「ようするにうちの社長が私達の部活動をプロ活動と勘違いしてたらしくって音合わせが自信がついたと判断したみたい」
「……」
難しい顔をするルナにミソラは甘えた声を出した。
「るなちゃぁ~~ん……いっしょにぷろを」
「断るわ!」
「……」
体育座りで落ちこむミソラにスバルは呆れた顔で笑った。
「委員長はプロとか興味無いの? 一つのことを極めるの好きな人かと思ったけど……」
「一つのことを極めたいからバンドは部活動として納めたいの!」
「一つのこと……あ!」
思いだしたように手を合わせた。
「そうか、委員長には生徒会長として学校作りをしたいんだっけ!」
「そう! バンドはその一環! 生徒会長として文化にも精通してるというイメージを持たせたいの。でも、プロを目指した出したら生徒会活動が疎かになる可能性があるでしょう?」
「さすが委員長だね」
話を聞いていたツカサがニッコリ笑った。
「中途半端が嫌いな君らしいよ。でも、だったらオーディションは受けるべきじゃないかな?」
「……?」
ツカサの顔が優しくなった。
「だって、チャンスがあるのにそれを振るのは君の本意じゃないでしょう?」
「……」
「全部やってみるのも今後の生徒会活動に大事じゃないかな?」
「物は言いようね……」
ルナは落ち込んでいるミソラの肩を掴んだ。
「オーディション受けるだけ受けましょう! でも、ダメだったら諦めてよね!」
「ルナちゃん!」
抱き付こうとするミソラの頭を押さえつけ、抱き付けないようにした。
「でも、やるからには本気で行くわよ! 今日からこのバンドは新・るなる……」
「チーム・シューティングスターなんてどうかな?」
ツカサが割って入った。
「るなるな……」
言葉を詰まらせるルナにスバルは首を傾げた。
「チーム・シューティングスター?」
「そう」
スバルの顔を見てニッコリ笑った。
「スバル君を中心にみんな集まったんだ。星が好きなスバル君にちなんで流れ星のように早く駆け抜けるバンド……シューティングスターなんて、どうかな?」
「それいいね!」
同意するようにミソラも割って入った。
「二人もいいよね、チーム・シューティングスター!」
「もちろん」
頷くスバルにルナも口をパクパクさせながら頷いた。
「い、いろんはないわ……」
悔しそうな顔をするルナにミソラは不思議そうな顔をした。
「ところでルナちゃんはどんな名前にするつもりだったの?」
「それはもちろん、新・るなるな……」
「さぁ、さっそくスタジオを借りて練習しよう! オーディションまで時間がないし!」
「……」
スバルの邪魔に完璧に自信を失ったのか今度はルナが体育座りでいじけだした。
練習は夜通し続いた。
センスのミソラに理論派のルナのバンドはいい意味でも悪い意味でも活動を前向きにさせた。
感覚で音楽を作るミソラに対してルナの理論を優先させた音楽作りは互いのいい部分を存分に増長させ、チームの色を強くしていった。
オーディションの当日には四人のバンドはすでにプロとして通じるまでに完成された音を醸し出していた。
「~~~♪」
ボーカルのミソラとルナの歌が終わると審査員たちから拍手がおりた。
「素晴らしいよ、ミソラちゃん達! 君たちくらいの歳でこれだけの完成度とは!」
「でも、まだまだ甘いね」
違う審査員が渋い顔をした。
「プロとして活動するにはまだ経験が足りないかな」
ミソラとルナの顔がなんとも言えないものになった。
「確かに少し歌詞や歌の表現が借りた猫のように大人しい気がするな」
全員納得した顔でスバル達を見た。
「今回のオーディションは見送ろう!」
「……」
不合格の言葉にミソラは被っていたフードを深くした。
「だが、これで懲りず何度もオーディションに来てほしい!」
曇ったミソラの表情も気にせず、審査員の明るい声が響いた。
「この不合格は君たちの実力を見限るものでなくより高いレベルになってまた来てくれるものだと信じての不合格だ! 次に期待してるよ」
「……」
なにも言わずミソラは一人、オーディション室から出ていった。
「……」
帰り道、バスも使わず歩いて帰るミソラの後ろをつきながらスバルはどうしたらいいかツカサの顔を見た。
「一番、合格に燃えてたからね。今回の失敗、もしかしたら下手な挫折より大きかったのかも……」
ツカサもどう慰めればいいのかわからず困った顔をしていた。
「まったく」
ルナの口から呆れたようなため息が漏れた。
「ミソラちゃん!」
「……」
足を止めるミソラにルナは大声を上げた。
「これくらいで諦める気!」
「……」
「トップアイドル・響ミソラは団体で活動したら途端に弱くなるほど弱虫だったのかしら!?」
「……」
「またチャンスを貰ったんだから次、頑張ればいいじゃない! 私達は道を閉ざされたんじゃない! 新しい道を作ってもらったのよ!」
「……」
ようやく振り返りルナはギョッとした。
「だって……早くデビューしてみんなと……」
涙をダラダラと流し、鼻水を垂らすミソラにルナは頬をポリポリとかいた。
「早くデビューしようが遅くデビューしようがいいじゃない! まだ結成したばかりのバンドよ! もっとアマチュアをの時代を楽しみましょう!」
ミソラの涙をハンカチで拭ってあげた。
「だから、次を頑張りましょう! 次は絶対に合格できるよう、私ももっと腕を上げるから!」
「うん……ありがとう……つぎこそは……ごうかく……ぶび~~~!」
「って、私のハンカチで鼻拭かないでよ!」
「え、えへへ♪」
ようやく笑ったミソラを見てツカサとスバルはふふっと笑った。
「スバル君、今後のチーム・シューティングスターの活動は君に任せたいんだけどいいかな?」
「ボクに?」
自分を指名するツカサにスバルはビックリした顔をした。
ツカサはマジメだと言いたげに真摯な瞳を向けた。
「このチームは君が要だ。君に動かしてほしい」
ミソラが走り寄ってきた。
「私もスバル君にこのチームを動かしてほしい!」
「み、ミソラちゃん!?」
驚くスバルにルナも納得したように頷いていた。
「厄介ごと引き受けるのは得意でしょう。スバル君、今後のことはアナタにすべて任せるから手を抜いたら……」
指を怖い動きでワサワサさせた。
「どうなるかわかってるでしょうね?」
「わ、わかってます……」
顔を真っ青にして胸を叩いた。
「ま、任せてよ委員長!」
「それでこそ、私のスバル君だわ」
「え……?」
顔を真っ赤にするスバルにミソラが怖い顔をした。
「スバル君は私のものだからあげないよ!」
「ふふっ……その慢心、どこまで続くかしら?」
「イ~~~だ!」
「ふふっ……♪」
明らかにけん制し合う二人に間に挟まれたスバルは冷たい汗をいっぱいかき、板挟みにあった。
その姿にツカサは傍観者のように笑った。
「これは面白くなってきたかも」
睨みあう二人をツカサは楽しそうに眺めていた。