ピルルルル……
「やっぱり、電話に出てこない」
ハンターVGの電話機能をオフにし、ベッドに投げ捨てるとミソラは憂鬱そうに床の上で体育座りした。
「もう二日もスバル君、電話に出てくれない……もしかして、私のこと避けてるのかな」
《気のせいよ……スバル君だって、いろいろ忙しくって、気付いてないだけよ?》
「気付かれない程度の関係だったのかな」
ツ~~と自分の下唇を指でなで、ため息を吐いた。
「付き合ってると思ってるのは私だけなのかな」
《さぁ……あの子に関してはタラしそうだし?》
「タラしじゃない! ただ、ちょっと、優しいから誤解する女の子が多いだけだよ!?」
《世間ではそれを「タラし」というのよ?》
ついでにその理屈から問うと、自分も誤解している少女の一人になるのだがと、ハープは黙っておくことにした。
「スバル君……会いたいな」
《会えばいいじゃない?》
「え……」
ベッドの上のハンターVGを見て、ミソラは目を輝かせた。
「うん!」
「頭が……」
「はいはい……」
ベッドの上で堰をするスバルにルナはため息を吐いた。
「黙って寝てる。世話が焼けるんだから」
パッパッと濡れタオルを絞るとルナはニコッと笑った。
「新年を向かえて気が緩んだわね。見事に風邪をひくだなんって」
「ぼうじわげありまぜん……」
「ガラガラ声で返事しなくっていいわよ」
机の上のハンターVGを見て、スバルに聞いた。
「着信があるわよ。最後に電話とったのいつ」
「覚えてない……というよりも、気付かなかった」
「まぁ……この娘なら、大丈夫でしょうけど」
「だ~~れが大丈夫だって」
「え……」
シュバンッと部屋全体が光に包まれ、ギターの音が鳴り響くと、ミソラはジト目でルナを睨んだ。
「お久しぶり……委員長」
「ミソラちゃん……」
一瞬で、バチバチと火花の散る二人の視線にスバルの唸り声が響いた。
「静かにして~~……うるさくって、頭が割れる~~~」
「ウッ……」
「ムッ……」
慌てて口を塞ぎ、二人とも黙ったまま睨みあった。
だが、すぐにルナの態度が変わった。
「私は昨日から世話してたから、今回は譲ってあげるわよ」
「……え」
ニコッと優しく微笑み、ルナはスバルの部屋を出て行った。
二人きりになるとミソラはスバルの顔を見て、ゆっくり、おでこをくっつけた。
「熱い……」
《熱を出してたから、連絡が取れなかったのね。よかったじゃない、嫌われてたわけじゃなくって?》
「うん……でも」
少し、申し訳なさそうにミソラは顔を伏せた。
「スバル君が苦しんでるときに、私、気付くこともなく、寂しがったりして、ちょっとだけ情けない」
《仕方ないわよ……それよりも、濡れタオル、まだ、額に乗せられてないし、乗せてあげたら?》
「う、うん」
ルナが絞った濡れタオルをスバルの額に置くと、ミソラは心配そうにスバルに聞いた。
「スバル君……なにかして欲しいことある」
「うぅ……」
力無い状態だったが、スバルはミソラの手を握った。
「一緒にいてくれるだけで元気が……で」
「スバル君!?」
慌ててタオルを取り、耳を近づけるとミソラはホッとした。
「寝ただけだ……ヒヤッとした」
「……ミソラちゃん」
「……」
スバルの寝言にミソラは手に持ったタオルを水の入った洗面器に放り込んだ。
「スバル君……風邪が治るおまじない」
そっと、スバルの唇に自分の唇をくっつけ、二人はキスをした。
チュッ……
「いつもより、熱い……」
触れた唇があまりに熱く蕩けたのか、ミソラは目をポ~~とさせ、ゆっくり、立ち上がった。
着ていた上着を脱ぎ、下着だけになると、ミソラはそっと、スバルの寝ているベッドの中に入り込んだ。
「スバル君……早く、風邪治してね」
スバルの汗をかいた身体に抱きつき、目を瞑るとミソラはゆっくり眠りに入っていった。
「おやすみ、スバル君」
「スバル……委員長、帰っちゃったけど、なにか怒らせ……」
ドアを開け、部屋の中を見るとあかねは一瞬、顔を真っ赤にし、部屋を出て行った。
「あの子も隅に置けないわね」
なんとなく、新婚当時の自分の姿を思い出し、あかねは頬を赤く染めた。
翌日、スバルの風邪は全快したが、逆にミソラが風邪を引いてしまった。