流星のメモリアル   作:スーサン

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キスする関係【後編】

「はい……上がり!」

 ペシッとストレートの揃ったトランプを見せ、ミソラは微笑んだ。

「私の勝ちだね……」

 えへへと笑い……

「じゃあ、罰ゲームは」

「ッ!?」

 バッと構えるスバルにミソラはピンッと百円玉を弾いた。

「ワッと……!?」

 慌てて投げ渡された百円玉を見て、スバルは首をかしげた。

「ジンジャーエール買ってきて。差額はスバル君持ちね」

「え……」

 不思議そうにミソラを見た。

 ミソラも笑顔で首を傾げる。

「どうしたの。罰ゲームだよ、スバル君」

「あ、ああ……うん」

 百円玉を財布の中に入れ、コートを着ると、スバルは自販機の置いてある外へ出て行った。

 

 

 ミソラがキスをしないといい始め、すでに四日が経っていた。

 あのキスをしないという宣言通り、ミソラは健全な友達付き合いをしていた。

 キスにもつれ込まれそうな状況が一転してキスがなくなった日常が降りかかった。

 最初は安心した気持ちもあったが、ここ最近、なぜか、心にポッカリ穴が開いたような虚無感が襲い掛かっていた。

 自販機でジンジャーエールを買うとスバルは家へと帰っていった。

 ちなみに、差額二十円、出た。

 

 

「ごくごく……ぷはぁ」

 おいしそうに喉を鳴らし、缶ジュースを唇から放すとミソラは満足そうにうなった。

「おいしいね、ジンジャーエールって」

「あ……うん」

 どこか上の空のスバルにミソラはニヤニヤ顔でいった。

「どうしたの。もしかして、欲求不満」

「ち、ちがうよ!?」

「そうなんだ」

 飲みかけのジュースを見て、ミソラはスバルを見た。

「飲む」

「え」

 顔を真っ赤にするスバルにミソラは意地悪そうにジュースを飲み干した。

「ダ~~~メ! 間接だって、キスはキスだもん」

「~~~~~」

 一瞬、悔しそうな顔をするスバルにミソラは思い出したように手を叩いた。

「あ、そうだ、これ、スバル君に渡すんだった」

「うん」

 ポケットからライブのチケットを手渡された、スバルは首をかしげた。

「正月ライブ」

「元日のライブ……特別S席一人分用意したから、絶対に来てね。普通なら、倍率が半端無いから、今じゃ、絶対に手に入らないから」

「あ、ありがとう……」

 チケットを貰い、気付いたら、ミソラの唇に視線を集中させている自分に気付き、スバルは慌てて首を振った。

「じゃ、じゃあ、元日一番に行くよ」

「うん!」

 そうそうと、手を叩いた。

「明日から、私、仕事で遊びにこれないから、今度、会うのは来年になるね」

「え……そ、そうなの」

 少し、残念そうな顔をするスバルにミソラは満面の笑顔でいった。

「じゃあ、私、明日の仕事があるから帰るね」

「あ、ミソラちゃ……」

 一瞬で、光に包まれ消えていったミソラを見て、スバルは深いため息を吐いた。

《生殺し状態か?》

「うるさいよ、ウォーロック!?」

 軽く怒鳴られ、ウォーロックはヘイヘイと呆れながら頷いた。

 

 

 それから、スバルのモヤモヤした日々が続いた。

 ミソラと遊ぶ時間はなくなったが、基本、連絡を取り合う時間はいくらでもあった。

 だが、会えない分だけ、なぜか、心のモヤモヤは増えていく一方で、気付いたら……

「おう、スバル……実は宿題忘れ……」

「ッ!?」

 ギロッと睨まれ、ゴン太は怯えたように言葉を詰まらせた。

「あ……その……」

 スバルの尋常じゃない目付きにゴン太は回れ右した。

「す、素直に怒られます」

「ふん……」

 という具合に、スバルの心がやさぐれていた。

 そして、正月ライブの当日……

 

 

「……」

 まるでニコチン中毒者のような異様な殺気を持つスバルに会場入場者は怯えたように、彼から道を開けていた。

《おい、スバル……みんな、怯えてるぞ?》

「うるさい!」

《……》

 ウォーロックもなにも言うまいと黙り込む。

「別に僕はイライラなんかしてないよ」

「へぇ~~……そうなんだ」

「うん……うわぁ!?」

 振り返りざま、首根っこを掴まれ、強引に関係者部屋に連れ込まれるとスバルの唇に温かい感触が包まれた。

「ッ……!?」

 目に映るミソラの顔にスバルは顔を真っ赤にし、固まってしまった。

 彼女の唇を感じると、不思議と心が楽になるのを感じた。

 それは今まで心に刺さっていた針がスポッと取れたような安心感が訪れていた。

 気付いたら、スバルは彼女の身体を強く抱きしめていた。

「ぷはぁ……」

 唇から糸を引き、顔を離すとミソラはニコッと笑った。

「あけましておめでとう……スバル君」

「お、おめでとう……ミソラちゃん」

 さっきまでやさぐれていた気持ちがウソのように穏やかな顔をするスバルにミソラは、いたずらっ子のように聞いた。

「やっぱり、私とキスできなくって、寂しかった」

「……」

 否定したかったが、否定できない気持ちにスバルは苦い顔をした。

「ほら、スバル君」

「イッ!?」

 いきなり、右手を掴み、自分の左胸を押し付けるミソラにスバルは顔を真っ赤にした。

「感じる……私の心臓の鼓動」

「う、うん……」

 それ以上に成長しかけた胸の柔らかさを感じるが……

「私だって、スバル君とキスできなくって、欲求不満だったんだよ」

 もっと強く、自分の胸を押し付けるミソラにスバルは顔をますます赤くした。

「ほら……もっと、私の胸のドキドキを感じて」

 胸に手を押し付けたまま、また近づき、唇を近づけると……

「大好きだよ」

 また、キスをした。

 

 

「みんな~~~……お昼のライブ、楽しんでいってね~~~~」

「おぉ~~~~~~!?」

 歓声の上がる客席でスバルはミソラとほんの少しだけ、目線をあわせ微笑んだ。

「今年も大変な一年になりそうだな」

 そういい、スバルは唇の下を優しく人差し指で撫でた。

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