「え~~……みなさん、お集まりいただきありがとうございます!」
花見の舞台でスバルはマイクを片手に深々とお辞儀をした。
「今日は年に一回の花見の席で我が母校、コダマ小学校を借り、大々的な……」
「長い!」
マイクを奪い、ミソラは大声を上げた。
「今日は200年前の人間も交えてお花見大会だー!」
「うぉぉぉぉおぉぉおお!」
一斉に沸きだす喝采にスバルは苦い顔をした。
「ミソラちゃん……酷いよ」
「だって、スバル君の演説聞いてると夜になりそうなんだもん」
マイクを目の前の固定台にセットするとミソラは背中のギターを構えた。
「一番、23世紀の歌姫、響ミソラ歌います!」
歌い始めるミソラにスバルは慌ててステージから降りた。
「ウェーブロード♪」
ミソラが歌いだすとスバルは溜息を吐いた。
「まったく……」
「ヨッ、ご苦労さん!」
「あ、熱斗くん……」
ステージの裏で待っていた熱斗を認めた。
「まったく、ミソラちゃんは相変わらずマイペースなんだから」
「お前の前口上が長いのが問題と思うけどなぁ……」
後ろからメイルが現れた。
「でも、ミソラちゃん、歌うま~~い! 本当に歌手だったんだ♪」
目を輝かせるメイルにスバルもニコッと笑った。
「なんだったら、ここでピアノでも弾く? 用意するよ」
「えぇぇ!?」
慌てだした。
「ムリムリ! 私の腕じゃ笑われる!」
「サボり気味だもんなゴギャ!?」
足の小指を思いっきり踏まれた。
「余計なお世話!」
「お前なぁ!?」
「二人ともケンカはダメだよ……」
「ス~~バル君♪」
「おわぁ!?」
背中に抱き付かれスバルは振り返った。
「ミソラちゃん、もう歌い終わったの!?」
「うん! 残りはケロさんが司会やってくれるっていうからお花見しよう♪」
「ケロさんが?」
「なんか、マイクを持ってる姿を観たら自分もやりたくなったんだってさ!」
「ケロさんらしいなぁ」
呆れたような顔をする熱斗にスバルもまぁいっかと頭の後ろを掻いた。
「ささぁ! ジュースをどうぞ!」
「ああ、これはご丁寧に……」
ミソラの注いでくれたジュースを飲み、スバルは下唇を舐めた。
「あ、このジュース、すっごくおいしい!」
「でしょう♪」
ミソラは得意げに育ちかかったちょっと大きな胸を張った。
「この前、仕事先で貰ったとっておきのジュースなんだから♪」
「ああ、そういえば、そんなもの貰ってたね……」
大切そうに抱えてたからなにかと思ったらとスバルはまたジュースを飲んだ。
「あ、スバルだけ、ズリィ! ミソラ、俺にもくれよ!」
「いいよ! はい、メイルちゃん!」
「え……?」
ジュースをメイルに渡すとミソラはニコッと笑った。
「……」
メイルの顔が赤く染まり、熱斗を見た。
「ね、熱斗……私が汲んであげるね」
「お、おお……」
熱斗もミソラの言わんとしたことがわかり、メイルと同様に顔を赤くしてコップを出した。
≪熱斗くん、よかったね♪≫
「ど、どういう意味だよ!」
PETの中のロックマンに茶化され熱斗は恥ずかしそうな顔をした。
「熱斗くんって可愛いね♪」
「スバル、お前まで!?」
悔しそうに顔を俯く熱斗にミソラは悪戯っぽく笑った。
「熱斗くんはダメだなぁ! 悔しいならもっと見せつければいいのにこういうふうに♪」
「ッ!?」
≪ッ!?≫
熱斗とメイルだけじゃなく、PETのロックマンやロールまで真っ赤にした。
「ぷはぁ♪」
引くようにスバルの口から自分の唇を離すとミソラはステージでデュエットしている日暮と南国の元へと走った。
