「おお……結構、いるなぁ?」
七夕祭りで集まった人だかりを見て、スバルは感嘆とした声を上げた。
ミソラも笑顔で頷いた。。
「年に一度の彦星様と織姫様が逢う日だからね……晴れてよかったよ♪」
満面の星が天の川となって輝いており、ミソラをウットリさせた。
「あ、出し物もある。ミソラちゃん、なにか欲しいものある?」
「もう、ロマンチックじゃないなぁ……」
といいながら出し物で売っていた綿あめを買ってもらった。
「ところで短冊を飾る竹はどこにあるの?」
「ああ……境内の奥にあるみたい。行く?」
「うん!」
綿あめを食べながらスバルの手を握るとミソラは悪戯っぽく綿あめを差し出した。
「食べる?」
「ありがとう」
ミソラの食べてない綿あめの部分を食べるとミソラは少し不満そうな顔をした。
「そこは食べたところをねぇ……」
「そんな変態なことして嬉しい?」
「……」
確かに微妙な気がし、赤くなった。
「ハハ……さて、行こうか?」
「う、うん」
手を引っ張られながらミソラは祭り会場の奥の一本の竹の立った神社前へと来た。
「うわぁ……立派だなぁ。これ、リアルウェーブじゃないんでしょう?」
「そこは祭り開催者の意向みたい。せっかくロマンチックなイベントなんだから竹くらいは本物を使わないとって」
「わかってるねぇ……その開催者♪」
ミソラも嬉しくなり、スバルの手を離した。
「じゃあ、私達も願い事を書こうよ! 後で見せっこするからここでいったん、お別れ!」
「わかった。じゃあ、竹の下に集合ね」
「オーケー!」
ミソラを見送るとスバルも近くの短冊を書く台まで歩き、短冊を一つ貰った。
≪なにを書くんだ?≫
興味深そうにウォーロックが覗き込んだ。
「まぁ……こんなところかな!」
短冊にペンを走らすとスバルは自慢げに見せた。
『ミソラちゃんと残りの年も楽しく過ごせますように』
≪可もなく不可もなしのつまらない願いだな≫
「じゃあ、ロックはなんて書くんだよ?」
≪決まってる! もっと暴れやすい事件が起きてくれることだ!≫
「聞いた僕がおろかだったよ」
溜息を吐き、短冊を飾る竹の下へと向かった。
「あ、ミソラちゃん、もう書き終わったんだ?」
竹の下ですでに待っていたミソラは照れ臭そうに笑った。
「書くこともう決めてたから」
「へぇ~~……どんなこと書いたの?」
「えへへ……♪」
短冊の願いを見せるとスバルは真っ赤になった。
「また、安直なぁ……」
「スバル君の見なくっても分かる答えよりずっと楽しいもん!」
「はいはい……」
顔を赤くするスバルにミソラは自分の分の短冊を渡した。
「じゃあ、一番高いところに飾ってね!」
「オーケー……」
竹の上に上るため、梯子に足をかけた。
「ふぅ……」
祭り会場の隅の人気のないベンチに座るとミソラは買ってもらったコップのジュースをストローで飲みながら星を眺めていた。
「綺麗な星だね、スバル君」
「うん……」
「願い事、叶うといいね」
「うん……」
「スバル君、もうそろそろ夏休みだね?」
「うん……」
「ライブの約束、忘れないでね」
「うん……」
「人の話、聞いてる?」
「うん……」
ぶっ叩いた。
「な、なにするの!?」
「近くにこんな美少女がいて星に見惚れてってどんだけ失礼なのスバル君は!?」
「あ、ご、ごめん……でも、ほら、見てよ夏の大三角形が見えるよ、今日は!」
「なにそれ?」
「ほら、あそこあそこ!」
「……」
ミソラは拗ねたように手を振った。
「わかんない! スバル君も星ばかりじゃなく私を見てよ!」
「ミソラちゃんを見てって言われても……」
特におしゃれした風もなくいつも通りのパーカー姿にスバルは返答に困った。
「ああ、もういい! こうなったら私のお願い叶えてよ!」
「あ……や、やっぱり?」
「そう、やっぱり!」
目を瞑り顎を上げるミソラにスバルは困ったようにテレた。
「……」
スバルも赤くなり、ミソラの頬を包むように顔を固定し、唇を近づけた。
二人の唇が重なり、空から一閃の流れ星が落ちた。
(スバル君……)
唇に伝わるスバルのぬくもりにミソラは嬉しくなり、自然と目が潤んだ。
(願い事、叶っちゃった……)
短冊の時、スバル見せた自分の願い事を思い出し、ミソラは幸せな気持ちになった。
『七夕の綺麗な夜にスバル君とロマンチックなキスがしたい』
ロマンチックかどうかは疑問だが少なくとも幸せなキスだった。