ミソラとスバルの海岸デート
「う~~ん……太陽が気持ちいい!」
さんさんと照り返す、太陽に、私は思いっきり伸びをし、海を見つめた。
今日は、海辺の写真撮影のために海に来ていた。といっても、正確に撮影を行うのは明日で、今日は旅疲れを取るための、一日休憩である。
なんせ、今日のために、マネージャーにムリ言って、余裕を持たせてもらったんだもん。だって、今日は……
「よぅやく、ついた……」
電波ロードを伝い、全身汗だくとなった少年の姿に、私は自然と笑顔になった。
「いらっしゃい、スバル君。結構待ったよ」
「あ、ごめん、ミソラちゃん」
困った顔ですぐに謝りだすスバル君に私は首を横に振って、笑った。
「いいよ。ちゃんと、来てくれたし……時間もたっぷりあるから、今日はめいっぱい、海を楽しもう?」
「そぅだね。委員長たちも、連れてくればよかったかな」
それじゃあ、予定狂っちゃうよ。今日は、スバル君と一緒に海を楽しみに来たんだから。
「それよりも、さっさと、泳ごう! スバル君、ちゃんと、水着もって来たよね?」
「うん。抜かりなく……」
持ってきたビニールバッグの中に入った水着を見て、私はますます、ワクワクした。
う~~ん、感無量。
この日のために、今までキツかった、仕事量も我慢したんだもん。今日は、めいっぱい……
「あ、ミソラちゃんだ!」
そぅ、ミソラちゃん……って、え。
「ミソラちゃん、サインください!」
「キャ~~。ミソラちゃんよ。可愛い!」
「写真、一枚、お願いします!」
なになに、この人たち。今日、ここにいることは内緒のはずなのに……
「ミソラちゃん、有名人だからね」
さりげなく達観している、スバル君に突っ込みをれたかったが、今はとりあえず……
「逃げるよ、スバル君!」
「え、ちょっと……海は!?」
暢気に海はどぅするのかと尋ねるスバル君を引っ張り、私は野次馬の群れから逃げいていった。
「おい、あいつ、俺たちのミソラちゃんをかっさらっていったぞ」
「許せね~~……ミソラちゃんが純真だから、そこをつけ込んだな」
「ファンクラブに連絡だ。あの男を特A級犯罪者にしろ!」
な、なんだか、怖いこといってるけど、い、いざとなったら、守ってあげるからね。
はぁ~~……
まさか、海に入る前に、妨害にあうなんて、思わなかった。
せっかく用意した水着も、パァになっちゃったし……
いつもなら、大抵は、うまくいくはずなのに、今日は厄日だな……
「どぅしたの、ミソラちゃん。顔がゲッソリしてるけど」
「う、うぅん……ごめんね。海に来てもらったのに、遊べなくって」
「気にしてないよ。それに……」
海岸の道路から見える、悠然とした海を見て、スバル君はニコッと笑ってくれた。
「こぅやって、海を眺めながら、散歩するのも楽しいよね?」
「スバル君……うん。そぅだね!」
海に入れなくっても、ここは立派な海。こぅやって、海岸デートもオツでいいかも。
そぅこぅやって、時間は夜になった。
せっかくの楽しい時間も、静かに締めくくられようとしたとき、スバル君は、ビニールバッグから、ある物を取り出し、悪戯っ子のように微笑んだ。
「夏の海といえば、やっぱり、花火だよ? たくさん、持ってたから。一緒にやろう」
「花火。やるやる! 私、ロケット花火とかやりたい!」
「いいよ。じゃあ、ロケット花火、セットするね」
砂浜の砂でロケット花火土台を作り立たせると、スバル君はチャッカマンを渡してくれて、火をつけるよう促した。
「なんだか、ドキドキするよね。こぅいうのって……」
実際、スバル君の顔が、ライトに照らされて、なんだか、いつもよりも、ずっと格好良く見えるから不思議だ。
ボッ……シュピィィィン!
「わ~~い、飛んだ飛んだ!」
「よかったね。じゃあ、次のやろうか」
花火はたくさんあるから、昼の分、海を満喫できなかった分、花火を楽しめそう。
それに、スバル君と夜の海での花火って、とっても楽しい。
出来れば、こんな時間が、いつまでも続くといいな。
でも、時間も花火の量も有限で、気付いたら、ホテルに戻る時間になっていた。
花火も最後の締めに取っておいた、線香花火だけになり、スバル君は、少し儚そうに、一本手渡してくれた。
「じゃあ、これ、最後にしようか。夜更かしすると、ミソラちゃんの仕事に支障がきそうだし」
「……うん」
もっと、遊びたかったな……
でも、時間もないし、スバル君には私のワガママのために、ここに来てもらってるし、これ以上、迷惑をかけるわけにはいかない。素直に諦めるしかないか……
「ミソラちゃんと、海にこれてよかったよ」
「え……?」
「海には、いい思い出がなかったから……」
「……」
グレイブ・ジョーカーで消されてしまった、委員長のことを思い出したんだね。
あの事件は、無事、委員長を元の姿に戻して、解決したけど、それでも、みんな、答えるものがあったんだね。
「来年も、ミソラちゃんと、一緒に海で花火をしたいな?」
「スバル君」
カ~~と顔が熱くなるのを感じ、私は慌てて、燃え尽きる線香花火を見て、答えた。
「ま、また、これるよ……だ、だって、私、スバル君のことが……」
ビ~~ビ~~……
「……」
誰、こんな大事なときに電話をかけてくる奴。
「はい、もしもし……」
ドゴンッと、凄まじい怒声がハンターVGから響き、私はひっくり返りそうになった。
どぅやら、ホテルに戻ってないことで、マネージャーが切れ、怒ってるようだ。みんなも心配しているらしく、私は仕方なく、花火のゴミを片付け、スバル君に帰ることを伝えた。
「じゃあ、僕も帰るね」
ホテルに泊まっていけばいいじゃないかと、言いたかったが、それじゃあ、スバルのご両親が心配するし、これ以上、ワガママはいえない。
でも、やっぱり、まだ、一緒にいたい。
「あ、そぅだ」
名案を思いつき、私はお尻のポケットから、小さなデジカメを取り出し、スバル君の肩を抱きついた。
パシャッ……
「ミ、ミソラちゃん?」
顔を真っ赤にするスバル君に、私も顔を真っ赤にし、走り出した。
「そ、それじゃあ、写真集できたら、真っ先に贈るから、絶対見てね?」
「う、うん……」
お互い気恥ずかしさを残し、ホテルに帰ると、私は、さっき、撮った写真を見て、笑顔になった。
「スバル君。すごいマヌケ顔……でも」
なんども、私を救ってくれた、ヒーローなんだよね。
「これ、消去せずに大事に取っておこう。スバル君……」
大好きだよ。
その一ヵ月後、写真集は無事出来、スバル君の家に贈られた。
ただ、気がかりが、ちょっと、過激な写真もあるから、写真集で、変なことしないか、ちょっと不安である。
だって、スバル君だって、立派な男の子だもん。でも……
スバル君、しっかり、私のこと、女の子だって、見てくれるよね。
スバル君……大好き。