流星のメモリアル   作:スーサン

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ダブルロックマンストーリー【ダークカード編】

「……」

 居間で作曲しているとミソラは耳につけたヘッドホンを外した。

「アハハハハ♪ この芸人、面白いな♪」

 テレビを観ている少年を睨んだ。

≪ね、ねぇ、熱斗くん……厳しい目で見られてるよ≫

「うん?」

 目疲れ防止用のメガネを外し、熱斗は不思議そうな顔で自分を睨むミソラを見た。

「どうしたんだ……若年性の更年期障害か?」

「ケンカ売ってる……?」

 作曲に使っていたペンをテーブルに置くとミソラは怖い顔で熱斗を睨んだ。

「なんで、当り前のように人の家に居座ってテレビ、見てるの?」

「居座ってるって……」

 心外なと胸を張った。

「オレだって、来たくって未来に来たんじゃない!」

「じゃあ、帰ってよ!」

「スバルが来たらな」

「スバル君が?」

 そういえば姿が見ないなと怖い顔をした。

「実はスバルに呼ばれたんだよ。新しい実験に付き合ってくれって……」

「新しい実験?」

 そういえば、ヨイリー博士がそんなこと言ってた気がする。

「そのスバル君は?」

 人のスイートルームに勝手に他人を入れてとイライラした。

「あ、熱斗くん、もう来てたんだ?」

「あ、スバル!」

「スバル君!」

 部屋に入ってきたスバルにミソラは怖い顔で迫り寄ってきた。

「スバル君、ひとのいえに」

 迫るミソラを避け、熱斗に近づいた。

(無視された!?)

 前からどこか扱いが雑になった気がしたがここまで露骨だと傷つく……

「じゃあ、さっそく、ヨイリー博士のところへ行こうか?」

「あ、スバル君、私もついていくよ!」

 スバルの顔が今、気づいたようにミソラを見た。

「あ、うん……別にいいよ」

「……」

 ミソラはまた傷ついた。

 

 

「いらっしゃい、熱斗ちゃん、スバルちゃん、ミソラちゃん」

 ニッコリ微笑むヨイリー博士にスバルと熱斗は笑顔で手を上げた。

「お邪魔します、ヨイリー博士!」

「おじゃまします……」

 逆にミソラはテンションが低かった。

「ミソラちゃん、ご機嫌斜めなようね」

「別にそうじゃないよ……」

 ムスッとするミソラにヨイリー博士はクスクスと笑った。

「どうやら、男陣はまだ女の子の扱いがわかってないようね」

「そんなことよりも」

「そんなこと!?」

 さらにショックを受けるミソラに熱斗は楽しみを待つ子供のように顔を輝かせた。

「例の実験、今日するんだろう、早くしようよ!」

「例の実験って?」

 機嫌を悪くするのも飽きたのかつまらなさそうにするミソラにスバルは一枚の書類を渡した。

「クロスフュージョンシステム?」

 書類に書かれた企画名を見て、ミソラは胡散臭そうな顔をした。

「簡単に言うと電波変換の互換。200年前に提唱された技術らしいけど、どうやらお蔵入りになったらしいね」

「どういうシステムなの?」

 書類を返し、興味深そうに聞いた。

「ナビと人間を融合させて、現実世界でナビの力を借りようっていうシステムだよ。ボク達の電波変換と一緒だね」

「え……でも」

 電波変換の技術は現状、成功してるとは言い難い。

 唯一の成功例であるアシッド・エースですら、電波変換に対する身体への負荷が大きすぎて長時間の変身は無理といわれている。

 それを200年前の技術となると……

「200年前の技術じゃ、ナビと人間の融合は不可能と判断されたの」

 ミソラの言いたいことを理解し、ヨイリー博士は補足した。

「クロスフュージョンシステムも人間にかかる負荷が大きいの。しかも利便性の面でも否定され、結果、コピーロイドの技術が発展したの。それが現在のウォーロックちゃん達のウィザードってところね」

「これ、コピーロイドの応用だったんだ」

 ハンターVGを取り出した。

≪これって言うなよ!≫

 スバルのハンターVGから現れたウォーロックにミソラは苦笑いした。

「でも、なんか実感わかないなぁ……そもそも、利便性ってなに?」

「特殊な空間でしかクロスフュージョンが出来ないの。その名もディメイショナルエリア」

「でぃめいしょなるえりあ?」

 舌が回りきらないミソラにスバルがさらに細くした。

「このディメイショナルエリアがないとナビと人間は融合できないんだ。しかもディメイショナルエリアは人為的なシステムを設置しないと作れないから結果的にコストがかかったらしいよ」

