「ふぅ~~……」
お湯に浸かりながらスバルはホッとした顔をした。
「いい湯だ……」
「そうだね、スバル君♪」
「ッ!?」
横で同じお湯に浸かったミソラを観て、にスバルは慌てて顔をそむけた。
「こ、こっち向かないで!」
「もう、ウブなんだから♪」
ケラケラ笑いながらミソラはうんっと伸びをした。
(また、大きくなってるかな?)
ちょっとだけお湯に浮いた胸が揺れた気がし、スバルはますます赤くなった。
「でも、まさか、スバル君が温泉特集の仕事を持ってくるとはぁ……」
ミソラの顔が微妙なものになった。
「ところでなにを特集するの?」
「……」
押し黙るスバルにミソラも考えた。
「仕事取ることに集中しすぎて肝心の中身まで頭が回らなかったんだね?」
「ごめん……」
「うぅ~~ん……」
ミソラは手のひらにお湯を集め、遊ぶようにジャ~~と持ち上げた。
「効能……肩凝り、腰痛、冷え性解消」
「伝統……三代に続く庶民派温泉宿(混浴あり)」
「雰囲気も新しく綺麗で、しかも風情ある森の中の露天温泉。しかも宿泊料も安く食事の山菜料理も絶品……でも」
溜息を吐いた。
「それだけなんだよねぇ……」
これといって特色のない温泉宿にミソラは浴槽の岩肌に背をつけた。
「しかも、庶民派と言っても、人里離れてるからわざわざここまでくる魅力もないし……」
ちょっとだけ厳しい目をした。
「どう考えてもこの企画、失敗だよ……」
「雰囲気的にはいいんだけど、物足りないんだよね……」
「足りない……?」
ミソラは気づいたように顎に手を置いた。
「ねぇ、スバル君……ちょっと、耳を近づけてくれない?」
「うん?」
耳を近づけた。
「チュッ……♪」
「チョッ!?」
頬にキスをされ、スバルは真っ赤になった。
「アハハハハ、冗談だよ! ちゃんと、いいこと考えたんだ♪」
「本当?」
「まぁまぁ、耳を近づけて……」
「……」
また耳を近づけた。
「ふぅ♪」
「ッッッッ!?」
ゾクゾクとした。
「ミ、ミソラちゃん!」
「アハハハ♪」
またおかしそうに笑われ、スバルは悔しそうに震えた。
「大丈夫、大丈夫! ここの特色を活かしたいい案だから♪ 向こう十年は安泰だよ!」
「なんか、信じられないな……」
「いいからいいから……でも」
ニヤリと笑った。
「少しスバル君には苦労してもらうよ♪」
「苦労……?」
「そのための前報酬♪」
「うんっ!?」
唇にキスをされ今度こそ本当に言葉を失ってしまった。
「はい、ミソラちゃん、準備はいい?」
「オーケーです♪」
温泉宿が用意してくれた浴衣に着替えるとミソラは指でわっかを作った。
「いつでも撮影、入れます!」
準備のできたミソラに遠くで見ていたスタッフが怪しげに耳打ちした。
「いきなり撮影を夜にしてくれなんて、なにを考えてるんだ、ミソラちゃんは?」
「小学生プロデューサーがついたからな……自棄になってるんじゃないのか?」
「まったく、これだからチャイルドは……」
溜息を吐くスタッフにミソラは心の中で笑った。
(笑いたければ笑え……そのチャイルドにすぐに平伏するんだらかね♪)
温泉特集が始まった。
まずは宿の雰囲気や食事、伝統や庶民的価格の良さなどを説明した。
「では、ここはメインの露天温泉です」
脱衣所に続く扉を開けるといったん、カメラが止まった。
「オーケーミソラちゃん。じゃあ、温泉に入るために水着に着替えてね!」
「はぁ~~い!」
スタッフが全員、廊下で待機するとミソラは着ていた浴衣を脱ぎ始めた。
「この浴衣、結構、可愛くって好きなんだけどな……」
浴衣を脱ぐとぷるんっとブラで隠れた胸が露わになった。
「うん……」
ピンク色のパンティーも露わになり、前かがみになった。
「なんか、キツくなったかな……また♪」
ブラのほっぐを取るとまた、桜色の小さなチェリーが……
「いいお湯ですね♪」
湯に浸かるとミソラは色っぽく息を吐いた。
その姿に男性スタッフがちょっとだけ赤くなった。
「なんか、また大人っぽくなったような?」
「き、気のせいだろ……」
胸をドキドキさせるスタッフにミソラは心の中でクスクス笑った。
(見てる見てる♪)
裸に見えるよう肩紐のない水着をタオルで隠した姿にミソラはスバルに感心した。
(スバル君って意外とスケベだよね)
当初は普通に水着だったのに肩紐のない水着にタオルを巻けば裸に見えるとスバルはミソラに指示を出したのだ。
実際、小学生ではかなりスタイルのいいミソラの水着の上のバスタオルは大変、色っぽく、男の目を誘った。
ちょっとだけ胸のタオルをズラすとスタッフの目がギョッとなった。
(おもしろ~~い♪)
本当にタオルを脱いでしまおうかと思ったがそれでは水着だとバレるとやめた。
(裸に見えるのがいいんだよね♪)
モモまで隠したタオルをちょっとだけあげ、さらに露出をアピールした。
