流星のメモリアル   作:スーサン

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遊園地のお決まりは?

「ふぅ~~……」

 お風呂から上がるとスバルはお湯で濡れた髪を丁寧にタオルで拭き、サッパリした顔をした。

「いいお湯だった……」

 ぷるるるる……

「あ……電話だ」

 ピッと電話の機能をオンにした。

『ようやく出た!』

「ミソラちゃん」

『ミソラちゃん。じゃないよ!』

 モニターの画面から憤慨するミソラに首をかしげた。

『さっきから電話してて全然、繋がらないんだもん……なにしてたの?』

「これ……」

 髪を拭っていたタオルを見せ、ミソラの顔が真っ赤になった。

『お、お風呂、入ってたんだ?』

「うん……」

『……』

「どこ見てるの」

『い、いや……別に、はだけた胸元がちょっとだけ、色っぽいかなんて思ってないよ?』

「変なの……」

 クスクス笑うスバルにミソラはますます真っ赤になった。

「ところで、用事があったんじゃないの」

『そうそう……用事、用事』

 ゴソゴソとズボンのポケットから二枚のチケットを取り出した。

『実は遊園地のフリーチケットを仕事のスポンサーの人から貰ったんだ。まぁ、一日だけだけど、一緒に行こうよ?』

「遊園地か……」

 頭の中にジェットコースターやコーヒーカップといった乗り物が連想され、ウンッと頷いた。

「いいよ……いつ行く」

『明日の日曜はどう。チケットの期限もギリギリだから、近いうちに行きたいんだ?』

「じゃあ、明日の朝、開園と同時に入ろう……待ち合わせはどこにする」

『電波空間を使って現地集合……オーケー?』

「うん、わかった」

 元気良く頷き、スバル君はからかうようにいった。

「寝坊しないでね」

「そっちこそ」

 クスクス笑い、二人は電話を切った。

「さぁ……明日も早いし、さっさと寝ようかな」

 ゴロリとベッドに寝転がり、目を瞑った。

「明日はいい一日なりそうだな」

 夢の中で遊園地のデートを想像し、スバルは寝入った。

 

 

 次の日、スバルは約束の時間に遊園地までやってくると、元気のいい声が聞こえてきた。

「スバル君、こっちこっち!」

 手を振って、自分を呼ぶ少女にスバルは慌てて近づき、申し訳ない顔をした。

「ゴメン……待たせちゃったかな」

「そんな事ないよ」

 頬をポッと染め、ニッコリ笑うミソラにスバルもテレ臭そうに頭の後ろをかいた。

「じゃあ、入ろうか……」

 手を握り、二人はすでに開園している遊園地の中へと入っていった。

 

 

「すごい光景だね」

 遊園地に入るとスバルはいの一番に声を上げた。

「乗り物もどれも凝ってるな」

 ジェットコースターを初めとする絶叫マシーンに子供でも楽しめる体感遊戯……

 休憩施設も娯楽を忘れさせないサプライズが用意されており、終始、お客様を満足させる作りとなっていた。

 そんな遊園地にミソラもテンションが上がったのか、スバルの手をグイグイ引っ張った。

「早速、ジェットコースターに乗ろうよ」

「ちょ……腕を引っ張らないで!?」

「もしかして、ジェットコースターが怖いの」

「そうじゃなく、あまりハシャぐと怪我を……」

「あ……!?」

 足を滑らせ、転びそうになるミソラを慌てて抱き寄せた。

「ホラ。だからハシャぎすぎだって言ったでしょう……アイドルなんだから、怪我には注意しなきゃ」

「うん……ごめん」

 胸に顔をうずめ、真っ赤になるミソラにスバルも少しテレ臭そうに離れた。

「じゃ、じゃあ、早く、ジェットコースターに並ぼうか。結構混んでるな」

「この待ち時間も楽しいんだよ」

 ニコッと笑うと係員のお兄さんの声が響いた。

「次の方、どうぞ」

「お、早くも私たちの番! 一番前の席に座ろう、スバル君!?」

「そうだね……ちょうど、一番前の席に座れそうだし」

 席に座ると、バーが下ろされ、ゴトンッとジェットコースターが動いた。

「……」

 気付いたら、スバルとミソラはお互いの手をギュッと握りしめ、ゴクリと喉を鳴らしていた。

「この感覚いいよね……なんていうか、上るときのワクワクって、怖さと期待で胸が張り裂けそう」

「本当に張り裂けないでよ」

「えへへ……♪」

 顔を赤くし、テレると、ミソラは思いついた顔でスバルに耳打ちした。

「スバル君、コースターが降りたら、クイズを出すから問題文と答えを提示してね」

「え……」

 ジェットコースターが下った。

 

 

