流星のメモリアル   作:スーサン

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新年の大逆転

「新年あけましておめでとうございます!」

「おめでとうございます!」

 お互い三つ折りでお辞儀しあうとミソラとスバルはフフッと笑った。

「今年もよろしくね、ミソラちゃん」

「こっちこそ♪」

 ニッコリ笑うミソラにスバルも嬉しそうに笑い、懐からお年玉袋を取り出した。

「はい、ミソラちゃん、お年玉!」

「わぁ、いいの?」

 お年玉袋を受け取り、ミソラは目を輝かせた。

「今はボクも稼ぎがあるからね……これくらいさせてよ」

「えへへ、じゃあ遠慮なく♪」

 お年玉袋の中を見てミソラの目がさらに輝いた。

(想像より多い♪ スバル君、見栄張っちゃって♪)

 クスクス笑うとミソラは座っていた床から立ち上がった。

「ねぇ、このお金でどこか遊びに行こうよ! お年玉のお金はパァッと使わなきゃ♪」

「といっても元旦はどこも締まってるから行く場所がないよ?」

「……」

 苦い顔をするミソラにスバルはポンッと手を打った。

「そういえば、今流行りの人生ゲームが売ってるんだって!」

「人生ゲーム?」

「うん、DL購入できるらしいからハンターVGを使ってやってみよう!」

「まぁ、いいけど……」

 予定が狂い仏頂面するミソラにスバルはハンターVGを弄りだした。

「お、評価が高いな♪ よし、購入!」

 ポチッとタップするとピロンッと音が鳴った。

「もうDL終了だ。すごいスピードだ」

「じゃあ、始めよう!」

「これ、夫婦からスタートできるみたい」

「じゃあ、それで行こう、スバル君!」

「う、うん……」

 顔を赤くし、スバルとミソラはゲームを始めた。

 

『やってらないわ! あんな女のどこがいいの!?』

『君みたいにヒステリーと違って穏やかで優しいからだ! 君が一度でもボクのためになにかしてくれたことがあったかい?』

『なんですって!?』

 

「……」

「……」

 モニターに映る昼ドラも真っ青なゲームの展開に二人は言葉を失った。

「り、離婚調停が始まってる……」

 ようやく口を開いたスバルにミソラもうなづいた。

「人生ゲームってこんな殺伐としたものだっけ? もっと、和気あいあいと……」

 

『この裏切り者!』

『ギャァァァァァァァァ!?』

 

 モニターの中のミソラのアバターがスバルのアバターを刺殺した。

「……」

「……」

 二人はさらに言葉を失った。

 

『ふふっ……計画通り♪』

 スバルのアバターを殺したミソラのアバターの元に浮気相手の女が現れ、銃口を向けた。

『さよなら……ミソラさん』

『ひぃ……!?』

 頭を吹き飛ばされたミソラのアバターを見て二人は倒れた。

「なんなんだ、このゲームは!?」

「酷すぎるよ! こんな人生ゲームあり!?」

≪スバル、ちょっといいか?≫

「なに、ロック?」

 肩をチョンチョン叩かれ、振り返った。

≪レビュー見てみろ≫

「うん、どれどれ?」

 ウォーロックが出したネットレビューを見てスバルは思わず突っ込んだ。

「鬱ゲーかよ!」

「鬱ゲー……なにそれ?」

「簡単に言うと人の気持ちを落とすゲーム……意外と人気あるんだよ、こういの……」

「新年にやるものじゃないじゃん!」

「ごめん……」

 もっと評価の内容見てから買うべきだったとスバルは反省した。

 

 

 気を取り直し、二人はテレビを見ていた。

「面白いのやってないね?」

 テレビのチャンネルを変えながらミソラはつまらなさそうにあくびをかみ殺した。

 スバルもハンターVGを弄りながらあくびをかみ殺した。

「正月番組ってやることないものばっかりだもんね」

「お、ミスコンの話が出てる」

『金田プロデューサーのやり方は少し姑息すぎませんか? ミスコンといいながらほとんどが自分のプロデュースしてる女の子たちばかりじゃないですか?』

『ですが票は入ってる! 要は結果が良ければ後はどうでもよくないですか?』

『過程をないがしろにすれば本質を悪くします!』

 テレビを切った。

「金田さん、嫌われてるね?」

「そりゃあ、儲け至上主義なやり方すれば誰だって反感は買う」

 それにとスバルは思った。

(黒い金の噂も流れてるし、そこらへん調べてみるか)