「さて、みなさん、ここには温泉と同時に面白いものがあります。空を見てください」
「そら……?」
思わずミソラが指差した空をカメラで映した。
「え……?」
仰天した。
「あれって……ふたご座か?」
「おい……」
「ウッ!?」
思わず口を出したスタッフにミソラはニヤリと笑った。
「この温泉宿には温泉に浸かりながらリアルな星座表を見ることができるんです。さながら温泉学習ですね♪」
ちょっと寒い言葉遊びをするミソラに温泉宿の屋根で機械を弄っていたスバルが呆れた。
「なに言ってるんだ……」
リアルウェーブの投影機を弄るとスバルは額の汗をぬぐった。
「ミソラちゃんも無茶な要求するよなぁ……」
『星座を投影するリアルウェーブを作るんだよ。今すぐに!』
「……」
リアルウェーブはある程度万能だから星に星座を描くのは簡単だった。
星の座標はすでに200年前からネットでも簡単に手に入るのでそんな難しい作業じゃなかった。
しかもここは都会の光のない山の中。
あとは雲さえかかっていなければ星座のデータに合わせて線上のリアルウェーブを張ればいいのだ。
木やステージを作るよりはるかに簡単な作業である。
後は星の流れをリアルタイムで計算して、線上のリアルウェーブを操作すればあっという間に本当の空の上の星座表の完成である。
が、かなり急ごしらえな装置なため、不備が出やすくもなっている。
「あ、また計算が狂い始めた! ロック!」
≪わかってるよ!≫
星座投影機の中に入り、ロックの怒鳴り声が轟いた。
≪ちゃんと計算しろ!≫
≪ひえぇぇぇ……≫
デンパ君の悲鳴が聞こえ、スバルは心の中で謝罪した。
「うぅ~~……」
長い温泉特集の中、ミソラはスッカリ、温泉でのぼせていた。
「スバルくぅ~~ん……きもちわるい……」
「そりゃぁ、長かったもんね?」
グッタリした顔でミソラにうちわを扇いだ。
実はスバルにも、もう一つ、役割が与えられていた。
それは星の知識がまったくないミソラにリアルタイムで星の知識を簡単に説明することだった。
ふたご座の見つけ方やユニコーン座の形など、見栄えのいいものを厳選し、ミソラが説明しやすいようにリアルに説明するのだ。
かなりの負担であった。
「まぁ……ミソラちゃんのおかげで助かったよ」
「うん?」
うちわを扇ぐのをやめた。
「また、ミソラちゃんのアドリブに救われたね……」
「スバル君……?」
歯を食いしばるようにスバルは顔を上げた。
「ボクは君を導くはずなのに結局、君がフォローしてようやく半人前だ……悔しいよ」
「……」
目を合わせようとしないスバルにミソラはふふっと微笑んだ。
「半人前じゃないよ……少なくとも私と一緒の時は」
「え……?」
胡坐をかいて座っているスバルの膝に頭を乗せた。
「だって、私じゃ、今回の仕事見つけられないもん」
「で、でも……ミソラちゃんが」
「だから、二人で一人前なの。実際、星の知識だってスバル君が即興で教えてくれないと今回の企画うまくいかなかったでしょう?」
「……」
「だ・か・ら♪」
起き上がり、スバルの胸に自分の胸をくっつけるように抱き付いた。
「私たちは二人でアイドルでプロデューサーで一人前なんだよ……だから、自分を卑下しないで……私をもっと頼って……お願い」
優しくキスをした。
(ミソラちゃん……)
ミソラの唇を感じ、スバルは心がホッとした。
(スバル君……)
ミソラもスバルの心がほぐれたのを感じた。
「うん……!」
ミソラの手を握り返し、スバルも唇を強く吸った。
「うぅ……」
ミソラも吸われた唇にビクンッと感じた。
「うちゅ……」
ミソラもスバルに負けじと自分の舌をスバルの口に入れ、歯茎を舐めた。
「うぅむ……むちゅ」
「うちゅ……ちゅちゅ♪」
遊ぶようにキスをした。
「ぷはぁ……」
糸を引くように唇が離され、二人はおかしそうに笑った。
「あははははは♪」
手を差し出した。
「これからもよろしくね、響ミソラプロデューサー♪」
「こっちこそ、トップアイドル・星河スバル君♪」
手を握り合い、二人はまた、笑い出した。
次の日、ミソラは最後に人に見られない場所でスバルにキスをし、ロケバスに乗った。
「ちゃんと今日中に帰ってきてね?」
「うん! 夜までには帰るよ!」
手を振ってバスで見送ると、スバルは気合を入れなおした。
「じゃあ、やりますか?」
「本当にいいんですか、ここまでやってもらって?」
「いいんですよ。もともと、こっちが考えたことだし……」
宿の女将に持ってきてくれた星座投影機を見て、スバルは腕まくりした。
「完成させますか!」
急ごしらえで作った投影機を完成させるため、スバルはまだ仕事が残ってることを嬉しく思った。
数日後、温泉宿は星を嗜むカップルに受け、ちょっとした新婚旅行スポットとなった。