流星のメモリアル   作:スーサン

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ナチュラルデート

「でね~でね~……」

 ハンターVGに向かって笑顔を降りまくり、ミソラは快活な声を上げた。

「今度は雪山にある秘境の温泉があるんだ。今度、一緒に入ろうよ」

 ハンターVGに映るスバルの顔に満足げな笑顔を浮かべ、ミソラはニヤッと唇の端を吊り上げた。

「水着、必要。それとも不要」

 スバルの顔が真っ赤になった。

『ねぇ、ミソラちゃん……』

「なに、スバル君」

 崩れることのない満面の笑顔にスバルは言葉を捜すように顔を上げた。

『たまにはソフトなデートしない?』

「ソフト」

 頭の中でドデカイソフトボールを想像し、すぐに違うなと首を振った。

「ソフトって……どんな風な」

『えっと……例えば、普通に映画に行くとか、普通に茶を飲むとか?』

「普通に映画やお茶……ね」

 目線を泳がせ、ポンッと手を打った。

「それだ!」

『それ?』

 目をキョトンとさせるスバルにミソラはハンターVGを専用の充電器に立てた。(携帯電話のアレと想像して?)

「最近、私たちのデートには意外性……簡単に言うとマンネリ化が進んでる気がしてんたんだ」

『マンネリね?』

 若干、違うんじゃないかという顔をするスバルにミソラはビシッと指差した。

「答えは簡単だったんだよ!? 奇をてらし過ぎれば、奇は普通になる! 逆に言えば、奇を普通にすれば意外性に換わる!」

『わかるような……わからないような』

 頭の上に?マークを何個も点滅させ、スバルは首をかしげた。

「明日、街に行こう! 待ち合わせは噴水前ね……時間は九時ちょうどで!?」

『え……ちょ!?』

 ぷつんっと電話を切り、ミソラは一気にベッドにダイブした。

「よぉ~~~し……明日、頑張るぞォ!」

 

 

 次の日……

「ふぅんふんふ~~ん♪」

 約束の噴水前で前髪を弄るとミソラはふふっと笑顔を浮かべた。

「こうやって待つのもいいもんだね」

《いつも、自分から誘拐しているもんね?》

 ハープの皮肉も気に留めず、ミソラは立ったままステップを踏んだ。

「まだかな……スバル君」

 踊るようなステップを踏みながら、腕時計の時間を確認すると苦笑した。

「早く来すぎたかな」

 約束の時間まで、まだ三十分も余裕があった。

 頭の中で今日のデートのスケジュールを連想し、ウフフと可愛く笑った。(何人かの男子が顔を真っ赤にして振り向いたが気付かなかった)

「よしよし……無駄のない一日になるぞ」

「なにが無駄がないの」

「キャッ!?」

 いきなりスバルの顔がアップで映り、ミソラは尻餅をつきそうになった。

「危ない!?」

 咄嗟に倒れそうになったミソラの手を掴み、ギュッと引っ張った。

「よっと!?」

 自分の胸に向かって抱き寄せ、スバルは大丈夫かと顔を覗いた。

「……」

 スバルの胸に顔をうずめ、ミソラは顔を赤らめた。

「どうしたの、ミソラちゃん……どこかぶつけた」

「あ……」

 すぐにスバルの胸から離れて、アハハと誤魔化し笑いを浮かべた。

「な、なんでもないよ……で、でも、スバル君、えらく早いね。まだ、三十分も余裕があるよ」

「いや……」

 スバルも恥ずかしそうに顔を赤らめ、そっぽを向いた。

「普通のデートなら三十分早く来るのは基本かなって」

《完璧にマンガから得た、マニュアルデート……》

 ぷつんっとハンターVGの電源を切り、二人は怖い顔でハンターVGをカバンに放り込んだ。

「邪魔者はしばらく退散ね」

「そうだね」

 陰のある笑みを浮かべると、二人はデートを始めようかと目線を合わせた。

「さて……最初はどこに行こうか」

「まずは映画館! 実はね今、公開中の大人気アクション映画「X対∑」がやってるんだよ」

「ああ、あの名作ゲームのリメイク映画ね!?」

 顔を輝かせミソラも早く観にいこうと手を引っ張った。

 

 

