「響家の墓」と書かれた墓石の前に立つとスバルとミソラは社長は手を合わせた。
「……」
普段、うるさいミソラも静かに手を合わせいた。
(ここにミソラちゃんのお母さんが眠ってるのか……)
8月15日、お盆……
ミソラの母親の墓参りにスバルは自分が初めて訪れたのだと恥ずかしくなった。
(本当はもっと早く、来なきゃいけなかったのに……)
よく見るとすでに雑草は刈られていた。
(毎月、墓参りに来てるって聞いたけど……)
墓の手入れを毎月欠かしてないことは目の前の手入れの必要のない墓を見てわかった。
「……」
大好きなお母さんのお墓を前で焼香するミソラの気持ちを考えるとスバルは胸が締め付けられるようになった。
「ママ……」
ポツリとミソラの口から出た言葉にスバルはキョトンとした。
「私は大丈夫だから……スバル君がいるから私は大丈夫だから安らかに眠ってね」
「……」
ミソラの言葉にスバルは感動と同時に重積を感じた。
(ボクはミソラちゃんを守りきれるだろうか?)
少なくとも金田は本気でミソラを潰しに今後、アイドルプロデュースをするだろう。
金田のビジョンにミソラの存在は間違いなく邪魔なはずだからだ。
敵は百戦錬磨のアイドルマネージャー。
こっちは神をも倒したヒーローだがプロデュースは素人。
勝てる要素が低い気がし、心の中ですらミソラを守るというのに戸惑いを感じた。
「スバルちゃん」
「え……?」
社長に肩を持たれた。
「安心なさい。アナタも含めて私が守るから。アナタもミソラちゃんも……ウチの事務所、皆を」
「……」
社長の意志の強い瞳を見て、スバルも覚悟を決めた顔で響家の墓を見た。
(ボクは絶対にミソラちゃんを守る。地球の危機からも……もちろん、アイドルとしても!)
手に力を込めるとスバルは何度も何度も響家の墓に誓いを立てた。
(絶対にミソラちゃんを守る)
スバルの意思を感じ取ったのか、ミソラも閉じていた目をそっと開けた。
「じゃあ、帰ろうか?」
ゆっくり立ちあがるミソラにスバルも水の入ったバケツとお酌を持ち上げた。
『ミソラをお願いしますね……』
「……?」
背中を向けた瞬間、聞こえた女性の声にスバルはキョトンとした。
「ミソラちゃんのお母さん?」
「どうしたの、スバル君?」
「いや、なんでもない……」
まさかと苦笑した。
「ほら、ボサボサしてるとお昼ご飯、抜きにしちゃうよ!」
すでに自分の半歩も先を進むミソラにスバルは慌てて手を上げた。
「今行くよ!」
社長が声を上げた。
「今日は私が奮発して讃岐うどんを食べさせてあげるわ! もう、コシが違うんだから!」
「それは楽しみです!」
響家の墓に向き直った。
「また、来年も来ます……再来年も再々来年もずっと……ずっと来ます」
ミソラと一緒にと心の中で補足し、スバルは歩き出した。
どこか優しい視線を背中に感じながら。