「ちょうだい♪」
「オッ?」
「アッ?」
南国からマイクを奪うと大声をあげて叫んだ。
「響ミソラ、二度目の曲に入りまぁぁぁぁぁす!」
また喝采が湧き、後ろの二人を見た。
「さぁさぁ、南国さんも日暮さんも交えてハートウェーブだぁぁぁぁぁぁ!」
「ボクのマイク的なもの用意してくれるかな?」
すぐに三本目のマイクが用意された。
「飛び交うシグナル♪」
「おぉおおぉぉおぉぉぉぉぉぉぉ!」
最高潮に達する会場の熱気に熱斗は聞いた。
「あの女と一緒にいて苦労、絶えないか?」
「絶えた覚えがないよ……」
≪でも、楽しいんでしょう♪≫
メイルのPETのロールが茶化すように付け加え、スバルは真っ赤になった。
花見は夜まで続き、さらにコダマタウンの住人が後から一人一人と集まり、花見の熱気は朝以上の盛り上がりを見せていた。
「208番! 星河スバル、召喚パフォーマンス、行きます!」
手札からカードを抜いた。
「雷よ、天を裂け! 雷皇龍ジークヴルム召喚!」
背中にリアルウェーブで作った架空のモンスターが現れ、会場が沸いた。
「ヨッ! 日本一でマス!」
「スバル、格好いいぞ!」
日暮とゴン太の声援を受けて今度はミソラがステージに立った。
「なら、私だって!」
マイクを投げ捨て手を振った。
「キラキラ輝く未来への光! キュアハッピー!」
「いいわよ、ミソラちゃん!」
「ミソラちゃん、可愛いよ!」
マリ子と育田の声援にミソラも得意になった。
「よぉーし、なら俺達も!」
≪任せて!≫
ステージにコピーロイドを持ち込むと熱斗はPETを構えた。
「ロックマン転送!」
コピーロイドが一瞬でロックマンに変わった。
「おおぉおぉおぉぉおお!」
意外にも驚いたのは200年後の現代の人間たちだった。
「もう一人のロックマンですよ、ゴン太くん!」
「ああ、委員長も見ろよ!」
「ええ……スバル君と負けないくらい素敵ね」
「委員長?」
どこか寂しそうな顔をするルナにゴン太は複雑な顔をした。
「……委員長」
「うん?」
「な、なんでもない……」
顔を赤くして背けるゴン太にルナは不思議そうな顔をした。
「さぁ! このコピーロイドはロックマン専用に作られてます! ようするに戦闘に特化したコピーロイドです!」
すぐにスバルのハンターVGからウォーロックが現れた。
「なら、俺と勝負だ! 一度、スバルを抜きにして戦いたかったんだ!」
「いいよ! 熱斗くん、今回はオペレートの必要ないよ! これはボクとウォーロックの戦いだから!」
「よし、頑張れよロックマン!」
「いくぞ、ロックマン!」
「来い、ウォーロック!」
世にも最強のネットナビとバトルウィザードの戦いが始まり、花見のテンションもさらに上がった。
その様子を見ていたスバルはすぐにステージから降り、ミソラとメイルと一緒に戦いを眺めた。
「こんな時間にバトルしなくってもいいのに……」
「仕方ないわよ。熱斗はバトルマニアだから……」
「どこかの誰かさんと違うね」
「どういう意味だ!」
ドッと笑うと三人はお互いにジュースを注ぎ合い、紙コップをグラスのようにぶつけ合った。
「いいねぇ……こんなイベント」
「また、みんな集まれるようなイベントを作ろうよ。きっと楽しいよ!」
「その時は私が私たちの時代の人間を集めるね」
グッとジュースを飲み、三人は散り散りに舞う夜桜を眺め笑った。
「今年もよろしく、みんな!」
スバルは桜の美しさと会場のみんなの騒がしさに酔いしれながら花見を楽しんでいた。