勘当されて感動の同棲生活始まり
「お~~ら~~いお~~ら~~い!」
引越し屋のお兄さん達に冷蔵庫の置き場所を誘導するとスバルはなぜ、自分がこんなことしてるのか疑問になった。
(なんか、凄まじい一日だな、今日は……)
額に疲れた汗を感じ、スバルは心の中で溜息を吐いた。
「ミソラちゃん、なんか、ボク、騙されてる気がするんだけど……」
「スバル君! 屋上に電波望遠鏡を置いたけど、細かいセットはお願いね!」
「あいよ……!」
冷蔵庫を引越し屋のお兄さん達に置いてもらうとスバルは完成していくミソラの新居に溜息を吐いた。
「なんで、こうなったのかね……?」
ことは前回のミソラのチグハグ水着が発端だった。
あの水着で宅配屋に出てしまったのが災いし、近所で変な噂が流れ、ベイサイドシティーに住みにくくなってしまったのだ。
もっとも前向き少女・響ミソラちゃんはこの噂を好機と捉え、逃げると方便してコダマタウンに引っ越してきたのだ。
そのついでに土地も買った。
家も建てた。
しかも三階建ての結構広い家だ。
「しかも、一括払いって……どんだけ稼いでるんだ、あの子?」
とても少女が買うとは思えない立派すぎる家にスバルは今更、自分がとんでもない娘と付き合ってることに恐怖した。
「まぁ、それだけならいいんだけど……」
半日前のことを思い出した。
『スバル! 今日から家を出ていきなさい!』
『え……いきなり、なに?』
『勘当よ、勘当! もううちの子じゃないからね!』
『なに、子供みたいなこと言ってるの?』
『あ、ミソラちゃんが来たわ! 今日からミソラちゃんの家で厄介になりなさい! うちの敷居跨いだらただじゃおかないわよ!』
『あ、目が笑って……』
『あ、そうそう……お米とお野菜が不足したらうちに来なさい! 分けてあげるから♪』
『これ、勘当じゃないよね……?』
『稼げるようになったら、ミソラちゃんに奉公してあげなさい!』
『……主夫で頑張るよ』
一瞬で起こった追い出し作業にスバルはいつ頃から計画されてた新居計画なのか考え、恐ろしくなった。
「スバル君……」
三階からミソラが降りてきた。
「もうそろそろ、引越しも終わるし……ご近所さんに挨拶しに行こう♪」
「あいよ!」
なぜか意味のないエプロン(胸にハートマーク付)を着たミソラにスバルは観念した。
ご近所さんへの挨拶を済ませるとスバルとミソラは新築の居間で引越しそばを食べていた。
「ちゅるるるるるる♪」
「ずずずずずずずず……」
引越しそばのうまい麺を食べながら、ミソラはえへへと笑った。
「これから楽しくなるね♪」
「うん?」
チュルンッとそば麺を食べ、スバルは首を傾げた。
「なにが?」
ミソラの顔が明るく笑った。
「これからは仕事以外ならずっと一緒にいられるんだよ! もう、私テンション上がりすぎてバースト転生しちゃいそう♪」
「今はアルティメットの時代だよ……」
「あ、スバル君、七味入れる?」
「このままでいいよ……」
器を持ち上げ、ツユを飲むと、スバルは新しくなった天井を眺めた。
(新しい生活……か?)
ちょっとだけ頬が熱くなるのを感じた。
「スバル君のエッチ♪」
「ち、ちがう!」
「アハハハ……スバル君、可愛い♪」
「もう……」
恥ずかしそうに残りのツユを飲んだ。
「そういえば……」
思い出したように空になった器をテーブルに乗せた。
「委員長たちに引越のことなんて言おうかな?」
ミソラの顔が暗くなった。
「うん? どうかした、ミソラちゃん?」
「う、うぅん……別に! 普通に引っ越しのことは言っていいと思うよ」
泣き出しそうに辛い顔をした。
「ルナちゃんはすぐにわかってくれると思うよ……」
「……?」
明るかった雰囲気が一気に暗くなり、スバルはどうしたのか聞こうとした。
プルルルルルルル♪
「あ、電話だ!」
話を打ち切るようにミソラは食べかけのそばを置いた。
「ちょっと取ってくる!」
「あ、ミソラちゃん……」
一人残されたスバルは腑に落ちない顔をして席に座りなおした。
「……」
残ったミソラのそばを見て、スバルは自分が食べたそばを見た。
「片付けよう……」
トレイごと器を持ち、食事を片付けようとキッチンへ向かうと、ミソラの怒声が轟いた。
「どういう意味ですか!?」
「え……?」
声を張り上げるミソラにスバルは慌てて、電話のある廊下まで走った。
「どうしたのミソラちゃん!?」
「……」
真っ青な顔で電話を切るとミソラは重い口調で喋った。
「今のマネージャーが寿退社して、金田さんが戻ってくるって言われた……」
「金田さんが!?」
数か月前、問題を起こしてクビになった男の名前を聞いて、スバルは信じられない顔をした。