流星のメモリアル   作:スーサン

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ミソラと合同仕事

「え……ライブ設営のアルバイト?」

 お風呂から上がるとスバルは濡れた髪をタオルで脱ぐいながらベッドに座った。

「そう!」

 ハンターVGのモニター画面でミソラはコクリと頷いた。

「今度、コダマタウンでライブするから、その設営準備のスタッフさんを募集中なの!」

「それをボクにやれと……?」

「暇でしょう!」

「ボク、学校が……」

「私と学校、どっちが大切!?」

「また無茶振りを……」

 ため息を吐いた。

「わかったよ……やればいいんでしょう」

「だから大好き、スバル君♪」

「いってろ……」

 ハンターVGを切って、ベッドに横たわった。

「ミソラちゃんの我侭にも困ったもんだな……」

 ふわぁとあくびをし、スバルは眠気に誘われるまま眠った。

 

 

「お~~い、少年! そっちのロープ、引っ張ってくれ!」

「あ、はぁい!」

 勢いよく返事を返し、スバルは走り出した。

「こっちでいいですか!」

「もっと力を入れてくれ!」

「はい!」

 設営スタッフの仕事を始めて三日が経った。

 仕事は正規のスタッフの下請けのようなものが大半だったがこれが意外と大変であった。

 ライブのためのパイプ椅子を並べる作業からステージを彩る看板を運ぶ仕事までやることは山の如し。

 作業は時間を経つたびに増えていき、スバルも最初は早足で進めていた仕事も気づいたら走ってばかりの状態になっていた。

 まさに目も回る忙しさだ。

「はぁ……」

 ようやく一息つく暇ができ、スバルは楽屋裏で水分補給をしようとした。

「スゥ~~バルくん♪」

「うぉ……!?」

 背中に抱きつかれた。

「ミ、ミソラちゃん……?」

「ねぇねぇ! 次の休憩はいつ? 私、今、リハーサルの休憩中なんだけど、今から休憩取れない?」

「取れるわけないでしょう!」

 ミソラを背中から引き剥がした。

「ボク、仕事が残ってるから、もう行くね!」

「待ちなさい!」

 通せんぼされた。

「なに……?」

「ライブと私、どっちが大切!?」

「君のために頑張ってるの!」

 去っていくスバルにミソラはあっかべ~~した。

 

 

 仕事場に戻るとスバルは先ほどの態度は冷たすぎたかなと反省した。

(バイト代が出たらなにか奢ってあげよう……)

「少年、助けてくれ!」

「あ、はい……!」

 走った。

「君、機械に強かったよな? リアルウェーブの調子が悪いんだ、見てくれないか?」

「リアルウェーブの調子が……」

 目の前の投影機を見て、スバルは額につけたビジライザーを下げた。

「あ、電波ウィルスに蝕まれてますね!」

「なにぃ!? このクソ忙しいときに誰が拾ってきたんだ!?」

 たぶん、設営の機材を運ぶときに間違って紛れ込んだんだろうとスバルは推理した。

「これくらいならすぐに除去できますよ……手持ちのバトルカードをハンターVGにセット……あれ?」

「どうした、少年?」

「バトルカードがない!?」

 スバルは慌てて控え室に走った。

「すぐに戻ってきます!」

「お、おう……」

 

 