 映画が始まると二人はゴクリと喉を鳴らした。

 「X対Σ」は正義のレプリロイド、Xと悪のイレギュラー∑の戦いの軌跡を描いた葛藤と苦悩の人間ドラマである。

 主人公、Xはプログラムに異常をきたし、人間に危害を加えるロボット、イレギュラーを始末する、イレギュラーハンターであった。

 ∑もかつてはイレギュラーハンターでXの上司であったが、ある日、人間に反旗を翻し、イレギュラーとなった。

 Xはかつての上司を倒すため、過酷な戦いに身を投じることとなった。

 その戦いは心優しいXにはあまりにも非常で過酷な運命であった。

 かつての仲間との対決……

 殺しあわねば勝ち取れない平和と自由……

 そして、仲間との別れ……

 涙無しでは見れない映画に二人は常時、目が離せず、ギョッと目を見開いていた。

「あ……」

 映画もクライマックスになり、強敵、∑が最終形態へと変化したシーンでミソラは自分の手がスバルの手で握られていることに気付いた。

「ス、スバル君」

「……」

 映画に夢中で自分がミソラの手を握っていることに気付かないスバルにミソラは顔を赤らめた。

「よ、予定通りだけど……こうも予定通りだと逆に怖いな」

 とかいいながら、えへへと締りのない笑顔を浮かべ、バァンと怒号がなった。

「え」

 フラッシュバックしたスクリーンにミソラは顔を上げた。

『私の名前はトーマス・ライト……Xを作った科学者だ』

 エンディングロールが流れ、ミソラは最後のシーンを見逃したとショックを受けた。

「あ……!?」

 スバルも今になってミソラの手を掴んでいることに気付き、慌てて離した。

「ご、ごめん……痛くなかった」

「う、うぅん……むしろ」

 いつも以上にいい雰囲気になり、ミソラはまた、締りのない笑顔を浮かべた。

「映画、終わっちゃったね……次、どこに行こうか」

「次はランチ! おいしい喫茶店があるんだ!」

「よし、そこで決まり! えっと……」

 そっと手を出すスバルにミソラは顔を挙げ、目をパチパチ瞬いた。

「うん!」

 顔を輝かせギュッと手を握ると、行こうと引っ張った。

「こっちだよ!」

 

 

 喫茶店はどこか気取らないシックな感じのいい雰囲気のお店だった。

 流れている音楽もクラシックなどの落ち着いたBGMでメニューも軽食を中心にしたオシャレな感じであった。

 スバルはオススメと書かれたスパゲッティを注文し、ミソラはホットケーキを頼んだ。

「いいお店だね……」

「でしょう、でしょう。昨日一晩かかって探したんだから」

「そっか……じゃあ、次のデートは僕が探さないといけないかな」

「楽しみにしてるよ」

「お客様……ちょっとよろしいでしょうか」

「はい」

 満面の笑顔で自分たちを見るウェイトレスのお姉さんにミソラは顔を上げた。

「当店はただいま、恋人キャンペーンをやっておりまして、アイスフロートジュースを一個、ストロー二個付きで、無料でお出ししておりますが、どうしますか」

「アイスフロートジュース……しかも、ストロー二個!?」

 顔を輝かせるミソラにウェイトレスのお姉さんは承諾とメニュー表にペンを走らせた。

「はい! すぐにお持ちします!」

 そっとミソラに耳打ちし、

「頑張ってください」

 グッとスバルに見えないようガッツポーズを取り、ミソラとウェイトレスは離れた。

「なに、話したの」

「なんでないよ……それよりも、すぐに来るようだよ」

 言葉の通り、一分も経たないうちにアイスを乗せたメロンソーダが二人のテーブルに乗せられ、顔を輝かせた。

「おいしそうだね、ミソラちゃん」

「うん!」

 ニコニコとウェイトレスさんはなにも言わず、笑顔を崩さないまま、去っていった。

「ミソラちゃん、先に食べなよ……一つしかないんだし」

「なに言ってるの」

 ミソラはストローを二本、ジュースに差し、テーブルにヒジをつき、アゴを乗せた。

「ほらほら……待たせない待たせない」

「……ミ、ミソラちゃん」

 一瞬、顔を赤らめ、すぐ諦めた顔をした。

 チュ~~~~と二人でアイスの乗ったメロンソーダが吸い飲み、二人はスプーンで残ったアイスをすくった。

「はい、スバル君、あ~~~ん」

「ちょ、ミソラちゃん……これはちょっと」

 しどろもどろになりながら、スバルは口をア~~ンと開けた。

「パクッ……」

 もぐもぐと冷たくも甘いバニラアイスの味にスバルは満面の笑顔を浮かべた。

「うん……とってもおいしいね」

「ふふっ……残りは私が貰うね」

 元々、ラブラブにジュースを飲むことが前提に作られたジュースのためか、アイスの部分は結構、お情け程度だった。

 だが、逆にそれがたった一回の楽しみを演出できて、二人にはとてもありがたかった。

 それから五分としないうちにランチとして頼んだ、スパゲッティとホットケーキが届いた。

 味は申し分なかった。

 

 

「スバル君! そっちそっち!?」

「こ、こう!?」

 UFOキャッチャーの隣でスバルに指示を出すミソラは大声でストップと叫んだ。

「よし、入射角、バッチリ! クレーン降下!」

 ウィ~~~~ン……ガシャン!

