暗闇の中、老人は頭を下げる部下に対して、灰皿を投げた。
「また、負けたのか!?」
「申し訳ありません……」
萎縮する部下に老人は血相を変えて、怒鳴った。
「もはや、奴の進行は留まるところを知らない。明日にでも、我々はお終いかもしれない!」
「奴の強さは異常です……」
絶望的に首を振る部下に老人はチッと舌打ちをした。
「だが、まだ手は残ってる」
「手とは」
「奴以外の奴を倒せば、奴を倒したことになる!」
「ハッ……もしや、ドクターパーレル!?」
「過去へ飛ぶぞ!」
コダマタウンを一望できるマンションの屋上で一人の少女が双眼鏡を目に、遠くでアイスを持って、イチャイチャしているスバルとミソラを監視していた。
「……」
双眼鏡から目を離すと、少女はホッとため息を漏らした。
その姿はどこかミソラのシルエットに似ていた。
「まだ、敵は動きを見せてないようだね」
再び双眼鏡に目を戻し、少女は恥ずかしそうに頬を染めた。
「でも、昔からバカップルだったのね、あの二人」
双眼鏡から見えるスバルとミソラのラブラブっぷりに少女は口から砂を出した。
「ねぇ、スバル君のソーダアイスって、おいしい」
「うん」
カプリと食べたラムネ入りのソーダアイスから口を離すとスバルはニコッと笑った。
「食べてみる」
「うん!」
スバルのソーダアイスを見て、ニヤリと笑った。
「味わうだけなら、こっちだよ!」
「むぐぅ!?」
唇を唇に塞がれ、スバルは仰天した。
舐めるように舌を舌で舐められ、うめき声を上げた。
「ぷはぁ……」
唇を離すと、ミソラはえへへと笑った。
「スバル君の舌って甘いね」
「アイス食べてたんだから、当然だよ……」
恥ずかしそうに頬を染め、スバルはテレた。
調子を良くしたのか、ミソラはスバルの腕に抱きついた。
スバルの腕を猫のように頬擦りした。
「スバル君の匂い~~……♪」
「人が来たら離れてね」
「はぁ~~い!」
元気よく返事を返すミソラにスバルは本当にわかってるのかと目を泳がせた。
その姿を遠くのマンションの屋上で少女は呆れた目で見ていた。
「この頃と比べれば、私たちの時代はまだ、マシだったのね……ん!?」
双眼鏡を見直して、少女は拳を握り締めた。
「ついに動いた!?」
ポケットから青を基調したIpod状のアイテムを取り出した。
「ロックマンチェンジ……ディメイション!」
≪ロックマンディメイション≫
少女の身体が光に包まれ、マンションの屋上から消えた。
しばらく腕を組んでいると二人の前にフードを被った男が通りかかった。
二人は慌てて離れた。
「今度はもっと、くっついていられるといいね」
スバルの顔が赤くなった。
ミソラは悪戯っぽく舌を出した。
(本当に大丈夫かな、この娘?)