 ふらふらの状態でジェットコースターから降りるとスバルは真っ赤な顔でつぶやいた。

「ミソラちゃん……絶対に後ろの人たちには聞こえてたよ」

「そうかな~~……」

 大した反省の色を見せず、ミソラは確かめるように耳打ちした。

「で、答えはな~~~んだ」

「……」

 真っ赤になった。

「ミソラちゃんの一番感じる場所なんて、僕が知るわけないでしょう」

「あれれ~~……本当かな」

 スバルの唇をツゥ~~撫で、微笑んだ。

「答えはな~~んだ」

 カァ~~~と赤くなった。

「スバル君、可愛い♪」

「つ、次はコーヒーカップだよ!? これで頭の血を下げてやる!」

 脳裏に尾上十郎の顔がよぎったがすぐに消えた。

「よし、ここは大して並んでないから、すぐに乗れるよ」

「うん! 私のカップ捌きを見せてあげるよ」

「そんなワザ、自慢しなくっても」

 おかしそうに笑うと、ミソラは巨大なコーヒーカップの中へと入り、スバルを招いた。

「ほらほら、早く入らないと入れてあげないよ」

「はいはい」

 呆れた顔でカップの中に入ると真ん中バーを軽く触ってみた。

「キャハハハハハ♪ スバル君、これ回るよ」

「そういう遊具なんだからね」

「もう、スバル君、ノリが悪いな」

 グイグイ、コーヒーカップを回し、音楽が流れた。

「あ、始まった」

 カップの下の回転床もグルグル回るとミソラもテンションを上げ、満面の笑顔で真ん中の回転バーを全力で回した。

「キャ~~~~♪ スバル君、風が気持ちいいよ!?」

「ミソラちゃん、調子に乗りすぎ!?」

 勢い良くカップを回すミソラにスバルは呆れた顔でうな垂れた。

「もう、ミソラちゃん、なら、これでどうだ!?」

「キャッ!?」

 グイッと無理やりカップの回転を逆に変えるとミソラは遠心力に負け、スバルの肩にトンッとぶつかった。

「あ……♪」

「おっと……」

 肩がぶつかり合い、カップが止まると二人はなぜか、おかしそうにアハハと笑った。

「もっともっと回そうよ、スバル君!?」

「調子に乗りすぎだよ……でも、それ~~~~~!?」

「キャ~~~~♪」

 

 

 コーヒーカップから降りると二人とも、真っ青な顔でふらついた。

「酔った……」

「目の前がグワングワンする……」

 ハンカチで口元を押さえるとミソラはウプッとなった。

「少し休憩しよう……あそこに喫茶店があるから、ジュースを買って、その次は乗り物以外のもので遊ぼう」

「そ、そうだね」

 男の意地なのか、少しだけ余裕を持って歩こうとするも、

「スバル君、肩を支えあわないと倒れるよ」

「あ……」

 肩を抱かれ、ミソラも自分の肩を抱けと催促した。

 喫茶店でジュースを頼むと二人は真っ青な顔でテーブルの上で肘をついた。

「まだ、二つしか乗ってないのに、もうバテちゃったね」

「でも、昼までまだあるよ……ここは広いから、一日あっても足りないことで有名だし、目玉ポストもあるんだ」

「目玉ポスト」

「後のお楽しみ」

 パチンッとウィンクすると店員のお姉さんが頼んでおいたジュースを持ってきた。

「お待たせしました。メロンソーダです」

「あ、どうも……って」

 一つしかないじゃん。と突っ込みかけ、ストローが二本あることに気付いた。

「……」

 ミソラをジト~~と見つめた。

「キャッ……♪」

 テレたように頬を隠し、チラッと見た。

「スバル君、早速気付くなんって……エ・ッ・チ」

「……店員さん、オレンジジュースください。ストローはいいですから」

「むぅ~~~……」

 頬をめいっぱい膨らませ、ぷいっとそっぽを向いた。

「まったく……」

 チョンッと頬に指をつけ、押してみた。

「スバル君!?」

「可愛いね、ミソラちゃんは」

「……」

 カァ~~と赤くなり、また、頬を膨らませた。

 

 

 それから、二人は色々なアトラクションを制覇していった。

「ミラーハウスのスバル君、すっごく、太ってたね」

「そういう、ミソラちゃんは痩せすぎ!」

 ……

「ゲーム系のアトラクションはスバル君に分があったね」

「まぁ、慣れてるから」

「やっぱり、的当て的なものは主人公の特権」

「……」

 ……

「ヒーローショーやってると思わなかった」

「主人公の「意義あり」の叫び、格好良かったよね」

「追い詰められたときの敵の苦し紛れの言い訳を証拠で切り捨てるシーン痺れた!」

「あの敵を匿ってたハゲ、終始冷や汗かいてたね」

 ……

「あ、プリクラだ! この遊園地限定のフレームがあるみたいだし、撮っていこう」

「ちょ、ミソラちゃん」

 ……

「ミソラちゃん、今夜はナイトパレードがイベントでやってるみたいだよ」

「これは見るっきゃないでしょう」

 ……

「あ……もう、こんな時間か」

 夕日が沈みかける時間になり、ミソラは予定通りと目の前の建物を見た。

「スバル君、さっき、この遊園地の目玉アトラクションがあるって言ったよね」

「うん……でも、ここって、どこもレベルが高すぎるから、どれが目玉かわからないよ」

「アハハ……わかる、わかる! でも、一番の目玉はここ!」

「お化け屋敷」

 遊園地としては定番のスポットの割りに、一番奥の一番大きく作られた洋館にスバルは唖然とした。

「なんと、ここの遊園地は海外のホラー映画技術を駆使して、日本一怖いお化け屋敷を目指して作られてるんだよ」

「に、日本一」

 日本を語るなら、なにも洋風じゃなく和風でもいいんじゃ?

