流星のメモリアル   作:スーサン

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今年最後のデート!

「はぁ~~……」

 マネージャーが運転する車の中でミソラは憂鬱そうな顔をした。

「もうそろそろクリスマスか?」

 また、ため息を吐いた。

「今年も大変そう……」

「ふふ……♪」

 女性マネージャーのおかしそうな苦笑にミソラはムッとした。

「本当に年末年始は大変よね? 人気アイドルならなおさら……」

「……」

 暗い顔でミソラはうなだれた。

 年末年始となれば、どの人間も忙しくなる時期。

 人気アイドルの響ミソラとて、年末の忙しさは目を回すものがある。

 歌謡番組の出演にバラエティ番組の撮影、ライブにクリスマスイベント……

 十二月を過ぎても今度は年始のイベントで休む暇が無い。

 簡単に言えば、スバルとデートする時間がなくなるのである。

(あ~~あ……この時期が一番嫌い)

 暗い顔で車の窓に映るカップル達を見てミソラはイラッとした。

(私もあの中に混ざりたい……)

「ミソラちゃん……来週から仕事がギッチリ入るけど」

「うん……」

「明日、英気を養うために一日休みを貰ったから、楽しんでね?」

「え……?」

 運転席のミラーから映るマネージャーの顔にミソラは明るく礼をいった。

「ありがとう!」

「どういたしまして!」

 

 

 家に帰るとミソラはハンターVGでスバルと連絡を取り、明るく笑った。

「だから、明日の休み、一緒にデートしたいなと思うんだ!」

 ハンターVGに映るスバルにミソラはおねだりする子供のように甘い声を出した。

「ねぇ、いいでしょう?」

『なるほどね?』

 スバルも嬉しそうにうなづいた。

『いいよ! どこにいく?』

「今回は普通のデートしようと思うんだ。だから、どこに行くかはスバル君が決めてよ!」

『オーケー! じゃあ、考えておくから、後でまた連絡するね?』

「うん!」

 ピッと電話を切るとミソラはプルプル震えながらベッドに飛び込んだ。

(久しぶりのデートだ!)

 枕を抱き、ぐるぐる回るミソラにハープは呆れた。

(ちゃんと寝れればいいけどね?)

 興奮でいまだにベッドの上で暴れ回るミソラにハープはどうやって落ち着かせようか考えた。

 

 

 噴水のある公園でスバルを待っているとミソラはウキウキした顔で自分の着ている服を見た。

 今日のデートのためにお気に入りの服を出してきたのだ。

 秋をイメージした山吹色のツーピースにパーカーを着て、唇にはいつキスをしてもいいようにリップクリームも塗っているのだ。

 約束の時間まで五分ある。

 ミソラは噴水の舞う泉に映る自分の髪形をチェックし、ふんっと鼻を鳴らした。

(髪型良し、化粧良し……唇よ)

「ミソラちゃん、面白いものでも浮かんでるの?」

「ヒァッ!?」

 背中から声をかけられ、ミソラは短いを悲鳴を上げ振り返った。

「ス、スバル君、もう来たの!?」

「ピッタリだよ」

 ニコニコ笑うスバルにミソラは悔しそうに顔を赤らめた。

(不覚を取った)

 頭の中でどうやって仕返しをするか考えた。

(そうだ!)

 ニヤリと笑った。

「スバル君!」

「おわぁ!?」

 いきなり腕に抱きつかれスバルはビックリした。

「ミ、ミソラちゃん?」

「デートなんだからこれくらい当然だよ!」

「そ、それはそうだけど……」

 周りを見てスバルは諦めたようにうな垂れた。

「じゃあ、行こうか?」

「うん!」

 ミソラに抱きつかれながらスバルはそっと歩き出した。

 ミソラは気付いていなかったが彼女の胸がスバルの腕に当たっており、とても気持ちのいい弾力を生んでいることに……

 これを知ったら、恐らくミソラは喜んでますます胸を押し当ててくるだろう。

(また、おっきくなったかな?)

 心当たりを考え、真っ赤になった。

 

 

「へぇ~~……古いアニメのリメイク映画がやってるんだ?」

 スバルに連れて来られた映画館の上映映画欄を見てミソラは感嘆した。

 それは少年とロボットの心の成長を描いた巨大ロボットアニメの映画だった。

 館内に入るとスバルは受付で映画のチケットを二枚買い、開場時間になるまで近くのソファーでノンビリした。

「スバル君、アニメを見る趣味があったんだ?」

「まぁね……今回の映画は名作だから、チェックしておいたんだ」

「ふぅ~~ん……」

 ちょっと興味無さそうに返事を返すとミソラは心の中で落胆した。

(古い映画なら沈没船恋愛劇が観たかったな……)

 心の中でため息を吐くと店員が上映映画の開場を知らせた。

 

 

 映画を観終わるとミソラはえぐえぐ泣きながらスバルの服の裾を掴んで歩いていた。

「よかったね……本当に良かった……」

「わかったから、鼻を拭きなよ……すごい鼻水だよ」

 スバルに渡されたティッシュで鼻をズビィ~~と拭くとミソラはまた泣きだした。

「古いアニメもバカに出来ないね……あんなに泣けるなんて思わなかった」

「うん。古いアニメは古くなっても名作に変わりないからね!」

「もう一回観ても損が無いよ!」

「ビデオが出たら、一緒に観ようか?」

「うん……」

 映画館から出ると二人は隣のゲームセンターに入った。

「泣いた後はスカッと爆走しようか?」

「あ、レースゲーム?」

 ぶんぶん鳴り響くエンジン音のする車の運転席を模した筐体にミソラは力強くうなづいた。

「私、結構、こういうの得意だよ!」

「どうかな……」

「いいから行こう!」

 スバルの手を引っ張りながら、ミソラは運転席の筐体に座った。

 筐体のコイン入れにコインを入れ、ピコンッと気持ちのいい電子音が響いた。

 レース場のセレクトに入った。

「ミソラちゃん、勝負だよ!」

「オーケー!」

 ミソラもハンドルを握り、レース場をセレクトした。

 ピッピッピッとスタートランプがなり、ゴーサインがなった。

「うぉ!?」

 アクセルを踏んだ瞬間、すごいGがかかり、ミソラはビックリした。

(これはすごい!)

