「花畑の少女の出演が決まったの!」
「花畑の少女……」
目をパチクリさせた。
「花畑の少女って……あの人気CMの」
「そう! 視聴率12パーセントの人気CM!」
「花畑の少女」とは十歳前後の少女を主役にした儚げな少女が大切な人に花を贈るという花屋の宣伝CMである。
幻想的な撮影技術と触ると壊れてしまいそうな儚げなヒロインが特徴的で老若男女問わず人気のあるCMでもある。
「凄いじゃないか、ミソラちゃん!? プロモーションが出来たら真っ先に僕に見せてね!?」
鼻息を荒くするスバルにミソラの顔が曇った。
「実はそのCMで悩んでるの」
「悩んでる……なんで?
「儚げな少女を作れって言われてるんだけど……その儚げがどう表現すればいいのかわからなくって」
腕を組んで首を唸った。スバルの失笑が漏れた。
「どうしたの」
「確かに今のミソラちゃんじゃ、難しいだろうね」
「どういう事!?」
ムッと口を尖らせた。スバルの顔が優しく微笑んだ。
「だって……今のミソラちゃんは儚いんじゃなく明るいだから」
「……」
訳のわからない顔をした。
「初めて会ったときはミソラちゃんは本当の意味で儚かった……色んなものに縛られて、壊れてしまいそうで……でも、今のミソラちゃんはみんなに笑顔を与えてくれるヒマワリのような女の子だよ」
「ヒマワリ」
いまいち、パッとこないのか顔をしかめた。
「だけど……僕は今のミソラちゃんが大好きだよ」
「ッ……!?」
ミソラの顔が真っ赤になった。
「いいいきなり、なにいうの!?」
「ふふっ……テレた」
悪戯っぽく笑い、そっと彼女の頬に手を触れた。
「いつも主導権握られてるお返し」
そっと彼女の唇にキスをした。ミソラは本当の意味でなにも言えなくなった。
「……」
ポ~~と恍惚そうに呆けるミソラにスバルや苦笑し、自分の部屋の天井を見上げた。
「儚げか……」
ピッピッとハンターVGを弄り、オッと声を出した。
「ミソラちゃん、ナンスカー村に行こう」
「ナンスカー……って、ムー事件で行ったあの村」
「そう……そこで花畑があるっていうらしんだ。村長のアガメさんに頼んで見せてもらおうよ。もしかしたら、演技作りのヒントになるかも」
「うん!」
ナンスカー村の村長、アガメに案内されるとスバルとミソラは圧巻した。
「綺麗……」
「うん……」
言葉を失うほどの色とりどりの海のような広い花畑に二人は感動を通り越し思考が止まってしまった。
「この花畑は昔、少女が母親と一緒にこの地に供物として、村に捧げてくれたものなんじゃよ」
「供物……」
「毎年、ナンスカー村は神が……といっても、あのコンドル・ジオグラフじゃないがの」
自嘲気味に笑った。
「毎年、ナンスカー村が決めたものは自分の一番大切なものを捧げないといけないといわれておるのだ。昔は人の命も捧げものじゃったんじゃがの」
「え……!?」
驚く二人に大笑いした。
「安心してくれ……今はそんな事せん! だから、この花畑がある」
花畑の花を一つ摘んだ。
「この花はどう思う」
「この花」
「アスターといい、花言葉は「信ずる恋」……そして、「思い出」じゃ」
「思い出」
ドキッとした。
「ワシは演技のことはわからんが花は思い出を思い出させてくれると信じてる……思い出が花になる。ワシはそう思うがね」
そっとスバルにアスターの花を渡し、ウィンクした。
「ミソラちゃん……動かないで」
「え……」
頭に花を挿され、ミソラは一瞬、なにをされたかわからず顔をしかめた。
慌てて手鏡を開くと真っ赤になった。
「ススススススバル君、これは恥ずかしいよ」
「アハハ♪」
おかしそうに笑うスバルにミソラは恥ずかしさに消え入りそうになった。
「それもいい思い出に変わる日が来るはずじゃよ」
「いい思い出……」
そっとスバルを見て、ミソラも花を摘んでいいか聞いた。
「いいよ」
花を摘み、スバルに渡した。
「ちょっとわかった気がする……女の子が大切な人に花を渡す気持ちが」
「そっか……」
優しく微笑んでくれるスバルにミソラも優しい気持ちになれた。
数日後……
『また来てくださいね?』
テレビの中で微笑むミソラにスバルはピッと電源を切った。
「……今の花、アスターだよね」
《さぁな?》
面倒臭そうに返事を返し、ウォーロックはうな垂れた。
《あの単純女の考えることは俺にはわからねーよ》
「……」
改めてハンターVGでアスターの花言葉を検索した。
「『思い出』と『信ずる恋か』」