るんるん♪
今日はスバルくんと一緒にピクニックに行く約束してるんだ。
移動手段は、いつも通り、電波空間を伝うけど、場所は見晴らしのいい、山頂なんだ。
きっと、空気も気持ちよくって、最高の一日になると思うんだ。
だから、今日は朝から早くお弁当を作って気合を入れてるんだ。
「どれどれ」
ぱくり……もぐもぐ……
「びみょう~~……」
まずくはないけど、うまくもない……
なんとも微妙な味だ……
「で、でも、時間はまだたくさんあるし、作り直せば……」
『ミソラ、もうそろそろ、約束の時間よ」
「え、嘘、ハープ!?」
時計を見ると私はギャ~~と叫びたくなった。
約束の時刻はまで、後五分と切ろうとしていた。
約束の時間は九時だから、早く電波空間に行かないと間に合わない。
でも、このお弁当じゃ……
「ええい! 女は度胸よ!」
急いでハンターVGを取り出し、掲げた。
「電波変換! 響ミソラ、オン・エア!」
急いで約束の場所まで来るとロックマンに変身しているスバルくんは心配そうに私を見た。
「どうしたの。来るの遅かったから、もしかしてトラブルに巻き込まれたんじゃないかと、心配してたんだよ」
「う、うん……ちょっと、お弁当を作って遅れちゃったんだ」
遅れてきた私を怒るどころか、逆に心配してくれるなんって、スバルくんって、本当にお人好しだよね。
でも、そこがまた格好いいんだけど……
「大丈夫ならいいんだ……そういえば、今日はミソラちゃんのお弁当を食べる約束だったね。楽しみにしてたんだ」
「うん! 任せて……微妙な味だけど」
「うん、最後の部分聞き取れなかったけど、なに」
「う、うぅん……は、早く行こう!?」
山頂までたどり着くと、私とスバルくんは変身を解き、山の新鮮な空気を肺いっぱいに吸い込んだ。
「空気がおいしいね」
「そうだね……あそこに町を一望できるベンチがあるよ。あそこでお昼食べよう」
「うん!」
よく見ると時間もいい頃合いだし、早速、お弁当を渡してみよう。
「は、はい……スバルくんのお弁当!」
「ありがとう」
ニッコリ、お弁当を受け取ってもらうと、私は顔が真っ赤になるのがわかった。
そっと、お弁当のふたを開け、私が作った微妙な味のから揚げを食べるスバルくんに、硬いつばが喉を通った。
どんな反応が返ってくるだろう。
もしかして、まずいって言われるかな……
「うん。とってもおいしいね。ミソラちゃんって、いいお嫁さんになれるよ」
「お、お嫁さん……そ、そんな~~~!?」
なにを言っていいかわからず、顔を隠す私にスバルくんは不思議そうに聞いた。
「それよりも、ミソラちゃんのお弁当は」
「え……」
自分のお弁当を作るのを忘れていたことに気づき、私はマヌケな顔をした。
「しょうがないな、ミソラちゃんは……はい、あ~~ん」
「え……えぇ!?」
箸掴みでから揚げを差し出され、私は呆けてしまった。
「どうしたの。ほら、あ~~ん」
ニコニコ顔でから揚げを差し出すばかりのスバルくんに私は顔を真っ赤にしたまま口を開けた。
「……あ、あ~~ん」
パクリと食べた。
もぐもぐ……あれ。
「おいしい」
「なに、変なこと言ってるの。自分で作ったくせに」
おかしそうにクスクス笑うスバルくんに私は慌てて言い訳しようとし、やめた。
あれだけ微妙な味のお弁当がおいしい理由がわかったからだ。
「スバルくんがいるからか」
スバルくんと一緒だから、微妙な味のお弁当もおいしくなる。
心の中がホッと温かくなるのを感じ、私はスバルくんが箸を奪い、今度は私が、あ~~んをしてあげた。
「ちょ、ミソラちゃん!?」
今度はスバルが恥ずかしがり、私は悪戯心を覚え、何度も「あ~~ん」を繰り返した。
そして、ついにスバルくんも観念したのか、口を開けて、から揚げを食べた。
「あ、あ~~ん……ぱくり」
「おいしい」
「う、うん……でも、結構、恥ずかしいね」
「う、うん……なんだか、もうお腹いっぱいだよ」
私たちはお互いに顔を見合わせることが出来ず、眼下に広がる街並みを見て、胸をドキドキさせた。
「今度はどこに行こうか……スバルくん」
「どこでもいいよ……」
私は一瞬、スバルくんの顔を見て、スバルくんも優しく微笑んだ。
「ミソラちゃんの行きたいところが僕の行きたい場所だから」
「スバルくん……」
私は、スバルくんの言った言葉に嬉しくなり、気付いたら自分の唇をスバルくんの唇に近づけていた。
そっと、彼の首に自分の腕を回し、彼を逃がさないようにするとスバルくんも私の腰に手を回し、目を瞑ってきた。
私の初めての……
ビ~~ビ~~……
『ミソラ、仕事だ! すぐに帰ってきなさい!』
「……」
お邪魔マネージャーの怒声に私は一瞬、ハンターVGを破壊しそうになり、心を落ち着けるように、立ち上がった。
「ごめんね、もう帰らないと」
「いいよ。今日は一緒にご飯が食べれて楽しかったし……そうそう、今度はどこだけど、ちょっとだけ、訂正」
「ん……」
訂正?
「僕の行きたい場所もミソラちゃんの行きたい場所だと僕は嬉しいな」
「ッ……!?」
顔を真っ赤にし、私は慌てて電波変換し、電波空間へと去っていった。
本当、スバルくん、三度も世界を救った勇者だけはあるよ。
恥ずかしいこと平気で言えるし、そして……
そんなスバルくんを私は大好きだってことを気づかれてないってことだよ。
本当、素でたらしだよね……
でも、そんな君が大好きだよ、スバルくん。