「うぅ……はぁ……」
唇から糸を引き、荒い息を吐くと女性は色っぽく紅潮した顔を綻ばせた。
「もう……あなたって、本当、自分の唾液を私に飲ませるのが好きよね」
プツンッ……
「あ……」
ビデオを消され、ミソラはぷくぅ~~となって、ハンターVGを見た。
「ちょっと、ハープ……今、いいところだったのに!?」
《良い子が観ていい番組とは思えないけど?》
「後学のためよ……」
《なんの後学よ?》
呆れたため息を吐くハープにミソラは胸に抱いたクマさんの人形を抱きしめ、恍惚とため息を吐いた。
「唾液交換か~~~~」
《ただ、欲望に忠実なだけじゃない?》
ハープの捨て台詞も聞かず、またさっきのビデオの同じ場面だけ繰り返し観て、羨ましそうにいった。
「こんなキスもいいかも」
《ファンが聞いたら、泣くわね?》
「え……ガムのCM」
事務所につくなり、プロデューサーに聞かされた仕事の依頼にミソラはハテと目をしばたかせた。
「えっと……ガムって、あの歯に優しいスッキリミントで有名な」
「そう……まぁね」
仕事を持ってきたはずなのにCMプロデューサーの態度はどこかよそよそしかった。
その態度にミソラは一瞬、怪訝そうな顔をし、用意された脚本を見た。
そして、顔を真っ赤にした。
「キスシーンがあるの」
「キ、キスしたくなるほど口が爽やかになるっていうCMなんだ」
どこかしどろもどろするプロデューサーにミソラはジト~~とした目で見た。
「この仕事、誰が持ってきたの」
「……マネージャーだよ」
「……」
アッサリ白状したプロデューサーにミソラは額に青筋を立て頭痛を感じた。
あのオッサン、どこまで、人の意思を無視する気……
いい加減、出るとこ出ようかと頭を回転させるが……
「あ……!?」
天命を得たように頭の上にピコンッと電球が光った。
「この仕事、喜んでお引き受けします!」
「え……」
急に態度を変えるミソラにプロデューサーは不思議そうな顔に聞いた。
「いいの。今回はさすがにマネージャーのやりすぎが目立つし、僕が……」
「大丈夫! 私、仕事はえり好みしない主義ですから」
「……なんか、引っかかるな」
子供に似つかわしい怪しげな笑顔をにプロデューサーは首をかしげた。
「ということなの」
「は、はぁ……」
いきなり、電波空間を伝って家にやってきたミソラにスバルは困った顔でうなづいた。
「そ、それで、僕になにを」
若干、真っ青な顔で、スバルは身じろいだ。
「も・ち・ろ・ん!」
ガバッと獣のようにスバルの上に覆いかぶさり、ミソラは色っぽい顔で舌なめずりした。
「キスの練習!」
「ま、まねごとでしょ……ウムッ!?」
奪われるようなキスをされ、スバルは一瞬、苦しそうに息を詰まらせた。
あ……やわらかい。
時分の唇にダイレクトに伝わるミソラの柔らかい唇の感触にスバルは背中がゾクゾクするのを感じた。
柔らかく暖かく、どこか艶っぽく、気付いたら……
「ウッ……!?」
口の中に舌を入れ、自分の舌を絡ませるミソラにスバルは仰天したように目を白黒させた。
一瞬、ミソラの舌から逃げようと舌を引っ込ませるとそれを追いかけるようにミソラの舌が彼の舌を追いかけ、ムリヤリ、舌を絡ませると、今度はスバルが彼女の舌を舐めるように舌を絡ませ、お互いの舌から舌へ、涎が入っていくのがわかった。
「ぷはぁ……」
ミソラが唇を離すと今度はスバルが起き上がり……
「ミソラちゃん!」
「キャッ……!?」
ガバッと仕返しするようにミソラの上に覆いかぶさり、今度はスバルが彼女の唇を奪った。
「うぅ……ス、スバル君」
首に腕を回し、より密着度を上げると今度はスバルがミソラの口の中に自分の舌を入れ、ミソラの舌を嬲るように上へ下へと舐め叩き、唾液が注がれ、ミソラはトロンと恍惚とした目をし、彼の唾液を飲んだ。
変な味……
味がするのかしないのか、実際は、よくわからなかったが、妙に粘っこく、熱く、ちょっとだけ、臭った気がした。
でも、なんだか、飲んでいくうちに身体中がポカポカし、今度は、ミソラが上に立ち、唾液を交換した。
そんなキスを繰り返し一時間も続けた。
キスが終わるころには二人とも、まるで持久走を走りきった顔で肩で息をし、口の周りが涎でいっぱいだった。
「ミソラちゃん……ミソラちゃんの唾液の味って、変な味だね」
「スバル君のだって……変な味だったよ」
お互いテレたように微笑みあい、ゴロンッと床の上に寝転がった。
「これって本当にキスの練習なの」
「もちろん! 私がスバル君に嘘をついたことがある」
「嘘はないけど、隠し事が多かった気がするけど」
「ハハ……一本取られたね」
ケラケラ笑い、上半身だけ、立ち上がった。
「次はどんなキスをしようか」
「……ソフトなキスがしたいな」
「考えておくよ……」
絶対、考えないとスバルは得心した。
後日……
『ムリヤリ、キスしたくなるほどの爽やかさ! クールミント……』
「……」
テレビを見て、スバルは目を点にした。
リモコンを使い、ビデオを巻き戻しにすると、さっきのCMをもう一度、観た。
『ムリヤリ、キスしたくなるほど……』
ビデオを止め、スバルはボソリとつぶやいた。
「……これ、キスしてないよね」
カメラを背にミソラの顔を隠す俳優の背中にスバルは目を何度も瞬かせた。
《よくある手さ……騙されたな?》
『ムリヤリ、キスしたくなるほどの爽やかさ……』
「爽やかじゃなく、マグマのような暑さだよ……!?」
スバルの泣き出しそうな怒声にお茶を持ってきていた母は不思議そうに首をかしげた。