「乾杯!」
「かんぱぁい♪」
ジュースの入ったグラスをカキンッとぶつけるとスバルとミソラはグビグビとジュースを飲んだ。
「ぷはぁ♪」
ミソラは高級感あるテーブルに両肘をつき手の甲に顎を置いて笑った。
「まさか、スバル君がイヴの日にこんなホテルのレストランを予約してたなんて知らなかったよ♪」
窓から映る雪景色を見てミソラはスバルの顔を見た。
スバルも窓の外から見える雪景色を見て照れ笑いした。
「まぁ……社長の力も借りてホテルの予約したけど……味が分からない」
ホテルのレストランで出された高級料理を食べ、スバルは苦い顔をした。
ミソラもクスクスと笑った。
「やっぱり、私たちみたいな庶民にはちょっと敷居が高いのかもね?」
「でも、ダンダンと味が分かってきた気がする」
「普通にコンビニ弁当のほうがおいしく感じるかもね」
「ミソラちゃん、意地悪言わないでよぉ……」
キャッキャッ笑うミソラにスバルは頭が痛くなった。
「……」
ぶるっと背筋を震わせ、スバルは席から立ち上がった。
「どうかした?」
ジュースを飲みながらミソラはいきなり立ち上がったスバルを見た。
スバルは恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「ちょ、ちょっと、用を足してくるよ……」
「も、もう、スバル君ったら……」
顔を赤くし、ミソラは呆れた。
スバルもどうしようもない顔で頭の後ろを掻いた。
「緊張しちゃって……」
席から離れるスバルを見送り、ミソラはボーイに新しいジュースのお代わりを頼んだ。
「サービスで音楽のリクエストなどどうですか?」
「じゃあ、シューティングスターって奏でられる?」
「もちろん♪」
格好良くウィンクするボーイにミソラは笑顔を浮かべた。
「じゃあ、それでおねが」
バキンッ!
「……?」
弾け飛んだ自分のコップを見て、ミソラは目をパチパチならした。
「こ、これって……?」
「お客様、私の後ろに……」
ボーイがミソラを匿うように前に立つとレストランの入り口から顔をマスクで隠した数人の女性がマシンガンを構え客たちを睨んだ。
「聞けぇ! 我らは武装改革組織「ヴァルキリー」だ! 今からお前たちには我々組織の人質となってもらう!」
「……」
ボーイの陰に隠れながらミソラはトイレに行っているスバルを心配した。
(不用意に戻ってこないでよ……スバル君)
同じ頃、トイレに籠っていたスバルはハンターVGの緊急メールを見ていた。
「まさか、人が個室を使ってる間に……」
テロ騒ぎに巻き込まれたとスバルは苦い顔をした。
「ボクって、もしかしてトラブルに巻き込まれやすい体質なのかな?」
ハンターVGを見て、難しい顔をした。
「ウォーロック達を家に留守番させたのは失敗だったかも……」
二人っきりでデートしたく、無理やり家に押し込めた二人を思い出し、舌打ちした。
「さて……どうしたものか?」
個室の扉をゆっくり開け、外を見るとスバルはホッとした。
「どうやら男子トイレの中には見張りはいないらしい……」
だが、トイレの扉から人の気配を感じ、呼吸を押えた。
(……さて、どうやって活路を見出すかな?)