「今の日本で和風じゃ、誰も怖がらないよ」

「まぁ、確かにね」

 欧米化が進む今日で和風は帰って新鮮なものになってしまう気もした。

 洋館のほうが逆に親近感も沸くものだろう……でも。

「ミソラちゃん、こういうの大丈夫なの」

「大丈夫! 所詮、作り物だよ……日本一って言っても、たいしたことないって」

 手を引っ張りミソラはスバルを連れ、お化け屋敷の中へと入っていった。

「本当に大丈夫かな」

 若干の不安が残った。

 だけど、一時間後……

「ひっく……ひっく……」

 スバルの胸に抱きつきながら、ミソラはお化け屋敷から出てきた。

「あんなの反則だ……聞いてないよ……ひっく」

「……」

 顔をしかめ、自分の胸にすがりつくミソラに呆れた。

 確かに日本一の名前は伊達じゃなかった。

 本気で怖かった。

 洋館に入ると早速、あたりは真っ暗な闇に包まれ、不気味な風の音が響いた。

 少しして風の音がやむと今度は通りがかりの鏡にお化けが映り、心臓が止まりそうになり、ただ、静かなだけの空間もあった。

 だが、なにもない暗闇の世界が逆に足元を不安にさせ、孤独の恐怖を与えた。

 極めつけは長い時間をかけてようやく辿り着いた出口で頭の割れたゾンビが襲い掛かり、ミソラは本気で泣いてしまったのだ。

「ほら、ミソラちゃん……終わったんだから、離れて」

「うぅん!?」

 スバルの胸に顔を埋めながら嫌々すると涙目で顔をあげた。

「きょ、今日、スバル君の家にと、と、泊めてよ……こ、怖くって今日は一人じゃ寝れないよ」

「それじゃあ、僕が違う意味で寝れなくなるから、ダ・メ!」

 強引に引き剥がし、スバルはギュッと手を握った。

「それにちょうど、いいものが始まったよ」

「え……」

 人の列を掻き分けるとミソラは真っ赤な目を輝かせた。

「綺麗……」

「ちょうどナイトパレードが始まったんだよ」

 涙を拭い、スバルの手を握り締めるとニコッと笑った。

「綺麗だね、スバル君!?」

「そうだね」

 この遊園地のマスコットなのか、カラスをイメージしたいかにもチョイ悪な着ぐるみが客に向かってケンカを売っており、客も調子を合わせるように野次を飛ばしていた。

 どうやら、これがこの遊園地のやり方らしい。(客もケンカを売られるのが嬉しいらしい)

 夜の夢を具現化させたような(ちょっと壊す気もするけど)光景であった。

「……やっぱり、最後の目玉は綺麗じゃないとね」

「……うん」

 ミソラもようやく涙を止め、スバルにお願いした。

「観覧車、乗ろう」

「観覧車……うん」

 ミソラの言いたいことを理解し、ナイトパレードから背を向けた。

 すぐ近くの観覧車に乗ると二人は窓から見える、小さくなる虹色の輝きにを見た。

「やっぱり、上から見るともっと綺麗だね……光の川みたいだよ」

「そうだね……まるで光の川だね」

 光の川の比喩にスバルも納得し、ゆっくり席から立ち上がった。

「ミソラちゃん……」

 隣に座り、肩を抱いた。

「あ……スバル君」

 気付いたようにミソラは真っ赤になってスバルに身体を預けた。

「今日はありがとう……私のワガママに付き合ってくれて」

「そんな事ないよ……僕も楽しかったし。また、これるといいね」

「うん」

 頷き、顔を上げると目を瞑った。

「ミソラちゃん」

 そっと頬に手を触れ、顔を近づけると唇同士がくっつく感触を覚えた。

「……」

 すぐに唇を離すとミソラはスバルはまた肩を支えあうように身体を預けた。

「今日は帰りたくないな」

「……そうだね」

 スバルも同意するように微笑んだ。

「今日は泊まっていいよ……」

「え……いいの」

 意外そうな顔をするミソラに優しく微笑んだ。

「今日の余韻を朝まで残しておこう」

「……うん」

 感動したようにミソラはまたスバルにキスをした。

 眩い星空にパァンッと花火が上がり、二人の身体を照らした。

 まるで二人の幸せを祝うように何度も光り輝き……

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