噴水の見える公園の中でオシャレな服を着たミソラはハンターVGで時間を確認した。
「もうそろそろかな」
「お待たせ、ミソラちゃん!」
「あ、スバル君!」
公園の中に入ってくき恋人の姿を認め、ミソラは嬉しそうに手を振った。
「遅いよスバル君! もう待ち待ち!」
「そ、そんなこと言っても……」
ミソラの前で息を切らせながら足を止めるとスバルは少し腑に落ちない顔をした。
「一緒に住んでるんだから一緒に家を出ればいいのにそれを待ち合わせを作るなんて……」
「スバル君は女心がわかってないね!」
指を差すようにスバルの鼻を押した。
「ぶひぃ……」
阿呆な声が出てしまった。
「待ってる時間もデートなの! 女の子は雰囲気を大事にしたい生き物なの!」
「そんなものなのかな?」
「そんなもの!」
手を握った。
「じゃあ、さっそくデートしよう♪ 今日は私の誕生日なんだからしっかりエスコートしてよね♪」
「はいはい……」
手にを握られスバルも満更でない顔をした。
『オレは……なんのために……戦っているんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』
映画のストーリーが最高の盛り上がり所でミソラは大泣きしていた。
「うぅ……二人とも可哀想すぎる」
「ミソラちゃん、新しいハンカチ」
「ありがとう」
ブチュ~~と鼻をかんだ。
(今日の洗濯物、大変だなぁ……)
汚くなったハンカチにスバルはガックリした。
映画は悲劇に近いヒーローものであった。
最後は悪を倒すのは当たり前だが決してハッピーエンドとは言い難く、主人公たちにとって救いのないものとなっていた。
ハードな内容と重い展開、そしてわずかに明かされる主人公の出生。
全てが織りなす展開はまさに王道シリアスであったが……
(隣でここまで泣かれると冷めるなぁ)
また新しいハンカチで鼻をかむミソラにスバルは心の中でアハハと笑った。
(今度はコメディものにしよう)
洗濯物が増えないならそっちがいいかもと今後のデートコースを検討した。
「スバル君……」
「うん?」
泣きながらも自分を見るミソラにスバルは首を傾げた。
「なに?」
「スバル君は戦う意味は分かってるよね」
「……」
少しテレたようにスバルは鼻の頭を指でかいた。
(ボクが戦う理由……)
同じようにテレた顔をするミソラにスバルは顔を映画を観直した。
ミソラも同じように映画に視線を集中させ、主人公がラスボスと戦うシーンとなった。
映画が終わるとスバルとミソラは昼食によった喫茶店でホットケーキとチャーハンを食べていた。
「……」
ミソラの目が物欲しそうにスバルのチャーハンを見ていた。
「ふぅ……」
小さく溜息を漏らし、チャーハンを食べるためのレンゲを置いた。
「食べる……?」
「うん!」
スバルの使っていたレンゲを取り、チャーハンを自分の元へと置くとミソラは子供のように食べ始めた。
「おお!」
ミソラの可愛い顔がますます可愛くなった。
「ここのチャーハン、おいしいね!」
「味が自慢の喫茶店でもあるからね」
この店はのんびりした雰囲気と本格的な味の料理で有名なお店である。
ただし、テレビの露出は少なく、その理由も静かな雰囲気を壊されたくないという店主の拘りからである。
スバルがこの店を知ったのも本当偶然、仕事で立ち寄った程度の話である。
ようするに知る人ぞ知る名店というわけである。
「ふぅ……おいしかった!」
「って、ボクのチャーハン、全部食べちゃったの!?」
「おいしかったよ!」
「まったく……君ってやつは」
店員さんに新しいメニューを注文した。
「今度はオムライスが食べたい」
「君の分じゃない!」
すかさずツッコミを入れた。
「お客様。今日はカップル特別アイスがご用意できますがどういたしましょう?」
「え、カップル特別アイス!」
目を輝かせた。
「欲しいです! 持ってきてください!」
「ただちに」
ペコリと頭を下げると店員さんは悪戯っ子のように笑った。
「食べきれるといいですけど♪」
「どういう意味?」
愛嬌のある笑顔で去る店員さんにミソラとスバルは顔を見合わせた。
「可愛い店員さんだったね」
「まぁ……ね」
嫌な予感をビンビンに感じ、スバルは警戒した。
「お待たせしました! カップル特別アイス、お持ちしまし……った!」
ドンッと比喩表現なしでアイスが置かれた。
「……」
「……」
超巨大な山のような形のアイスにスバルとミソラは言葉を零した。
「登山しろと?」
見事な山盛りのデカすぎるアイスクリームの塊に二人は冷や汗をかいた。
なんとかアイスを完食し、喫茶店を出るとミソラは吐きだしそうに口を押えていた。
「当分、アイスはいいや……胃もたれしてる」
「そうだね……」
アハハと笑った。
「アイスを山ほど食べるのは夢だったけどこれはちょっと……だね」
「そうだね……あ、ちょうどいいところに来た」
「うん?」