 などと考えているとミソラが肩をチョンチョン叩いた。

「うん?」

「今、空いてるカラオケ店を見つけたんだ! 一緒に行こう!」

 ハンターVGの検索で見つけたカラオケ店を見せて、ミソラはえへへと笑った。

 スバルも立ち上がった。

「じゃあ、さっそく……」

 ハンターVGの電話機能が鳴った。

「あ、電話だ」

 ハンターVGの着信ポップアップを押した。

「はい、星河ですけど」

 ハンターVGを耳につけ、スバルの目が吊り上がった。

「え、いきなりですか? 連絡が遅れた? わ、わかりました……」

 電話を切るとスバルはため息を吐いた。

「ミソラちゃん、仕事が入ったよ!」

「え、なに?」

「ミスコンの結果を今日大々的に発表するみたい」

「え、いきなり!?」

「ボク達に連絡が遅れたみたい……だいたい予想はつくけど」

 金田の嫌がらせだと二人はガックリした。

「結果は?」

「さぁ……当日発表みたいだし、とにかく行こう!」

「うん!」

 コートを着て、二人は家を出ていった。

 

 

 会場につくとすでに金田がプロデュースする女の子達が何人も控室で待機していた。

 性格は最悪だが手腕はバッチリの金田が選んだ女の子たちだ。

 全員、ミソラに負けず劣らずの美少女にしてプロとしてのオーラも放っていた。

「……」

 ミソラを見た。

「どうかした?」

 ニヘラと笑うミソラにスバルはミソラは例外はあると苦笑した。

「なんか、バカにされた気持ち……」

 頬を膨らませるミソラにスバルはとにかく落ち着こうと開いてる席に座った。

 全員、ワイワイしているが無駄話はなかった。

 無理はない。

 今日はミスコンの結果発表日。

 ここで一位を取れば人気アイドルの仲間入りだって夢じゃない。

 裏を返せばここで酷い人気を取ればアイドルとしての限界を教えられるかもしれない。

 金田のプロデュースする企画はそれだけの価値がある。

 それはミソラもスバルも知っていた。

「……」

 ミソラも全員が感じている期待と不安を肌に感じたのか自然とスバルの手を握っていた。

「……ミソラちゃん」

 ミソラの頭を撫でた。

「大丈夫……ミソラちゃんが負けることはないよ」

「う、うん……」

 自然と笑顔の消えるミソラにスバルも心臓が動悸した。

(なんか、嫌な予感を感じるな……)

 控室の扉が開いた。

「結果発表の時間です! 呼ばれたアイドルの方は会場に出てください!」

 控室のテレビが映り、今日のミスコンの放送が流れた。

『まず、十位から……』

 司会者のよく通る声がテレビに流れ、スバルとミソラはゴクリと喉を鳴らした。

『……』

 十位から二位までのアイドルがいっぺんに紹介され、ミソラのスバルの手を握る力に強さが増した。

 まだミソラの名前は出てない。

 これはミソラが一位の可能性もあれば逆に十位以下の可能性もある。

 最高に心臓に悪い状況にミソラは呼吸するのも苦しそうに息を吐いた。

「ミソラちゃん……落ち着いて」

 スバルもミソラの背中を摩り、彼女を落ち着けた。

(震えてる……)

 普段のんきなミソラも今回の件はいろいろと考えることがあるのだろう。

 とにかく今はミソラの一位を信じるしかない。

 スバルはそう思い、緊張するミソラを落ち着けるように背中を摩った。

『では一位の発表前に十位から下のアイドルのランキングを紹介します!』

 お約束の引きで十位から三十位までのアイドル達が紹介された。

 そして二人は信じられないものを見た。

『……?』

 視界の男も信じられない顔をしていたが慌ててマイクに口を持って行った。

『さ、最下位……響ミソラ……』

 ミソラとスバルだけじゃない。

 会場にいたランキングアイドル達も信じられない顔をしていた。

 ミソラの人気は老若男女認める実力があった。

 それが最下位……

 スバルは信じられず、会場の審査員を見た。

(金田……)

