流星のメモリアル   作:スーサン

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ゲーマー魂

「ふわぁ~~……」

 今日は珍しく早く目が覚めた。

 しかも、六時起床。

 学校のない休日にこんなに早く目覚めたのは実に数週間振りである。

 たまにルナのワガママでムリヤリ起されるときもありが、それでも自発的に早起きしたのは久しぶりである。

「……うん」

 パジャマの匂いをかぎ、ちょっと前髪を触ってみた。

「ちょっと寝汗かいたかな……最近、暖かくなってきたし」

 天井は日当たりが良いようにガラスになっているので余計、暖が感じる。

「ちょっと、シャワーでも浴びよう」

 ベッドから降り、お風呂場へと向かった。

 

 

 シャワーを浴び終えると、スバルは濡れた髪をタオルで拭い食卓へとあがった。

「あら、スバル……珍しいじゃない」

「あ、おはよう……母さん」

 タオルを肩にかけ、サッパリした顔でテーブルに用意された食パンを噛りついた。

(相変わらず、いい焼け具合)

 食パン一つにとっても妥協のない母の料理に感服しながら、母・アカネが見ているテレビ番組を覗いた。

『素敵な恋人にサイコーのキスを! 桃色ウェーブリップ発売中!』

 チュッと視聴者に向かってかわいく投げキッスするミソラにスバルは真っ赤になった。

「ミソラちゃん、最近、ますます、可愛くなってきたわね」

「ま、まぁ……ね」

 曖昧な返事を返し赤くなる我が子にアカネはニヤニヤした。

「この、プレアデス君って、スバルのことでしょう」

「な……ッ!?」

 母のハンターVGのモバイルネットで開かれたブログを見て、絶句した。

「かかかかか母さん、どこでそのブログを!?」

「ミソラちゃん関係なら、簡単に調べられるわよ……ファンがどれくらいいるくらい人気があるか知らないわけじゃないでしょう」

 ニッコリ微笑むアカネにスバルは恥ずかしさに言葉を捜した。

「スバルが家にいないときの更新数が半端ないけど、ただの偶然」

「う、うるさいな……なんでもいいでしょう」

 バクバクと詰め込むように食パンを胃の中に収めるとゲプッと息を吐いた。

「もう、部屋に戻る!」

 ピルルルルルルルルル♪

「ん……電話」

 不機嫌な顔でハンターVGの電話機能がオンにした。

『スバル君、おはよう。もう、起きてる!?』

「ミソラちゃん」

 モニターに映るミソラの顔にスバルはキョトンとした。

『どうしたの……ハトに豆鉄砲を食わせようとして逆に食わされた顔をして?』

「どんな顔だよ。いや、なんでもない……ところでなにか用」

『ムッ……用がなきゃ、電話しちゃいけないの?』

「別にそうじゃないけど」

 慌てて弁解するスバルにミソラは拗ねた顔でそっぽを向いた。

『じゃあ、用がなくってもかけてもいいの?』

「ま、まぁ、邪魔にならない時間なら」

『なにそれ!? それじゃあ、私がスバル君の邪魔になる時間に電話かけてきそうな娘じゃない?』

「そ、そうは言ってないよ……今のは言葉のあやで」

『あやもまいも無いよ! スバル君が私をそんな目で見てるなんってガッカリだよ!』

 ぷつんっ……

「切られた」

