「あむぅ……むぐむぐ」
露店で売っていた綿あめを食べるとミソラは幸せそうに頬を染めた。
「やっぱり、夏祭りといえば綿あめだよねぇ♪」
「かき氷も捨てがたいね!」
スバルも露店で買ったかき氷を食べ、夏祭り一色になった境内を見た。
「今年も盛況だね」
「そりゃあ、夏最大のイベントといえばこれでしょう!」
「マンガじゃなく?」
「マンガじゃなく!」
クスクス笑い、二人は手を繋いだ。
「今日はたっぷり楽しむぞ!」
「うん?」
スバルは大きく設立されたステージを見つけた。
「夏祭り歌唱大会……?」
夏祭りのイベントとして設置されたステージを見てミソラの目が輝いた。
「これ、あげる!」
「うむぅ!?」
ミソラの食べかけたの綿あめを貰い、スバルは目をパチパチさせた
「私、参加してくる!」
「あ、ミソラちゃん……!?」
走っていくミソラを見送り、スバルは困った顔をした。
「本当、歌が好きなんだから……」
ミソラに続きスバルもイベントステージへと歩いていった。
「え……プロは参加お断り?」
イベント主催者が頭を下げた。
「ミソラちゃんが出ると優勝決まっちゃうから……」
「ぶぅ~~……」
つまらなさそうに頬を膨らませるミソラにスバルはどうしたものかと苦笑いした。
「じゃあ、うちのミソラをゲストで参加させられないかしら?」
「あれ……」
背後から声をかけられ、ミソラは振り返った。
「社長……?」
ゴツイ顔を綻ばせるオネエ社長にミソラはビックリした。
「私、響ミソラの所属している事務所の社長です。ぜひ、うちのミソラをゲストとしてこの歌唱大会に参加させてもらえないでしょうか?」
名刺を差し出し礼儀正しく頭を下げる社長にイベント主催者も自分の名刺を取り出し頭を下げた。
「う、うちとしては人気アイドルのミソラちゃんがゲストに参加するなら大喜びですが……」
「なら、決まりね!」
満足そうに頷いた。
「ミソラちゃん、ステージ衣装は無理だけど、その浴衣で歌ってきなさい!」
「社長、ありがとう!」
ギュっと社長に抱き付くミソラにスバルの顔が不機嫌になった。
「……」
社長もスバルの嫉妬を目が見え、ニヤニヤした。
「じゃあ、後はプロデューサーのアナタがやりなさい!」
抱き付くミソラを離し、社長は悪戯っぽくスバルを見た。
「あ、はい……」
肩に手を置かれ鼓舞されるとスバルは慌てて頷いた。
社長は朗らかな笑顔を浮かべ受付から離れた。
「私、観客席で見てるからヘマしたら怒るわよ♪」
「はぁ~~い!」
二人は手を上げ、返事をした。
歌唱大会が始まり、夏祭り会場はちょっとした興奮で包まれていた。
『皆さん、こんばんは! 特別ゲストの響ミソラです! 今日は楽しんでいってくださいね!」
背中のギターを構えた。
『新曲! プレアデスラバー!』
ギターの音楽が流れミソラの歌が夏祭り会場全体に広がると会場が熱気に包まれた。
「みっそらちゃ~~~~~~ん!」
熱気は留まるところを知らず、ミソラの歌が終わった後もレベルの高い歌うま自慢がミソラの歌オンリーで会場を盛り上げた。
イベントはもうミソラを中心に盛り上がり、夜の闇すらも明るく染めた。
そして、最後の一人が歌い終わると司会者が声を上げた。
『それではこれから夏祭り歌唱大会の優勝者を決めます!』
盛り上がりに盛り上がった観客たちの熱気は誰が優勝するかワクワクを隠そうとしてなかった。
『今年の優勝者は彼女です!』
手を上げて優勝の悦びを露わにする少女に司会者はさらに叫んだ。
『優勝者の彼女は最後の締めとして我らがアイドル、響ミソラとデュエットを歌って、イベントを終了したいと思います!』
走るようにミソラも少女の元へと駆け寄り、手を握った。
「感動したよ! 私ももっともっと頑張って歌をうまくなるからアナタも頑張ってね!」
「あ、は、はい……」
ポッと頬を染める少女にミソラは小声でつぶやいた。
「歌は私がリードを取るね。どんな歌が歌える?」
「じゃ、じゃあ、シューティング・スターで」
「ワァオ♪ 私のお気に入りソング♪ じゃあ、一曲……」
ギターを構えるとミソラはウィンクした。
「私たちの歌を聞けぇぇぇぇ♪」
イベントが終了するとミソラは楽屋裏で社長と主催者に囲まれながら談笑をしていた。
「今回のイベント、ミソラちゃんのおかげで大成功です!」
「いえ、うちのミソラが役に立ってこちらも光栄です」
社長も謙遜気味に返事を返し、ミソラも楽しそうに笑った。
「来年も私、参加していいかな?」
「もちろんです!」
主催者の許可にミソラの顔がパァと輝いた。
「あ、そうだ……今回のミソラちゃんへの報酬ですが、すみません、こんなものしか持ってません」
「うん……バトルカード?」
バトルカードを受け取るとミソラの顔がさらに輝いた。
「今となっては希少なハープ・ノートのバトルカードだ!」
「たくさん持ってますので良ければ受け取ってください」
「わぁい♪ 主催者さん、大好き♪」
「い、いやぁ……」
デレデレする主催者にスバルは呆れたように溜息を吐いた。
「さて、ミソラちゃん、どうする? まだ、夏祭り続いてるけど……」
「もちろん、続けるよ!」
スバルの手を握り、イスから立ち上がらせた。
「今日の私、テンション高いからたくさん遊ぶぞぉ!」
「ハメを外しすぎないように頼むわよ」
「はぁ~~い!」
スバルの手を引っ張りながら楽屋から出ていくミソラに社長は本当にわかってるのかと不安になった。
「じゃあ、私も失礼しますね」
「あ、はい! 今度、正式にお礼に伺います」
「それでは厚かましいですが今度、アナタ方の催すイベントにぜひ、うちのミソラの起用をお願いします!」
「喜んで!」
ギュっと手を握ると社長はフフッと笑った。
(ただ、遊ぶだけでもしっかり仕事を取れるなんて……ミソラちゃん、ますます実力を上げたわね)
そして、その立役者はきっとスバルだろうと社長は思い、自分の判断は間違ってなかったと喜んだ。
次の日、ミソラのゲストライブは新聞に載り、また注目を集めた。