 ニヤリと笑う金田を認め、スバルはハメられたと苦虫をかみ砕いた顔をした。

『ひ、響ミソラさん、会場へ……』

 ミソラもショックを受けながらもスバルの手を離し、会場へと一人向かった。

「……」

 どんな手を使ったかわからないが自分たちは負けた。

 金田の手段に真正面から挑み返り討ちにあった。

 それが真実であり、変えようのない現実であった。

 ミソラが会場に現れるまでは……

「え……?」

 一瞬で湧きあがった歓声にスバルはテレビを見た。

『ミソラちゃん! 順位なんか気にするな! 俺は君を投票したぞ!』

『俺もだ! ミソラちゃん以外ありえない!』

『おい、今回の投票、金田ってプロデューサーが手綱を引いてったって噂だぜ!』

『金田って、ミソラちゃんを一時引退に追い込んだあのごうつくプロデューサーか?』

『って、ことはミソラちゃん、ハメられたってことか?』

『金田、ちゃんと返事をしろ!』

 お祭りムードから一変していきなり険悪ムードになった会場にスバルは一種の光明を見つけた。

「ミソラちゃん、聞こえる!?」

 ハンターVGでミソラに連絡をよこした。

 すぐにミソラも出た。

『スバル君、困ったよ! 会場が今にも暴動を起こしそうで……金田さんもいつの間にか逃げて』

「ミソラちゃん……プロならこの場を鎮静するのが君の仕事だ。やり方はわかるね?」

『大丈夫かな?』

「自分を慕うファンを信じるんだ!」

『わかった!』

 ハンターVGを切るとテレビのミソラは背中に背負ったギターを構えた。

『ウェーブロード~~♪』

 会場が一瞬、静まり返った。

『広い世界~~♪』

 会場が一瞬、静寂に包まれた。

 ミソラはギターを弾きながら近くにいるアイドル達にウィンクし、会場を見た。

 会場が沸き起こり、それに呼応するように違うアイドル達もミソラの歌を歌い始めた。

 会場全てのアイドルがミソラの歌を歌い、合唱ライブが出来上がるとミスコンは元の色を失うほど盛り上がり、活気を見せた。

『ありがとう! みんなぁぁっ♪』

「……」

 テレビを観ていたスバルは一瞬、見えた。

 会場にいる全ての女の子がミソラとは違う道でトップアイドルとなり芸能界を引っ張る姿を……

 もし神様がいるとしたらもしかしたら神様はこの奇跡の舞台を自分に見せるため金田を利用したのじゃないかと……

 今はスバルもミソラ達が作り上げた合唱ライブに心を躍らせリズムを刻み踊るだけだった。

 

 

「かんぱ~~い!」

 ミスコンが終わるとそこは華やかな宴会ムードが広がっていた。

 金田を抜かした全ての関係者がまるでチームで優勝したような和気あいあいとした雰囲気を作り楽しい時間を作っていた。

「スバル君、アクシデントはあったけど、楽しかったね!」

「そうだね! それにこんなに友達も増えたし!」

 ミスコンが始まるまでどこかぎこちなさを残していたアイドル達が今はむしろ、昔からの友達のように仲良く宴会を楽しんでいた。

「ミソラちゃん!」

 一人の女の子が馴れ馴れしくミソラに話しかけてきた。

「今回の主役として一発、歌ってよ!」

「あ、う、うん、いいよ!」

 スバルとミソラは酔っ払いかよと呆れながらギターを構えた。

「じゃあ、みんな! 一曲歌います!」

「待ってましたぁぁぁ!」

 ミソラが歌い始め宴会はさらにヒートアップした。

「今年もよろしくね、みんなぁぁぁぁぁぁぁ♪」

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