「みんな! ありがとう~~~~~~!」
「おぉおおぉぉおぉぉぉぉぉお!」
観客席からあふれ出すファン達の喝采にミソラはまた、返事を返した。
「本当にありがとう~~~~~~~!」
「おぉぉぉおおおおおぉぉぉおおお!」
溢れんばかりの喝采にミソラは心の中でも本当にお礼をいった。
(本当に……ありがとう)
頬に熱いものを感じ、ミソラは自分が泣いていることに気付いた。
でも、涙を拭うことは出来ないので代わりに汗と一緒に振り払うように叫んだ。
「本当にありがとう! 私はこれからも歌い続けるからね!」
「おおぉぉぉおぉおぉぉおぉぉお! アンコール! アンコール! アンコール!」
ミソラの言葉にファン達はアンコールの声を上げた。
ミソラも気を良くし、ステージ裏で構えているスバルを見た。
スバルもコクリと頷いた。
「じゃあ、アンコールいっくよぉぉぉ!」
「おぉぉぉおぉおぉぉぉぉおぉぉぉぉおぉぉおおおお!」
ギターを構えるミソラにスバルは安堵した笑みを浮かべた。
「もう、大丈夫そうだな……」
ここ数日間の苦労を思い出し、スバルは感慨深い思いを味わった。
トンと肩に手が置かれた。
「うん?」
「やぁ……!」
「ツカサ君!? どうやってここに?」
「まぁ、気にしないで……」
ニッコリ微笑み、ツカサは歌を歌うミソラの横顔を見た。
「ショックは克服したとはいえ、またなにかでフラッシュバックするかわからないからね。見守ってあげて」
「……うん」
力強くうなづくスバルにツカサは優しく微笑んだ。
「いい返事だ」
「ボクはミソラちゃんと一緒に生きる道を選んだ。決して半端じゃない気持ちで」
「……」
スバルの力強い答えにツカサも満足したように掴んでいた肩を離し、背を向け去って行った。
ライブが終わり、ステージから戻ってきたミソラはすぐにスバルに抱き付いた。
「やったよ、スバル君! 私、やったよ!」
「……おめでとう、ミソラちゃん」
抱き付いてきたミソラの身体を抱き返し、スバルもやさしい顔をした。
「うぅ……」
ステージでも泣き続けたミソラはスバルに抱き付くことでさらに涙腺が緩んだのか肩を揺らし嗚咽を漏らした。
「こわかった……途中でライブが出来なくなったらって……ほんとうに」
「大丈夫……ボクがいるから……ボクが近くにいるから大丈夫だよ」
「スバル君……」
ギュっと抱き付いていた腕に力を込め、スバルの胸に顔を埋めるとミソラはまた大声で泣き出した。
それから数時間が経った。
ステージは片づけられ、まるで祭りの後のような寂しさをあたりに響かせた。
そんなステージの上に立ち、ミソラは深く息を吐いた。
「やっと……終わった」
まさに息をのむような数日だった。
ミソラのライブを急きょ再開するという知らせはファン以上にスタッフ達を沸かせた。
ミソラのライブを作っていたスタッフ達も突然のライブ休止に内心、納得がいってないものがあったらしくライブの再開は本人たち以上に盛り上がった。
それこそ、中止する前のステージより派手なステージが出来上がるほどの気合いであった。。
さらに期待を裏切ってしまったファン達からは無料でライブの招待をし、ミソラのポケットマネーから交通費もタダで行うなど赤字覚悟の大経営を始めたのだ。
交通費タダが利いたのかミソラのライブは満員御礼の大成功となった。
もっとも、大変だったのはもっと前だ。
ステージが完成した後、ミソラはPTSDの克服に相当頑張った。
ステージの上で歌う。
それだけでもスタッフやスバル達にとって大変、心臓に悪いものがあった。
歌を歌うだけでもいつ、ミソラが眩暈を起こし倒れるかわからない状態で練習を続け、本番前にようやくものになるレベルとなった。
後は本番でうまく歌えるか……
それだけが悩みだったが見事に打ち破った。
そう、ミソラは自分の弱点を克服したのだ。
「ふぅ……」
ギターを構え、誰もいないステージで弦をはじいた。
「~~~♪」
喉から響く歌に身体が震えた。
(また、歌える……私は歌えるんだ!)
身体全体から響く感動に涙があふれた。
もう眩暈もなにも感じない。
むしろ、ずっとここで歌っていたいと思うくらい歌が歌えた。
「ミソラちゃん、ここまで!」
「え……?」
手を叩いて現れるスバルにミソラは目を丸くした。
「もうそろそろ撤収だよ。打ち上げがあるから帰ろう?」
「あ、後、一曲だけ……ダメ?」
「ダァメ♪」
両手の指をクロスさせバツの字を作るとスバルは優しく微笑んだ。
「歌はまた次回のステージでね♪」
「次回の……うん!」
スバルに聞いた。
「また、ここでライブ出来るかな?」
「……」
スバルも優しく微笑んだ。
「絶対に……」
「約束だよ!」
ミソラの満面の笑顔にスバルはホッとした顔をし、彼女の手をつないだ。
ミソラも嬉しそうに顔を赤らめ、つないだ手を握り返し微笑んだ。
「また、絶対にここでライブしようね!」
「うん!」
ようやくすべてが終わり、次のライブに二人は心を躍らせた。