流星のメモリアル   作:スーサン

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バトルホームワーク

「うぅ~~……なんで、こうなったんだろう」

 ギロッと睨まれ、スバルはビクッと身体を固めた。

「スバル君~~……ここがわからないんだけど」

「スバル君! ここ、間違ってる!」

 ほぼ、同時に声をかけられ、スバルはミソラかルナ、どちらのほうを向けばいいか悩んだ。

「ミソラちゃん、自分で問題解きなさいよ!?」

「私はスバル君に聞いてるの!」

 バチバチと二人の火花が飛び、スバルは泣き出しそうになった。

 事を遡ること、それは一時間前になる。

 

 

 その日はまさに宿題地獄であった。

 というのも珍しく、スバル達の担任、育田道徳がクラスで大激怒したからである。

 温厚、柔和、慈悲、どれを取っても、一流の先生、育田道徳だが、今回は本気で切れた。

 原因は宿題にあった。

 ゴン太を初めとするクラスのほとんどが、先日出された宿題をやってこなかったのだ。

 理由は多々あれど、共通するのは「やりたくない」からだ。

 この理由にはさすがの温厚教師も本気でキレ、道徳は今度の宿題を半分もやらないものには今年の夏休みを補習で潰すと言い出したのだ。

 マジメに宿題をやってきたスバルやルナにはたまったものじゃないが、連帯責任ということで、ルナとスバルは一緒に宿題をすることになった。

 ちなみにゴン太とキザマロは別行動……(面倒見切れないらしい)