「ウォーロック、ボクのバトルカード、知らな……い?」

「あ……?」

 自分のバトルカードを持つミソラにスバルは冷たい目をした。

「ミソラちゃん……なにしてるの?」

「べ、べぇ~~~……だ!」

「あ、こら!?」

 バトルカードを胸の谷間にしまうとミソラは楽屋裏から出て行った。

「待て!?」

 スバルも慌ててミソラの後を追った。

「いい加減にしないか!?」

「スバル君、のバァカ!」

「あ……!?」

 ステージ裏まで逃げるとミソラは忍者のようにステージ裏の鉄骨の上をジャンプした。

「猿か君は!?」

「ふん!」

 スバルの声が聞こえるギリギリの高さまで鉄骨を登るとミソラは手をメガホンにした。

「なんだよ、スバル君! 私が紹介してあげた仕事のくせにもう一人前な面しちゃってさ!」

「だから頑張ってるんだろう!?」

「本当に仕事ができる男っていうのは家庭も省みるもんなんだよ!」

「訳わからないこといってないでさっさと降りてきなさい!」

「イ~~ヤ・だ! スバル君が遊んでくれるまで降りないもん!」

「また無茶なことを……」

 呆れ果てるスバルにミソラは本当に悔しそうな顔をした。

「なんだよ! 私より仕事が大事だっていうの!?」

「あ、ミソラちゃん!?」

 胸の谷間からバトルカードを取り出した。

「こんなもの!」

「バカ! そんなところで腕を振り上げたら!?」

「あ……!?」

 身体のバランスがズレ、ミソラの身体が鉄骨の上から滑り落ちた。。

「キャッ!?」

「ミソラちゃん!?」

 ミソラの身体を受け止め、スバルの身体が下敷きになった。

「いつぅ~~……」

「す、すばるくん……」

 ミソラを自分の腕から降ろした。

「バカッ!」

「ヒィッ……!?」

 ビクンッとなった。

「ほんとうに……ばか……」

「ス、スバル君……泣いてるの?」

 涙を流すスバルにミソラは不思議そうに顔を上げた。

「こんな危ないことして……死んだらどうするつもりだったの!?」

「ご、ごめんなさい……」

 外聞もなく大泣きするスバルにミソラは小さくなった。

「ミソラちゃん……」

 スバルもようやく安心したのか、小さくなるミソラの身体を優しく抱いた。

「ライブが失敗してもいい。ミソラちゃんがアイドルとして落ちぶれてもいい。でも、怪我をして一生動けない身体になって欲しくない。これはボクの我侭かな?」

「……」

「でも、無事でよかったよ……本当によかった」

 ミソラの唇に優しくキスをした。

「あ……?」

 ミソラはようやく今になって自分が死に掛けたんだと自覚した。

「あ、ああ……」

 落下の恐怖が胸いっぱいに広がり、気づいたらミソラもふるふると震えながら泣き出した。

「ご、ごめんなさい……スバル君……私、怖かったよ……スバル君」

「うん……無事でよかったよ……本当によかったね!」

「う、うん……ごめんなさい」

 ミソラは大声で泣き出した。

 スバルも恥じらいもなく大泣きした。

 その姿を電波空間の二体の電波生命体がホッとした顔で見ていたことを二人は知らない。

 

 

 電波ウィルスも駆除し、今日の仕事を終えるとスバルはライブ会場の入り口となる通路を通った。

「あ、ミソラちゃん……」

「……」

 入り口の影で隠れるように待っていたミソラにスバルは先ほどの事件はなかったかのように柔和な笑みを浮べた。

「お疲れ様。今日のリハーサルはもう終わったの?」

「う、うん……」

 一回返事をし、二人の間に沈黙が生まれた。

「……」

「……」

 しばらく重い沈黙が二人を支配し、ミソラは耐え切れなくなったようにポケットに手を入れた。

「こ、これ……」

「うん……?」

 チケットを手に握るように渡した。

「ス、スバル君の分の席、用意したから……特S席だよ。プロデューサーに無理言って確保してもらったの」

「ボク、本番もステージ裏で作業があるけど……」

「あ……!?」

 気づいたようにミソラはポカンッとなった。

 スバルはおかしそうに口を隠して笑った。

「無理しなくってもいいよ……ボクはもう怒ってないから!」

「で、でも……」

 必死に誠意を見せようとするミソラにスバルは愛おしさを覚えた。

「じゃあ、今度のライブを成功させたら許してあげる!」

「ライブの成功……」

「うん! ミソラちゃんのライブを成功させるのはボクの仕事でもあるからね! 観客席で見るよりもずっとワクワクするよ!」

「スバル君も一緒にワクワク……」

「一緒にライブをする。それがスタッフの仕事でしょう?」

「……うん!」

 力強く頷き、ミソラは満面の笑顔を浮かべた。

「私、スバル君と一緒にライブを成功させる!」

「その意気、その意気!」

 ミソラの身体を優しく抱き、頬にキスをした。

「スバル君……?」

「ちょっとしたご褒美かな」

「もう」

 また唇を合わせてキスをすると二人は離れた。

「じゃあ、これからどこかに食べに行こうか? 実は電波ウィルスを倒したお駄賃でお金を貰ったんだ。奢るよ!」

「いいの?」

「うん……ただし、安いものね!」

「じゃあさじゃあさ! 牛丼を食べない!」

「それじゃあ、ゴン太オススメの牛丼屋に行こうか!」

「ゴン太くんのお墨付きなら問題ないね!」

 スバルの手をギュッと握った。

「あ、あのね、スバル君……」

「うん……?」

「これからもたくさん我侭を言うかもしれないけど付き合ってくれる?」

「どうしようかなぁ……?」

「スバル君!」

「アハハ♪」

 スバルもおかしそうに笑った。

「じゃあ、行こうか?」

「う、うん……」

 ギュッと手を繋ぎ、二人は歩きだした。

 ガッチリ握られた手はまるで二人の絆の強さのように離れることを知らなかった。

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