 ピルルルルルルル♪

「また、電話だ」

『かけなおしてよ!?』

「うんな、無茶苦茶な!?」

 泣きたくなる思いを胸に仕舞い、また電話が切られた。

「なんで、僕の周りはこうもワガママな娘が多いんだろう」

 ピポパとミソラの電話番号に数字をプッシュすると、ピルルルと携帯音がなった。

『はい、もしもし!』

「ごめんなさい……」

『……なんか、今一だけど許してあげる』

「なんで、僕が悪いことになってるんだろう」

『まぁ、それは置いといて、電話をかけた用件なんだけど?』

「あ、やっぱり、用があっ……」

 ギロッと睨まれた。

『実はゲームセンターのダンシングゲームに私の歌が入ったんだ!? 今日、入荷だから、一緒にゲームセンターにいこう?』

「ゲームセンターか」

 ゆっくり、頭の中でシューティングゲームで圧勝する自分を想像し、ウンッと頷いた。

「いいよ……じゃあ、待ち合わせはどこにする」

『上で待ってるから?』

「上って……」

 ゆっくり天井を見上げて、真っ青になった。

「まさか!?」

 慌てて熱いコーヒーを胃に流し込み、食卓を出ると部屋へと走っていった。

「青春ね」

 指を絡め、ウットリするアカネに突っ込みを入れる人間は誰もいなかった。

 

 

「ミソラちゃん!」

 バタンッ!

「へろ~~♪」

 勉強机のイスに堂々と座り、手を振るハープ・ノートに頭痛を覚えた。

「なにがへろ~~なの、また人の家に勝手に入って」

「そんな事よりも、早く、ゲーセンに行こう。案内するからさ」

 ぶんぶん手を振り回すミソラにスバルはなにを言っても無駄だと諦め、ハンターVGを取り出した。

「電波変換」

 

 

 ゲームセンターにつくと、ミソラは早速スバルの手を引っ張り、新筐体のあるゲームセンターの奥へと向かっていった。

「こっちこっち! 早くプレイしてみようよ」

「こ、こらこら、ミソラちゃん」

 引っ張る腕に転ばないよう早足でミソラの後をついていくと、目当てのダンシングゲームを見つけた。

「もう、違う人がプレイしてるね」

 自分以外のアイドルの曲で踊っている女子高生に二人は苦笑した。

「どうしよう」

「ゲームセンターは久しぶりだし、ダンシングゲームは最後に取っておこう」

「そうだね。じゃあ、時間をつぶそうか……お金は結構、持ってるし」

 ジャラジャラとガマ口のお財布を振ると得意げに胸を張った。

「今日は奢るよ……ゲームセンター代くらい、甲斐性を見せないとね」

「さすがスバル君! セコイところで甲斐性を見せるのは主人公ならではだね」

「前から思ってたけど、その主人公ってなに」

「あれやろうあれ!」

 ちょっと変わった形の筒型の銃の置いてあるガンシューティングにミソラは目を輝かせた。

「あれ、人気あるらしいよ……二人でやってみよう」

「うん!」

 ゲーム筐体の前に立つと二人は備え付けられている青い筒型の銃を左腕に装着し、ビシッと構えた。

「力を溜めるとスーパーバスターが撃てるみたいだよ」

「えっと……説明書だと、各ステージのボスを倒すと、そのボスの技を盗めるみたい」

「へぇ~~……ブーメランにファイヤーか。色々あるな」

「ハイスコア狙おうね」

「よし、ゲームスタート!」

 

 

