記憶のないヒーロー
「久しぶりの休みだぁ!」
帰ってきた故郷を眺め、スバルは嬉しそうに笑った。
「コダマタウン……」
故郷の匂いに感嘆にふけるスバルに隣をついてきたミソラはうんうんと頷いた。
「田舎だよねぇ♪」
「あのねぇ……」
呆れかえるスバルにミソラはアッと声を上げた。
「ルナちゃんだ!」
「あ、本当だ」
うまい具合に話をそらされたとスバルはミソラの会話のうまさに感心した。
「お~~い、委員長!」
「うん?」
声をかけられたルナは不思議そうに振り返った。
「誰、アナタ達?」
ルナに近づき、スバルは苦笑した。
「なにバカなこと言ってるの……」
ミソラも続いた。
「趣味の悪いシャレはヤダよ」
「な、なによ……」
ルナは薄気味悪そうにスバル達から後ずさった。
「もしかして変質者……?」
「え……?」
スバルの心に重いなにかが当たった。
「い、委員長?」
「いや、来ないで!」
背中を振り返りルナは通りかかったゴン太を認めた。
「ゴ、ゴン太、あんた、この不審者をどうにかしなさいよ!」
「あ、委員長!」
ゴン太も気付いた顔でスバルを認めた。
「誰だ、お前_?」
「ゴ、ゴン太……?」
ゴン太の顔が近づいた。
「誰だか知らねぇが委員長を怖がらせると容赦しないぞ!」
ゴン太の拳が降りあがった。
「え……?」
殴り飛ばされ、スバルは呆気にとられた。
「ス、スバル君!?」
スバルの身体を抱き起し、ミソラは涙目で怒鳴り上げた。
「いきなりなにするの、ゴン太くん!?」
「え、だ、だって……」
ゴン太は困惑した顔でルナを見た。
「か、絡まれてたんだろう?」
「え、ええ……」
ルナも困った顔で頷いた。
「わ、私、アナタ達なんか、知らないわ……」
ミソラもショックを受けた顔をした。
「そ、そんな……」
スバルは気づいたようにハンターVGを手に取った。
「キ、キズナ値が……?」
信じらないものにスバルは目を疑った。
「0……」
「え……?」
ミソラも自分のハンターVGを見た。
「そ、そんなぁ!?」
自分とルナとゴン太のキズナ値が0になってることにミソラは動転した。
「よ、よくわからないけど……」
これ以上関わりたくないのかルナは逃げるように背を向けた。
「あ、あまり趣味のよくないことしてるとケガするわよ」
去っていくルナにゴン太も慌てて後を追った。
「お、お前ら、委員長に手を出したら許さないからな!」
ゴン太も走り去り、スバルは小水した顔で手を伸ばした。
「いいんちょう……」
手が空を切り、スバルは自分の存在が消えてるのではと錯覚し恐怖した。
「ボクは……」
ミソラも身体を抱き、嫌な寒気に震えた。
「ルナちゃんの顔、本当に私のことを忘れていた顔をしてた……まるで最初から友達じゃなかったような」
ハンターVGが鳴った。
「あ、天地さんだ」
自分のこと覚えてるかわからない大人にスバルはすがるように電話を繋いだ。
『よ、良かった、通じた!』
慌てた顔した天地の映像がハンターVGに映った。
『スバル君、ボクはもうそろそろ君のことを忘れる』
「え……?」
また嫌なゾッと感が襲った。
『だからその前に今、君に起きている現象を説明するため、旧サテライト・ペガサスに重要な情報を残した。もし、君がみんなの記憶を取り戻したいならそこに行きたまえ。ことは記憶だけでは済まないかもしれない』
ピッと電話が糸が断裂したように切れた。
「……」
訳の分からない言葉を残す天地にスバルは自分を忘れてしまったルナを思い出した。
「ロック!」
≪わかってる!≫
スバルの姿がロックマンへと電波変換し、空へと消えた。
「待って、ロックマン!」
ミソラもハープ・ノートに電波変換し、空へと消えた。
WAXAに着くとスバルに待っていたのは絶望だった。
「誰だい、君は?」
「そ、そんな……」
予想していたとはいえあまりの仕打ちにスバルは膝をついた。
「ぼ、ぼくは……」
目の前が真っ暗になりなにも考えられなくなるスバルにミソラの手が握られた。
「ペガサスに行こう!」
「ミ、ミソラちゃん?」
「さっきまでの天地さんが言ってたじゃない! 旧サテライトに行けと! きっとそこに今のカギがあるはずだよ!」
ミソラの言葉に天地は怪訝な顔をした。
「君たち、なにを言って……え?」
スバルとミソラの姿が光となって消えた。
「これは……?」
辺りを見回した。
「もしかして、今研究中の"電波変換"……なぜ、あの子たちが?」
電波ロードに着くとロックマンとハープ・ノートは不自然に宇宙まで繋がった光の道を見つけた。
「あれは……旧サテライトの電波ロード」
「FM星事件以降、使われなくなったはずなのにやっぱり、天地さんは」
なにか不気味で作為的なものを感じ、ロックマンとハープ・ノートは宇宙まで繋がった電波ロードを駆け上っていった。
旧サテライト・ペガサスに着くとロックマンとハープ・ノートは転送されたばかりのメッセージデータを見つけた。
「やっぱり天地さんはボク達のことを"覚えていた"。でも、"忘れてしまった"んだ!」
どこか口調が高揚するのを感じ、ハープ・ノートも声を荒立てた。
「再生してみよう!」
メッセージデータを再生させた。
『やっぱり来てくれたんだね……』
「天地さん!」
自分のことを"覚えていた天地"の映像データにロックマンは泣きたくなるほどの喜びを覚えた。
「やっぱり、ボクのことを覚えていた……」
『今から君に起きている現象をボクはボクの知る限りを君に教える。でも、恐らく全ては語れない。邪魔が入るからだ。だからこのメッセージデータを君の知る世界全てに配信した。いいかい、よく聞け』
天地の口から想像していた言葉が発せられた。
『君たちの記憶が奪われている』
「やっぱり……」
納得のいくロックマンに天地は今度は信じられない言葉を口にした。
『その犯人は』
ロックマンとハープ・ノートの目が見開かれた。
「ロックマンだ』