する。何か質問のある者は?」

 

司令部の全員が視線で了解したと告げる。

 

「では各艦隊の出撃準備が終了し次第、本作戦を発令する。総員準備に入ってくれ」

「了解!」

 

五提督の声が重なる。

 

対中帝国戦第二段作戦は、こうして幕を開けた――――

 

 

―――――――――

 

 

「全艦ワープアウト!防御円陣に移行!」

 

南京モン星域前面、「伊勢」艦橋

 

「祀梨ちゃんの第五艦隊と協力して攻撃隊を出すよ!二航戦に攻撃隊発進用意を下令!」

 

中帝国に要塞線の防備を固める時間をこれ以上与えるわけにはいかないという理由から、日本海軍は用意が整うと同時に南京モン星域に雪崩込んだ。

 

「報告、敵艦隊は要塞線後方に布陣!旧樋口艦隊のものと思しき日巡2、ガメリカ式部隊一個艦隊、恐らく新型機動兵器1!」

「……新型機動兵器?」

「多萌、アレだよ。中帝国が宣伝してた新兵器、超菱形!」

 

レーダー員からの報告に首を捻っていると、千春が横から教えてくれた。

 

確かに聞き覚えがある、北京から逃れた中帝国軍が盛んにその性能を喧伝していた新型兵器の噂は。

 

「その……超菱形?の性能は分かる?」

「技研の平賀所長曰く、速度重視の機動兵器で打撃力は高くないだろうとの事です」

「なるほど……まぁ、注意するに越したことはないね」

「それからもう一つ報告なのですが、敵艦隊中心部付近にコロニーの反応があります」

 

レーダー員の再びの報告に、私はまた首を捻った。

 

「コロニー?」

「はい、国際識別番号CH-01A「猫玉」のようです。少数民族の自治コロニー……とのことですが」

「……なんだろう、すごく嫌な予感がする」

 

あの暴君のことだ、人間の盾くらい普通にやりかねない。

 

「……でも、先ずは要塞突破が先か」

「第五艦隊より、攻撃隊発艦準備完了との連絡有り!」

「ん、分かった。二航戦の用意は?」

「さっき「飛龍」から、全艦用意できたって報告してきたよ!」

 

日本海軍の6空母全てが攻撃隊発進用意を整える。

 

そして――――

 

「旗艦「長門」より通信!攻撃隊発艦を開始せよとの事です!」

「了解!全攻撃隊、発艦始め!」

 

是苦外ライン、そして南京モン宙域の支配権を賭けた空爆戦の幕が上がる。

 

 

 




一体何時になったら南派艦隊の話になるのやら……?

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