三月も半ばに入り桜が見れる時期になるとミソラはスバルを連れて花見のために公園へとやってきていた。
「うわぁ♪」
舞い落ちる花びらが鼻の上につき、ふふっと笑った。
「綺麗ぃ……♪」
桜花びらが雪のようにゆらゆらと落ち、ミソラはコップに注いだジュースを飲んだ。
「久しぶりのオフに花見なんて浪漫あるよねぇ♪」
「そうだね」
スバルもコップの中のジュースを飲んだ。
「今日は仕事を忘れて花見を楽しもう!」
「うん!」
弁当箱の唐揚げを食べた。
「うぅぅ~~ん♪」
ミソラの顔が恍惚と緩んだ。
「やっぱりスバルくんの唐揚げ、とっても美味しい♪」
「それはよかった!」
スバルも満足げに微笑み、自分が焼いた卵焼きを食べた。
「自分で言うのもなんだけどナイスな味!」
「ねぇ、スバル君!」
「うん?」
ミソラの顔が乗りかかるようにスバルに近づいた。
「ゲームしよう、ゲーム♪」
デュエルスターズというカードゲームを見せ、ミソラは満面の笑顔を浮かべた。
「新しいカードを手に入れてデッキを強化したんだ! 今度こそスバル君をやっつけてやる!」
「それはどうかなぁ♪」
スバルも自分のポケットからカードデッキを取り出した。
「決闘!」
「スターブラストドラゴンでダイレクトアタック!」
「ひえええぇっ!?」
ライフがゼロになりミソラは悔しそうに泣いた。
「また、負けた!」
ガクッとorzのポーズを取るミソラにスバルはふふっと笑った。
「ミソラちゃん、相変わらず弱いなぁ♪」
「むぅ~~……!」
カードをデッキに戻し、ミソラはムスッとした顔で立ち上がった。
「一番!」
手に持ったマイクを口に近づけた。
「響ミソラ歌います!」
「え、ちょ……!?」
急に歌い出すミソラに周りの花見客も注目を集め始めた。
「飛び交うシグナル♪」
「おい、あの娘、もしかして」
「やっぱり、人気アイドル響ミソラよ!」
「うわぁ、可愛い!」
「隣の野郎は誰だ?」
騒ぎ出す花見客の一人が大声を上げて叫んだ。
「いいぞぉもっと歌えぇ!」
調子に乗ったように花見客が近くの木の枝をサイリウムみたいに振りヒュ~~ヒュ~~と口笛を吹き出した。
「ちょ、ちょっと、ミソラちゃん……」
大事になり始めた花見会場にスバルは目を彷徨わせた。
「いいぞぉアンコールアンコール♪」
活気だつ花見客にスバルは諦めた顔で乾いた笑いを浮かべた。
「これ、社長にバレたら怒られるなぁ……」
ピピッとハンターVGのSNS着信が鳴った。
「……」
嫌な予感を覚え、スバルは震える手でハンターVGを手に取り、モニターを開いた。
『花見が終わったら事務所に来て頂戴。緊急会議よ……今日のことで』
口調こそ砕けていたがオーラから確実に「怒っている」という雰囲気が伝わりスバルは言い訳の言葉を考えた。
この後、ミソラの突発ライブは三時間にも及び、社長のお説教はその倍の六時間となった。
まさに天国と地獄の花見であった。