ボーリング場と書かれたお店を見つけ、スバルは親指で指差した。
「腹ごなしに遊んでいこう」
「うん! 少しは消化しないと胃もたれで倒れそう」
ボーリング場に入ると二人は用意してもらったレンタルボールを手に自分たちのレーンへと向かった。
「ここは時間制みたいだから一時間、たっぷり遊ぼう!」
「そうだね! 負けた方は勝ったほうにキスをするってのはどう?」
「あのね……」
呆れるスバルにミソラは早い者勝ちと言いたげにボールを投げ飛ばした。
「あ……?」
「ストライク!」
見事にピンの全部倒れたレーンの先を見て、スバルはムッとした。
「そういうことをする?」
「えへへ……勝負は非情だもんね! 次はスバル君の番だよ!」
「なら……こっちだって!」
スバルもボールを投げ、見事にストライクを取った
「よし!」
「むぅ~~……スバル君の癖に生意気な!」
ミソラも第ニ投し、またストライクを打った。
「おし!」
ガッツポーズをとり喜ぶとミソラは頭の中で必勝のアイディアを思いついた。
「次はボクだね……」
ボールを構え、投げ出そうとした。
「スバル君、愛してるよ」
「え……?」
いきなり変なことを言われ、スバルは身体のバランスを崩し横転した。
「あ……」
見事にガーターに入ったボールにスバルは怖い顔をした。
「ミソラちゃん!」
「えへへ♪ 勝負は非情だもんね!」
そこからペースを乱されたスバルの成績は結局、散々だった。
「うんっ……」
「むちゅぅ……」
ボーリング場の駐車場の陰で二人は隠れるようにキスをしていた。
「むじゅる……ぷはぁ」
唇を離すとたっぷりと繋がった唾液の糸が二人の服に垂れ、ミソラはテレたように笑った。
「ボーリングって楽しいね……♪」
「ボクは疲れたよ……」
想像より体力を使うキスなのか、スバルは自分の下唇を指で撫でた。
「あ、もうそろそろ帰りの電車が来るころか」
ハンターVGの時計を確認し、デートの終わりの時間が来たことに気付いた。
ミソラの顔が不満そうに膨れた。
「えぇ~~……もう誕生日デート終わり?」
つまらなさそうに地面を蹴るミソラにスバルはクスクスと笑った。
「まぁ、そういわず……実は帰りに渡そうと思ってたものがあったんだ」
「渡すもの……それって誕生日プレゼント!?」
期待した目を向けるミソラにスバルはポケットからプレゼントを取り出した。
「はい、ミソラちゃん。誕生日おめでとう……安物だけどミソラちゃんにピッタリの物を買ったんだ」
「ほぉ~~……」
スバルの手に置かれたプレゼントを見てミソラの目が輝いた。
「音符の形のイヤリングだ!」
「♪」の形をしたイヤリングを見て、ミソラは嬉しそうにスバルを見た。
「ありがとう!」
ギュっと抱き付き、頬にキスをした。
「ミ、ミソラちゃん……」
思ったよりも好感触の反応にスバルも嬉しそうに頬を染めた。
「ねぇ……つけて」
「う、うん」
抱き付いたまま耳にささやかされ、スバルはゾクゾクとした。
「じゃあ、離れてね」
「あん♪」
「うっ……」
引き離す際、思わずミソラの育ちかけている胸を押してしまい、スバルはドキッとした。
「もう……ここを好きにするのはもうちょっと大人になってからね♪」
「わ、わかってるよ」
動揺に顔を赤らめるとスバルは慌てて手に持ったイヤリングを弄りだした。
「え、えっと……動かないでね」
「うん!」
ミソラの耳たぶをそっと触った。
「キャン♪」
「変な声出さないで!」
「だって、耳はちょっとだけ弱いんだもん♪ ウィークポイントはスバル君の大好きな部分だけど」
「ど、どこだっていうんだ!」
心の中で図星をつかれた気がし、スバルは慌ててミソラの耳に可愛らしい「♪」の形のイヤリングを付けた。
「えへへ……」
耳についた「♪」の形のイヤリングを弄び、ミソラは嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、スバル君! 今年最大の嬉しいプレゼントだよ!」
腕に抱き付いた。
「今度のスバル君の誕生日にはもっといい物をプレゼントするね! 楽しみにしてて!」
「うん……わかった。期待してるよ」
スバルも嬉しそうに笑い、ミソラの顔をそっとあげた。
「好きだよ、ミソラちゃん」
「うん、私もスバル君!」
抱き合ったまま二人はそっとキスをした。
家に帰るとミソラはスバルから貰った「♪」の形のイヤリングをアクセサリーボックスの中に入れた。
「えへへ♪ スバル君からのプレゼント……もっともっと欲しいなぁ♪」
今までたくさん、欲しいものを貰ったけどやはり誕生日の欲しいものは格別な感じがした。
「たくさん溜まったな」
アクセサリー箱に入った色々なアクセサリーにミソラは幸せな気持ちになった。
「このアクセサリー全部が私の宝物だよ、スバル君」
アクセサリー箱に入ったスバルから貰ったプレゼントがたくさん集まり、ミソラは幸せな気持ちになった。
ミソラにとってほしいものはスバルのプレゼントそのものなのだから。