「トドメだ!」

「援護は任せて!」

 巨大なドクロのロボットに乗った老人に向かってバスターを撃ち放つと画面全体が光輝いた。

『ちくしょう……ワシは諦めんぞ!?』

 情けなく飛行メカに乗って逃げていく老人に二人は満面の笑顔で飛び上がった。

「やった! クリアだ!」

「ハイスコアだよ!?」

 見事に圧倒的差をつけて一位になったスバルとミソラは抱きつかんばかりに喜んだ。

「あ、スコアネームを打つみたい」

「よし、じゃあ……早速」

 左腕の青い筒型の銃で器用に画面の英語文字を撃つと、スコアネームが打ち込まれていった。

≪MISOSUBA≫

「ッ……!?」

 ミソラの顔が真っ赤になった。

「なんだか、いい響きだね」

「そう。なんとなく打っただけなんだけど」

「うぅん! すっごくいいよ! 今後は二人でなにかやる時はこの名前でいこう」

「この名前ね……」

 少し考えるようにスコアネームを見て、ニコッと笑った。

「そうだね。じゃあ、次からもこれでいこうか」

「じゃあ、次ね次! 次はなにをしようか」

 ハシャぐようにピョンピョン跳ねるミソラにスバルも少し考えるように隣のゲーム機を見た。

「シューティングで疲れたし、今度はこれやろう」

「ゲッ……頭使うやつ」

 後ずさりし、不平をもらした。

「私、頭使うの嫌いなんだけど」

「歌詞作ってる人がなに言ってるの」

「創作と知育は別だもん」

「はいはい……じゃあ、やろう」

 背中を押して、ゲームをスタートするとガタンッと木のハンマーが下ろされた。

『話になりませんね……判決を言い渡します!」

≪有罪≫

 ガタンッと扉が閉まり、ミソラの目がウルウル潤んだ。

「あ、あんなハゲ親父に完膚なきまでに論弁で叩き潰されるなんて~~~……」

「ミソラちゃん、直感で証拠出しすぎだよ」

「そんな事無いもん!」

 ぷぅと頬を膨らませるミソラにスバルは苦笑した。

「変わって……僕が仇を取ってあげる」

「これ思ったよりも難しいよ」

 スッカリ負けて不貞腐れたのかそっぽを向くミソラにスバルは得意げに微笑んだ。

「まぁ、見てて」

 ゲームを始めると十分もしないうちに敵の検事の顔が真っ青に染まっていった。

『で、ですが……』

『意義あり! その答えは矛盾してます!』

『な、なにを根拠に、この証人の言ってることが信用できないというんですか?』

『この証人が信頼できるかどうかの答えは弁護人でなく、証人を呼んだ検事が答えるべきです……さぁ、答えていただきましょうか?』

『あうぅぅぅぅぅ……!?』

 絶句し倒れかける検事に主人公はビシッと指差した。

『答えてもらいましょう!? この証人が犯人でないなら、この証人の無実を証明する証拠を挙げてください!?』

『あ……あぁあ!? ぬ、抜けるぅぅぅぅぅ……毛がぬけるぅぅぅぅぅ!?』

 バタンッと倒れる検事に主人公は得意げに腰に手を当てた。

 その様子を真ん中の席で見ていた裁判長は厳しい目つきで主人公を睨んだ。

『なんとも複雑な事件でしたね。でも、弁護人のおかげで一つの真実が暴かれ、無実の人が一人救われました』

 拍子抜けするほどマヌケな顔する裁判長に主人公はますます得意げな顔をした。

『それでは判決を言い渡します!』

≪無罪≫

 紙吹雪と歓声が鳴り響き、無罪を勝ち取った被告人の泣き出しそうなほどの喜び顔にスバルは拳を握り締めた。

「スバル君、すごい、すごい!」

「まぁ、これくらいはね……あ」

 ミソラもテンションを上げた顔で手を引っ張った。

「次は格闘ゲームやろう!?」

「これ、3Dにリメイクされた人気ゲームの3だよね」

「負けないよ」

「はいはい……」

 満更でない対戦台に座った。

 それから、二人は本来の目的を忘れたかのように満遍なく遊びつくした。

 格闘ゲームの次はレーシングゲームにスポーツフィッシング、プライズコーナーでは人形を取ろうとして挫折し、パンチングマシーンで小学生離れした成績を出し驚かれたり……

 ゲームセンター所狭しと冒険のように遊びまくる二人に時間は気付いたら夜の時間になっていた。

「じゃあ、時間も最後だし、ダンシングゲームをやろうか」

「うん!」

 満面の笑顔でちょうど開いたばかりのダンシングゲームのステージに立つとミソラはコインを入れ、二人プレイを選択した。

