流星のメモリアル   作:スーサン

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バレンタインバイキング

「ふわぁ~~……」

 ベッドの上であくびをかくとスバルは暇そうにゴロゴロと転がった。

「暇だ……」

 雑巾を絞るように身体を捻るとそのまま器用に猫の伸びのように身体を伸ばした。

「南国さんのお店にでもいってバトルカードでもチェックしようかな?」

 頭の中でいいカードが売ってないか想像し、すぐにやめた。

(そういえば、最近、いいカードが入荷されたことなかったっけ)

 また退屈がぶり返したのハァ~~とあくびをすると目をショボショボさせた。

「暇だ……」

 ぷるるるるる……

「あ、ミソラちゃんからだ……」

 ハンターVGの液晶画面にミソラの顔が映った。

『やっほー、スバル君、今、暇? 暇だよね? 暇じゃなかったら暇にするけど、どうやって暇にする?』

「なに言ってるの……」

 暴君のような言い回しに呆れながらスバルはベッドから起き上がった。

「なにか用?」

『うん! 実はこれから食べに行こうと思って……いいお店知ってるんだ!』

「いいお店?」

 

 

 ミソラの指定したポイントまで来るとスバルは呆気に取られた。

「ケーキバイキング?」

「そう!」

 目の前の小洒落た甘味処のお店を見て、ミソラは明るく笑った。

「私の行き着け! すっごくおいしくって安いんだから!」

「へぇ……?」

 ミソラの顔を見てスバルは苦笑いした。

「好きだね、甘いもの……?」

「もうなに言ってるの!」

 指差された。

「今日はスバル君が一番、こういうのを食べたい日でしょ!」

「ボクが……?」

 特に覚えがなかったため不思議そうな顔をした。

 そんなスバルの態度がおかしかったのかミソラは呆れながら手を握った。

「もう……!」

「あ、ちょっと!?」

 お店の中へ強引に入ると愛想のいい店員が二人を迎えてくれた。。

「いらっしゃいませ! 本日はバレンタインフェアでカップル割引実施中です!」

「バレンタインフェア……?」

「本当に忘れたんだ……」

「ああ!」

 思い出したように手を打った。

「今日はバレンタインだった!」

 スッカリ忘れたと大笑いするスバルにミソラは気持ちよく切り替えした。

「ホワイトデーはその言い訳通じないよ……」

「……」

 赤くなるスバルにミソラは苦笑しながら引っ張った。

「今日は私の奢り!」

 適当にテーブルに座るとミソラは近くのメニュー表を開き満面の笑顔を浮かべた。

「さぁ、たっくさん食べて!」

「好きなものって言ってもな……」

 どこか遠慮がちになってるスバルにミソラは凛々しい目つきでいった。

「今日はバレンタインなんだから私にいい格好させてよ!」

「いい格好ね……?」

 クスッと笑い、メニュー表を返した。

「ミソラちゃんがケーキを選んでよ。今日はバレンタインなんだろう? ミソラちゃんが頼んだチョコが食べたいな!」

「え、私の選んだチョコ……?」

 まさかそう返されるとは思ってなかったのかミソラは照れくさそうに頭を掻き悩んだ。

「じゃ、じゃあね……」

 少し考えるように悩みすぐに店員にいくつかのチョコケーキを注文した。

 注文が届くまで待っているとミソラは不意にかわいく笑った。

「ご機嫌だね、ミソラちゃん」

「当然だよ! だってここはちょっとしたジンクスで流行ってるんだから!」

「ジンクス……?」

「ほら、なにか気付かない……なにか?」

「気付くって……?」

 さすがにバレンタインフェアだけあって店の中はカップルで溢れていた。

 よく見ると身なりのいい大人のカップルもおりスバルは少しビックリした。

「あんな雰囲気の大人も来てるんだ?」

「実はここのお店、バレンタインの日に入店してきたカップルは幸せになれるってジンクスがあるんだ!」

「幸せになれるって……」

 明らかに店の敬遠戦略に踊らされてるなと思うとスバルは呆れた。

(いや……踊ってるのか)

 店の雰囲気を見てスバルは悟った。

(経営戦略とか関係無くみんな、雰囲気を楽しみたいのか)

 そういう意味では店も客もうまくお互いを利用しあってるとスバルは感心した。

「お待たせしました」

 頼んだケーキにミソラはうれしそうに笑った。

「おいしそう♪」

 チョコレートケーキをフォークで一口大に切るとミソラは笑顔のまま、スバルの前に差し出した。

「はい、あ~~ん♪」

「ちょ、ミソラちゃん……」

「バレンタインフェアなんだから恥ずかしがらない!」

「そんなこと言ったって……ほかの人の目が」

 言い訳しようと周りを見るも周りも恥じ外聞も無くケーキをあ~~んしあっていた。

 というよりもしてないカップルのほうが少なかった。

(こういうのも雰囲気に流されるって言うことなのかな?)

