流星のメモリアル   作:スーサン

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プロポーズ(間接)大作戦

 赤いバージンロードを進み、純白のドレスに身を包んだミソラは隣の男性を見て、優しく微笑んだ。

「……」

 そっと、男性の差し出した手に自分の手を乗せ、ミソラの左手を握り、指輪を外すと、ミソラも彼の指輪を外した。

 お互いの指輪を交換すると二人は優しく微笑んだ。

「ハイ、カット!」

 カチンコと名前に恥じない綺麗なカチンコの音が響き、ミソラは緊張から開放された顔でため息を吐いた。

「ミソラちゃん、ナイス演技!」

「へへ……」

 テレ臭そうに鼻をさするとミソラはテヘッと笑った。

「でも、ミソラちゃん、今回の結婚式のCMの撮影、なんだか、すごく本格的だった。なんというか、本当に結婚の喜びが全身に溢れてるというか」

「そ、そうですか……へへ」

 また、テレ臭そうに微笑むとハンターVGの中のハープが呟いた。

《CM撮影を理由に散々、スバル君と練習したものね……相手もスバル君に見えたんじゃないの?》

 バシンッとハンターVGを叩き、ミソラは時間を確認し、ミソラは楽屋でウェディングドレスを脱ぐよう、スタッフに協力を求めた。

「じゃあ、私は先においとましますね」

「はいはい、じゃあ、六月のCMを楽しみにしててね」

「はぁ~~い!」

 楽屋で着替えを済ませるとミソラはハンターVGにイヤホンを差し、音楽を流すとリズミカルな足取りでテレビ局を出て行った。

 スッカリ日の沈んだ夜空を眺め、ミソラは息を吐いた。

「私たちも結婚するのかな……」

《気が早すぎよ、ミソラ?》

「……」

 反論を返さず、終電の電車まで急ごうとすると夜空からピカッと一閃の光が落ちた。

「え……きゃぁぁぁぁぁぁ!?」

 光に飲み込まれ、意識が一瞬飛ぶと、ミソラはなにが起きたか、閉じていた目を開けた。

「ここは……」

 気付いたらミソラは見たこともない歩道の上に立っていた。

「ここって……コダマタウン」

 なんとなくだが、ミソラはそう思った。

 コダマタウンにしては若干、都会な気がしたが、ミソラは不思議と確信を持てていた。

 ビュンッと冷たい風が吹き、新聞が顔にぶつかるとミソラは目を見開いた。

「ここって……十年後の未来!?」

 日付を見て、ビックリした。

 どういう事って慌てるミソラにハンターVGのハープが叫んだ。

《落ち着きなさい……あれ、見て!?》

「あれ……って」

 顔を上げて、ミソラはアッと声を上げた。

「未来の私」

 髪はちょっと長かったが赤みがかかった紫色の髪は確かに自分の後姿だった。

 今のようなカジュアルなスタイルでなく、どこか大人の雰囲気のあるスカートをはいた未来の自分にミソラは所在無さ気に首を左右に振り、慌てて後を追った。

「こんな時間にどこへ行くんだろう」

《その答え、私なら、わかるわよ?》

「え……」

 コダマタウンの公園に隠れるように身を潜める青年を見つけ、ミソラは声を上げた。

「スバル君だ!?」

 若干、ゴツく育った未来のスバルに未来の自分は満面の笑顔で未来のスバルに抱きつき、キスをした。

「ッ……!?」

 なんの抵抗もなく、キスを受け入れるスバルにミソラは恥ずかしそうに顔を真っ赤にした。

「私たちって、普段からあんなキスしてるの」

《ええ……普段からね?》

 ぐうの音の出ないミソラにハープが声を上げた。

《あ、デートに行くみたいよ。電波変換するわよ?》

「あ、うん!」

 バッとハンターVGを取り出し、叫んだ。

「電波変換、響ミソラ、オン・エア!」

 電波ロードの上に乗るとハープ・ノートは未来の自分たちの真上に立ち、ボッと顔を赤らめた。

「大人の腕のくっつき方だ……」

 そっと触れるように、それでいて決して距離を置いたわけじゃないソフトな抱きつき方にハープ・ノートは擬似的に真似てみた。

「……ダメだ、マネできない」

《ベタベタすることしか知らない子供じゃ、まだ出来ない芸当ね?》

「格好いいのに、出来ないなんって」

 泣き出しそうな顔をするハープ・ノートにハープの声が響いた。

《それよりも、追いかけるわよ。車に乗るみたい?》

「少し古臭いモデルだね」

《まぁ、若いからこれが限界なんでしょうね?》

 軽自動車に未来のミソラを乗せると未来のスバルも運転席に乗り、鍵を差した。

「……」

 電波空間だから、車に追いつくことなど朝飯前だが、窓から見える二人の会話にハープ・ノートは下唇をかんだ。

「いいな……」

 大人の自分たち……

 今の自分たちにない落ち着いた関係。

 常にくっついてないと不安でしょうがない自分とは違う。

 お互い時間がなくっても繋がっていると確かな自信のある顔。

 車が高級ホテルの地下駐車場に止まると二人は車から降り、鍵をかけた。

 また、そっと腕を組み、ホテルの中へと入ろうとした。

「すごい……こんな高級ホテル、私、来たことない」

《大丈夫よ……あの二人も、初めてみたいだから?》

「え」

 今更になって、ハープ・ノートは未来の自分たちの歩き方が緊張のあまり、左右同時に手と足を出していることに気付いた。

「ぷっ……変なの」

 クスクス笑い、目にたまった涙を拭った。

「まだ、来慣れてないんだね……ちょっと安心した」

《そんな事、言っていいのかしら?》

「え」

《考えて見なさい。男が高級ホテルに女を連れ込むなら、用件を一つしかないでしょう?》

「そ、それって、まさか」

 顔を真っ赤にするハープ・ノートにハープは早く後を追えと急かした。

 

