「へぇ~~……レジャープールが開放されたんだ」
新聞についてきた広告を読みアゴを上げると、ミソラはウ~~ンと唸った。
「……ウォータースライダーとか気持ちよさそうだな」
少し考えた。
もうちょっと考えた。
かなり考えた。
そして……
「よし!」
バシッとアグラをかいた膝を叩いた。
「うわぁぁぁぁぁ!? ウォータースライダーだ!」
目の前に立つウォータースライダーにミソラは目を輝かせた。
「ねぇ、スバル君、流れる滑り台だよ!? よく見て見て!?」
ぶんぶん手を振るミソラにスバルの失笑が漏れた。
「ちゃんと見えてるよ……でも」
腕を組み、うんうんと頷いた。
「電波空間を使って海にはしょっちゅう行ってるけど、プールって発想はなぜかなかったな」
「便利すぎると忘れちゃう、身近なものだね」
レジャープールにミソラはピョンピョン跳ね、ハシャいだ。
「早速、泳ごうよ」
「待って……まずは準備体操かね」
「え~~……」
唇を尖らせた。
「そんなのしないで、早く、ウォータースライダーに乗ろうよ!?」
「あ、ちょっと……」
無理やり手を引っ張られ、スバルはまったくと呆れた。
「どうなっても知らないからね」
「ちょうど空いてるよ! 二人で滑ろうね」
「も、もぅ……」
スキップする感覚でウォータースライダーの階段を上ると係員に二人で一緒に滑っていいか聞いた。
「いいですよ」
ニッコリ微笑み、念を押した。
「でも、危ないことしちゃダメですよ」
「はぁ~~~い!」
手を上げ、ウォータースライダーの入り口の前に座るとミソラは早く早くとスバルを呼んだ。
「ほら、一緒に滑ろうよ」
「今日のミソラちゃんはテンション高いな」
仕方ないなと背中を支えるように入り口の前に座ると二人はせ~~のと滑り出した。
「キャ~~~~~~♪ サイコ~~~~~~~~♪」
ザッパァァァァァンッ!
「ぷはぁ……」
飛び込んだ水から顔を出し、顔をぷるぷる振ると髪についた水が散った。
「たっのしいね~~~~~……スバル君」
「ミソラちゃん、ハシャぎすぎ……早く出ないと他の人に迷惑だよ」
「うん!」
プールから出ると次にミソラは流れるプールを指差した。
「ほら、次は流れるプールで遊ぼう! 浮き輪とかサービスで貸してくれるみたい! 二人でゆらゆら揺れよう」
「一つしか貸してくれないよ」
苦笑し、係員に浮き輪を借りるとミソラは早速、流れるプールに入った。
「おぉ……ゆらゆらと揺れて、気持ちいい!?」
「浮き輪が流れちゃうよ……押さえてるから、乗っかって」
「スバル君も乗ろうよ」
「二人じゃ、沈んじゃうよ……僕は掴まってるから、早く乗って」
「わかったよ……」
不満そうに頬を膨らませるとミソラは浮き輪に乗ろうとよじ登った。
だが……
「キャッ……!?」
「オワァ!?」
バランスを崩し、バシャンと浮き輪から落ちてしまった。
「ッ……!?」
ミソラの顔が真っ赤になった。
「ス、スバル君!?」
慌てて、お尻で敷いているスバルの顔から離れるとミソラは大丈夫と叫んだ。
『そこ、危ないことしないでください!』
「ご、ごめんなさい……」
慌てて水から顔を出し、謝るとテレたように笑った。
「ごめんごめん……もう一度、支えてるから」
「も、もういいよ……そ、それよりも、重くなかった」
「なにが」
「……覚えてないんだ」
ちょっとガッカリした顔をするミソラにスバルは不思議そうな顔をした。
「残り時間も少ないし、最後はこの波のプールだね」
ズバァンと飛沫が飛び、ミソラは満面の笑みで波のプールに飛び込んだ。
「じゃあ、行こう、スバル君」
「あ、ちょっと待って、ミソラちゃん」
慌てて止めた。
「さっきから遊んでばっかりだよ。少し休まないと疲れちゃうよ」
「これで最後にするから……ねぇ、スバル君」
可愛くおねだりするミソラにスバルは……
「仕方ない……これが最後か休憩かだよ」
「うん!」
波のプールに入るとミソラは早速、深い場所まで潜ろうと泳ぎ始めた。
「ミソラちゃん……波に逆らいながら泳ぐと本当に溺れちゃ」
「うぶぅ……!?」
「ミソラちゃん!?」
水の中に沈むミソラにスバルの顔が真っ青になった。
「まずい!?」
慌ててスバルも水の中にもぐり、ミソラを探した。
(いた!)
水の中で気を失ったのか沈んだまま動かなくなったミソラにスバルは慌てて手を掴み、唇に口を近づけた。
「ッ……」
ミソラの肺に無理やり空気を入れるとミソラの目がカッと開いた。
「ぶはぁ……!?」
口から空気が抜け、慌ててスバルに抱きつくと水の上にあがった。
「うぇぇぇぇぇ……苦しかったよぉぉぉぉぉぉ……」
「いいから、早くプールから上がろう……医務室に行って状態を確認しないと」
「うっ……う、うん」
ズビッと鼻水をすすり、涙を拭うとミソラはスバルに引かれるままプールを脱出した。
「……なるほど、足が吊ったのか」
足を引きずるミソラにスバルは呆れた顔をした。
「ご、ごめんなさい……ひっく」
溺れた恐怖でスッカリ大人しくなったのか泣きはらすミソラにスバルは、優しく撫でた。
「とりあえず、無事でよかったよ……ほら、泣かないで」
「う、うん……ひっく……うぇぇぇぇぇん」
泣き出すミソラに周りの客の視線が冷たくなった。
「……僕が泣かせたわけじゃなかったんだけどな」
スバルとミソラはレジャー施設に備え付けられたカラオケ店で歌を歌っていた。
「~~~~♪」
マイクを片手にノリノリで歌うミソラにスバルはぶすっとした顔で片膝で頬杖をついた。
「溺れたすぐに気分を変えて歌うって、どういう神経してるの」
「あれ……スバル君がそれ言っちゃうんだ」
「え……」
歌をやめるとミソラは不適に下唇を押さえ、微笑んだ。
「溺れてる私の唇にキスをしたのは誰だったかな」
「ッ……!?」
顔を真っ赤にし、スバルは慌てて言い訳した。
「あ、あれは空気を送ろうと、人工呼吸のようなもので……やましい気持ちは!?」
「だったら……」
二個目のマイクをスバルに投げ渡した。
「デュエットしよう。取って置きの歌があるんだ」
「う、うん……わかったよ、仕方ないな」
マイクを口に近づけ、スバルも歌を歌い始めた。
しかし、なぜか、二人が歌ったのは「Double-Action」であったが……