 ギュッとハンドルを握りギアに手をかけた。

「負けないよ、スバル君!」

「ミソラちゃん?」

 スバルのレースカーの隣に走り、ミソラは悪い顔をした。

「レースに妨害はつき物!」

「おわぁ!?」

 体当たりしようとするミソラのレースカーを避けスバルは大声を出した。

「危ないじゃないか!」

「勝負は勝ったもん勝ちだもん!」

「あ、ミソラちゃん、前を見て前!」

「へ……?」

 急なコーナーに激突し、凄まじい衝撃が襲った。

「キャァァァ!?」

 爆音とともに画面が炎一色に染められ、ゲームオーバーの音楽が流れた。

「ズルするからだよ」

「うぅ~~……」

 涙目になるミソラにスバルはミソラが激突したコーナーを難なく過ぎていった。

 

 

 ゲームセンターを出ると今度は同じ系列のカラオケ店に入り、セレクト用のタブレットを操作した。

「スバル君、さっきはよくも私をハメてくれたね!」

「いや、そっちが勝手に自爆しただけ……」

「今度は私が勝つ! 私の歌を聴けぇ!」

「それ、違う人のネタ……」

 音楽が流れ、ミソラは歌い出した。

 ミソラの歌を聴きながらスバルは耳を澄ませた。

(相変わらずいい歌声だな……)

「~~~~♪」

 サビを歌いきり、ミソラは額の汗を拭った。

「どうかな?」

 カラオケに出された点数を見てミソラは飛び上がった。

「やった! 100点だ!」

「ふふっ……じゃあ、次はボクだね?」

 そういいスバルはマイクを握り歌いだした。

 三十点で終わった。

 

 

 カラオケ店を出ると時間はすでに夕刻を過ぎようとしていた。

 日が沈みかけ、東の空が暗くなり始めるとスバルはふと微笑んだ。

「ミソラちゃん、コダマタウンまで来てくれる?」

「え、スバル君の町まで? いいけど……もう帰るの?」

 少しガッカリするミソラにスバルは違う違うと手を振った。

「実は見て欲しいものがあるんだ!」

「見て欲しいもの?」

 

 

 コダマタウンまでつくと空はスッカリ夜になり、どこか寂しい夜風の音を響かせていた。

 スバルはミソラの手を引っ張りながら自分が通うコダマ小学校まで来ていた。

「学校に来てどうしたの?」

「へへ♪」

 少し照れくさそうにスバルは門の閉まった校門を登り始めた。

「ちょ、スバル君!?」

「いいからいいから!」

 スバルに進められるまま、ミソラも仕方なしに校門を登り学校の敷地内に入った。

「シィ~~……」

 人差し指を口の前で立てて、静かにするようジェスチャーするとスバルは忍び足で校舎の中に入り込んだ。

 学校の屋上まで来るとミソラはさらに不可解な顔をした。

「こんなところに来てどうしたの?」

「これ、なんだと思う?」

「これ?」

 ポツンッと空き地のある芝生を見てミソラは思い出すように首をひねった。

「たしかここはリアルウェーブの木が置いてあった場所だよね……?」

「その通り!」

 スバルはポケットからハンターVGを取り出し、操作した。

「リアルウェーブ・クリスマスツリー!」

 スイッチを押すとミソラの目の前にサンサンと輝くクリスマスツリーが現れた。

「うわぁ……」

 夜の闇に照らされ綺麗に輝くクリスマスツリーのリアルウェーブにミソラは感嘆とした。

「スバル君、これって!?」

「へへ……結構、無理しちゃった!」

 恥ずかしそうに頬を染めるスバルにミソラはリアルウェーブのツリーを見た。

「わざわざ、クリスマスツリーの出るリアルウェーブのプログラムを作るなんて……!」

「作るのは得意だからね! でも、うまくいってよかったよ……」

 ホッとするスバルにミソラも感極まってスバルにキスをした。

(ミソラちゃん……)

 スバルもミソラの身体を抱き、そっと唇を吸った。

(スバル君……)

 ミソラも強く抱きつき、お互いのキスを味わった。

 長く長くキスをし、二人はようやく唇を離し、優しく微笑みあった。

「今日はありがとう、スバル君!」

「こっちこそ、年末まで頑張ってね、ミソラちゃん!」

 グッと親指を立てるスバルにミソラは少し拗ねた顔でいった。

「クリスマスライブとか来てくれないと怒るからね?」

「当然だよ!」

「じゃあ、約束のしるし……」

 チョコンッと人差し指で自分の下唇を押すとミソラは期待すように目を瞑った。

「ミソラちゃん」

 スバルも彼女の頬を撫でるように触れ、優しくキスをした。

 二人のキスにクリスマスツリーは明るく光り輝き、二人を照らしていた。

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