「お……おお!?」

 奇跡か、偶然か、振り下ろされたクレーンのくちばしに二体の人形を捕まえ、ポトッと景品として二人のもとには落ちた。

「やった! 初めてのクレーンゲームで商品が手に入った!?」

「私たち天才かも!?」

 人形を見て、二人ともクスッと笑った。

「僕達の人形だね」

「そうだね」

 腕に抱いたロックマンの人形とハープ・ノートの人形に二人は満悦とした笑顔を浮かべた。

 

 

「りゃっ……!」

 ゴトンッとボウリングの玉がガーターに落ち、スバルは絶叫した

「だぁぁぁぁぁぁ……また、落ちたぁぁぁぁぁ!?」

「アハハ……スバル君、下手すぎィ!」

 満面の笑顔でボウリングボールを握ると意外と綺麗なフォームでボールを投げた。

 ゴトン……ごろごろ……ガタン……

「……」

 見事にガーターに落ち、ミソラの笑顔が消えた。

「ボウリングって、意外と難しいね」

「あ、君たち……ボウリングがガーターに落ちるなら、レーンを立てるといいよ」

「はい」

 気さくな店員さんがガーターにセットされたレーンに手をかけるとガタンッとバーが降ろした。

「こうすれば、ガーターに落ちないよ」

「あ、ありがとうございます……」

 店員さんに感謝しながら、二人はまたボールを投げた。

「あ……」

 また、ガーターに向かってボールが向かい、レーンがボールを弾き、軌道を変えながら見事にストライクを取った。

「やった、スバル君!? 初、ストライクだよ!?」

 大喜びで飛び跳ねるミソラにスバルもよぉ~~しと腕まくりした。

「僕だって!」

 スバルもボールを投げ勢い良く投げた。

 ガタンッとレーンにボールがぶつかり、軌道を変えるとピンが全部、倒れた。

「やった! ボウリングって、楽しいかも!?」

「じゃんじゃんやっちゃおう!?」

 戻ってきたボールを手に取り、二人はまたゲームを始めた。

 もっとも、その全てがガーターのレーンにぶつかり、ストライクを打つという低レベルの高次元バトルであったが……

 これが世界を救ったことのある男女の戦いである。

 

 

「こっちこっち!」

 夕日が沈みかける時間になるとミソラはスバルを連れ、誰もいない展望台まで来ていた。

「綺麗だね、夕日……」

「そうだね、ミソラちゃん」

 展望台の窓から見える夕日にウットリしながら、ミソラはスバルの手を握った。

 展望台に誰もいないことを再度、確認するとスバルはミソラの身体を自分のほうに向かせ、そっとアゴを上げた。

「……今日はスバル君からなんだ」

「最後くらい、男がリードしないとね」

 チュッと唇が重なり、二人は強く抱きしめあった。

 夕日が完璧に沈み、展望台にライトがつくと二人は、そっと唇を離し、えへへと笑った。

「終わっちゃったね……デート」

 少し名残惜しそうに目を泳がせるとミソラは寂しそうに笑った。

「同じところに住んでたら、送り迎えも出来るんだけど……そうも行かないもんね」

「そうだね……でも、使っちゃおうか」

 ハンターVGをカバンから取り出し、電源を入れるとスバルはイタズラっ子のように笑った。

 ミソラもハンターVGを取り出し、微笑んだ。

「電波変換!」

 二人の姿が展望台から消え、夜空に二つの流星が生まれた。

 

 

 家に戻るとミソラは今日のデートので余韻に浸りながら、ベッドにダイブした。

「楽しかったな……今日のデート」

 ベッドの上でゴロンゴロンッと寝転がり、クレーンゲームで手に入れたロックマンの人形を抱くとウフフと笑った。

「これは応用すれば、飽きのこないデートが出来そう」

《それなんだけど、ミソラ?》

「なに、ハープ」

《もうそろそろ、新曲の締め切り日が近づいてるけど、大丈夫なの?》

「あ……」

 思い出したように顔を挙げ、すぐに枕に顔を鎮めた。

《落とすの?》

「まさか……今、出来たの!」

 嬉しそうにまた人形を抱き、ゴロンゴロンと寝転がると、ミソラはリズミカルに鼻歌を歌った。

「ナチュラルデート……今日の私とスバル君のデートの歌だよ」

《……》

 呆れてものの言えないハープにミソラは鼻歌を歌いながらだんだんと眠りについていった。

 今日のデートの記憶を夢に見るように幸せそうに……

「スバル君……大好きだよ……デート、楽しいよね」

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