流星のメモリアル   作:スーサン

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流星の恋人編
二人の新境地【挑戦編】


「呼び捨てしよう!」

「はい……」

 食べていた塩せんべいの食いカスが床にこぼれ、慌てて掃除した。

「どったのミソラちゃん、変なこといって」

「それだよ!」

「それ」

 視線を下げ、

「喉仏のこと」

 喉仏を指差した。

「違う! ミソラ「ちゃん」だよ!」

「君の名前でしょう」

「ち・が・う! 敬称だよ、敬称!」

「敬称……ミソラちゃんが僕を「くん」で呼ぶこと」

「そう!」

 コクリと頷き、腕を組んだ。

「私たちは紆余曲折あって、ようやく交際することになったけど、今一、実感がわかないわけ……」

「そんな実感なんてわかなくっていいよ。ちょっとずつ、慣らしていこう。そうだ、一年後になにか、お祝いしよう。いい記念になると思うよ。今のうちにいい物が買えるよう、お金貯めておかないと」

 なぜか、両手を合わせナンマイダナンマイダと口にするスバルにミソラはビシッと手をたたいた。

「話をはぐらかさないで! 付き合い始めたのに、いまだに「くん」や「ちゃん」で呼び合うのは変だと思うの!」

「いや、変じゃないと思うよ。実際、交際していてもお互いを苗字で呼び合う恋人もいるし……結婚した後もあだ名で呼び合う夫婦もいるぞ」

「そんな例はいらないの!」

 憤慨するミソラにじゃあ、どうすればいいのと愚痴りたくなった。

「まったく……スバル君は変な髪形にゴーグルに似合って、全然わかってない」

「ホッとけ……」

 柔らかなベッドに座り、毛布をわさわさと触った。

「……」

 少し顔を赤くし、ベッドに寝転がった。

「スバル君の匂いがする」

 寝転がりながら、鼻をすんすんと幸せそうにするミソラにスバルは真っ赤にして怒鳴った。

「なにやってるの、ミソラちゃん!?」

「だ・か・ら! 「ミソラ」だってば!」

「ミ、ミソラ……ちゃん」

「なんで、疑問系。ヤル気がないなら帰って!」

「ここ僕の家……」

「もういい!」

 子供のようにベッドの上で足をバタバタするミソラにスバルは心底呆れた。

「本当にワガママだな……いったい、なにがしたいの」

「だから、お互い呼び捨てにしあう仲になりたいの!」

「だから」

「呼び捨てにして!」

「……」

 呆れた顔をした。

「呼び捨てなんて、どうでもいいんじゃない」

「よくない! 付き合った時点で私たちは呼び捨てにしあう権利があるの!」

 憮然と自分の意見を変えないミソラにスバルはどうしたものかと頬をかいた。

「じゃあ、お手本にミソラちゃんが僕の名前を「呼び捨て」で呼んでよ」

「え……私が」

 真っ赤になって自分を指差した。

「ミソラちゃんの考案でしょう……はい、お手本」

 なぜか、両手を前に出し手のひらを上に出すスバルにミソラはカァ~~となった。

「……ス」

「ス」

 目線をそらした。

「スバル……君」

「……」

 冷たい目線が注がれた。

「こ、こういうのは男の子が先にいうものなの!」

 慌ててベッドから起き上がり、ぶんぶん両腕を振った。

「なんで、女の子が率先して……」

「ミソラ」

「え……ッ!?」

 衝天した。

「ススススススススススバル君……今、なんて!?」

「スバル君じゃなく、スバルでしょう、ミ・ソ・ラ」

「ミミミミミソラ!?」

 二度も呼び捨てにされ、心臓が爆発しそうになった。

「あぅぅぅぅぅぅ……!?」

 バタンッと倒れ、噴水のように鼻血が噴出した。

「だから、言わんこっちゃない……見事に自爆してるじゃん」

「あうぅぅぅ……」

 ノボせたような声を出すミソラにスバルはどこから取り出したのか団扇を取り出し、扇いだ。

「ミソラ~~……どうする、呼び捨てにするか。それとも、当分、後にするか」

「……あ、後に回します、これは破壊力抜群だよ」

「じゃあ、僕もミソラをミソラちゃんに戻すね」

 また、どこから取り出したのか濡れタオルを取り出し、鼻血で染まった彼女の顔を拭った。

「本当、可愛い顔が台無しだね……ほら、これで綺麗になった」

 血で汚れたタオルを舐め、ニコリと笑った。

「うぅ~~……顔が熱すぎて、起き上がれない」

「……」

 いまだに起き上がれないミソラに悪戯を思いついた顔でニヤリと笑った。

 そっと耳元に近づき、

「ミ・ソ・ラ」

「ッッッッッッッッッ!?」

 また、鼻血が天井を赤く染めた。

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