「最終的にお金の問題で断念されたのか」

「ズバリ言うわね」

 苦い顔をするヨイリー博士に熱斗が詰め寄った。

「そんなことより、早く、実験をしよう! オレ、早くクロスフュージョンシステムを試したくってウズウズしてるんだ」

「ええ、でもその前に熱斗ちゃんのPETをアップグレードしないといけないの。しばらくロックマンちゃんとPETを貸してくれないかしら?」

「あ、ああ……」

 PETを取り出した。

「いいよな、ロックマン」

≪ボクはいいよ。ボクもクロスフュージョンを試したいし≫

「よし、じゃあ、ヨイリー博士、お願いね」

「PETに影響がないよう気を付けてアップグレードするわ」

「頼むよ!」

 PETを渡すとスバルが割って入った。

「じゃあ、ボク達もPETの性能が上がるまで、ちょっとお茶でも飲んでようか?」

「そうだね」

 ミソラもコクリと頷いた。

「この時代のお茶もおいしいのかなぁ♪」

 楽しみにする熱斗にスバルも悪戯っぽく笑った。

「自販機のお茶だけどね♪」

 三人が実験室から出るとヨイリー博士もPETのロックマンに微笑んだ。

「じゃあ、ちょっと弄るから機能をシャットダウンするわね。未来の技術が入るから多少、アナタにも内緒の機能を取り付けるけど……」

≪わかってます。くれぐれも未来の技術をボク達の時代に持ち込まないよう注意します≫

「ロックマンちゃんがそういうなら安心ね。熱斗ちゃんだと口が滑りそうだけど」

≪ひ、否定できない……≫

 苦笑するロックマンの姿がPETの画面から消えた。

 

 

「にしても、電波変換って、どんな感じなんだ?」

 自販機で買った缶のお茶を飲むと熱斗は不思議そうにスバル達に電波変換のことを聞いた。

「うん?」

 スバルも缶のお茶から口を離し、腕を組んだ。

「どんな感じって……み、みそらちゃん」

「わ、わたしにふらないでよ……」

 顔を真っ赤にして困るミソラに熱斗は納得したように頷いた。

「ようするにわかんないのか」

 二人は恥ずかしそうに俯いた。

「で、でも、すごい力が溢れるのは確かだよ!」

「ただ……」

 ミソラも考えるように天井を眺めた。

「電波体の種類によって姿や性能はバラバラだからね。私たちの意見を聞くより直接、でんぱへんか……じゃなく、クロスフュージョンしたほうが早いかも」

「習うより慣れろだね」

「ならうよりなれろ?」

 不思議そうな顔をする熱斗にスバルとミソラはアハハと笑った。

「うん?」

「どうしたの、スバル君?」

「さっきまで気付かなかったけど、なんだろう、この黒いカード?」

「あ、本当だ。なんだろう、これ?」

 休憩室のテーブルに乗っているカードを見つけ、手に取った。

「ダークソード?」

 カードに描かれたテキストを読み、スバルの目に妙な闇が映った。

(これって……?)

「スバル君?」

 スバルの目から光が消え、カードから邪悪な邪気が溢れてきた。

≪な、なんだ、この強い力は!? むーのちからににてる……≫

「ロック君!?」

「スバル!?」

 スバルとウォーロックの姿が闇の瘴気によって消えた。

「スバル君!?」

「危ない、近づくな!」

 スバルを助けようとするミソラを押さえつけ、熱斗は瘴気が広がるスバルの立つ空間を眺めた。

(なにが起こるんだ?)

 瘴気の中から白い闇が光った。

「ダーク電波変換! 星河スバル オン・エア!」

 瘴気の闇が斬り裂かれるように消え、一人の少年が起っていた。

「こ、これって?」

「ロックマン?」

 全身の鳥肌が立つような悪寒を感じ、ミソラは自分を押える熱斗から離れ、ポケットからハンターVGを取り出した。

「ハープ!」

≪言われなくっても!≫

 黒いロックマンへと電波変換したスバルは邪悪な笑顔を浮かべ、走り出した。

 

 