「で……ここの公式をこう解けば、いいんだよね」

「そう……これとこれは正解」

 スバルの解いた問題をスラスラと答え合わせし、ルナはふぅとため息を吐いた。

「今回の育田先生、相当本気ね……これは今日中に片付くかしら」

「半分終われば、補習は免れるよ……それよりも、ゴン太達、しっかり、宿題やってるかな」

「後で見に行くわ……キザマロも油断できないし」

 ふんっと鼻を鳴らすルナにスバルは気の毒にと苦笑いした。

「やっほ~~~……スバル君、遊びに来たよ!?」

 軽快なギター音が響くとスバルは後ろを振り向き、苦い顔をした。

「ミソラちゃん」

「なにやってるの……二人とも」

「宿題よ!」

 ピシャリとルナの切り捨てるような言葉が響いた。

「宿題やってるの」

「まぁ……今回は本当にやらないと危ないから」

 しどろもどろに目線を泳がせるスバルにルナの声が遮った。

「誰かさんと違って、こっちは宿題で忙しいの! 遊びだったら、他所でやって!」

「むぅ~~~~!?」

 頬をふぐのように膨らませるミソラにスバルはゴメンねと手を合わせた。

「いいもん!」

 光と同時にミソラが消え、

「勝った!」

 と、ルナは拳を握り締めた。

 しかし、すぐにまた、光が瞬いた。

「スバル君、私の宿題も見てよ!」

「え……」

 スバルの隣に座るとミソラは溜まっている宿題のノートをバサッと開いた。

「これ、来週までに提出なの! 手伝ってくれるよね」

「手伝うわけないでしょうが!?」

 バシッとテーブルを叩き、ルナはスバルを挟んで隣に座るミソラを睨んだ。

「アナタ、違う学校の生徒でしょう!? 宿題くらい、自分でやりなさいよ!?」

「学校は関係ないでしょう!? ねぇ、スバルくぅ~~ん♪」

 二つの視線がキツく集中し、スバルは背中に冷たい冷たいものを感じた。

「……えっと」

 隣のルナを見た。

 怖かった。

 ミソラの顔を見た。

 こっちも怖かった。

 どちらを立てても、痛い目を見そうだが、確かに他校の生徒の宿題を見る義理は自分にはない。

 ここは薄情だが、ルナを立てることに……

「スバル君……委員長に色々、話すよ」

「ギクッ!?」

 スバルに聞こえる程度の声で脅しかけるミソラに慌てて立ち上がった。

「さぁ、宿題片付けよう! 他校母校関係なく、宿題は片付けないと!?」

「だよねぇ~~~」

 ニッコリ微笑むミソラにルナの視線が厳しくなった。

「男の子って本当に……」

「アハハ……ミソラちゃんはどこがわからないの」

 乾いた笑いを浮かべ、ミソラを見た。

「……」

 一瞬、目をそらし、

「わからないところが……わかりません!」

 ルナの拳が振りあがりそうになり、慌てて止めた。

「わかった、わかったから……僕が教えるから、委員長の神経をさかなでないで」

「はぁ~~い!」

 早速、算数の宿題を広げ、ミソラは肩に抱きつくように質問してきた。

「この問題、どう解くの」

「あ、ああ……これね」

 問題文の一つをスラスラと鉛筆で書き、内容を説明した。

「これで答えが出るよ」

「おお~~……!?」

 目を輝かせるミソラにルナの怒声が飛んだ。

「スバル君、ここ間違ってる!?」

「え、ど、どこ」

 ミソラと違い、国語をしていたスバルにルナはビシッと漢字の一文字を当てた。

「ここは手偏じゃなく、獣偏! これじゃあ、まったく、違う意味になる!」

「あ、本当だ!?」

 慌てて間違っている箇所を訂正し、ルナの視線がミソラに向かった。

「むぅ~~~……」

 スバルの誤字訂正が終わると、ミソラは間髪いれず、違う問題を指差した。

「ここって、どの公式を入れればいいの!?」

「ああ、ここはね」

 解こうとするスバルにルナの怒声が飛んだ。

「スバル君、問題が一つ飛んでる! ここも解く!」

「は、はい!」

 慌ててルナのほうを向き、

「スバル君、ここ、三択なんだけど、どれが正しいか教えて」

「ああ、それはね」

「スバル君! 国語が終わったら、今度は社会よ!?」

「は、はいぃ!?」

「スバル君、理科も教えて欲しいんだけど!」

「あ、ああ……い、いいよ」

「スバル君! よそ見しない!」

「スバル君! ちゃんと、私を見てよ!?」

「スバル君!」

「スバル君!」

 スバルスバルスバルスバル……

 まるで木霊のように怒鳴り散らす二人の美少女の声にスバルは耳をふさぎたくなった。

「なんで、こうなるの」

 不毛とも呼べる意味のない争いが三時間も続き、宿題もだいぶ減ると、スバルはバタンッと背中から倒れた。

「終わった……」

 スッカリ、やつれた顔でため息を吐くと上からミソラとルナ怒鳴り声が聞こえた。

「だから、違うって言ってるでしょう!?」

「なんで、この問題がこの公式で解かないといけないの!? もっと、簡単な公式教えてよ!?」

「算術に文句言わないでよ!? 私だって、これ以外の公式は知らないわよ!」

 気付いたら、二人はスッカリ、スバルを無視し、お互いの問題を解きあっていた。(正確にはルナがミソラの勉強を見ていた)

「……」

 その様子を倒れながら眺め、意外と仲がいいのかなと口をポケ~~開けた。

 それからさらに一時間し、二人の顔に安堵の色が見えた。

「ようやく終わった」

 スバルに寄りかかるように倒れ、二人とも、ふぅと息を吐いた。

「ゾクゾク……」

 耳に息がかかり、背中をゾクゾクさせるとスバルは慌てて起き上がった。

「二人とも、疲れたでしょう……お茶を用意するよ」

「……」

「……」

「ん」

 返事を返さないミソラとルナにスバルはそっと肩を揺すった。

「あ……」

 顔を覗くと二人とも安らいだ顔で寝息を立てていた。

「寝ちゃったんだ……まぁ、頭使ったからね」

 そっとテーブルをどかし、自分のベッドから毛布を取り出すと、二人にかけてあげた。

「今日は疲れたけど、それなりに楽しかったかな」

 眠っている二人にスバルはクスッと笑い、ミソラの頬にキスをした。

「……スバル君」

「ッ……!?」

 ビクッと離れ、スバルは仰天した。

「お、起きてたの」

「うん……今、起きた。スバル君、キスするなら、頬じゃなくって」

 ゆっくり起き上がり、ミソラはアゴを前に出し、目を瞑った。

「ここでしょう」

 唇を差し出すミソラにスバルは一瞬、迷い、そっと彼女の頬に手を添えた。

「チュッ……」

 

 

おまけ

 

 

「なんとか、みんな宿題をやってきたみたいだな」

 いつもの柔和な笑顔を浮かべる道徳にクラスメート全員がホッとし、ため息をはいた。

「じゃあ、前にやらなかった宿題を、また出すから、ちゃんとやっておけよ」

「ゲェェェェェェッ……!?」

 素っ頓狂に驚く生徒たちに道徳はアハハと笑った。

「冗談だ、冗談! もっとも、牛島はやってもらうがな」

「え……なんで、俺だけ」

「宿題は自分でやるものだ……最小院と間違っている部分が同じだったが、偶然か」

「あ……」

 顔を真っ青にするゴン太にルナの鋭い視線が飛んだ。

「ゴ~~~ン~~~太~~~~~~!?」

「ひぃ……委員長!?」

 それから数分、地獄の委員長タイムが始まり、担任の道徳ですら、手出しが出来ないほど、恐ろしい事件がクラスにおきた。

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