ドカンバカンドキン!?
「バカァァァァァァァァッ!?」
部屋から飛び出すミソラを見て、母・アカネは不思議そうに部屋の中で引っくり返る息子を見た。
「どうしたの、スバル……逆さで寝ちゃって」
「これが寝てるように見える」
生傷だらけで引っくり返った身体を元に戻し、スバルは首をコキンコキンと鳴らした。
「酷い目にあった……」
「なにがあったの……」
いぶしかげに問いかけるアカネにスバルは聞いてくれとアグラをかいた。
「実はさっき……」
三十分前……
「え……今度の土曜、デートできない」
キョトンとするミソラにスバルは申し訳無さそうに頷いた。
「実は今度の土曜、クラスの合同イベントで山岳登りがあるんだ……」
「山岳登り」
呆気にとられた。
「そんなの電波空間を使えばいつだって行けるじゃん!」
「みんなと一緒にいくことに意味があるの……ミソラちゃんもワガママ言わないで、たまには僕の都合も考えてよ」
「ワガママ……」
カチンッときたのか、片頬を吊り上げるミソラにスバルはバシンッと手を合わせた。
「本当にごめん! この埋め合わせは……ミソラちゃん」
黙ったままふるふる身体を震わせるミソラにスバルはそっと顔を覗いた。
「そう……スバル君は私の言動がワガママだって言うの」
「あ……いや」
どうやら、失言をしたとスバルは慌てて弁解した。
「そ、それは言葉のアヤだよ。でも、ちょっと自分勝手かなって……」
ごにょごにょ口を動かすスバルにミソラの目がキッと吊り上がった。
「バトルカード!」
「う、うわぁ……!?」
時間は戻り……
「てことがあったの……まったく、最近、ミソラちゃん、ワガママ過ぎだよ……」
「そうね……確かに悪いわね」
「母さんもそう思うよね」
同意を得られて得意げなったのか鼻を鳴らすスバルにアカネはビシッと指差した。
「スバルが全部悪い!」
「え……」
自分を指差すスバルにアカネは声を荒げ怒鳴った。
「ワガママは女の特権って言うでしょう!? ミソラちゃんのワガママくらい受け止められないでなにが男よ!?」
「僕が悪いの」
状況が飲み切れてない顔で問いかけるスバルにアカネはふんっと鼻息を荒立てた。
「悪くないところがあるなら、全部言いなさい!」
「えっと……山岳登りは前から話してたことだし、デートはほとんど毎日してるし、クラス合同イベントはできるだけ参加したほうが……」
「このバカごぼう野郎!?」
「アベシ!?」
頬を殴られ空中でスパイラル回転し、壁に叩きつけられるとスバルは鼻血を出し聞いた。
「む、息子にこれはないんじゃないの」
血が出る鼻を押さえ、スバルはガクガク震える足を立たせた。
「今すぐ、ミソラちゃんに会いに行って、埋め合わせの約束をしなさい! するまで、家どころか、今度の山岳登りにすら参加させないからね!?」
「そ、そんな!?」
「いいから行け!?」
二階にもかかわらず窓から実子を外に放り投げる母にスバルは慌てて地面に着地し、逃げるように走り出した。
「ねぇ、僕のなにが悪いの」
《運だな……》
ハンターVGのウォーロックの助けも得られないとスバルは本気で泣いた。
「あの後姿は」
トボトボと後姿から哀愁を漂わせ歩く少女の背を見つけ、スバルは慌てて叫んだ。
「ミソラちゃん、ちょっと待って!?」
「あ……」
振り向くとミソラの目線がキッと吊り上り、光となって消えた。
《電波ロードを渡って逃げやがったな?》
「どこまで面倒臭い娘なんだ」
カコンッと空き缶が頭上に当たった。
《電波空間から放り投げたな?》
スバルも額に青筋を浮かび、切れた。
「アァァァァ!? こうなったら、どっちが正しいか、正面切ってわからせてやる!?」
ハンターVGを構えた。
「トランスコード・シューティングスターロックマン!」
電波ロードに立つと、ロックマンに変身したスバルは同じようにハープ・ノートに電波変換したミソラを見つけ、走り出した。
「待てぇぇぇぇぇぇ!?」
一瞬で二人の足元が海を渡り、遥か遠くの地、コメリカへと着いた。
「へい、ジョニー……ジャパンのメガマンって知ってるかい」
「オーー知ってるよ、マック! スターフォースメガマン! 地球の危機を三度も救ったヒーローだろう」
「オ~~! やっぱり、ベストフレンドは話が通じるね!?」
ガッと首に腕を回すと二人に横から声の高い少年の怒鳴り声が聞こえてきた。