「ダークカード?」

「はい。最近、巷で出回ってる持てば強力な力を得る代わり精神が破壊される危険なカードです。それを売りさばいている組織が存在するようです」

「強力な力を手に入れたい人間の欲望に付け込んだ闇のビジネスってわけね」

 研究員が頷いた。

「捕まえた売人がどうやら一枚だけ、この研究所に隠したらしく……」

「誰かが手にすると危ないわ。すぐに研究所を閉鎖して外から人が入れないようにしてさが……」

 ドアが破壊された。

「ミソラちゃん!?」

 傷らだけのミソラとハープが部屋の中に転がり、ヨイリー博士は仰天した顔をした。

「これって!?」

「ヨイリー博士!」

 研究室に入ってきた熱斗にヨイリー博士は珍しく余裕を無くした顔をした。

「いったいなにが!?」

「スバルが謎のカードを手にしてから暴走したんだ!」

 部屋に入ってきた黒いロックマンに熱斗は冷や汗を掻いた。

「そして、スバルは迷いなく、ミソラを一瞬で倒したんだ……」

 ヨイリー博士の肩を掴んだ。

「ね、ねぇ、俺のPETのアップグレード、もう済んでる!?」

「え、ええ……もう起動してるけど、まさか!?」

 熱斗は自分たちに迫るロックマンを見た。

「俺がスバルを止める! クロスフュージョンを許可してくれ!」

「で、でも、実験もまだなのに……」

「悠長なこと言ってる場合じゃないだろう!?」

「……」

 机の上に置いてあったPETのロックマンが口を開いた。

「ボクなら大丈夫です! ヨイリー博士、ボクと熱斗くんを信じてください!」

「……」

 少し考えるように黙った。

「わかったわ……」

 コクリと頷き、熱斗に一枚のチップを渡した。

「熱斗ちゃん、この時代は電波環境によって常にディメイショナルエリアを張った状態と同じになってるの。だからすぐにクロスフュージョンが出来るわ。でも、クロスフュージョンしてる間はセットしてあるバトルチップ以外は使えなわ。先に使う予定のバトルチップをセットしておいて!」

「わかった!」

 机の上のPETを取ると熱斗とロックマン・スバルが駆け出した。

「バトルカード・ダークソード!」

≪熱斗くん!≫

「ロックマン、いくぞ!」

 PETの中にクロスフュージョンチップをセットした。

「クロスフュージョン!」

「ハァッ!」

 熱斗の身体がダークソードによって真っ二つに裂かれた。

「熱斗ちゃん!?」

 真っ青な顔をするヨイリー博士に声がかけられた。

「大丈夫だぜ!」

「え……?」

 振り返るとヨイリー博士の背中にはスバルとは別のロックマンが立っていた。

「熱斗ちゃん?」

「後は任せて!」

 ロックマンにクロスフュージョンした熱斗はゆっくりした足で自分を睨むスバルに歩み寄った。

「スバル。今、助けるぞ!」

「ッ!」

 スバルのダークソードが空を切った。

「見える!」

 上空にジャンプし空を切ったダークソードの一撃を避け、熱斗はビックリした。

「これって……?」

≪うん、すごい力がボク達に流れてる!≫

 拳を握りしめ、熱斗はスバルを見た。

「今のオレ達は!」

≪誰にも負けない!≫

 駆け出すスバルに熱斗は手を前に出した。

「バトルチップバリア!」

「ッ!?」

 ダークソードが弾き返された。

「す、すげぇ……!」

≪熱斗くん、一気にたたみかけるよ!≫

「任せろ!」

 右腕を振り上げた。

「これが!」

≪これがクロスフュージョンロックマンの力だ!≫

「バトルチップ!」

 熱斗の身体が光り輝いた。

「キャノン!」

 熱斗の右手のバスターがキャノンに変形した。

「キャノン!」

 左手がキャノンに変形した。

「キャノン!」

 両腕のキャノンが合体するように一つになり、巨大なバスターへと変わった。

「プログラムアドバンス!」

 右腕へと集中したキャノンをスバルに向けた。

「ギガキャノン!」

 熱斗は怒鳴った。

「目を覚ませ、スバル!」

「バトルカード」

「遅い!」

 カードを読みこむよりも先に熱斗のギガキャノンがスバルの身体を飲み込んだ。

「ぐあぁぁあぁぁぁあぁぁぁあ!?」

 炎に飲み込まれるスバルの身体から黒いカードが飛び出した。

≪いまだ、熱斗くん!≫

「おう! バトルチップ・ワイドソード!」

 熱斗の右手のバスターがビームソードへと変わった。

「消えろ!」

 宙を浮く黒いバトルカードに向かってワイドソードを振り上げた。

≪これで終わりじゃないぞ≫

「ッ!?」

≪ッ!?≫

 どこから声が聞こえた。

≪闇の因子はもうスバルを飲み込んだ。後は絶望の種が発芽するのを待つだけだ≫

 黒いバトルカードを斬り裂いた。

「……」

 床に着地すると熱斗の身体が元に戻った。

「あ……?」

 PETに仕込んだフュージョンチップが粉々になり、熱斗はビックリした。

「これって?」

「どうやら、まだ戦闘に耐え切れるほど完成されてないみたいね」

 横から観察するようにヨイリー博士が熱斗を見て、熱斗も思いだしたように目の前で倒れている熱斗に駆け寄った。

「ヨイリー博士はミソラを!」

「わかったわ!」

 急いでスバルとミソラを介抱する熱斗とヨイリー博士にPETの中のロックマンは一人考えていた。

(あの時の声……ダークチップに身体を支配されていたボクとなにか似ていた。もし、あのカードがボクの考えてるものと一緒なら)

 介抱されているスバルを見て、ロックマンは一人、言い知れない不安を覚えた。

(本当の恐怖はここからかもしれない)

 その予想は遠くない未来、現実のものとなるが今の熱斗とロックマンには考える余裕はなかった。

 ダークカードを巡った暗い戦いの始まりをこの時、スバルも熱斗もミソラも……

 そして選ばれた全てのバトラーが気づくことなかった。

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