「スバル君、最近、私達の生活は良くないと思うの!」
「はいはい?」
ハタキを持ちながらスバルはミソラの横に立った。
「喚いてないでコタツから出た出た」
「キャッ!?」
「もう片付けちゃうから……!」
「あうぅ!?」
蹴飛ばされるようにコタツから追い出されミソラは涙目になった。
「それだよ、その態度だよ!」
「はい?」
コタツの毛布をクリーニングに出そうか考えるスバルにミソラはビシッと指差した。
「この家は私達のスイートホームだよ!」
「スイートホームだったらゴミくらい、ゴミ箱に捨てろ」
「……」
ミソラが食べ散らかしたおやつの包を拾い捨てるとため息をついた。
「いくらミソラちゃん名義で買った家でも汚くするならしばらく家を出ていってもらうよ!」
「うぅぅ……」
ムスッと頬を膨らましハンターVGを起動した。
「もういい、もうゲームして遊ぶ!」
「遊ぶなら寝室でやってね、春支度のため、居間を掃除しちゃいたいから」
「そんなの毎日掃除してれば……」
「部屋を汚してるのそっち!」
ハタキで頭をパタパタと叩くとミソラはうぅ~~と唸った。
「スバル君の意地悪……」
寂しそうにミソラは部屋に戻っていった。
ミソラの背中を見送りスバルは頭の後ろを掻いた。
「ストレス溜まってるのかね……?」
「くそ、くそ、クソ!」
SSO2で憂さ晴らしに課金して新衣装をゲットするとミソラは新しいコーデを楽しみながらベッドに仰向けになった。
「スバル君のバカ! スケベ! カエル!」
「そのカエルがオヤツを持ってきたよ」
「うん?」
部屋に入ってきたスバルを認め、口に切り揃えられたりんごを食べさせられた。
「じゃり……じゃりじゃり」
口の中のりんごを咀嚼した。
「ごくん!」
ミソラの顔が幸せそうに緩んだ。
「このりんご、蜜がたっぷりぃ♪」
「熊田八百屋で買った果物だからね」
ミソラの隣に座った。
「あそこの店の息子は家の手伝いを必死にして頭が下がるよ」
スバルも切りそろえられたりんごを食べた。
「で、なにが不満なの?」
「……」
ツゥンと顔を背けるミソラにスバルはチューブを取り出した。
「ハチミツかけようか?」
「頂戴……」
りんごにハチミツをかけ、また食べた。
「もっと甘い生活を送りたい!」
「りんごにハチミツじゃ足りないの?」
「これじゃ、まるで倦怠期まっただ中の夫婦じゃん!」
「楽しくない?」
「いや、楽しいけど……」
「じゃあ、問題ないじゃん!」
「楽しいのベクトルを変えたいの!」
「贅沢な……」
「女の子は贅沢していい生き物なの!」
「まったく頭が痛いよ……」
スバルもハンターVGを取り出しポップアウトを起動した。
「ベクトルを変えるならゲームでもしようか? オンラインゲームは毎日が冒険だしね」
「ゲームでくらい刺激がほしいね」(BYミソラ)
「ゲームでくらい平和を満喫したいね」(BYスバル)
「……」
「……」
二人の持つゲーム観に言葉を失った。
「ははははは……」
「あははははは♪」
違う笑いを浮かべ、スバルはガックリ来た。
「別世界くらい平和を満喫させてよ」
「ゲームくらい刺激を満喫させてよ!」
「毎日頭を下げさせられてるこっちの身にもなってよ」
「だから、ゲームでくらい刺激を得ないとね!」
悪びれること無くミソラはニコッと笑い新しく衣装変えした自分のアバターを見せた。
「じゃあ、今日も初めましてから始めるRPGを始めようか! アニメも終わったし!」
「はいはい……」
自分のアバターをプレイし、スバルは頭が痛くなった。