「料理番組のオファー?」
社長に呼び出されスバルとミソラは渡された企画書に目を通した。
社長はごきげんな顔で腰をくねくね動かし微笑んだ。
「そうなのぉ♪」
腰をくねくね動かす気持ちの悪い動きもこの男がするとなぜか愛嬌に見えて許せてしまう。
人徳って、スゴイ。
「ミソラの趣味は料理でしょう?」
ミソラはドキッとした。
「そのことを先方に話したらぜひゲスト出演して欲しいって頼まれたの♪」
自分のことのように得意になる社長にミソラは慌てて手を上げた。
「あ、で、でも、社長……」
反論しようとするミソラにスバルの言葉が飛んだ。
「いいじゃないですか!」
ミソラの肩を掴み、グッと親指を立てた。
「ミソラちゃんの料理は美味しいんだから、きっと番組は大成功だよ!」
悪意の全くないスバルの笑顔に社長も調子を良くし親指を立てた。
「期待してるわ、ミソラ!」
「ガンバ、ミソラちゃん!」
「……」
番組の成功を信じて疑わない味音痴の彼氏とプロフィールだけ知っている社長の押しにミソラは断る手段を失った。
そして時は流れ、ここはとある鉄鋼町のとある白飯屋という弁当屋のとある厨房……
「へぇ~~……それで俺のところに来たんだ?」
スバルとは正反対の元気が取り柄そうな少年にミソラは意気消沈と頷いた。
「う、うん……」
ミソラは手を合わせた。
「レッカさんの弁当男子の力を見込んで私に料理を教えて!」
「いいぜ!」
気持ちのいいくらい時間差のない快諾にミソラは救いの神よと嬉しくなった。
「じゃあ、俺んちの名物、爆盛り弁当の作り方を教えてやるよ!」
「お、お願いします!」
家から持ってきたエプロンを羽織り、ミソラはふんっと鼻息を荒くした。
「……」
「……」
レッカがミソラの作ったお弁当を食べると難しい顔をした。
「基本は出来てるんだけどなにかパンチが足りない」
「パンチ……」
レッカの作った爆盛り弁当を食べた。
(う、うまい……)
想像を絶する量とそれに見合ったパンチの聞いた味……
弁当男子の底力を知った気がしミソラは女として敗北感を覚えた。
「ま、負けるもんですか!」
「お、ヤル気あるな!」
レッカも拳を握りしめた。
「なら俺も覚悟を持ってお前を鍛えてやるぜ!」
「お願いします!」
ペコリと頭を下げるミソラにレッカも手に持った包丁を構え笑った。
「料理は笑顔だぜ!」
「はい!」
そして、テレビの収録日がやってきた。
現場は軽い混乱に見舞われていた。
「スバルちゃん、ミソラちゃん、まだ?」
ADの慌てた声にスバルもハンターVGを片手に電話した。
「いえ、こっちも連絡が……」
「このままだと番組が潰れちゃうよ!」
今にも泣き出しそうな顔をするADにスバルも慌てて頭を下げた。
「か、必ず来るので!」
「このままだと時間が一枠空いてしまうぅ!」
本気で泣き出すADに撮影現場の扉がバタンッと開いた。
「お、お待たせしました!」
「ッ!?」
ADの顔が怖いくらい歪んだ。
「ミソラちゃん、いくら売れっ子だからってちこくは……」
「お弁当持ってきました!」
ドンッと一人の少女が持ってきたとは思えない大量の弁当に現場の人間全員が目をパチパチさせた。
「弁当って……そんなもの」
ミソラに手渡された弁当箱を見てADは慌ててカメラマンに叫んだ。
「すぐにミソラちゃんが持ってきた弁当を映して! 後、試食する審査員も早く!」
ADの怒鳴り声にまた慌ただしくなる現場にスバルは呆れた顔でミソラが用意した弁当を見た。
「遅れてると思ったらお弁当を作ってきたのね?」
「これもいいかなと思って」
ハートのマークの真ん中に「ミソラ」と書かれたエンブレムの描かれた弁当箱を見てスバルはため息を吐いた。
「連絡くらい頂戴よ」
「ごめん、電池切れちゃって」
バツが悪そうに手を合わせるミソラにスバルはため息を吐いた。
「遅れたぶん、視聴率を取ってきてね」
「任せて♪」
ぷるんっと大きな胸を叩き、ミソラは駆け出した。
「はぁ……」
今回の騒動、スバルは間違いなく始末書を書かないといけないなと頭が痛くなった。
撮影が終わり家に帰るとスバルはミソラの作った弁当を食べ、笑顔を浮かべていた。
「おいしいね、このお弁当!」
「そりゃあ、L、多めだからね!」
「L……?」
「L・O・V・E……ラブ♪」
「……」
顔を真っ赤にするスバルにミソラはいたずらっ子のように笑った。
「スバル君、可愛い♪」
「あのねぇ……」
デッカすぎるエビフライを持ち上げ、スバルは腹を抱えた。
「でも、量が多すぎるよ」
「仕方ないよ。修行にいったお弁当屋の基本がこれくらいの量だもん」
「どんだけ、スゴイ弁当屋だよ……」
「スバル君は小食だね♪」
「普通こんなに食えないよ……」
二キロ以上はありそうな巨大なオカズにスバルはケプとゲップを吐いた。