付き合ってもいない男女がこうもベタベタして誤解されないか、不安に思った。
「星河スバルと響ミソラだな」
「え……」
二人の前に止まった男はフードのコートを脱いだ。
「なら、死ねぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
頭にハサミのブーメランを携帯したロボットがスバル達に襲い掛かった。
「ッ!?」
飛び掛かるハサミのブーメランをジャンプすることで避けた。
「スバル君!」
「ミソラちゃん!」
ハンターVGを取り出し、叫んだ。
「電波変換!」
二人の身体が光に包まれ、閃光のように空に伸びた。
「ロックバスター!」
「ショック・ノート!」
上空からロックバスターとショック・ノートの攻撃が飛んだ。
「甘い!?」
「攻撃を跳ね返した!?」
戻ってきたハサミのブーメランを頭に挿しなおすと男は得意げに叫んだ。
「我が名はダークカットマン! お前たちのような旧スペックには決して負けない!」
「ダークカットマン」
ウォーロックの苦虫を噛み砕くような声が響いた。
≪野郎、どうやら、俺たちとは違うみたいだな?≫
ロックマンもコクリと頷き、バトルカードを取り出した。
「バトルカード、ソード!」
ロックマンの左手がビームソードに変わると、ダークカットマンに斬りかかった。
「弱い!」
ビームソードを弾き返され、ロックマンの身体が道路のレンガに叩きつけられた。
「ぐはぁ……」
ロックマンの身体が地面に落ち、元のスバルの姿へと戻った。
「スバル君!?」
慌ててスバルのもとにウェーブロードから着地したハープ・ノートは涙目で彼の心配をした。
「だいじょうぶ……泣かないで」
必死に自分を安心させようとするスバルにハープ・ノートはダークカットマンを睨んだ。
「よくも私のスバル君!?」
「お前も、すぐに倒してやる!」
頭に取り付けられたハサミのブーメランを外し、振りかぶった。
「消えろ!」
ブーメランの刃が振り下ろされた。
「そっちがな」
ダークカットマンの身体が上空に殴り飛ばされた。
地面に落下し、ダークカットマンは顔だけを上げ、忌々しい声を出した。
「お前は……ディメイション計画の!?」
「ロックマンディメイション!」
ディメイションと名乗った少女は、倒れているダークカットマンに指差した。
「未来の世界で君たちの組織は私のお兄ちゃんが壊滅させた!」
「バカな……早すぎる!?」
「その答えをお前が知る必要ない」
ディメイションは腰のフォルダーからカードを取り出した。
「ロックマンチェンジ!」
《ロックマン》
少女の姿がシンプルな青いコンバットスーツに変わり、ロックバスターを構えた。
「終わりだ……!」
「バ、バカな……こんな事が!?」
ディメイションのロックバスターが撃ち放たれた。
「チャージショット!」
「う、うわぁぁぁぁぁッ……!?」
爆風が辺りにとどろいた。
ハープ・ノートはなにが起こったかわからず、少女を見つめた。
「君は……いったい」
ディメイションの姿が元の少女に戻り、ニコッと笑った。
「また逢おうね……お婆ちゃん」
「お、お婆ちゃん」
自分よりも年上の女の子に「お婆ちゃん」扱いされ、ハープ・ノートは憤慨した。
「君、いったい、誰なの!?」
「じゃあね!」
少女の姿が光となって消えた。
「なんなのよ、もう!」
ハープ・ノートの姿が元のミソラの姿に戻った。
「スバル君、大丈夫!?」
ポケットからハンカチを取り出し、スバルの顔についた血を拭った。
「大丈夫……こんなの過去の戦いに比べたら、たいしたことないよ」
「強がらないでよ……」
涙を拭い、ホッとした。
「でも、今回はミソラちゃんに守られちゃったね」
「もう!」
頬を膨らませ、スバルの額を叩いた。
「スバル君は格好つけすぎ!」
スバルの唇にキスをした。
「私だって、格好をつけたいときがあるの! たまには格好悪いところ見せてよ。じゃないと、私、弱い女の子のままだよ!」
「でも、それだと、今度はボクが格好悪くなっちゃうな」
「そんな全部が好きなんだよ、私は!」
スバルを立たせ、ギュッと抱きしめた。
時は流れ、五十年後……
「お兄ちゃん、お爺ちゃんとお婆ちゃんを助けに終わったよ!」
「ご苦労様。どうだった、過去の爺ちゃんと婆ちゃんは」
「思い出すだけで砂、吐きそう」
「未だに新婚気分を忘れられないバカ夫婦だからな」
「でも、昔を見ると今は多少、丸くなったんだなと……思うよ」
「まぁ、また逢うときがあるかもな」
「今度はお兄ちゃんが行って!」
「そんなに恥ずかしかったのか」