流星のメモリアル   作:スーサン

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ひな祭りの裏で起きた陰謀

『みんな、ありがとぉおぉおおぉっ♪』

 喝采響くライブ会場でミソラは健康的な汗を振り払いながら満面の笑みを浮かべた。

『今日は私のひな祭りライブに参加してくれてありがとう! 今日は女の子のみんなのために歌いまぁぁぁす!』

『キャァァァァァァァァァ♪』

 可愛らしい喝采が湧き、ミソラは紅潮した顔で元気良く叫んだ。

『それじゃあ、次は私の持ち歌、ハートウェーブを聴いてください!』

 また喝采が湧き、ミソラは調子を良くしたように手に持ったギターを弾き出した。

『飛び交うシグナル♪』

 新しく歌い出すミソラの姿を舞台裏で眺めていたスバルはふぅと吐息を漏らした。

「なんとか成功かな?」

 ステージで歌っているミソラと目線が合った。

「……♪」

 可愛くウィンクされ、スバルは真っ赤になった。

「……」

《可愛いな、スバル♪》

 顔を赤くするスバルを茶化すウォーロックにスバルは怖い顔をした。

《ハハハ♪》

 ハンターVGに戻るウォーロックを見て、両腕を組んだ。

「でも、女の子限定ライブがここまで成功するとは……」

 今日は三月三日ひな祭り。

 女の子の日ということでスバルとミソラは女の子限定のライブを開いた。

 最初は盛り上がるかどうか不安だったライブだがミソラの人気は老若男女問わず高く女の子限定のライブも想像以上に盛り上がりを見せた。

「みっそらちゃぁぁぁぁぁぁぁん♪」

 大声を上げミソラを応援する女の子の声援にスバルは改めてミソラの人気を知り、どこか誇らしくなった。

(彼女がボクの恋人……なんだかテレるなぁ)

 ふふっと微笑みスバルはミソラの歌が無事終わるよう気を張りながらライブを見つめ続けた。

 

 

 ライブが終わるとミソラは充足した顔でスバルが用意したスポーツ飲料を飲んでいた。

「ぷはぁ……美味しい♪」

 汗を吹き飛ばすように顔を振るミソラにスバルもタオルを用意し笑った。

「お疲れ様、ミソラちゃん」

「ねぇねぇ、今日の私、とっても輝いてたでしょう!」

「うん、今日は特に輝いてたよ!」

「とっても可愛かったよね!」

「うん、とっても可愛かったよ!」

「私は今日、サイコーだったよね!」

「もうサイコー!」

 えへへと二人は笑いあった。

「えへへ……女の子のファンがあんなにいたなんて知らなかったから嬉しいんだ♪」

 ふんっと鼻息を荒くした。

「私、もっともっと頑張るからスバル君もプロデュース協力してよね!」

「任せて!」

 コツンッと拳同士をぶつけた。

「じゃあ、レゾンでも組もう」

「そうだね……!」

 ハンターVGを取り出そうとする二人に楽屋の外から怒鳴り声が聞こえた。

「こら、入るな!」

「うん?」

 楽屋の外から聞こえる警備員の怒鳴り声にスバルとミソラは振り返った。

「ミソラちゃん!」

 バタンッと楽屋のドアが開くと不健康に太った脂ぎった男がミソラに飛びかかってきた。

「サインくれぇぇぇぇ!」

「ヒッ……」

 真っ青になるミソラにスバルは慣れた感じでポケットからバトルカードを取り出した。

「バトルカード《バリア》!」

「ぶべぇ!?」

 ミソラとスバルの周辺に張られたバリアに男は吹き飛ばされた。

「いてて……」

 バリアの衝撃に身体をさすると男は涙目でスバルを見た。

「お前誰だよ!? ボクのミソラちゃんに馴れ馴れしく近づくな!」

「ムッ……」

 イラッとするスバルに警備員が倒れている男を取り押さえた。

「捕まえたぞ! 不法侵入に障害未遂でしっかり絞られてもらうぞ!」

「な、なんだよ、俺がなにしたっていうんだよ!? 離せよ、ミソラちゃん、ミソラちゃん!」

 遂に泣き出す男にミソラはスバルの肩をチョンチョンと叩いた。

「バリア、解いて……」

「……?」

 バリアを解くとミソラは優しい顔で男に近づいた。

「今日だけだよ♪」

 男の腕の袖を引っ張るとミソラは慣れた手つきで男の袖に自分のサインを書いた。

「次回からルールを守ってね?」

 可愛くウィンクするミソラに男は呆気にとられた顔をした。

「ミ、ミソラちゃん……」

 ようやく理解された子供のように目を潤ます男に警備員たちが無理やり男を立たせた。

「さぁ、来い! どうやって楽屋に入ったかしっかり絞ってやる」

「はい……ごめんなさい」

「……?」

 急に大人しくなった男に警備員とスバルは意外そうな顔をした。

「今度はちゃんとしたお客さんでライブに来てね?」

「う、うん……」

 ミソラの顔を一瞥し、男は嬉しそうな悲しそうな顔をして警備員たちに連れて行かれた。

「ミソラちゃん、なんで?」

 思わず問い詰めようとするスバルにミソラは黙らすようにチョンッと人差指を彼の唇の上に乗せた。

「だって、あの人だって私のファンでしょう? 私、どんな人でもファンは大事にしたいんだ!」

 ニッコリ笑うミソラにスバルは苦い顔をして頭の後ろを掻いた。

「ミソラちゃんには敵わないよ」

「それはお互い様♪」

 ニッコリ笑うミソラの顔はスバルの目から見て、なんの悔いもないくらい可愛く輝いていた。

 

 

 マイホームに帰るとスバルのハンターVGに電話がかかってきた。

「あれ、社長からだ……」

 電話機能をオンにすると社長のマジメな声が聞こえてきた。

『今日、マナー違反のファンが楽屋に入ってきたでしょう?』

「は、はい……」

 報告したとはいえ、電話をかけられるほどの事件かと疑問に思い、スバルは意外そうな顔をした。

 社長は慎重に言葉を紡ぐように口を開いた。

『どうやら楽屋に入るパスを発行したの金田みたいだ』

「金田が!?」

『定期的に使われる会場だから暗証キーを誤魔化しても不思議はないな。スバル君、あの男、本気でミソラの邪魔をする気みたいだ、気をつけろ!』

「は、はい……」

 緊張の走るスバルに社長は突然、明るい顔をした。

『それとファンの男だけどミソラのおかげで相当反省してるみたいで今後もファンでいていいかと聞かれて、オーケーを出しておいたわよ。ミソラもプロとしてちゃんとしてるみたいだしスバルちゃん、しっかりサポートしてあげて!』

「は、はい!」

 電話が切れ、ミソラの顔が横に映った。

「誰から電話?」

「あ、ああ……」

 慌てて離れ、スバルは言葉を選んだ。

「しゃ、社長がライブ大成功おめでとうって」

「そっか……」

 一瞬、言葉を探し、ミソラはテレたように赤くなった。

「えへへ……♪」

 嬉しそうに微笑むミソラにスバルも心の中でこの笑顔を守らないといけないと誓った。

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