「ス・バ・ル・くぅ~~~~ん♪」
いつになく上機嫌で肩をスリスリとすり寄せてくるミソラにスバルは嫌な顔をした。
「な、なに……」
「お・と・し・玉……ちょ~~だい♪」
「……」
両手を妙に行儀よく差し出すミソラにスバルはポケットから財布を取り出し、逆さにした。
「ごめん……事務所の新年会の会費でほとんど消えた」
「……」
ミソラの顔がつまらなさそうにムクれた。
「私のためのお年玉も用意できないほどないの?」
「っていうか、君のほうが稼いでるんだからいらないでしょう!?」
「スバル君が稼いだものがほしいの!」
「カツアゲかよ!?」
「むぅ~~~……」
背を向けるミソラにスバルは本当に申し訳なさそうに項垂れた。
「ご、ごめ……」
「じゃあ、これで勝てたらお年玉は勘弁してあげるよ!」
「え……?」
双六シートを敷きだすミソラにスバルはポケッとした。
「……二人でするの?」
「ロック君、ハープ!」
≪はいはい……≫
ハンターVGから呆れたようにウォーロックとハープが現れた。
「スバル君! 負けたらお年玉! 勝ったら免除! どっちを選ぶ!?」
「……」
鼻先に指を差され、スバルは仕方ないとサイコロを振った。
「これで終わりだね」
スバルはホッとした顔でサイコロを振った。
ゴールまであと一歩になりスバルは心の中で謝った。
(ゴメンよ、ミソラちゃん……ボクだってカッツンカッツンで今月を乗り切らないといけないから勘弁してね)
コロコロとサイコロが転がり三の数字が出た。
「一・二・三……あ?」
ゴールまであと一歩のマスでコマが止まり、スバルは心の中で舌打ちした。
(あと一歩なのに……)
だが、ミソラのコマは順位的に最下位なうえ、自分との距離はサイコロの数字、六が三回来ても届かないほど離れている。
ミソラ自身、負け続けのサイコロの目に半分涙目でスバルを睨んでいた。
(まぁ、悪く思わないでね)
マスに書かれた文字を読んだ。
「えっと……監督とケンカして配役交代。一番後ろのコマと自分のコマを交換?」
スバルだけじゃなく、ウォーロック、ハープ、ミソラまで目を丸くした。
「……」
スバルの顔がまるで魂の抜けたように白くなりミソラのコマと自分のコマを交換した。
「わ、私のターン……」
ミソラもサイコロを振り、ちょうど、「一」の目が出た。
「あ、あがり……」
ミソラも少し申し訳なさそうにスバルを見た。
「ふ……」
「ふ?」
スバルは終わってしまった双六シートの端を掴んだ。
「ふふふふふふふふふふふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ちゃぶ台返しのように双六シートをひっくり返した。
「見苦しいよ、スバル君!」
逆境続きの弁護士のように鼻筋に指を突き差されスバルは真っ青になった。
「勝負の世界は非情なの! 負け犬に口なし! 吠える権利があるのは勝ったもののみ! そして、今回の勝利者は……」
自分を指さした。
「この美少女アイドル・響ミソラちゃんだぁぁぁぁぁぁぁ!」
「……」
ウォーロックとハープがまるで打ち合わせしたようにバックに花吹雪をまき散らし、ミソラをあおった。
「……」
スバルは本当に泣き出しそうな顔で財布を取り出した。
「ごめん……ちょっと銀行に行ってくる」
「あ、待って、スバル君!」
「うん?」
「お金はいらないからデートしよう♪ それが私のお年玉♪」
「……」
財布の中身を見てスバルはホッとした顔をした。
「いいよ。じゃあ、お金もないからからおけ……」
「映画でしょう、ボーリングでしょう、レストランに……あ、お洋服も見なきゃ♪」
「……」
財布を落とした。
ウォーロックとハープがご愁傷様と肩を掴んだ。
「スバル君、今日は楽しもうね♪」
「……うん」
素直にお年玉、渡せばよかったとスバルは後悔した。