 スバルも覚悟を決め、ミソラの差し出したチョコレートケーキを食べようとした。

「なんちゃって……♪」

「あむぅ!?」

 差し出されたケーキを引っ込められスバルは歯をガチンッと打った。

「むぅ~~~~……!?」

 涙目になるスバルにミソラはケラケラと笑った。

「引っかかった引っかかった……や~~い♪」

「ミ、ミソラちゃん~~……!」

「はい!」

 パクッと口の中にチョコレートケーキを放り込まれ、スバルは目を白黒させた。

「むぐむぐ……ごくん」

「おいしい?」

「あのね……」

 翻弄されてる自分に呆れながらスバルは自分の元にあるチョコレートモンブランを食べた。

「あ、おいしい」

「でしょう!」

 自分が褒められたように喜ぶミソラにスバルは少しドキッとした。

(ちょっと可愛いかな……)

 心の中でこんな可愛い子が自分の彼女なのだと誇らしくなったのか自然と頬が赤くなった。

「ここはバイキングでありながら本格仕様だからとってもおいしいんだよ!」

 自分の分のチョコレートケーキを食べ、ミソラは幸せそうな顔をした。

「ああ~~……幸せ~~♪」

「本当、ミソラちゃんは……」

 クスクス笑いながスバルもミソラにケーキを差し出した。

「あ~~む♪」

 差し出されたケーキを食べ、ミソラは幸せそうに微笑んだ。

「おいしい!」

 

 

 一通りケーキを食べ終わるとスバルとミソラはテーブルの前でまったりしていた。

「お腹いっぱい……」

「ちょっと食べ過ぎたかも……」

「ちょっと……ね?」

 ミソラの食べたケーキの皿の数を見て、スバルはちょっと青くなった。

(明らかにボクの四倍は食べてるよね?)

 ミソラのお腹を見て不思議になった。

(こんな細い腰のどこにあれだけのケーキが収容されてるんだろう?)

 女性の神秘を垣間見てスバルは苦笑した。

「どうしたのスバル君?」

「いや、なんでも……」

 ミソラは首をかしげながらメニュー表を開いた。

「もうお腹もいっぱいだし、最後にコーヒーでも注文しよう」

「そうだね……」

 店員にコーヒーを二つ頼むと、ミソラはイスにもたれながら一息ついた。

「でも……バレンタインの日にスバル君とイチャイチャしながらケーキを食べれるなんて幸せすぎて死んじゃうかも」

「死なないよ……それくらいじゃ」

「いや! 世の中、≪幸せ貯金≫って本当にあるらしいから大切に使わないと一瞬で破産だよ!」

「そんな簡単に尽きるものじゃないよ、幸せ貯金なんて……」

 コーヒーが届きスバルは一口飲んだ。

「ぶっ……!?」

「ど、どうしたのスバル君?」

 ミソラもコーヒーを飲んで吹いた。

「し、しぶぅ~~……」

 コーヒーのあまりのまずさにミソラは顔を手で覆った。

「そうだ! ここのコーヒー、すっごくまずくて有名だった……」

「飲んだことないの?」

「ドリンクは別メニューだから……」

 注文ミスを心底嘆くらミソラにスバルは涙目の状態で微笑んだ。

「これで幸せ貯金は節約したね?」

「こんなセコイ節約はヤダよ……」

 そういい、スバルとミソラははまずいコーヒーを一気飲みし、店員に叫んだ。

「ジュースください!」

 

 

 お店を出るとスバルはスッカリ暗くなった空を見た。

「さて、じゃあもう遅いから、ボクは帰るね?」

「あ、待ったスバル君!」

 帰ろうとするとミソラに手を掴まれ転びそうになった。

「なに、ミソラちゃん?」

「今日はうちに泊まっていってよ~~……バレンタインの日の夜は寂しいんだよ!」

「寂しいって……」

 甘えた声を出すミソラにスバルは困った。

「でも……母さんが心配するし」

「それなら大丈夫!」

 ハンターVGを開くと自分の母からメールが届けられていた。

『男を見せなさい、スバル!』

(なんの男だ!?)

 心の中で怒鳴り声を上げた。

「はぁ~~……」

 諦めたようにため息を吐き、気合を入れた。

「今晩はめいっぱい遊ぼうか、ミソラちゃん!」

「やった! 今日はオールでバレンタインフェアー!」

「どんなフェアーだよ……」

 心から楽しそうに笑うミソラにスバルは苦笑いした。

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