「ミソラちゃん、待てぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「スバル君のバカァァァァァァァァァ!?」
すごい勢いでジョニーとマックの横を通り過ぎる少年たちに声を荒げ叫んだ。
「スターフォースメガマンだ!?」
「サイン、プリーズ!」
光とともに消えたスバルとミソラにジョニーとマックは興奮冷め切れず叫んだ。
「金を貯めて、日本に行くぞ、相棒!」
「オウ、オタ文化体験だぜ!」
標高8,848mの世界地の山の上で男たちは荒い息を吐き、両手を伸ばし、叫んだ。
「ようやく登りきったぞぉぉぉぉぉぉぉ!」
旗を大地に刺し、さらに叫んだ。
「俺たちは世界一の山を征服したぞぉぉぉぉぉ!?」
「やったぁぁぁぁぁぁぁ!?」
隣から凄まじい怒鳴り声が響いた。
「ミソラちゃん、こんな所まで逃げて、観念したらどうなの!?」
「スバル君こそ、自分の不実を認めたらどうなの!?」
走り去っていくスバルとミソラに男たちは目を点にした。
「あのガキ共はなにものだ」
「ハァハァ……」
「はぁはぁ……」
部屋の真ん中で重なるように倒れるとスバルはミソラに聞いた。
「ミソラちゃん……いい加減、どっちが悪いかハッキリさせない」
「私、悪くないもん」
立ち上がる力もないのか倒れたまま自分に覆いかぶさるミソラにスバルはふぅとため息を吐いた。
「ミソラちゃん……僕は一時期、不登校だった」
「うん、知ってる」
あの時は目がまだ生きた感じがしてなかった。
自分もそんな感じだったとミソラはふふっと微笑んだ。
「だから、失った分の時間を僕は取り戻したいんだ……」
「それが山岳登りなの」
「みんなと一緒に行動できる喜びはみんなが教えてくれたことなんだよ……もちろん、ミソラちゃんも」
「……」
ミソラの顔が始めて真顔になり、ムクリと起き上がった。
「勝手にすれば!」
吐き捨てるようにミソラは電波空間へと消えていった。
《いいのか、ホッといて……?》
「もう、喋る力も残ってないよ」
ガクッと目を回すように眠るとウォーロックは呆れた。
「宇宙一のバカップルどもが?》
家に帰るとミソラは部屋に飾ってあるスバルとのアルバムを開いた。
「……学校か」
今まで考えてもいなかった発想だった。
自分はアイドルだから、学校という概念があまりなく、スバルと一緒にいられる時間のほうがずっと楽しかった。
でも、スバルは学校にいる時間すらも自分にとって大切な時間にしている。
自分と比べると世界が広く深いのだ……
「……よし!」
グッと拳を握り締めるとミソラは電話を手に取った。
翌週の土曜日……
「あ~~……突然だが、今日は訳あって、急遽、新しいメンバーを加えることにした」
担任の道徳の言葉にクラス全員がザワついた。
「キザマロ……急遽ってなんだ」
「いきなりってことです」
「……」
言葉の意味が掴みきれず、?マークをちらつかせるゴン太にキザマロは説明が面倒臭くなりため息を吐いた。
「それじゃあ、挨拶なさい」
道徳はニッコリ微笑み、隣の少女の背中を押した。
「響野ウミです……他校の生徒ですが、今日はよろしくお願いしますね」
ニッコリ微笑む、三つ編みのメガネをかけた少女にゴン太は不思議そうに聞いた。
「なぁ、あの娘、ミソラちゃんに似てないか」
キザマロのメガネがピカッとつりあがった。
「他人の空似でしょう。ミソラちゃんはあんなイモい格好するわけないでしょう」
「女の子になに言ってるの!?」
バシンッと本気で叩かれ、キザマロはごめんなさいと謝った。
「響野の世話はスバルがしてやれ……」
「あ、ハイ!」
慌てて返事し、小走りで走ってくるウミを迎え入れた。
「じゃあ、いくぞ!」
ハ~~~イと元気のいい返事が返り、ウミは慣れた感じでスバルの手を握った。
「楽しくなるといいね、スバル君」
「やっぱり、君だったのね」
呆れた顔をするスバルにウミはニコッと微笑んだ。
「学校のイベントを一緒に過ごすのもある意味、夢だよね」
「……まぁ、それもそうだね」
ウミは静かにツゥと自分の唇を前に出した。
が、手で押さえられた。
「皆が見てないところでね……ウミちゃん」
「ぶぅ~~……」
気に食わない顔でウミは繋いだ手に力をこめた。
「自由行動、一緒に過ごそうね」
「うん!」
元気良く返事を返し、ウミは幸せそうに歩き出した。
この後、ウミの正体がバレるのに時間はかからなかった……