「さて……」
スタジオにつくとスバルは肩に背負ったショルダーバッグを下ろした。
「今日は人気番組「トークトークトーク」のゲストだよ!」
「任せてよ、スバル君!」
ぽよんっと大きく育った胸を拳で叩くとミソラはえへへと笑った。
「今日のためにスバル君といっぱいトークの練習したもんね!」
「トークの練習ね?」
ただイチャイチャしてただけだった気もするけど気にしないことにした。
「今日の私はヤル気マックスだよ!」
「たまにあるんだよね、妙にヤル気が出るときって……」
「興が覚めること言わないでよ……」
「うん……?」
ポケットに仕舞ってあったハンターVGが鳴り出した。
「誰からだろう?」
ポケットからハンターVGを取り出した。
「はい、スバルです」
『あ、スバルか、ちょっといっか?』
モニターに映し出された人物を見てスバルは小首を傾げた。
「シドウさん、どうしたんですか?」
『実はWAXAに大量の電波ウィルスが送られるサイバーテロにあってな。オレだけじゃ対処しきれない。手伝ってくれ!』
「え、で、でも……」
ミソラの顔を見た。
「大丈夫だよ!」
ミソラはまた笑顔を浮かべた。
「トーク番組は慣れてるから一人でも十分だよ!」
またぽよんっと胸を拳で叩き、ミソラは自信満々の顔をした。
「私だってスバルくんに頼ってばっかじゃないよ!」
「……」
少し考え、スバルも頷いた。
「なにかトラブルが起きたら呼んでね? 文字通り飛んで戻ってくるから!」
「うん! 大丈夫だから早く行っておいでよ!」
背中を押し、ミソラは可愛い笑顔を浮かべた。
「じゃあ、言ってくる!」
スバルの身体が光とともに消えた。
「……」
一人になるとミソラはため息を吐いた。
「ヒーローも大変だね?」
《性分ね?》
ハンターVGのハープも同意し、ミソラはうんっと伸びをした。
「さて、打ち合わせまで時間があるし少しジュースでも買って……」
スタジオ内の電気がブゥンと消えた。
「え、これって?」
《どうやら停電みたいね……危ないからジッとしてましょう》
「そうだね……」
打ち合わせまで時間もかなりあるし、ミソラもノンビリ構えながらスタジオの廊下に設置してあったイスに座った。
「にしてもなんで停電なんて起こったんだろう?」
《確かに予備電源も入ってないみたいだしね……》
「大変だ! スタジオ内の電源が全て起動しない! このままじゃ撮影に入れないぞ!」
「え……?」
廊下の隅から聞こえるスタッフの声にミソラは耳を澄ませた。
「なぜか電源を起動しようとすると電源が勝手に落ちるんです。もしかしたらウィルスが混じったのかも」
「おい、こんな突然にどうするんだ。誰かウィルスバスティング出来る奴はいないのか!?」
「みんな復旧の方に手を回してそれどころじゃ……」
「このままじゃ番組が一回潰れるぅ!」
本当に困った叫びをあげるスタッフ達にミソラはハンターVGのハープの顔を見た。
「ここは私達がなんとかするよ!」
《いいの? スバル君を呼び戻さなくって?》
「言ってすぐだよ! それに……」
ムフフと笑った。
「一人でこの事件を解決してスバル君に褒めてもらうんだ♪」
《動悸が不純ね……》
「いいから行くよ! 電波変換! 響ミソラ、オン・エア!」
ウェーブロードに立つとハープ・ノートは呆気にとられた。
「うわぁ、スタッフさん達、混乱してるよ?」
《そりゃ、復旧不能の停電じゃ誰だって焦るわよ》
「これをなんとかすれば私達、ヒーローだね!」
《ヒロインだけどね……》
勇み足でウェーブロードを走り、ハープ・ノートは電源を制御するサーバーコンピューターの前に立った。
「さて……確かにロックされてるね?」
サイバーイン出来ない状態にされた制御コンピューターにハープ・ノートはギターを構えた。
《ちょ、ミソラ、なにする気!?》
「ショック・ノート!」
《ちょっ……》
セキュリティが破壊され、通れるようになった制御コンピューターにハープは呆れた。
「後で怒られても知~~らない……」
「じゃあ、行くよ!」
制御コンピューターに飛び込み、ハープ・ノートはビックリした。
「なに、このメットリオの山!?」
《うん……この子たち?》
《WAXA! WAXA!》
ハープ・ノートはスバルとシドウの会話を思い出した。
「コイツら、WAXAのサイバーテロの迷子だ!」
《来る途中で幾つかこっちに落ちたのね……で、やることがなくここで悪さしてったてわけか》
呆れ返るハープにハープ・ノートも苦笑した。
「この数、大変だけど、やるしかないか?」
ギターを構え、弦を弾いた。
「マシンガンストリーム!」
「あ……復旧した」
電気が回復し、明るくなるとスタッフ達もようやく落ち着いたのか安心した顔をした。
「って、そんなことしてる場合じゃない! 早く打ち合わせを始めないと!」
「そ、そうだ!」
「ま、まって……」
「うん?」
ボロボロの状態で自分たちの元へと歩いてくるミソラの姿を認め、スタッフ達は不思議そうに首を傾げた。
「どうしたの、その格好? 転んだの?」
「ひ、ひーろーのまねはやめときます……」
口から黒い煙を吹き出し放心するミソラを見て、スタッフの二人は手を肩の上まで上げ、不思議そうな顔をした。
「へぇ~~……そんなことがあったのか?」
夕食のシチューをミソラのテーブルの前に置くとスバルは着ていたエプロンを脱いだ。
「でも、さすがミソラちゃんだね! こっちだって大量のウィルスで手こずったのに一人で片付けるなんて」
「おかげでスバル君の苦労がわかったよ……」
「アハハ♪ 今度からウィルスバスティングはミソラちゃんに任せようかな♪」
「絶対イヤ!」
涙目で全面抵抗するミソラにスバルは呆気にとられコクリと頷いてしまった。