ポケットからバトルカードを取り出した。
「……」
スバルの背中がゾクゾクと気持ちのいい痺れを感じた。
間違いなく久々の危険な緊張感に心が躍っていた。
「誰もいないトイレを見張るなんてリーダーも私をなんだと思って……」
トイレの前で構えていた女性テロリストはつまらなさそうにあくびをかみ殺し辺りを伺った。
「にしても、前の事件でパクられた仲間の釈放にかっこつけてこのホテルの運営資金を盗むなんてリーダーもセコイねぇ♪」
当分、遊ぶ金に苦労しないなとニヤける女性テロリストにトイレの扉がコトンッと鳴った。
「誰かいるのか?」
厳つい声で扉を向いた。
「聞こえないのか!?」
扉を蹴り壊すと女性テロリストの視界が光に包まれた。
あたりに爆炎が巻き起こり、女性テロリストは炎に包まれながら倒れた。
「バトルカード、アトミックマイン!」
一命をとりとめ倒れている女性テロリストをほっといて、スバルは駆け出した。
すぐにミソラのいるレストラン前までやってくるとスバルはハンターVGでミソラにメールを送った。
『ミソラちゃん、無事?』
『スバル君、無事だったんだね!』
『可能ならレストランの中の様子を撮影できない?』
『なにする気なの?』
『修羅場の数が違うことを教えてあげるよ』
スバルのハンターVGに添付ファイル付きのメールが送られてきた。
『無茶だけはしないでな』
メールの添付ファイルを開き、スバルは目を細めた。
「人数は少ないな……」
リーダーと思える女性の顔を見て、スバルは顔認証を発動させた。
「あった! どうやら去年、カルト集団を装って銀行強盗した女性テロリスト達みたいだな」
のちの調査で彼女たちに思想はなく強盗も遊ぶ金欲しさの犯行だとわかり、世間を呆れさせたことを思い出した。
「懲りずにまだ暴れてるようだな……」
ハンターVGを構え、バトルカードを取り出した。
「大変だ!」
大声を上げ、バトルカードを掲げた。
「時限爆弾が扉の前に設置されたぞ!」
「なに!?」
レストランの中にいた女性テロリストの数人が血相を変えて、飛び出してきた。
「こ、これはカウントボム!?」
自分たちの目の前に設置されたバトルカードを見て、女性テロリスト達は一瞬、動きを止めた。
「マシーンフレイム!」
「ヒィッ……!?」
女性テロリスト達に凄まじい爆炎が襲い掛かった。
「なにが起きた!?」
拠点で待機していたリーダーの女性が扉へ向かおうとすると煙の中から数個のミサイルが飛び出した。
「こ、これは!?」
「バトルカード、レーダーミサイル!」
「う、うわぁッ……!?」
拠点にいた残っていたテロリスト達に無数のミサイルが飛びかかりレストラン全土を吹き飛ばした。
「あぁ……」
白目を剥いて倒れるテロリスト達をかき分けるように爆風の中、一人の少年が現れた。
「意外とうまくいくものだなぁ……」
半壊したレストランの中に入るとスバルはビックリした。
「え……あ?」
抱き付いてくるミソラにスバルは真っ赤になった。
ミソラは目を真っ赤にして怒鳴った。
「もう、無茶して! 心配したんだよ!」
「ご、ごめん……」
泣き出すミソラの背中をさすりながらスバルは満更でない顔をした。
だが……
「こ、このガキ……殺す!」
辛うじて意識を保っていたリーダーの女性が懐から拳銃を取り出した。
「バトルカード、プラズマガン!」
「ギャァァァァアァァァァァア!?」
振り向きもせず、電撃銃を撃つスバルにリーダー女性はこと切れたように倒れた。
「あく……ま……」
ピクピクと痙攣する女性リーダーにミソラは真っ青になった。
「大丈夫、生きてるよ。バトルカードに殺傷能力はないからね」
「ス、スバル君……」
たまに見せるスバルの容赦なさにミソラも真っ青になった。
事件が解決し、二人は気分を変えるように繁華街を手を繋ぎながら歩いていた。
「酷いクリスマスになったけどやっぱり、イヴの夜は綺麗だね」
「そうだね……」
ギュッと手を強く握り、スバルはボソリと呟いた。
「ケガがなくってよかったよ……」
「スバル君……」
ミソラも顔を赤くし、スバルの頬を包むように手を添えた。
「助けてくれたお礼とサンタさんからのプレゼント……♪」
イヴの中、人が見てるのも構わずミソラはスバルの唇にキスをした。
聖夜の無茶苦茶な夜を払しょくするようにスバルも気持ちのいいキスをした。