流星のメモリアル   作:スーサン

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チョコキッス

「……」

 その日、スバルは学校からの帰り道、様子が変だった。

 片手にはチョコの詰まった紙袋を握り締め、一様に辺りを伺うように首をキョロキョロさせていた。

 まるで、腕利きのスナイパーに狙われてるかのような惨めな姿だった。

 家に辿り着くとスバルはキョロキョロと家の中を見回し、コソ泥のように、部屋の中へと入った。

「いないな」

 いつものように不法侵入を当たり前のように犯す少女の姿がないことを確認すると、スバルはホッとため息を吐いた。

「よかった……」

「なにが、良かったのかしら」

「ギクッ……!?」

 ヒョロリとまるで幽霊のように紙袋が奪われ、スバルは真っ青になった。

「ミ、ミソラちゃん……いたの」

「隠れてたの。だいたい、予想がついてたから」

 紙袋の中のチョコを見て、ミソラの目が険しくなった。

「モテるんだね、スバル君って」

「い、いや~~……モテる男は辛いな」

 必死にごまかし笑いを浮かべるスバルにミソラはギンッとギターを構えた。

「ショックノート当てていい」

「……」

 脂汗をかきながら、スバルは弁明した。

「チョ、チョコを貰うくらい、男のステー……」

 グイッと母の形見のギターをまるでライフルの銃口のようにスバルのアゴに押し当てると、

「ゴメンナサイ……ライネンハゼンブ、コトワリマス」

 あまりの恐怖に片言になり、土下座した。

「もぅ……」

 ぷぅっと頬を膨らませ、ミソラは、スバルが貰ったチョコをベッドに置いた。

「いっぺんに食べないでね」

「食べていいの」

「女の子の気持ちを無碍に出来ないでしょう」

 とくに委員長のは、他と違って、義理というわけじゃなさそうだし……

「い、いや~~……さすがミソラちゃん、わかってるね」

「……」

 すごい剣幕で睨まれ、スバルはまた顔を真っ青にして震えた。

「まぁ、いいや……今回、私がここに来たのはスバル君を責めるためじゃないし」

「ホッ……」

 心の底からホッとするとミソラはの口の端がニヤッと吊り上った。

「今回の私からのバレンタインプレゼントはこれで~~~す!」

 ジャ~~ンと出されたリップを見せられ、スバルは首をかしげた。

「口紅」

「ふふ……驚いてるでしょう。実はこれ……」

 柄の部分を捻った。

「なんと、紅の部分がチョコになってるの!?」

「おお、すごい!? どこで買ったの!?」

「テレビ関係で知り合った人に頼んで作り方を教わったの。意外と難しかった……」

 苦労の分か、いつも以上に彼女の笑顔は輝いていた。

「でも、なんで、口紅状にしたの」

 チョコなら、もっと簡単に作る方法はあるのに……

「それはね」

 捻り突出したチョコの部分を舌で舐め、軽く溶かすと、ミソラは自分の唇にチョコを塗った。

「え……まさか」

 顔を真っ赤にするスバルにミソラは顔を動かさないよう両手で彼の顔を固定した。

「ッ……!?」

 いきなり、チョコ味のキスをされ、スバルは仰天した。

「ぷはぁ……」

 糸を引き、キスをやめるとミソラはいたずらっ子のようにチョコ味の口紅を見せた。

「実はね、これ……あるマンガを見て、思いついたバレンタインネタだったんだ……想像以上に良かったね」

「う、うん……甘かった。チョコ味の唇」

「もっと、味わいたい」

 答えを聞く前から、唇にチョコを塗るミソラにスバルは何も言わず、今度は自分からキスをした。

「うじゅ……むぐ……じゅじゅ」

「はぅ……むじゅ……うぅぅ……」

 どこか、小学生のキスとは思えない、嫌らしいキスをすると、二人はまた、離れた。

「なんだか……癖になりそう」

「私もスバル君となら、中毒になってもいいかも」

 また、キスをすると、二人はチョコの存在も忘れ、唇だけじゃなく、首筋や、鎖骨など、色っぽい部分にまでキスをし、まるで、獣のようにキスをむさぼった。

 チョコの味がしなくなったと思ったら、また、ミソラはチョコを唇に塗り、キスをし、また、しなくなれば、チョコを塗りを繰り返し、気付いたら、

「ぷはぁ……はぁ……はぁ、もう限界」

「私も……」

 お互い口の周りをチョコと唾液で汚し、床に倒れるとふふっと笑いあった。

「いいね、このバレンタイン……来月のホワイトデーが難しくなって、大変だよ」

「あ、それならね」

 ゴロリと起き上がり、ミソラはテヘッと笑った。

「ホワイトデーは三倍返しだからね……意味、わかる」

 いたずらっ子のように舌を出すミソラにスバルの顔が若干、青ざめた。

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