 音楽をセレクトするとポチッと押した。

『動き始めた 新たなウェーブ!』

 音楽が流れると二人は一度、目線を合わせ、画面の矢印に向かって足元のパネルを踏んだ。

『乱れも 振り切れる 力 試すように!』

 矢印の指示と同じようにパネルを踏み、テンポを合わせるとミソラとスバルはニコッと微笑み、踊るように手をあげた。

『そ~~らの彼方 浮かぶ記憶に今~~~』

「おい、あの子達、うまくないか」

「本当……しかも、息もピッタリ」

「っていうか、あれ、響ミソラじゃないか」

 いつの間かに自分たちを取り囲む集団に二人は気を良くし、気づいたら自分たちも歌を歌っていた。

「お、おい、歌い始めたぞ!?」

「あの男の声も良く通ってハモッてるぞ!?」

「おい、携帯のカメラに撮れ!? レアシーンだぞ!?」

 歌を歌いながら、ダンスを踊る二人に観客たちもライブのように騒ぎ出し、気づいたらゲームセンターのスタッフが慌てて暴動が起きないようバリケードを作っていた。

「熱い絆!」

 ミソラの歌声に男たちが答えるように「熱い絆」と歌いだし、

「繋ぎ合わせ!」

 今度は女子がスバルに合わせ歌いだし、一瞬、二人の手が握られた。

「オーパーツ求め!」

 すぐにバレないうちに手を離し、二人は軽くターンをかました。

「信じ進み力の限り前へと~~~~!」

 バァンッと歌が終わり、見栄を切ると拍手喝采が飛んだ。

「アンコ~~~ルアンコ~~~ル!」

 響き渡るアンコールの嵐に二人は汗まみれの顔を綻ばせ、観客に手を振った。

「それじゃあ、アンコールに答えて、最後の一曲いきま~~~す!」

「お~~~~~!」

 筐体にコインを入れるとミソラはバット振り向き叫んだ。

「シューティング・スター!」

 流れ星のような透き通った音楽が流れ、二人はまた繋ぐように手をふれあい、歌と踊りを始めた。

 

 

 夜も九時を回り、たくさんのサインをくれという願いを乗り越え、逃げるようにウェーブロードに立っていた。

「楽しかったね、ゲームセンター」

「そうだね……こんな充実した一日は久しぶりだよ、ありがとう、ミソラちゃん」

「いいよべつに」

「また、こんなゲームやってみたいね」

「今度は……無理かも」

「……」

「さっきメールでマネージャーから連絡があって、怒られたんだ。許可無く個人ライブをやるなって」

「あ~~……」

 マネージャーとは前のミソラを苦しめたマネージャーじゃなく、新しく入った女性のマネージャーである。

 前のマネージャーは違うタレントと問題を起こし、クビになったのだ。

 ようやく、変わったマネージャーの怒った顔を思い出し、苦笑した。

「じゃあ、本当に最初で最後の独占ライブだったね」

「うん! ゲームセンターからも感謝されて、ほら」

 チャリンチャリンと小銭を見せ、微笑んだ。

「ゲーム代分、お金返してもらっちゃった。いい宣伝になったって理由で」

「そっか」

 そっと立ち上がり、

「送っていくよ」

「うん!」

 ゆっくり、手を繋ぎ、二人はウェーブロードを歩き出した。

「あ……流れ星」

 上空に流れ落ちる星にミソラは顔を上げた。

「……よく願い事を三回込めると願いが叶うって言うけど、普通の人じゃ願いは叶わないだろうね」

「そうでもないよ」

「え」

 ニコッと微笑み、ミソラはそっと両手を握った。

「電波体の今なら、流れ星だって遅く感じられるもの……ちょっとズルイけど」

 また流れ落ちる星にミソラはそっと心の中で願った。

(スバル君とずっと一緒にいて、想いを添い遂げられますように……)

 流れ星が消えるとミソラは両手を離し、スバルの手を握った。

「なにをお願いしたの」

「内緒」

 ウィンクし、微笑むとミソラの家が見えてきた。

「もうさよならの時間だね」

 そっと手を離し、電波空間を出て行った。

「じゃあ、また明日ね……スバル君」

「うん、また明日ね、ミソラちゃん」

 家の前でスバルとミソラは、呼吸をするようにキスをし、思った。

(本当にいつか、これが恋人のキスになるのかな?)

 そう願い、ミソラの心がドキドキした。

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