 

 ホテルの高級レストランで予約した席に座ると未来のミソラとスバルは用意されたコース料理をもくもくと料理を食べ始めた。

 その間、会話らしい会話がなかった。

 未来のミソラもスバルも初めての高級レストランに緊張し、お互い失敗しないかそれだけで背いっぱいだったのだろう。

 食事もある程度進むと、余裕が出来てきたのか、スバルの優しい声が響いた。

「ミソラ……子供の頃のこと覚えてる」

 呼び捨てだ?

 心の中で感動を覚えるハープ・ノートに未来のミソラも慌てて首を縦に振った。

「イチャイチャしまくってたよね。なんだか、今思うと恥ずかしいね」

「まぁね……」

 ニコッと微笑み、未来のミソラの顔を赤らめさせた。

「……ミソラ。今回、君をここに呼んだのは大切な話があるから呼んだんだ」

「た、大切な話」

 ゴクンッと喉を鳴らす未来と現在の自分にスバルは意外な言葉を発した。

「恋人をやめて欲しいんだ」

「え……」

 まるで鏡を見るかのように顔を真っ青にする未来のミソラとハープ・ノートにスバルは厳しい目で彼女を見た。

 ハープ・ノート……いや、未来のミソラはすがるようにスバルに聞いた

「わ、別れるってこと……」

「……」

 そっと目線を離し、自分の持ってきていたカバンを漁りだすスバルに未来と現在のミソラは生きた心地をなくした。

 もし、ここで別れ話を持ちかけられたら、生きていけない。

 不思議なことにハープ・ノートは未来のミソラの気持ちが手に取るようにわかった。

 そして……

「恋人をやめて、俺の奥さんになって欲しいんだ」

「え……」

 パカッと箱が開き、指輪を差し出すとスバルはニコッと微笑んだ。

 未来のミソラは目をパチパチさせ、優しく微笑むスバルを見た。

「……結婚の約束ってこと、それ」

「……結婚してくれるかな」

 不安そうに自分を見る未来のミソラに未来のスバルは柔和な声でささやいた。

「そのつもりでここに呼んだんだよ。最初の言葉はちょっと、意地悪したくなっただけ……」

 子供のように笑うスバルにミソラは……

「スバル君!?」

「んッ!?」

 テーブルを乗り出し、キスをするミソラに周りの客が驚いた顔で彼らを見た。

「ふぅ……」

 唇を離すとミソラは涙を流し、スバルに微笑んだ。

「私を絶対に幸せにしてね」

「……うん、必ず」

「スバル君……大好き!」

 真っ赤な顔で笑いあう二人にハープ・ノートは不意に自分の意識が霞んでいくのを感じた。

「あれ……これって」

《ミソラ……すごいノイズ反応よ。意識が》

 バタンッと倒れこんだ。

 

 

「うぅ……」

 目を覚ますとミソラはギョッとした。

「スバル君!?」

「えッ……!?」

 いきなり、情熱的なキスをされ、驚くスバルにミソラは十秒二十秒とキスを繰り返し、ようやく唇を離すと荒ぶる心臓を押さえ、スバルに聞いた。

「私、なんで、スバル君の家にいるの」

 彼のベッドから起き上がり、ミソラは不思議そうにスバルを見た。

「それはこっちのセリフ」

 腰に手を当て、怖い顔をした。

「夜中急に君が電波空間から落ちて、僕の部屋に現れたんだよ。いったい、なにしてたの」

「なにって……それは……あれ」

 怖い顔をするスバルにミソラは不思議そうな顔をした。

「私、なにをしてったけ。なんだか、大切なことをしてた気が」

「まぁ、思い出せないなら、大したことないか」

 ミソラが無事だったのを確証するとスバルはホッとした顔でケラケラ笑った。

「スバル君にとっても大切な話だと思うのに……」

 思い出せない記憶を思い出そうとし、頭を抱えるミソラにスバルは優しく頭をなでた。

「思い出せないことよりも、今は思い出せることをしよう」

 そっと、映画ポスターを出した。

「ミソラちゃんの主演映画……今日、観に行く約束でしょう」

「う、うん!」

 バッとベッドから飛び降りるとミソラはスバルの腕に抱きついた。

「ミ、ミソラちゃん」

 いきなり抱きつくミソラにスバルは顔を真っ赤にした。

 ただ抱きつくだけじゃない、どこかソフトで決してベタベタしすぎない大人な抱きつき方だった。

「ミソラちゃん……どこでそんなくっつき方覚えたの」

「え……どこか変だった」

「いや……別に」

 顔を真っ赤にし、スバルはミソラが少し大人になった気がし、胸をドキドキさせた。

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